戦姫絶唱シンフォギアAB   作:株式会社の平社員

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アシモフに衝突する奏と翼。

 

その傍ら、未来とクリスの戦闘も激化する。

 

アシモフとは違い、電磁結界(カゲロウ)は持たないが、クリスの防御術を破る謎の力のあるレーザーの攻撃。

 

もう考えてられない。こんな状況でもし未来が戻った時に深く心に傷を付けてしまうのなら、ちょっとばかり痛い目に遭ってでも取り戻す。

 

しかも再びの使える様になったシアンの力、電子の謡精(サイバーディーヴァ)。力の一部だろうが、もしかすればこの力が未来を助ける力になるかも知れない。

 

だからこそ、迷いは捨てる。助けたい仲間だから。クリスにとっての初めての友達だから。

 

いなければならない人だから。

 

「絶対にお前を元に戻してやる…絶対だ!少しばかり痛いかもしれないけど、許せよ!」

 

そう叫び、クリスは未来の背後に浮遊する鏡を撃ち落とす為にガトリングを取り出すと、一斉に弾丸を放った。

 

放たれた弾丸が未来に襲い掛かる。未来はそれを空中を滑る様に移動して回避するが、クリスも逃げる未来を追撃する様に砲口を移動させる。

 

だが、未来もいつまでも避け続ける訳も無く、手に持つ扇子の様な物を広げると弾丸を扇子の様な物で防ぎながら、後方の鏡の様なビットからレーザーを放ちながら、反撃に出る。

 

クリスはガトリングを掃射しながらもレーザーを躱し、接近する未来から距離をとりながら攻撃を続ける。

 

しかし、未来は扇子の様な物を防ぎながらクリスの動きに合わせ、最短距離で移動してくる為に徐々に距離を詰められる。

 

距離を詰められ、レーザーを全て躱しきれなくなった為に、何発かクリスへと掠る。

 

削られた様にシンフォギアが消える。その瞬間、まるで病院で味わった様なシンフォギアの出力の低下を感じさせられる。

 

だが、その低下は一瞬で無くなる。掠ったシンフォギアは瞬く間に元に戻る。

 

電子の謡精(サイバーディーヴァ)の力により、微かな出力の低下であれば、瞬く間に修復した。

 

だが、油断は禁物だ。シアンの力がどのくらい持つのか分からない。いつ電子の謡精(サイバーディーヴァ)の力が失われるか分からない。

 

だからこそ、短期決戦で済ませる必要がある。未来を助け、アシモフを殺す為にも。奏と翼の援護に回る為にも。

 

そして今動きの無い、切歌と調。この二人が動いていない今がチャンスなのだ。

 

そして完全の未来はクリスを自身の射程圏内に入った瞬間、自身が傷付くのを躊躇わず、弾丸を物ともせず、クリスへと扇子の様な物を振るう。

 

クリスはガトリングを収納し、ハンドガンサイズの銃へと切り替え、その攻撃を後方に飛んで躱し、未来の背後に浮遊する鏡へと向けて銃を乱射する。

 

数枚の鏡が直撃し、爆発した。だが、そんな事などお構いなしに未来は後方に下がるクリスへと距離を詰める。

 

だが、そんな事クリスも想定済み。

 

クリスは腰のギアから小型のミサイルを未来に向けて放ち、未来の追撃を阻止し、爆煙に包まれた。

 

直撃はしていなかった。当たる直前に背後の残りの鏡を盾にしたのが見えた。

 

直撃じゃ無くて良い。未来は煙により視界が奪われている。

 

クリスは即座に背後から巨大なミサイルを出現させて、未来を包む爆煙へと向けてミサイルを撃ち放った。

 

「痛いだろうが我慢しろよ!」

 

その言葉と共にミサイルは未来のいる爆煙に向かい、爆煙を吹き飛ばす威力の爆発。

 

至近距離であったクリスにも衝撃波が身体を襲うが、それを堪える。

 

そして爆煙が晴れた場所では、背後の鏡を失い、倒れる未来の姿。

 

気を失ったのだろうか、ピクリとも動かない。

 

そんな未来に向けて急いでクリスは近付いた。

 

あれだけの攻撃をしたんだ。いくらシンフォギアを纏っていようと、相当なダメージを負った。

 

その為に倒す為にもやり過ぎたと感じたクリスは未来の無事をすぐに確認する為に近付いた。

 

だが、それは間違いであった。

 

倒れた未来の側に近づいた瞬間、未来の身体がまるで鏡の様に割れ、辺りに破片を残すのみで姿を消したのだ。

 

「ッ!?」

 

急な出来事にクリスは硬直してしまう。ほんの少し晒した無防備な状況。

 

その瞬間にクリスの横腹にとてつもない衝撃が襲い掛かる。

 

鈍器に殴られたような鈍い痛みが、横腹に駆け巡ると共に、その衝撃を受け流す事が出来ず、そのまま吹き飛ばされた。

 

