切歌は調の行動を見て動揺する。
何故今になってアシモフを裏切るのか?何故死にゆく真似をしようとするのか?だが、調の行動は自身が隙を見てやろうとしていた行動。
アシモフの隙を伺い、どうにかして自分が犠牲になろうとも調とマリア、ナスターシャ。セレナを救う為に起こそうとしていた行動。
だが、今じゃ無い。今はタイミングが違う。
調の予期せぬ行動に切歌はどうして今なのだと奥歯を噛み締める。
何故調がその役を担う必要がある?その役は自分だ。自分は何れフィーネにより存在が消える。だからこそ自分が自分で居られる間に、アシモフからどうにかしてみんなを助けたかった。
だが、それも調の行動によって水の泡だ。このままじゃ自分だけじゃ無く、調も、マリアも、そしてナスターシャも殺される。
だが、そんなことはどうでもいい。水の泡だろうが、自分の思いが破綻しようが関係ない。調が動いてもやるべき事は変わらない。
いかにして調もマリアもナスターシャも殺されず、助ける事が重要だ。
だが、自分ではアシモフをどうにも出来ない。アシモフの
だからどう言う行動を取るべきか?調の様に切歌も賭けに出た。
信じて貰えない事など承知だ。だが、調だけでも救うべく、切歌も行動に出るのであった。
調の行動でアシモフが気を取られ、更には響の登場で戦況が僅かに傾く。
そして切歌はアシモフが其方に気を取られている隙に、未来へと接近し、クリスを捕獲しようとする未来を止めた。
「ッ…テメェは!?」
戦闘不能に追いやられ、打つ手なしの状況に突然として現れた切歌にクリスは戸惑った。
「…私の事はどうでもいいデス…助けなくてもいいデス…でも…調とマリア…それにマムを助けて下さい…」
倒れるクリスは突然の切歌の懇願に戸惑いを隠せなかった。
何故急にそんな事を言い始めたのか?何故急にアシモフを裏切ったのか?訳が分からない。
だが、それでもクリスにとってはそんな事は些細な事であった。かつてのガンヴォルトが自身に手を差し伸ばしてくれた様に。自分も救いを求められれば救わなければならないと思ったからだ。
クリスは軋む身体を無理矢理でも立たせる。そしてクリスの思いに呼応する様にシアンの力が、
「お前も遅いんだよ…間違っていると分かっている事に気付くのが…」
かつての自分がそうであった様に。
「ああ、助け出してやるよ…全員!」
思いを奮い立たせ、クリスは立ち上がり、今最も危険な人物であるアシモフに向けて銃を構えた。
◇◇◇◇◇◇
「立花!?助かりはしたが、どうしてシンフォギアを纏った!?」
響へと駆け寄る翼は現れた響にそう叫ぶ。翼の言う様に、響はシンフォギアを纏えばガングニールを侵食され、人ではいられなくなる。
「翼さん!今そんな事を言っていられる場合じゃありません!」
奏を翼に託した響がそう言った。確かに、響の言う通りだ。響が登場しなければ奏はあのままどうなったか分からない。いや、最悪殺されていた。
そしてもう一人の功労者であり、先程まで戦っていた筈の調の方を向く。
「何故今になってこちらを助けた?」
翼は調に対して言った。
「…私が間違っていた…許されないと分かっている…糾弾されても構わない。だけど、その精算のためなんかじゃなくて、自分がやっていた過ちを…その間違いを正したい…大切な者を取り戻す為に…こんな外道と手を組んだのが間違いだったと…こんな事が自分の掲げた正義じゃ無い事を…」
「…それを信じろと?」
翼は先程までに調と切歌達と戦ってきた故に、何処か疑う様にそう言った。
「翼さん!」
だが、そんな翼に響が言う。
「調ちゃんは奏さんを助けてくれたんですよ!?それに危険を顧みず、こんな事をしてくれたんですよ!」
響にそう言われ、翼は調に謝罪する。
「すまない…だが本当に信じていいのか?」
翼の言葉に調は頷いた。
