戦姫絶唱シンフォギアAB   作:株式会社の平社員

175 / 246
83GVOLT

響が動き続ける中、切歌と調もどうにかして未来へと襲いかかるが、放たれるレーザーで逆に距離を取らされる。

 

避けても背後の穴にレーザーが吸い込まれ、再びこちらへと向かい放たれる。縦横無尽に駆け巡るレーザーが更に邪魔をして距離を一向に詰められない。

 

この穴さえ無ければ少しは戦いやすいのだが、アシモフを倒す、もしくはアシモフが持つネフィリムの心臓を奪わない限り、そんな事は不可能。

 

アシモフを止めようと三人の電子の謡精(サイバーディーヴァ)の支援を受けた装者達がアシモフと戦っているが、未だにアシモフに有効打を与えられていない。

 

「こんなのどうすればいいデス!」

 

「近付けない!」

 

切歌と調もレーザーを避けながら叫ぶ。

 

止めないと行けない。止めなければならない。こんな戦いを。誰かが傷付き続けるこんな戦いを。

 

そんな中、切歌と調が攻めあぐねる中、響だけは自分が傷付く事を厭わず、未来を助ける為に戦い続けていた。

 

「未来!もう辞めようよ!こんな事!もう辞めてよ!誰かを傷付ける様な事を!」

 

だが響の言葉を全く聞かない未来。聞かないのではなく、聞こえてない。アシモフに操られている未来は先程アシモフが語った暗示。それを解かない限り、どうする事も出来ない。

 

そして傷付く事を厭わず攻め続けた響は、ミクの元まで辿り着く事には成功したが、未来の攻撃により吹き飛ばされ、未来も穴を介して再び三人と距離を取る。

 

そして切歌と調の元まで吹き飛ばされた響。だが、立ち上がるよりも早く、穴を介して響に向けてレーザーが放たれる。

 

「ッ!?」

 

響はその攻撃を避けようとするが、先程まで喰らい続けたダメージで上手く行動出来ない。

 

だが、そんな響を攻撃から守る様に切歌と調が立ち上がろうとする響を引っ張り、レーザーを間一発で避けさせた。

 

「無茶し過ぎデス!」

 

「助けたいなら無謀な事をし続けないで!」

 

「ごめん…でも、ありがとう」

 

切歌と調が助けた響にそう叫ぶ。響も謝りながらも立ち上がる。だが、響は立ち上がろうとするも再びその場で膝をついてしまう。

 

ダメージを負い過ぎたのだろうと、切歌と調はそんな響を支え、再度放たれたレーザーを躱す。

 

だが、支えて二人は違和感に気付く。響の身体が異様に熱い。レーザーという異常なエネルギーを浴びてなのかも知れないが、だが身体全体から発せられている。

 

「まさか…あの人が言ってたシンフォギアを纏っちゃダメって言われてたのって…この事なの?」

 

響が翼に言われていた事。シンフォギアを纏うなと言っていた。それはこれの事なのか?だが、それは何故?

 

「…うん…私の身体は今ガングニールに侵食されている…私の身体はシンフォギアを纏い続ける限り、ガングニールで人ならざるものにどんどんと変わっていっている…」

 

「ッ!?」

 

響から告げられた衝撃の事実に切歌も調も驚いた。何故そこまで自身の存在が危ういのにも関わらず、こんな戦いに参加したのか?何故そこまでして戦うのか?

 

「なんでそんなになってまで…」

 

「誰も失いたくないからだよ…あの人に二人も大事な人を奪われた…あの人のせいで私を救ってくれた人も絶望に追い詰められた…あの人のせいで私の大切な人達が奪われていく…戦う力があるのに…戦う力を持っているのに…みんな傷付いてまで助け出そうとしているのに…何もしないなんて出来ないよ…」

 

「…その結果、自分はどうなっても構わないと言う考えデスか…」

 

切歌も調もそうだ。結局は自分が犠牲になってでも大切な人達を助けたい。だからこそ、助ける為に動いている。響と変わらないからこそ、何も言えなかった。

 

だが、切歌と調、響には決定的な違いがある。

 

「自分がどうなっても構わないなんて考えてないよ…だって、私が私で無くなってしまったら、悲しむ人が目の前にいる…私が私のまま無事に帰るのを待っている人達がいる…待っている人達がいるのに…悲しむ人がいるのに…そんなの嫌だから…」

 

響は二人に向けてそう言った。切歌と調、響の決定的な違い。それは自分を勘定に入れているかいないか。

 

例え、どんな危機だろうと犠牲と言うものを作らない意思。どんな危機だろうと全員が無事で終結させると言う。

 

