甲板が無数に開けられた穴から放たれるレーザーにより削れていく中、無数のレーザーを掻い潜りながらも他の穴から奇襲を仕掛けるアシモフを追う奏、翼。
だが、アシモフは巧みに駆使して無数に開けられた穴を使い、確実にこちらを仕留めに来ているが、クリスが加勢した事により、先程とは変わり、なんとか持ち堪えられている。
穴から穴へと入り、自身の位置を常に優位にある状況を作り続けるアシモフ。それをサポートする様に未来がレーザーを放ち続ける。
だが、それを阻む様に未来の攻撃を予見した響、切歌、調が、未来を追いかける。だが、未来は穴へと入り込んだり、クリスとの戦いで見せた様に姿を消す。
だが、姿を消した所でアシモフとは違い、未来の放つレーザーに僅かながら溜めが入る為、位置の特定は可能であった。クリスの時の様に、近距離での戦闘でない為に対応が出来ている。
しかし、それでも厄介である事には変わりない。
未来もアシモフがネフィリムの心臓を使い作り上げた穴を介して三人を翻弄し続ける。
切歌と調は未来の攻撃を躱しながらも接近するが、穴へと逃げ込まれ、距離を離される。だがアシモフが下した殺害命令。いつ死ぬかも分からない状況だが、何もせずに殺されるくらいなら一矢報いる為に、協力をしてアシモフを倒す。
今死なないのは、マリアがどうにかしているおかげだろう。マリアには悪い事をしてしまった。怒られるかも知れない。だが、死んで仕舞えば元も子もない。だからこそこアシモフという呪縛から抗う為に戦う。
だが未来を捉える事が出来ない。それもそのはず。この中でその理由を知るのはアシモフのみ。アシモフの戦闘に行動をインプットさせたからこそ、未来はアシモフと同じ様な行動、更にはそれに遜色のない動きが取れている。
だが、アシモフ以外それを知る余地もない。
アシモフと未来に翻弄されながらも必死に抗う。
だが戦況は依然として有利なのはアシモフと未来。
だが捉えきれない。無数にある穴は法則性があるわけではなかった。一度使えば穴を消し、新たな物を生み出し続ける。
「ちょこまか逃げやがって!」
奏が、アシモフに槍を振り下ろすが新たに生み出した穴に入り込んで、別の場所へ移動している。未来の放つレーザーを躱し辿り着いたとしても、直ぐに距離を取られる。
まるで嘲笑うかの様に。
今の状況で何とかなっているのはクリスのお陰だ。クリスが遠方からのサポートがあるお陰で何とか戦況が保たれている。
勿論、アシモフもクリスが鍵であると分かっている為、クリスを狙っているが、クリスはアシモフの奇襲を何とか躱し、翼がそのサポートをしながら何とか保たれている様な物。
だが、こちらとしては時間がない。
こうしている間にも響の纏うシンフォギアの大元である聖遺物、ガングニールが侵食を進めている。いつ人で無くなるか分からない状況。それに未だアシモフの命令を下したウェルが切歌と調を殺すか分からない状況。
その均衡が崩れた瞬間、敗北する。ガンヴォルトが守りたかった物を守れなければ勝った所で意味はない。
「どうした?殺すのではなかったのか?助けるのではなかったのか?」
そんな焦りを見透かす様にアシモフがニヤリと笑う。
「貴様達は誰も救えんさ。私に勝つことが不可能だからだ。何故分からん。貴様達が
ガンヴォルトの死を告げたアシモフ。何も救えないと言う様に。装者達が絶望する様に放つガンヴォルトを模した紛い者の死。
絶望を与える為に放った一言。知らぬだろう。どことも分からない海底で死んでいるガンヴォルトという存在を。
装者達が最も信頼し、頼っている存在の死を語り、終わりにしようとアシモフは装者達に告げた。
切歌と調は知っていた為に、もうその助けを期待出来ないと。
