二課の本部でもアシモフと現れた未来の姿を見て驚愕し、更には適合者でも無い未来がシンフォギアを纏う姿に。
響は未来が無事な事に一安心なのだが、それ以上の出来事に口を手で覆っていた。
「何で…何で未来が…」
救いたかった筈の未来が何故あの場所に?戦えない筈なのに何故そこに?
響の頭の中では常にその疑問が浮かんでは繰り返された。
「どう言う事だ!?未来君は適合者では無い筈!?なのに何故シンフォギアを!?」
響同様にシンフォギアを纏った未来を見て弦十郎がオペレーター達に問う。
「小日向さんの聖遺物への適合率は二課協力時に既に結果は出ています!」
「聖遺物への適合率は低い事は既に裏付けは取れています!なのに何で未来ちゃんが!?」
朔也とあおいが未来の聖遺物への適合率はないと告げ、今怒っている事があり得ないと言う。
「…LiNKER…アシモフにはウェル博士がいます…適合率を引き上げる事の出来るLiNKERの製造。そして我々よりも優れたLiNKERを作り出す可能性があるかも知れません」
そんな中、慎次が弦十郎へと言った。
LiNKER。
適合者でなければ聖遺物を、シンフォギアを起動させる事は出来ない。
その例外を除いて。
奏の様に適合率が低くとも底上げをする事でシンフォギアを纏う事を可能にする薬物。
だがそれはかなりのリスクを伴う。
奏も適合に至らなかった時の様に、身体がLiNKERを拒絶して血反吐を吐く。適合しなかった場合、良くて廃人、悪くて死亡する結果を齎す薬物。
「LiNKERを未来君に投与させただと!」
慎次が言う可能性に弦十郎は怒りを隠しきれない。下手をすれば命を可能性だってあった。
「アシモフ!貴様は何処まで人を弄ぶ!貴様は何処まで下劣な真似を重ねれば気が済むんだ!」
弦十郎は怒りのまま叫んだ。
「酷い…何で…何で未来がこんな事に…」
余りの悲惨な現状に響は嘆く事しか出来なかった。
モニターに映るアシモフと未来。アシモフが未来に指示を出すと未来は三人へと向けて攻撃を開始しようとした。
「未来!みんなは敵じゃない!仲間だよ!奏さんも!翼さんも!クリスちゃんも!」
だが、響の願いは届かず、未来は三人へと向けて宙を駆け、攻撃を開始した。
「何で…何でこんな事に…」
その光景を眺める事しか出来ない響は涙を流し、大切な親友と大切な仲間達との戦いが始まった。
◇◇◇◇◇◇
「小日向!何故私達を攻撃する!?何故貴方がアシモフの言う事を聞く!」
迫り来る未来が背後の鏡の様なビットからレーザーを放ち、それを三人へと向けて攻撃を開始した。
「おい!私達は敵じゃねえだろ!仲間だろ!こんな事は止めろ!」
クリスはレーザーを躱しながら未来へと叫ぶ。
だが未来にその声は届く事はなかった。
「無駄だ。その者にもう貴様達の声が届く事は無い。その者はもう意思を持たぬ傀儡だ。私の意のままに動く駒だ」
「アシモフ!テメェ!未来に何をしやがった!」
奏がアシモフの言葉を聞き、怒りのあまり叫ぶ。
「死にゆく貴様に答えなど必要ないだろう?」
そう口にするアシモフが動き出す。未来の攻撃の合間を縫う様に駆けて、翼、クリスを無視して奏へと接近する。
「アシモフ!テメェは絶対に許さない!」
奏は未来の攻撃を回避しながら接近するアシモフに向けて槍を振るう。
だが、アシモフは槍に意を返さずに紙一重で回避するといつの間にか握られた銃を奏の脳天へと向けて至近距離から発砲する。
奏はそれを間一髪で躱すものの接近したアシモフが空いた手で奏の鳩尾に向けて拳を叩き込む。
「ガァ!?」
シンフォギアを纏っていても身体が浮きそうになる強力な一撃。鳩尾から肺の中の空気を一気に押し出し、意識を刈り取ろうとする。
だが、それでも奏は何とか堪え、アシモフに向けて槍を振るう。だが、今度は
「貴様には
そう言ってアシモフは奏に向けて蹴りを繰り出す。
奏は何とかそれに反応して、槍を盾にするが受け止める事が出来ず吹き飛ばされる。
そしてそのちゃんを見逃さないとばかりに未来が奏へと向けてレーザーを放つ。