「ガァ!?」

 

そして甲板を転がる様に吹き飛ばされたクリス。

 

そして先程までクリスが立っていた場所にバチバチと雷の様な物が出現すると共に、まるでかつてのアシモフが姿を消していたものと同様に、未来の姿が現れた。

 

◇◇◇◇◇◇

 

「なぜあの子にあんな事が!?」

 

未来の出撃にマリアも怒りを隠せなかったが、それよりもマリアは戦闘を行った事のない筈の未来の姿に動揺を隠せなかった。

 

「別に有り得ない事ではありませんよ。神獣鏡(シェンショウジン)は鏡の聖遺物。鏡に虚像を写し、それを形取る事も出来るのですから。」

 

ウェルが動揺するマリアにそう言った。

 

「そんな事じゃない!何で…何であの子がこんな力を持っているの!?あの子は普通の子の筈よ!なのに何で!?」

 

的外れの回答をしたウェルに違うとマリアは言う。

 

マリアが言うのは未来の戦闘の事。シンフォギアを纏う事もそうだ。そして何故これ程の力を未来が持っているのかとウェルに言った。

 

「ああ。そっちでしたか。勿論、あの子自身の力じゃありません。あの子は戦闘はからっきしでしょうし、だからあの子にアッシュの戦闘方法を聖遺物を通し、インプットさせました。だからアッシュの様にあのような芸当が出来て当然なんです」

 

未来が戦闘を可能にしているのはアシモフの戦闘データ。この中で最強と言える力を持つ男の戦闘データとあらば、納得がいく。だが、聖遺物。神獣鏡(シェンショウジン)は違う。聖遺物は適合率の低い者に何の反応を示さない。それなのに何故シンフォギアを纏う事が出来ているのか?

 

「あの子には聖遺物を扱える程の適合率はありません。しかし、貴方なら分かるでしょう?適合率が低かろうとそれを底上げ出来る物がある事くらい」

 

「まさか!あの子にLiNKERを!?」

 

「そうです。それもとびっきりの物をね。所詮は使い捨てのコマに過ぎませんから、壊しても何の問題もありません。だから、あの子達に一度打ち込んだ粗悪品のLiNKERを投与してあげました。適合率が低くとも、一度だけ聖遺物に適合し得る事を可能にする物にね」

 

なんて物を作り上げてくれたんだとマリアはウェルを睨む。だが、マリアにはウェルに襲い掛かる事は出来ない。アシモフだけで無く、ウェルにも切歌と調の命が掛かっているからだ。

 

「まあ、一度だけですよ。こんな事が可能になるのは」

 

ウェルがそう言った。どう言う事だ?とマリアは思ったが、口に出さず、ウェルが次の言葉を発するまでただ待つしか出来なかった。

 

「言ったでしょう?使い捨てだと。あんな物投与すれば一時は聖遺物を適合したとしても、その絶大な力と引き換えに、投与したものは死亡する可能性がある。それ程強力なのですよ。よくて廃人ですかね。LiNKERにより内部を、そして精神を」

 

「この外道が!」

 

ウェルの言葉にマリアは激昂する。

 

そんな物を未来に使ったのか。そんな物を戦いには程遠かった人に投与したのか。人間のやる事ではない。悪魔の所業。アシモフもウェルも悪魔と言う言葉でしか言い表せなかった。

 

「外道だろうが、英雄になれば何の関係もないんですよ。この国にはこんな諺があります。勝てば官軍、負ければ賊軍。勝てば何をしても良い。英雄になれるのであればその過程の犠牲は仕方のない事なんですよ」

 

同じ人間と思えないウェルの発言に対してマリアは睨み返す事しか出来ない。

 

しかし、それを招いたのはマリア自身である事に変わりない。間違った事はしていない。助けたいから助けた。

 

だが、その結果。アシモフに利用された。

 

やる事為す事が全て悪手となっている。

 

誰か助けて欲しい。この悪魔達の手から。ナスターシャを救い出し、切歌を、調を、そしてセレナを。自分は良い。自分以外をこの悪魔達の手から救い出して欲しいと願う他なかった。

 

◇◇◇◇◇◇

 

「クリス!」

 

「雪音!」

 

奏と翼はアシモフとの戦闘中、クリスが吹き飛ばされたのを見て動きを止めた。

 

だが、その瞬間、奏は雷撃を纏う拳に殴り飛ばされた。

 

「ッ!?奏!」

 

「余裕も無いのに余所見とは呆れたものだ」

 

アシモフの言葉が耳に届くと同時に、翼に向けて銃弾が放たれた。剣で何とか防ぐものの、その隙に接近していたアシモフに奏と同じ場所まで蹴り飛ばされた。

 