そんなの理想に過ぎない。そんなの叶うはずの無い。

何故そんな理想を抱ける。何故そんな叶わないものを願い続ける。

 

「そんなの無理デス!不可能デス!今の現状を見て何でそこまで考えられるデスか!あの外道がいる限りそんなの不可能なんデス!」

 

「誰かが犠牲にならなきゃ何も為せない!どうする事も出来ない!貴方だってそうでしょ!もう身体が侵食されている!助かるか分からないのに何でそんなこと言えるの!」

 

切歌も調もそんな事は不可能だと。誰かが犠牲にならなければならない。だから二人は言った。

 

「そんな事ない!叶わないなんて初めから想定している方が駄目なんだよ!」

 

だが、響は二人の言葉を否定する。

 

「まだそんな事決まってない!誰がそんな事を決めるの!アシモフなの!?違う!そんなの間違っている!誰かが犠牲になるなんて決まってない!未来なんて誰も決められない!決まってる訳じゃない!分かるわけなんてないんだよ!だからこそ、自分で切り開くしか無い!どんな事があろうともみんなが無事でいられる未来を!誰もが望んだ明日を掴む為に!」

 

響は力強く叫んだ。何故そんな叶わない願いを口に出来る?現状を見て何故言える。

 

アシモフと言う巨悪がいる。奴に勝てるビジョンなど見えるはずが無いのに何故そう言える?

 

「だから私は抗うんだ!限りなく可能性が低くたって!どんなに小さくたって!抗わないと掴めないんだ!未来も!切歌ちゃんも!調ちゃんも!マリアさんも!奏さんも!翼さんも!クリスちゃんも!シアンちゃんも!そしてこの戦いで一番傷付いたガンヴォルトさんも!それに協力してくれた人達の為にも!みんなが無事でいられる為に戦わなくちゃならないんだ!勝たなきゃならないんだ!」

 

二人の支えを振り払い、響は自分の願望を、みんなの願いを叶える為に構える。

 

「…」

 

切歌も調もどうしてそこまで信じられるのか?何故アシモフと言う男がいるのにそこまで言えるのか?自分の理想が叶うと。

 

分からない。だが、響の言葉に調は何故か心を動かされる。そんな未来があるのか?誰も犠牲にならず、幸せになる未来が。

 

だが自分はそれを望む事は出来ない。自分は多くの人を傷付けた。多くの人を貶めた。そんな自分達が幸せを望む事を拒む。

 

「…無理だよ…私達は…私達の所為で傷付いた人達が大勢いる…私達があんな男と一緒にいた所為で悲しんだ人達が大勢いる…そんな私達がそれを望む資格なんてない…」

 

「そんな事ない!切歌ちゃんも調ちゃんもマリアさんも!三人は誰も傷付けてない!ライブの時だって!秋桜祭の時だって!三人は誰も傷付けなかった!悪いのは全部アシモフとウェル博士だ!」

 

響は調の言葉に否定する。

 

「望んだっていいんだよ!切歌ちゃんも調ちゃんも!マリアさんも!諦めなくていいんだよ!自分達も幸せに生きる未来を!」

 

調はその言葉に本当に諦めなくていいのか?マリアも切歌もナスターシャも無事でいられる未来を。そんな小さな願いを捨てなくてもいいのかと考えさせられる。

 

「…こんな私達でも願ってもいいの?こんな私達でも望んでもいいの?」

 

「当たり前だよ!だから、力を合わせよう!未来を助ける為に!アシモフを倒す為に!」

 

響の言葉に調も自身が犠牲にならないと言う選択が生まれる。自身を切り捨てない希望を持つ。

 

「ありがとう…」

 

だが、切歌はその望んだ未来を掴む事すら出来ない事に悲しくなる。自分はいずれフィーネになる。だからこそ、願おうが望もうが決してそれを成就する事は叶わない。

 

「…」

 

自分もそこにいたいと思えば思うほど、自分が立たされている状況が歯痒くなる。何故自分なのか?何故フィーネは自分に宿ってしまったのか?何故自分はこんなに不幸なのか?