「もうあの男…アシモフの思い通りには動かない…」
そう言う調に翼は調にもう敵対の意思がない事を察した。
だが、大きな問題があり、すぐさまアシモフに目を向ける。
調が裏切った事により、アシモフは調、更には切歌を殺そうとする。二人の首にはクリスより知らされた爆弾が未だ健在している。
そして見た先のアシモフは雷撃を纏い、怒りをあらわにしながら、立ち上がる姿。
「こんな奴等を生かしておくのが間違いであった…既に見切りをつけておくべきだった…ああ、何故私は何度も選択を間違える…こんな事なら初めから生かしておくべきでなかった…駒などと考える事ではなかった…」
雷撃がアシモフの感情を表す様にどんどんと強くなっていく。
ぶつぶつと呟くアシモフはアシモフはリモコンの様な物を取り出す。翼も響もその瞬間、動き始めていた。
あれが何なのかは既に予想出来る。それは調と切歌の首に付けられた爆弾の起爆装置。だからこそ走った。
調を、切歌を殺されまいと。
翼と響は何とか駆け出すが、アシモフとの距離が遠すぎる。間に合わない。
その瞬間、駆け出す翼と響の間を二人よりも早く何かが通り過ぎ、アシモフの持つスイッチを弾き飛ばし、破壊した。
「ッ!?」
一瞬、何が起こったかは分からなかった。だが、通り過ぎた何かに翼と響はある人物の無事を知る事になった。
クリスだ。
クリスが遠距離からアシモフを追撃したのだ。
だが、未来により戦闘不能に追い込まれ、危険の筈だ。どうやって?
アシモフを警戒しつつ、クリスの方もを向くと、未来を抑えつつ、切歌がクリスの代わりに未来と戦っていた。
「切歌ちゃん!?」
「切ちゃん!?」
響は切歌の行動に嬉しさを感じ、調も切歌が調同様に動くのを見て驚いていた。
風向きが変わるのを感じた。戦況を変えるかもしれない風が。
かと思われた。
「調子に乗るなよ!無能力者風情が!」
アシモフが怒りを露わにし、先程までよりも更にドス黒く、身体を震え上がらせる様な殺気を放った。
「本当に邪魔ばかりしてくれる!無能力者は生かす価値などありはしない!」
ヒリヒリと肌で感じる殺気に先程までの勢いが殺されていく。
そして先程まで切歌が抑えていた筈の未来がアシモフの殺気に反応し、切歌を押し離すと、アシモフが
「未来!」
そして並び立つアシモフと未来。響は未来に向けて叫んだ。
何でそちら側にいるのだと。アシモフに協力するのかと。
だが未来は何も答えない。言葉を発しない。
「未来!私達は敵じゃない!仲間だよ!その人は仲間じゃ無い!世界を破滅へと導く悪者だよ!」
響は再度未来に呼びかけるがやはり何も答えなかっ
た。
「未来!」
「お前の声もあいつに届かないのかよ…」
「どうすれば未来を元に戻せる…」
響が未来に声を掛け続ける中、クリスが奏を支えながら、響と翼に並び立つ。
「お前らは何か知らないのかよ…元に戻す方法を」
そしてクリスは少し離れたところにいる切歌と調に問いかける。これ以上アシモフと宣言した二人にもそれを聞く。
「こっちだってそれを知ってたら直ぐにでもあの人を戦闘から遠ざけたいデス」
「助けられるなら助けたい…」
だが、二人にも対処の方法が分からない様である。
「無駄だ。これにはもう貴様の声すら届きはしない。何度言葉を投げかけようと見向きもしない」
呼びかける未来に変わってアシモフがそう答えた。
「いくら声を掛けたところで貴様達の声は届かない。届きはしない。そう言う暗示だ。そう言う様に施した」
「未来になんて事を!」
響は未来に施された事を怒り、アシモフに叫ぶ。
だが、奏だけ、暗示と聞き、僅かながらに未来を取り戻せるかも知れないと考えた。それはかつての奏自身の事もあるからだ。
かつてフィーネにより操られた奏。それを脱する方法をかつて体験したからこそ、奏は未来を取り戻せる可能性があると感じた。
