戦姫絶唱シンフォギアAB   作:株式会社の平社員

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77GVOLT

ノイズの炭化した炭が舞い散る甲板の上では切歌と翼が剣と鎌を激しくぶつけ合い、火花を散らし、同様に調と奏の丸鋸と槍が衝突し、舞い散る炭の粉を吹き飛ばす。

 

一方クリスは絶え間なく沸き続けるノイズを処理しながらも奏と翼の援護をしながら戦い続ける。

 

「マリアを守る為!マムを守る為!お前達を捕らえ、この船の中の救えない命を私達の手でやらなきゃならないんデス!」

 

「そんな事されてたまるものか!貴方達の好きになど!アシモフの好きになど!」

 

ぶつかり合う剣と鎌の剣撃に負けじと切歌と翼は叫ぶ。

 

「五月蝿い!私達が生きる為!大切な人を守る為!私達はもうそれしか方法がないんデス!」

 

切歌にとっての戦う理由。それは大切な人達を守る為。真っ当な理由であるが、その為に関係のない人々を襲い、命を奪う理由になるのか?

 

いや、間違っている。

 

だから翼も負けじと剣を振るう。

 

「大切な者を守る為…それは真っ当な理由だ…だが!それならばアシモフに何故手を貸す!あの外道は本当に約束を守ると思っているのか!」

 

翼は切歌へと剣を振るい、切歌はその剣を受け止める。

 

「所詮は口約束であろう!それにあの外道がその約束を守ると思うのか!」

 

「約束は守らない可能性はあるかも知れない…あの外道は約束は守る確証はない…それでも!私達はあの外道の思い通りに動くしかないんデス!動かなければならないんデス!そうしなきゃ、大切な者を守れない!大切な者を取り戻す事すら出来ないんデス!」

 

切歌は翼の猛攻に耐えながらも叫ぶ。

 

助かる方法はこれしか無いと。助け出す方法はこうするしか無いと。

 

「だから!あの外道はそんな物は守らない!貴方達は良い様に使われて!裏切られて!その大切な者すら奪われるのだぞ!」

 

「そうだとしても!まだそうとなるわけじゃ無い!そうなるか分からない!でももしそうだとしても!私は!私なりに考えて行動しているんデス!」

 

切歌は翼の言葉に耳を傾けなかった。

 

「何故そこまでして!」

 

翼は苦虫を噛み潰したように表情を歪める。だが、切歌を、調を倒し、助け出さなきゃならない。そしてウェルを止め、ソロモンの杖を奪還し、アシモフを倒さなければならない。殺さなければならない。それが世界を救う為なのだから。ガンヴォルトの帰る場所を守る為なのだから。

 

「ならば此処で貴方を倒し、貴方達を救う。そして貴方の大切な者達を救う。少し荒っぽくなるが、押し通してもらうぞ!」

 

「やれるものならやってみるデス!」

 

切歌は翼の剣を弾き、鎌を三つに分かれさせるとエネルギーの刃を作り上げ、それを放った。

 

翼はそれを躱し、剣と鎌をぶつけ合った。

 

◇◇◇◇◇◇

 

「分かってんだろ!こんな事しても意味はない!誰かを殺せばあの野郎が約束を守らない事くらい!」

 

奏は調の丸鋸を槍で弾きながら叫ぶ。

 

「そうかも知れない!でも違うかも知れない!どうする事も出来ない!言うことを聞くことしか出来ない!私達が生きる為にはあの外道の傀儡になるしか方法が無い!人質に取られている!自分達が人質にされている!私達が言うことを聞かなければ私の大切な人が悲しい目に遭う!だったら助かる可能性がある方法を取るしか無い!例え、私達以外が悲しむとしても!私にとって大切なのは私を大切にしてくれたマリアだ!マムだ!身寄りのない私達にとって最も大切なんだ!」

 

「巫山戯るな!その可能性は絶対にない!アシモフに従っている限り無いんだよ!何度だって言う!あの外道が約束を守ると思うか!?絶対に無い!あの外道に約束を守るなんて思考は持ち合わせていない!」

 

調の丸鋸を槍で弾き飛ばし、アシモフがそんな口約束など守らないことを叫ぶ。

 

ああそうだ。アシモフは約束は守らない。決して守ることが無い。

 

「あの外道は用済みになればお前達を殺す!傀儡として生かしても決してお前達を生かすつもりなんてないんだよ!分かるだろ!あの外道が今までしてきたことを!今まで行った行動を!」

 

奏は調に向けてそう言った。

 

アシモフが起こした数々のテロ行為。秋桜祭の時にあらゆる場所に爆弾を仕掛け、数々の人の命を奪おうとした事。東京スカイタワー内での爆発とノイズによるかなりの被害の事を。

 

「分かっている!でも、さっきも言った様にそうするしか私達が生きる方法が無い!大切な人達を悲しませない様にするにはそうするしか無い!」

 

