ノイズの発生を確認して司令室へ向かうボクと翼。ボクはもともと二課本部にいたため、戦闘服を身に纏いいつでも出撃する準備は出来ている。翼に至っても制服姿だが歌う事によりシンフォギアを纏えるため戦闘準備は既に完了している。
「状況を教えて下さい!」
翼は司令室に入るとオペレーター達に現状を把握するために情報を要求する。
「現在反応を絞り込んでノイズの位置の特定を急いでいます!」
ボクはそれを聞くとデバイスの方に向かい、機材に手を当ててここから繋ぐ事の出来る監視カメラの映像を一つのモニターに複数出現させる。何箇所かダメになっているカメラもあったが、その中の複数の過去の映像からノイズの写り込んでるものをピックアップする。
「監視カメラの映像を確認した。ノイズに追われている生存者2名を発見。一人は幼い少女。もう一人はリディアンの生徒だ。逃げた方向とその先の監視カメラに映ってない事から、この先の工業地帯に逃げ込んでいる可能性がある」
その情報を全ての職員に伝えると、職員達はその付近の反応を調べ始め、ものの数分でノイズの現在地を特定した。
「でかしたぞ、ガンヴォルト!これより、生存者2名の救出に移る!ガンヴォルト!お前は街から他の生存者がいないか確認をしながら工業地帯に向かえ!翼はこのまま工業地帯へと向かい、生存者の救出を頼む!」
その瞬間、司令室にアラームが響き渡る。画面を見るとノイズの反応とは別に大きなエネルギー反応を示すグラフが映し出されていた。
「ノイズとは異なる高質量エネルギーを検知!波形の照合を急ぎます!」
職員達が一斉に動き始め、過去に出現した様々なグラフを確認する。そして了子がいち早くその正体を見破ったのか呟くように言った。
「まさかこれって!アウフヴァッヘン波形!?」
呟くと同時に了子の画面が素早く切り替わり、今まで確認されたアウフヴァッヘン波形が司令室の大型スクリーンに映し出された。そして照合されていくグラフの中、全員が驚きを隠せない波形と重なった。
「まさか、ガングニールだと!?バカな!あれは今も我々の基地に保管されているはず!」
「そんなはずはない!だってガングニールは奏の…奏だけのシンフォギアのはず!」
「私達の持っている物はガングニールの欠片に過ぎないわ。もしかしたら、何かしらの経緯で欠片を持っていた子が土壇場で適合した可能性もあるわ」
弦十郎と翼はあり得ないというように言うが、了子はそんな二人に対し、可能性の話をしてこの状況を分析する。そんな話をしている間にボクはダートリーダーにマガジンを装填して司令室を出ようとする。
「何処に行くつもりだ!ガンヴォルト!」
「何処って、さっき言っていた街の生存者の捜索とノイズの掃討にだよ。奏と保管しているガングニールは無事な事はさっき病院内と基地内のカメラで確認した。奏と保管されているガングニールが無事ならこんなところで言い合いをするよりもより多くの命を助けるために動くべきだ」
そう言ってボクは司令室を出て、市街地へと向かった。
◇◇◇◇◇◇
ガンヴォルトが出て行くのを見送った弦十郎達。
「全く、俺達がどうかしていたな。あいつの言う通り、俺達の役目は人々をノイズから一人でも多く救う事だ。こんなところで議論してたところで救える命すら救えなくなっちまう」
「そうね。私も、今議論をするのが有意義かそうじゃないかぐらい分かっていたのに、目先の出来事に囚われ過ぎてたわ」
弦十郎の言葉に賛同する了子。そこには反省の色が見える。
「ですが司令!ガングニールは奏の!」
「翼!ガンヴォルトの言った通り、奏のガングニールが無事な事は確認出来ている!ならば今、我々のやるべき事はガングニールが誰のものなのかの議論じゃない!ノイズに襲われているかもしれない人々の命を一つでも多く救う事だ!」
弦十郎は翼を叱責する。その言葉に翼は苦虫を噛み潰したように顔を歪ませた。
翼は納得はしていないようだが、弦十郎の言い分が正しい事を理解しているため、司令室を出て出撃に向かった。