だが、奏は、翼は、クリスは、響はそのアシモフの言葉を物ともしない。
「既に見切りをつけていたのか…」
アシモフはその死を受け入れたからこそ、少し詰まらなそうにそう言った。
しかし、奏がそれを否定した。
「見切りなんてつけてないんだよ!勝手にガンヴォルトを殺した事にするんじゃねぇ!ガンヴォルトは死んでない!」
奏がそう叫んだ。
「いいや、死んださ。私がこの手で殺したさ。
アシモフはそう言って心を折ろうとした。だが、全く変わらない。何処までもガンヴォルトが生きていると言う妄想に縋り付く姿に笑いすら起きない。呆れてしまう。
「何処までその妄想を信じるのだか…奴は死んだ…もうこの世に残骸と奴が残した戦いの痕跡、そして貴様達に刻んだ記憶以外残っていない!」
そう言ってアシモフが穴を介してクリスの前へと移動する。
「黙れ!あいつは生きている!」
現れたアシモフに向けて銃を乱射するクリス。だが、アシモフはそれを爆炎で全てを掻き消す。
「哀れとしか言いようがないな!」
そしてアシモフは雷撃を纏った拳でクリスへと拳を振るった。
「哀れだろうと、妄想だろうと勝手に言っていろ!」
だが、アシモフの拳はクリスの前に出た翼が剣で拳を受け止めた。雷撃が剣を通して身体に痛みが走る。
だが、それでも翼は場を食いしばり、雷撃を耐える。
「ガンヴォルトは生きている!貴様が殺したと言おうが、ガンヴォルトは生きているんだ!」
「いいや!奴は死んだ!殺した!貴様達が妄想を幾ら語ろうが変わらない事実だ!」
「だから死んじゃいねえんだよ!」
翼が耐える中、翼の背後からクリスが銃でアシモフを攻撃する。アシモフは再び穴を出現させて、クリスの銃撃を奏へと向けさせる。だが、奏もそれを躱してアシモフの背後へと接近して槍を突き出す。
アシモフは
だが、奏は穂先を回転させて黒い粒子を吹き飛ばし、アシモフに槍を突き立てようとした。アシモフはそれよりも先に翼の前に
「死んだと言うのにそこまで固執するからこそ哀れとしか言いようがないのだよ。だが、安心しろ。天羽奏。貴様と立花響、風鳴翼も雪音クリスを除いた全員は奴に会えるだろう。奴が先に待つ、
アシモフが告げる死刑宣告。だが、装者達には絶望はない。
「固執などしていない…事実だからだ…ガンヴォルトは生きている。また私達の前に帰って来た。貴様が何度私達を絶望に追いやる為に殺した…死んだ…何度貴様がそう言おうと変わらない事実がある。ガンヴォルトは生きている!だからこそ、抗うんだ!守る為に!ガンヴォルトの帰る場所を!ガンヴォルトがいるべき場所を!お前の様な外道によって壊されない為に!」
翼が叫んだ言葉。ガンヴォルトが帰って来た。
何を言っている?奴は殺した。誰の助けも入れぬ海底へと沈めた。だから生きているはずがないのだ。
「何をいうと思えば奴が生きているだと?あり得ない!奴は死んだ!紛い者の正体を告げ!絶望を叩きつけ!奴は
「生きているんだよ!ガンヴォルトは!死の淵に立っていたかもしれない!絶望に追いやられてが帰って来たんだよ!」
「まやかしだ!幻影だ!貴様達が奴を思うばかりに見せた一種の自己催眠だ!死した者が現れる事はない!事実を受け入れるんだな!」
「何が殺しただ!現実を受け入れろだ!お前の方が受け入れろよ!ガンヴォルトは生きている!死んじゃいないんだよ!」
翼、奏、クリスがアシモフにガンヴォルトは死んでいないと語る。だが、アシモフはそれを認めない。何故ならこの手で殺したから。目の前で何者の手の及ばない場所まで追いやり殺したから。
だからこそガンヴォルトの生きている事を拒み続ける。
だが仮に、本当に生きているとすればとアシモフは考える。何故海底に沈めた筈の奴が生きている?心臓を穿った筈なのに生きている?