 

「切ちゃん?」

 

悲しそうな表情をする切歌に調が心配そうに聞く。

 

悲しいだろうが、希望を持った調を悲しませたくない。だからこそ、無理にでも笑う。別れが悲しくなるだろうがそうするしか出来なかった。

 

「切ちゃん…切ちゃんも何が隠しているの?」

 

だが、ずっと一緒にいた調には切歌の無理な笑いは意味を為さなかった。

 

「…何でもないデス!調!やりましょう!」

 

それを隠す為に、切歌は未来へと駆け出す。

 

幸せな未来に自分はいない。だが、それでも調とマリア、そしてナスターシャが無事ならそれでいい。そこに自分がいなくとも他の家族の様に大切な人達が幸せなら。

 

切歌は知らずに涙を流しながら、未来へと向けて鎌を振り下ろすのであった。

 

◇◇◇◇◇◇

 

アシモフの怒りが増し、攻防に激しさが増す。

 

第七波動(セブンス)を駆使した攻撃、亜空孔(ワームホール)に合わせた爆炎(エクスプロージョン)翅蟲(ザ・フライ)生命輪廻(アンリミテッドアムニス)残光(ライトスピード)

 

今まで苦しめ続けられた第七波動(セブンス)の猛攻が三人を襲っていた。

 

光速のレーザー、爆弾と同様の炎球、全てを喰らう黒い粒子、人を石化させる光線。どれか一つでも喰らえばひとたまりも無い攻撃。

 

三人は互いの長所を活かしながらなんとかそれを掻い潜る。

 

だが、それでも劣勢を強いられる。アシモフの存在だ。

 

掻い潜る中、その隙を見てアシモフが奏を殺そうと。翼とクリスを捕縛しようと縦横無尽に動き回る。

 

だが、それもなんとか堪える。翼が襲われれば奏がカバーし、奏が襲われればクリスが援護し、クリスが襲われれば翼と奏がカバーし合う。

 

だが、それでも劣勢のままだ。アシモフが強すぎる。ガンヴォルトを超える強さを持つアシモフ。そして第七波動(セブンス)。こんなのに本当に勝てるのか

殺せるのか?と考えてしまう。

 

だが、そんな考えなど振り払う。三人はガンヴォルトに誓ったんだ。今度は自分達がガンヴォルトを守ると。ガンヴォルトが居ていい場所を守ると。戻ってきたときにガンヴォルトが居ていい場所があると伝える為に。その為にはアシモフと言う存在を必ず倒さねばならない。殺さねばならない。そうしなければ誓った意味がない。覚悟した意味がない。

 

だからこそ、追い詰められようと確実に勝つ。どんなに小さな可能性だろうが、どんなに矮小な糸だろうが掴んで見せる。アシモフを殺す。

 

その覚悟を原動力に劣勢を跳ね除けようとする。

 

だが、

 

「だから何度も言っているだろう!貴様達がどれだけ抗おうが変わらぬ現実があると!」

 

劣勢を跳ね除けようが、更なる力でアシモフが捩じ伏せる。

 

互いにカバーし合う現状を一気にひっくり返す様に、アシモフがそれをたった一瞬で変えてしまった。

 

「ガッ!?」

 

「奏!」

 

「このクソ野郎!」

 

最もダメージを負っていた奏がアシモフの強力な一撃をまともに喰らい、殴り飛ばされる。

 

そこからは互いの長所を活かしながらの戦いが崩れる。奏が殴り飛ばされた事で、翼が狙われる。それを防ぐ為に、クリスがカバーしようとしたが、それより先に放たれた炎球にクリスが攻撃に転ずる前に爆発で吹き飛ばされる。

 

「グァ!」

 

「雪音!」

 

クリスが吹き飛ばされるがなんとか戦況を保とうと翼もアシモフに剣を振り下す。

 

だが、アシモフはそれを足で軌道を変えるとそのまま

地面へと空ぶらせる。

 

しかし、翼はそれでも気を抜かない。避けられたらならば連撃で。空振り、地面へと振り下ろした剣を無理矢理方向を変え、そのまま切り上げようとした。

 

だが、その剣は振り上がらなかった。いや、振り上げられなかった。

 

強く踏み込んだ足に力が入らない。振り上げようとした腕が上がらない。

 

何故?

 

そう思った瞬間に、痛覚が襲って来る。両足に、両腕に。

 

「ガァァ!」

 

血が流れている。太腿から。腕から。

 

穿たれていた。両腕と両足を。シンフォギアと言う鎧すら意味を為さない光速のレーザーで。アシモフはだった一瞬で翼を完全に行動不能にさせてしまう。

 

そして翼の首を掴み、持ち上げるとアシモフは高らかに宣言した。

 

「貴様達がどれだけ覚悟して私を殺そうとしようが不可能なのだよ!貴様達が電子の謡精(サイバーディーヴァ)に力を借りようが関係ない!電磁結界(カゲロウ)を越えようが関係ない!全て意味などありはしない!どれだけ足掻こうが変えられない!貴様達と私では潜った修羅場が違う!憎悪が違う!全てにおいて劣る貴様達が私に勝てる可能性は初めからありはしない!これが現実だ!」

 

倒れ伏す三人に、そしてこれを聞いていると思われる二課の全員にそう告げた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。