「ッ!?」
奏は何とか避けようと考えるが、吹き飛ばされた事により体勢が立て直せない。
そんな奏へと無情にもレーザーが当たろうとする。
だが、その前にクリスが射線へと現れ、幾つもの六角形の結晶を生み出すと、奏へと放たれたレーザーを受け止めた。
「クリス!」
だが、受け止めたところまで良かったのだが、そのレーザーはまるでクリスの生み出した結晶をどんどんと分解していく。
「ッ!?何だよこれ!」
受け止めたクリスもその事態に戸惑いを隠せない。だがその時間で奏は体勢を立て直すことは出来た。
すぐ様体勢を立て直した奏はレーザーを受け止めるクリスを引っ張り、レーザーの射線からクリスを退かせる。
「悪い、助かった!」
「こっちも助かった!」
だが、そう言っているうちに今度はいつの間にやら大量に現れたノイズが奏とクリスへと襲い掛かる。
だが、取り囲むノイズも降り注ぐ無数の剣によって炭化させられた。
「気を抜くな!二人共!」
そう言って二人の近くに着地する翼。
「分かってる!」
奏もクリス己が武器を構え、アシモフ、未来へと駆け出す。
奏と翼がアシモフに。クリスが未来に。
「アシモフ!決着を貴方だけは必ず殺す!」
「お前だけは生かして置けない!帰る場所を守る為にも!ガンヴォルトが帰ってくる場所を無くさない為にも!」
「死した紛い者をまだ思うか。奴に居場所など有りはしない。クローンである奴に…作られた紛い者に居場所など初めから存在しない!」
アシモフが身体に雷撃を纏い、奏の攻撃を
その傍、クリスも銃を構え、未来へと接近する。
「目を覚ませよ!おい!私達が戦う必要はないだろう!お前がアシモフの言う事に従うのは違うだろ!」
クリスは未来の背後に浮遊する鏡の様な物から発射されるレーザーを躱しながら、未来へ向けて叫ぶ。
こんなの間違っている。何故未来と戦わなければならないのか?何故アシモフの言う事を聞くのか?
「…」
しかし、未来はクリスの言葉に何の反応を見せない。まるでクリスの声が届いてない様に。
「こんな事をしたらあいつが悲しむだろうが!あいつが!私が!みんなが悲しいんだよ!何でこんな事をしなきゃならないんだよ!」
レーザーを振り切り、接近した未来にクリスは叫ぶ。だが何度叫ぼうが未来に声が届く事は無かった。
接近したクリスは銃撃を未来に向けて放とうとするが、クリスにとっての初めての友達。掛け替えの無い者の一人の為に、引き金があまりにも重い。
取り戻す為。だが、この一撃で未来を深く傷つけてしまうかも知れないという思いが引き金を重くしている。
だが、未来は違った。何の迷いもなく接近したクリスに自身の持つ扇の様な物を振るい、クリスを吹き飛ばした。
「ガァ!」
吹き飛ばされたクリスはそのまま何とか体勢を立て直すが、クリスに向けて未来がレーザーを放つ。
「ちっ!」
クリスは結晶の様なビットを出現させようとしたが、先程奏を助ける際にビットが分解されたのを見た為に染める側面に転がりながらもレーザーを躱す。
どうすれば良い?未来に攻撃をしようとすれば自身の感情が、思いが邪魔をする。クリスの言葉も届かない。クリスにはどうすれば良いのか分からない。救いたい。そうしたいが傷付ければならない。
切歌や調とは、マリア達とは違う。分からせる為に傷付け合うのでは無いからだ。
迷いが生まれたクリスはレーザーを躱しながらもどうすれば良いのか迷い続ける。
◇◇◇◇◇◇
未来の出現により、切歌と調は動けないでいた。
どうして助けたはずの未来が利用されている?何故味方同士であったはずなのに戦っているのか分からなかった。
「何で…何でこんな事に…」
調はその光景を見てそう呟く事しか出来なかった。
「どうして…どうしてこんな事を平然とやれるんデスか…」
切歌も絶望していた。こんな事の為に助けたわけじゃなかったのに。
アシモフとウェルは敵を追い込む事に何処までも非情な行動を取る。だからと言ってここまでするのか?何故ここまでやれるのか?