そこで思いつくのは自身の能力ではないが操る
ネフィリムに喰われ、ネフィリムの一部となったセレナ・カデンツァヴナ・イヴ。
自分の思惑通りに動かず、常に邪魔をする存在達。
この二人ならば可能だ。今の様に。こちらの意思とは別に動くこの者達なら。本当に生かしているのならば目の前の装者達が死を否定する事を、そして装者達の目の前に現れたと言う事が本当である可能性が浮上する。
だからこそ、怒りが込み上げる。
思い通りにならない事に。殺した筈なのに。も手も足も出ないのにここまで邪魔立てする二人の存在により、本当に生かしていると言う可能性があると言う事に。計画に必要であるからこそ、自分達がいなければ計画が全て台無しになるから壊されない。そのふざけた行動がまだ、アシモフの怒りを膨れさせ上げる。
「…貴様達が生かしたのか…奴を…紛い者を!」
そしてアシモフは自身の腕に巻きつけたネフィリムの心臓、そしてギアペンダントに叫ぶ。
「ならば分からせてやろう!貴様達がどれだけ抵抗しようが、変わらぬ結末があると言う事を!例え奴が貴様達によって生がされていようが!本物でないデザイナーチャイルドである奴が私に勝てない事を!どんなに足掻こうがクローン如きが私を殺す事など出来ない事を!貴様達が手助けしようが、私に遠く及ばない事を聖遺物の中で記憶に焼き付けるがいい!」
だが、そんな叫ぶアシモフに向けて翼と奏が駆け出し、クリスも狙いを定め、弾丸を撃ち込んでいく。
「シアンにそう言うのなら勝手に言っていろ!その記憶がシアンに焼き付かれる事はない!そんな現実などありはしない!」
「私達がお前を殺す!アシモフ!お前だけは!ガンヴォルトを何度も苦しめたお前だけは!」
「テメェだけは生かしちゃおけねぇんだよ!」
「強がるなよ!無能力者風情が!」
そしてアシモフは更に身体から雷撃を迸らせる。
「現実を突きつけてやろう!貴様達が束になったところで勝てぬ事を!貴様達がどれだけ抗おうと決して変わらない絶望を!」
そしてアシモフは奏を殺す為、翼とクリスを手に入れる為、怒りのまま叫ぶのであった。
◇◇◇◇◇◇
そのすぐ近くでは響、切歌、調が未来を救うべく戦っていた。
だが接近しても意味を為さない。
アシモフがそこら中に開けている穴により、未来は接近しようものならすぐに穴へと消え、こちらとの距離を一定に保ったままで、追撃を仕掛けてくる。
接近しても穴を介して遠くに逃げてしまう未来に切歌も調も対所に困っていた。
だが、響だけはそんな事を関係なく、何度も声をかけながら未来に接近する。
「未来!目を覚まして!」
しかし、先ほどと変わらず、未来には響の言葉は届かない。
そんな響に向けて以前として未来は攻撃を続ける。
避け続けるが、全部を避ける事は難しく、いくつか当たり、鈍痛が響の身体を駆け巡る。
痛い。辛い。
そんな事が頭に浮かぶが、こんな痛みで止まっているわけにも行かない。今一番辛いのは誰か?
未来だ。嫌な戦いを強制され、自我のないまま操り人形の様に戦闘をさせられている未来なんだ。
未来を助ける。今響はその思いを原動力にして何度も接近する。
だが、時間が掛かるたびに響の身体が思う様に動かなくなっていくのを感じる。胸が熱くなる。その度に息をしているのが辛くなるのを感じる。
ガングニールが徐々に響の身体を蝕み続けているのだろう。
だが、それがどうした。例え辛かろうと未来を助けなければ自分がここまで来た意味があるのか?使用してはならない筈のガングニールを自ら纏ったのにこんな所で止まって良いのか?
良くない。止まって良いはずがない。未来が操られ、こんな非道な事をされている。切歌と調が爆弾という枷をはめられたにも関わらず、敵だったのにも関わらず、協力してくれているのだ。全ての元凶を止める為にも、未来を助け出さなければ。誰一人失わなずに。
欠けてはならない物を守る為に、響は動き続け、声をかけ続けた。