(ガングニールは奏だけのギアだ。今出現しているのがどうあれ、奏以外の適合者など、私は認めない)
◇◇◇◇◇◇
市街地にはノイズと炭にさせられた人だったものが散らばっている。市街地はビルなどでビルの合間が分からないがその街に人の気配などはなかった。
だが、人の気配は感じないものの獲物を見つけた獣の如く、潜んでいたノイズが数体現れる。ノイズはボクを見ると形を変え、弾丸のように一直線にボク目掛けて襲い掛かる。
しかし、ボクは雷撃鱗を展開して襲い掛かるノイズを炭へと変える。直ぐに雷撃鱗を解いて念のためにEPエネルギーを回復させると直ぐにダートリーダーを構え、離れたノイズに
このエリアにいるノイズがいない事を確認してダートリーダーのマガジンを入れ替える。
「ここにはもうノイズも生存者もいないか…やっぱり生存者が残っている工業地帯に向かってるのか」
呟くように言う。そして身体の生体電流を強化してビルの壁を蹴り上がり、屋上へ降り立つ。そこから見える工業地帯。
ここからでも見えるくらいの巨大なノイズが見える。それを確認するとビルの屋上を飛びながら工業地帯へと駆ける。
街の方ではノイズとは余り出くわさなかったが、工業地帯に近くになるに連れ、ノイズの数が増えていき、ボクを発見したノイズが襲い掛かってくるが雷撃鱗を展開してやり過ごす。貫通する事の出来ないノイズ達は雷撃鱗に触れた瞬間に炭へと化す。
そして工業地帯のノイズが集まる中心まで到着すると、先に到着していた翼が生存者を助けるためにノイズと戦闘を行っていた。
そんな中、生存者達の背後の給水タンクの合間からノイズが出現し、生存者達へと襲い掛かろうとする。
「煌くは雷纏いし聖剣、蒼雷の暴虐よ、敵を貫け!」
言葉と共に腕に雷が集まって行く。そして巨大なノイズの背後で腕をかざす。
「迸れ!
その言葉と共に腕に集まる雷は形を巨大な剣へと変え、ノイズの身体を貫き、炭へと変えた。
地面に降りたつと共に巨大な剣は霧散して消えた。そして炭と化したノイズが崩れ落ちる。その先にいたのは昨日木から落ちていたあの少女の姿であった。
◇◇◇◇◇◇
雷を纏った男性はまだ残っていたノイズに銃を向けて何かを撃ち込んだ。当たったノイズには紋様が浮かび上がり手をかざすと、手から雷が出現し紋様の付いたノイズに雷が誘導されるように直撃して炭へと化した。
その様子を呆然と見る響。男性は周囲にノイズがいない事を確認するように警戒していたが、視界にノイズが現れない事を確認すると響の元に歩み寄って来た。
「無事かい?」
「は、はい!」
「よかった」
響の無事な様子を見て、男性は耳に手を当てる。
「こちらガンヴォルト。生存者及び適合者の無事を確認。周辺にノイズの影すら見当たらない。反応は?」
どうやら、この男性はガンヴォルトというらしい。だが、偽名のように感じるその名前は響にとっては些細な事で、目の前にいる人物こそ、二年前のライブ会場で助けてくれた人だと彼の放った雷撃を見て確信した。
「あ、あの!」
ガンヴォルトは木から助けてくれた時のように喋ろうとする響に制止を掛けた。
「周辺にノイズが少し残ってるみたいだ。君は女の子を守ってあげて」
そう言うと彼はコートを翻し駆け出し、去っていった。
「またお礼言いそびれちゃった」
「お姉ちゃん、あの人もお姉ちゃんみたいなヒーローなの?」
手を握る女の子が響に問いかけた。
「うーん、ヒーローなんだと思う。あの人は前にもお姉ちゃんを助けてくれた人だと思うし、ノイズを倒せるみたいだから…」
男性が消えて行った方を見ながら響は呟くように言った。
◇◇◇◇◇◇
ノイズが全て片付いたのか、自衛隊と思われる人々が到着し、工場地帯に散らばる炭の回収、現場検証のような事をする人で溢れ返っていた。
響はその様子を見ながら先程の男性、ガンヴォルトの事を翼の事を考えていた。
(二年前のあの日、やっぱり助けてくれたのはツヴァイウィングの二人とガンヴォルトっていう人に間違いなかったんだ。でも、あの時聞こえてきた歌声の人は何処にいるんだろう?)