シアンがここにいる。そしてシアンが力を貸してくれている。もしかしたら未来を助ける事が出来るのかも知れない。
あくまで可能性という形であり、確証は経ていない。だが方法が他にあるわけでもない。
「響…なんとかなる方法はある…シアンがここに居る…響がいる…それならなんとかなるかも知れない…」
「本当ですか!?奏さん!?」
「確証はない…でも…シアンがいて…響の思いが…本当に助けたいという思いが、シアンが未来を助ける力を与えてくれるかも知れない…」
奏はそう言った。
「アシモフは私達がどうにかする…」
「奏!身体は大丈夫なのか!?」
翼がその言葉を聞き、奏へと聞いた。奏は先程の交戦でアシモフにボロボロにされている。だからこそ、再びアシモフとの戦闘が出来るとは思わなかったからだ。
「大丈夫だよ、翼。今はシアンがくれた力である程度回復した…それよりも時間がないんだろ…私達はともかく、響がシンフォギアを纏っているなら早いところ未来を救い出して、アシモフをどうにかしなきゃならない」
クリスから離れ、槍を構える奏。
「…分かった。立花。小日向を頼むぞ。雪音も行けるか?」
「私はもう大丈夫だ。それよりもこいつ同様に、アシモフをどうにかしなきゃ行けない奴らも残ってる。さっさとやるぞ」
そう言ってクリスは少し離れたところにいる切歌と調を見た。
アシモフと決別した二人。だが、その首には未だ爆弾が付いている。アシモフをどうにかしなければこの二人も救えない。
「二人は行けるか?」
翼の言葉に切歌と調は頷く。
「お前達も立花をサポートしながら小日向を頼む。
「私達がなんとかアシモフを足止めして見る。だから、二人共、響を頼む」
奏の言葉に全員がそれぞれの武器を構えた。
「何をしようと無駄だ。貴様達は死から逃れられん」
そう言ってアシモフはネフィリムの心臓を今まで以上の出力を放出させ、
「Dr.ウェル。貴様がF.I.S.を始末しろ。私は立花響、そして天羽奏をこの手で殺す!」
アシモフがそう叫ぶと共に、アシモフは大量に出現させた穴へと、未来もそれに続く様に別の穴へと入り込むと、響達に襲いかかった。
◇◇◇◇◇◇
切歌と調がアシモフを裏切る行動を見ていたマリアは何故こんな事になっているのかと狼狽えていた。
切歌と調は何故今裏切ったのか?未だ危険が付いている。首の爆弾。アシモフにより取り付けられた枷。
「死に急ぎたい様ですね。あの子達は」
ウェルは二人を見てそう言った。
確かにウェルの言う通りだ。だが、切歌と調も考えも無しにこの様な行動を起こしたとは考えられない。
二人の行動はマリアにも読めなかった。
アシモフの手から逃れたいと言う思いはマリアも理解出来ている。しかし、それはこのタイミングなのか?と思う。
もうこれ以上、アシモフは二人を生かしては置かないだろう。
マリアの想像通り、アシモフと敵対する二人も殺害対象に入れられ、殺されかけるが、クリスの銃撃でなんとか起爆装置を破壊することに成功する。
それに加え、響の出撃。戦況が変わるかも知れない。助かるかも知れないと希望を抱き始める。
だが、それを見事に跳ね除ける程の殺気が離れているマリアにも感じられた。
やられる。切歌と調が。大切な家族が。
そしてアシモフが殺害対象を絞り、ウェルに二人を殺す様命令を下した。
「任せてよアッシュ!必ず二人を殺すから!アッシュは思う存分暴れてくれよ!」
嬉々として喜ぶウェルがアシモフと同様に起爆装置を取り出した。
その瞬間、マリアはそうはさせないと操縦をオートパイロットにするとウェルへと飛びかかった。
「させない!」
「ッ!?」
起爆装置の取り合いでマリアとウェルは機内で争う。奪わせない。もうこれ以上、誰も傷つけさせない。
マリアは機内でウェルに二人を殺されない様にウェルから起爆装置を奪う為、生身でウェルと戦うのであった。