だが、調はそれを踏まえてそう叫んだ。クリスによって解明された切歌と調の首に着けられた爆弾。生きる為には、大切な人を悲しませない為には戦うしか無いと。

 

奏もその気持ちは痛い程分かる。奏も、いやこの場にいる全員が、大切な人を守りたい。大切な人を救いたいと行動している。

 

だけど奏は否定する。それは大切な人を守ろうとする意思などでは無い。そうやって生きる為に関係の無い人を殺そうとする事に対して。

 

「だったら私達が何とかしてやる!アシモフを殺してやる!だから、もうこれ以上!アシモフの言う事を聞くな!私達が必ず助け出してやる!お前の大切な人達もだ!」

 

奏は調に向けて叫ぶ。必ず助けると。アシモフを殺す事を!

 

その言葉に調は否定する。

 

「出来もしない事を口にしないで!あの男には勝てない!あの男を殺す事など貴方達に出来ない!その力がない貴方達に!出来もしない事を口にしないで!」

 

調は奏の言葉を否定して丸鋸を回転させ、氷上を滑る様に奏へと接近して丸鋸を振るう。

 

奏はそれを槍で受け止める。

 

「ああ!出来るか分からないさ!アシモフの野郎は強い!だけど!それがどうした!やってもいないのに勝てる勝てないなんて決めつけるな!やってみなきゃ分からない!やらなきゃならない!どんなに小さな可能性であろうと私達はやって見せる!やらなきゃならないんだよ!これだけはやり切らなきゃならないんだよ!」

 

そう言って受け止めた丸鋸を力任せに吹き飛ばした。

 

「くっ!?」

 

調はそのまま後退して奏を睨みつける。

 

「私達だって譲れない…大切な人を守る為!悲しませない為にも!」

 

「だったら力尽くで分からせてやるよ!そしてアシモフを引き摺り出す!ちょっと痛いが、我慢しろよ!」

 

そして奏は槍を構えて調へと向けて走り出した。

 

◇◇◇◇◇◇

 

「切歌…調…」

 

無線越しに聞いていたマリアはやるせない気持ちになる。

 

自分の為に、そしてナスターシャを助ける為に二人がここまでしてくれている。

 

そんな中、自分は何も出来ない。二人を助けることが出来ない事をひどく悔やんでいた。

 

「全く酷い言い方だな…英雄になる筈の僕やアッシュを外道外道って…君もそう思わないかい?」

 

「別に好きに言わせれば良い」

 

無線越しに聞いていたウェルは敵装者の言葉、そして切歌と調の外道外道と言う言葉に辟易していた。

 

アシモフはそんなウェルと違い、そんな言葉を気にしていない様に言った。それもそのはず。

 

アシモフは機内から見える切歌と調が戦う現場を見ながら、考え込んでいるからだ。

 

何を考えているのか分からない。だが、マリアにとってそれがとても不気味に思える。

 

外道のやる事だ。次にどんな酷い事をするか分かったものじゃ無い。

 

「この局面、アッシュはどう見てる?正直、僕はあの二人とノイズだけじゃ役不足にしか見えないんだけど?今だって押され気味だし…正直、対人戦ならばアッシュが行けば済む話じゃなかったのかい?」

 

ウェルがアシモフへとそう言った。その言葉にマリアは苛立ちを隠せない。アシモフ達が切歌と調を無理矢理出したくせに何故その様な言葉が言えると。

 

操縦桿を握る手に力が籠る。

 

「そうだな。私が行けば簡単だろう。だが、不確定要素が残っている。奴等の使う電子の謡精(サイバーディーヴァ)の力の断片。そして海上での戦い。ほんの些細なミスで痛手を負うかもしれん。だからこそ、見極めて私が行くのだ。もうどんな小さな可能性であろうと潰して確実を見出さなければならないからな」

 

「そうかい?海上だろうとあれくらいの大きさであれば大丈夫だと思うんだけど?」

 

「驕るな、Dr.ウェル。その慢心が計画を破綻させる。潰えさせてしまう」

 

アシモフはウェルへとそう言う。

 

「戦況は常に動いている。その中の勝ちを確実にする為に慎重にならなければ貴様の英雄という夢は潰える事になるのだ?」

 

そんなウェルに対してアシモフはそう言った。英雄という夢が潰えると言う言葉にウェルはアシモフの言葉にただ黙って頷いた。

 

そして暫くの間、アシモフが戦況を読みながらも機内では切歌と調の戦う海上に浮かぶ戦艦の甲板での戦いの音以外聞こえなかった。

 

しかし、戦況を見れば、マリアにでも分かった。切歌と調は圧倒的な窮地に立たされていると。

 

相手はかなりの手練れであり、対人戦にもかなり精通している。切歌と調は訓練でノイズとの戦闘しか行っていない。あまりにも経験不足であった。

 