かつて助けてくれた時には三人は覚えている。だが、もう二人、助けてくれた奏の姿と歌を歌って元気をくれた声の人は見当たらなかった。
「あの、あったかい物どうぞ」
考え込んでいた響にスーツを着た女性が紙コップを差し出す。その中には湯気を浮かべる琥珀色の紅茶が入っていた。
「あ、あったかい物どうも」
響は一度考えるのをやめ、女性から飲み物を受け取り、少し息を吹きかけて冷まして飲み物に口を付けた。
「あはー」
身体の芯から少し冷えた身体を温めてくれる。一息付いたところで響の身体が急に光り始め、力が抜けたかと思うと、先程の鎧のような物が消え、制服姿に戻る。力が抜けて自分の足で立つ事が難しくなり、手から紙コップが離れ、倒れそうになる。
「うわぁ!」
だが、倒れそうになる身体は誰かに支えられる。振り向くと先程のガンヴォルトと呼ばれる男性が響を支えており、落とした紙コップも中の紅茶を溢さずに器用にキャッチしていた。
「大丈夫?」
「だ、大丈夫です!」
直ぐに身体を動かそうとするが、疲れていた足が上手く動かず、支えられたままの形となる。
「無理しない方がいいよ。さっきの戦闘で疲れているんだから無理に力を入れたら身体が付いて行かないよ」
そう言って、支える身体を起こして、手に持っていた紙コップを渡してくれた。
「ガンヴォルト!いつまでその子に引っ付いているの!」
そんな様子を見ていたのかどこか苛立っている翼がこちらに近付いてくる。
「いつまで引っ付いてるって、この子が倒れそうになったから支えてただけだけど」
「だったらこの子を立たせて直ぐに離れればいいでしょう!それなのにいつまでも」
翼は苛立ちが強くなったのか、矢継ぎ早に責め立てる。ガンヴォルトは何故怒られてるのか分からないという風に困った表情をする。そんな時に自衛隊の隊員数名がこちらにやって来る。
「お忙しいところすみません。ここまで来る時に倒したノイズの場所の詳細を聞きたいのですがお時間よろしいですか?」
「分かった。翼、悪いけど愚痴は後で聞くから慎次を呼んでおいて。ボクは後で合流するから」
そう言ってガンヴォルトは自衛隊の隊員達と共に簡易テントへと向かって行った。残された響と翼。
「あの…なんていうかすみません」
「…」
先程から不機嫌そうにしている翼に向けて、自分のせいなのかもしれないと思った響は謝る。しかし、翼はその言葉には答えずにそっぽを向いた。
それでも響はそんな態度を執る翼に以前助けてもらったためお礼を言う。
「あの、ありがとうございます!私、翼さんとあの人に助けられたのはこれで二回目なんです」
「二回目?」
その言葉に翼が反応してこちらを向く。だが、それでも響に対してはなんの反応も見せずに先程のガンヴォルトと呼ばれる男性が言っていた慎次という人を呼びに言ったのかこの場から去って行った。
先程の支えてもらってた事以外で悪い事でもしたのだろうかと不安になる。しかし、飲み物を渡してくれた人が近くに来て励ますように話してくれた。
「気を悪くしたようならごめんなさい。翼さんは彼、ガンヴォルトの事となるといつもあんな感じになるの。本人は否定してるけどね」
「それって!」
女性の含みのある言い方に響は察した。だが、トップアーティストと言う立場上、それを知られるのは非常にまずいのではないかと思ったので辺りに人がいない事を確認してからなるべく小さな声で女性に言う。
「あの…そんな重要な、というか記者とかに聞かれると危ない情報をなんで教えてくれたんですか?」
「それは直ぐに分かりますよ」
女性職員は困ったような表情をすると、その後ろからぞろぞろと黒服を着た屈強な男達が響の周りを囲う。
「えっ!?」
「今から貴方の身柄を特異災害対策機動部ニ課まで拘束させて頂きます」
その声と共に翼が屈強な男達の間から現れた。
「な、なんでですか!」
「これも国家機密を守るためなんです。少しの間、嫌な思いをするかもしれませんがご容赦下さい」
隣で声が聞こえたため、そちらを振り向くと優男風の男性がいつの間にか現れており、気付かぬ間に頑丈そうな手錠により拘束されていた。
「な、なんで!?」
「それは翼さんの先程言っていた我々の職場に来れば分かる事ですよ」
なんの説明もないまま、その男に手を引かれながら黒塗りの車に乗せられる。響は抵抗しようとしたが、屈強な男達の圧に敵うはずもなく、黙って車に乗せられてしまう。
「せめて、経緯を説明してくださーい!」
響の悲痛な叫びに誰も答える事なく、行き先も分からぬまま車は走り出した。