なんとか体勢を立て直し、再び武器を構えるが、劣勢のまま。クリスも同様に立ち上がって未来と対峙しているが、肩で大きく息をしている。

 

奏も翼も、アシモフの電磁結界(カゲロウ)を無効化出来る様になったからとは言え、アシモフにまともな一撃を与えられていない。

 

戦況は依然としてアシモフ達の有利な状況。そして更には彼方にはまだ動いていないが、切歌と調がいる。

 

もしアシモフの言葉に耳を貸し、アシモフに耳を貸そうものなら勝機が更に掴めなくなる。

 

だが、それでも。奏も。翼も。クリスも武器を構える。勝機が蜘蛛の糸の様な細い物なのかも知れない。どんなに細かろうと掴まねばならない。掴み取らなければならない。守るべき人達がいる。救わなければならない世界がある。そして、守り続けなければならない場所がある。ガンヴォルトの為にも。ガンヴォルトが入れる場所を残す為にも。

 

戦わなければならない。勝たなければならない。

 

だからこそ、諦めるわけにはいかないのだ。

 

「絶望の中、勝ち目のない戦いをまだ続けようとするのか?」

 

アシモフが何処までも折れない奏、翼、クリスを見てそう言った。

 

「勝ち目がないなんて誰が決めた…誰がお前に敵わないと決めた!」

 

奏が叫ぶ。

 

「敵わないなんて貴様に決める権利なんて無い!貴様がどれだけ私達よりも強かろうと!どれだけ卑劣な手を使おうと必ず殺す!私達の手で!」

 

翼も叫んだ。

 

劣勢など関係ない。それを越えなければならない。隔絶した実力があろうとそれを壊さねばならない。

 

どんなに劣勢だろうと。敵わないと決めつけられようと関係ない。

 

「己の底に気付かず吠えるなどナンセンスだ。敵わないと知りながらも戦う。敵わない癖に口だけは一丁前に出来ない事を口にする。本当に呆れる。貴様達が敵わないのは必然だ。決めつけるのでは無く当然のことなのだよ。貴様達とは場数が違う。越えた死線が違う。何もかも違うのだ」

 

アシモフは奏と翼を冷たい視線で見ながらもそう言った。

 

場数が違う。越えた死線が違う。そんな事関係ない。戦いに自身の自慢を持ち込んで何が言いたい。そんな事で絶望すると思うのか?戦意が喪失すると思っているのか?

 

「お前が決めつけるなって言ってんだよ!」

 

「貴様に何を言われようと関係ない!」

 

そう叫び、アシモフに再び駆け出す。

 

「何度でも言ってやるさ。貴様達が勝てる見込みなどありはしない。決めつけなどで無く必然だと。突き付けてやろう。貴様達が私に敵わないと言う摂理を。貴様達如きが私に敵うと錯覚するその意思を。実力を持って知らしめよう」

 

その言葉と共にアシモフは更に自身の雷撃を強化して身に纏う。

 

「風鳴翼、雪音クリス。貴様達は必要だから生かす。だが、天羽奏。貴様には凄惨な死をくれてやろう」

 

その言葉とともにアシモフの身体が一瞬で奏の前に移動していた。

 

「ッ!?」

 

「安心しろ。既に紛い者がいる。それに貴様だけで無く、その他大勢も貴様の後を追う事となる」

 

そう言ってアシモフの拳が奏へと振われる。

 

「奏!」

 

翼は奏へと駆け寄ろうとしたが、間に合わず、奏も何とかしてアシモフの拳を躱そうとしたが動けず、奏への鳩尾に拳が叩き込まれた。

 

「ガァ!」

 

更にアシモフは奏へ拳を叩き込むと同時に拳から雷撃を放ち、奏を吹き飛ばした。

 

甲板を一直線に吹き飛ばされ、壁に激突した。だが、アシモフは止まらない。ネフィリムの心臓を起動させる、穴を奏と自身の近くに開け、その穴から奏を引き寄せた。

 

「生きているのであれば、確実に殺す」

 

アシモフは奏にトドメを刺そうと動けずに持ち上げられた奏の脳天に銃口を突きつけた。

 

翼は阻止しようとアシモフに向けて小剣を取り出し、投擲する。

 

しかし、アシモフはそれを奏を盾にして受けた。

 

「ガァ!」

 

小剣が奏の腕へと突き刺さり、奏は痛みで声を上げる。

 

「奏!」

 

「考えも無しに助けようとするからこうなる。助ける為の行動が裏目に出る」

 

アシモフは翼を見ながらそう言った。翼自身も自分の行動で奏を傷つけてしまった事に動きを止めてしまう。

 

更に、

 

「どうやら彼方も終わった様だな」

 

アシモフは満足そうにそう言う。アシモフの視線の先、そこには地面に倒れ、シンフォギアを纏っているがほとんどがボロボロにされたクリスの姿が。

 

そしてその奥には未だ健在する未来の姿が。

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