経験の差は簡単に埋まるものではない。長い時間戦いが続けば此方が不利になる一方だ。

 

だからマリアはアシモフに言う。

 

「あの子達にはあいつらは荷が重いわ。一度撤退させるのが」

 

そう言うマリアにアシモフは撤退などさせないと言う。

 

「別に構わん。奴等が敵わん事くらい初めから織り込み済みだ」

 

その言葉に怒りが込み上げる。初めから死地に送り込むつもりです二人を出した事に。

 

「アシモフ!貴方と言う人は!」

 

マリアはそう叫ぶ。そしてそれと同時に地上でも切歌と調が丁度窮地に立たされた。

 

「頃合いだ。Dr.ウェル。貴様はノイズの操作を行ったまま、この場で待機しろ」

 

「分かった。でも何で窮地に立った瞬間に?あの子達を助ける為?」

 

ウェルの言葉にマリアも何処か期待した。まだ仲間意識があると。二人を助けようとするのかと。

 

しかし、マリアの思いはすぐに崩れ去った。

 

「いや、助けるなどと考えていないさ。ただ、戦況が傾いた。だからこそ、今出向く。Dr.ウェル。奴の準備は出来ているのだろうな?」

 

「ああ。調整も済んでいるよ。それに戦闘データもインプット済みだよ」

 

アシモフの言葉にウェルはそう言った。マリアは何のことだか分からなかったが、とても嫌な予感しかしなかった。

 

その言葉にアシモフはそうかと答えるとネフィリムの心臓を起動させて亜空孔(ワームホール)を開く。

 

「さあ、奴等に絶望を与えようか」

 

アシモフはそう言うと亜空孔(ワームホール)の中へと消えて行った。

 

◇◇◇◇◇◇

 

「グッ!」

 

「切ちゃん…大丈夫?」

 

切歌と調は背中合わせにしながら奏の二人に追い詰められていた。肩で息をして、不利な状況になっていた。

 

余りにも対人の戦闘経験が足りない。二人にとって翼と奏は強すぎた。

 

ノイズの様に人に襲いかかるというプログラムの様に動く訳じゃない。対人戦闘の局面によって戦法を最適な物を導き出す答えの引き出しが少ない二人にとって厄介極まりない物であった。

 

「これで終わりだ。もうこれ以上の戦いは無意味だ」

 

「もうこれで終わりにしよう」

 

翼も奏も未だ二人へと降伏する事を促す。

 

だが、二人も譲れない物がある以上、降伏するわけにはいかなかった。

 

二人が未だ構えを解かないのに対して、奏も翼は拉致があかないと大技を決めようと構える。

 

その瞬間、突如としてノイズと戦闘しているクリスの背後に穴が開く。

 

「悪いが、お遊びは此処までにしてもらおうか」

 

そしてその言葉と共に、切歌と調にとっても、奏、翼、そしてクリスにとっても最悪の敵。諸悪の根源たる存在が姿を現した。

 

「アシモフ!」

 

今までノイズの処理をして奏とクリスがアシモフが現れた瞬間に、ミサイルを取り出すと、現れたアシモフに向けて放った。

 

「クリス!」

 

「雪音!」

 

突如現れたアシモフと距離を取り、クリスの元に急いで戻った二人はクリスと共に己がアームドギアを構える。

 

「派手にやってくれるな、雪音クリス」

 

煙が舞う場所からアシモフの声が響く。

 

そして煙が徐々に晴れていくのを確認すると無傷のまま、立つアシモフの姿があった。

 

電磁結界(カゲロウ)で攻撃を無効化したのであろう。

 

あの程度で仕留められると思っていない。だからこそ、誰もがアームドギアを構え、警戒を怠らない。

 

「まあ良い。頃合いだ。そろそろ私と共にこれが相手になろう」

 

アシモフがそう言うと再び亜空孔(ワームホール)を開く。

 

そしてそこから現れた人物の姿を見て全員が驚愕に包まれる。

 

そう、亜空孔(ワームホール)から現れたのは、この場の全員が見知った人物であったからだ。

 

「小日向!」

 

「未来!」

 

三人と切歌、調は現れた未来の姿に驚愕を隠せない。何故この場に?人質としてか?三人の思考はアシモフが何をしようとしているか分からなかった。切歌も調もなぜ非戦闘員である未来をこの場に呼び寄せたのか分からなかった。だが、それでも嫌な予感しかしなかった。

 

そしてその予感は的中する。

 

未来が聖詠を歌ったからだ。

 

「Rei shen shou jing rei zizzl」

 

それと共に、シンフォギアを纏った未来の姿が。

 

「さあ、次なる絶望だ。機動二課。二回戦(セカンドゲーム)を始めよう」

 

そして局面は再び絶望へと傾き始めた。

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