マリアを何処まで苦しめれば済むのかと絶望を越えて怒りが沸き立つ。
だが、自分達は怒りをアシモフに吐き出そうとすれば自分達が殺される。そうしてマリアをもっと悲しませる事になる。
だからこそ動けないでいた。
どうすればいい?アシモフと協力してこのまま動けばいいのか?アシモフの言う通りに動けばいいのか?
どうすればいい?
「何をしている。死にたく無いのだろう?誰も悲しませたく無いのだろう?Dr.ナスターシャを殺されたく無いのだろう?」
動けないでいる二人に向けて奏と翼。一人でも相手に出来なかった二人の攻撃を躱し、反撃しながらもアシモフがそう言った。
「貴様達に下した命令は何だ?ただそこにずっと立っている事か?ただ傍観している事か?違う。私が下したのは、
「ッ!?」
二人はそう言われて動かなければならない。動かなければ殺される。そう察して武器を構えた。
「二人共!言う事を聞くな!アシモフの言う事を聞いても絶対に望み通りにならない!アシモフの目的はこの世界の破滅だ!この世界の人達を殺戮する事だ!言う事を聞いても意味が無い!誰も幸せにならない!」
「そうだ!アシモフを殺さなければ結局は二人だけじゃ無い!お前達の慕うマリアすら殺そうとする!」
アシモフの言葉に奏と翼が、反撃しながらもそう答えた。
「ッ!?」
二人の言葉に切歌と調は動けなくなる。結局生かされて、利用されるだけ利用され、アシモフに殺される。自分達だけじゃ無い。マリアも。ナスターシャも。
「世迷言だな。私はこの世界の終末から限りある命を救おうとしているだけだ」
「何が世迷言だ!テメェは初めからこの世界の誰一人生かそうとしていないくせによくそんな出まかせが言える!」
「巫山戯るな!思ってもいない事を口にするな!」
アシモフの言葉に、奏と翼が反論した。
「好きに吠えろ。それでも、奴等には残されているのはたった二つだけだ。
そう。切歌と調には生に縋らなければならない理由がある。ナスターシャを救う為。マリアを悲しませない為。そしてセレナ。アシモフが握るマリアの大切な妹を守る為。
どうするべきなのか?信じるべきなのか?アシモフの言葉を?奏と翼、敵の二人の言葉を?
だが、二人は答えを見出せない。
「何を迷う必要がある。救いたいのだろう?生きたいのだろう?ならばやる気を出させてやる。貴様達が動かないのであれば、三秒後どちらかの命、もしくはDr.ナスターシャの命を奪う。救いたいのだろう?守りたいのだろう?ならば動け。そうするしか貴様達が助かり、大切な者を救う方法などありはしないのだからな」
そう。アシモフに命を握られている以上、従う他なかった。
だが、それを良しとしなかったのが、奏と翼であった。
「そんなつもりもないくせによく出まかせが言える!自分の為にどれだけの人を傷つければ済むんだ!」
「貴様の様な外道がよくも抜け抜けと!」
奏と翼がそう叫ぶ。
「テメェの様な奴がいるから!その二人みたいに苦しむ!悲しむ!」
「貴様の様な外道がいるから!従うしかないと怒りがを!憎しみを抑えるしかなくなる!」
そしてアシモフの腕に巻かれたネフィリムの心臓、いや、正しくはネフィリムの心臓に巻かれたシアンを封印するギアペンダントが光り始める。
その光に呼応する様に、奏、翼、そして未来と戦うクリスのギアと呼応する。
まるで二人の言葉に呼応するかの様に。
「お前だけは殺さなきゃならない!」
その言葉に呼応する様に奏、翼、クリスのシンフォギアに、蒼い雷撃が迸った。
その姿を見たアシモフは舌打ちした。
「貴様は何処までも私の邪魔をするつもりなのだな…
切歌と調の事などもうどうでもいいとばかりに、二人を無視して武器を構えたアシモフは