戦姫絶唱シンフォギアAB   作:株式会社の平社員

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「ッ…」

 

急に襲いかかる痛みに未来は呻き声を上げる。先程まで感じていなかった痛み。

 

「未来!」

 

そんな中、先程とは違い鮮明に耳に聞こえた親友の声。

 

その声を聞き、あの暗い空間から抜け出せた事、そして親友である響があの時の約束を果たしてくれた事に安堵する。

 

痛みのあまり、重くなった瞼をゆっくりと開ける。

 

そこに映るのは響の顔。だが、安堵よりもより一層濃い絶望が襲い掛かった。

 

「ひ…響…」

 

響の姿を見て未来は痛みなど忘れてしまう程の状態を見てしまう。

 

響は笑顔を浮かべているが、その顔の一部には皮膚を突き破り、黄色い結晶が浮き出ている。顔だけじゃない。身体の至る所に顔と同じ黄色い結晶が皮膚を突き破り顔を出している。

 

弦十郎が危惧していた事態。それがこれだという事を未来はすぐに理解した。

 

「良かった…良かったよ…未来…元に戻ってくれて」

 

だが、響が本当に良かったと安堵する中、未来は何故響がシンフォギアを纏い、この様な姿になってしまったのか?

 

「二人共無事デスか!?」

 

「大丈夫!?」

 

そんな中、未来の心配していた切歌と調の姿。響の様な姿ではないが、切歌も調もボロボロである。

 

「切歌ちゃん…調ちゃん…」

 

「戻ったみたいで良かったデス」

 

「アシモフにもう操られてないみたいで良かった」

 

操られていた?どういう事なのか?未来には訳が分からなかった。だが、自身を蝕む痛みの理由を知り、悟った。

 

自身の痛みの理由。響や切歌、調と同様に色違いのギアを纏い、インナーから血が滲んでいた。記憶に無い装備。そして操られていたと言う事から響がこの様な原因、そして切歌と調がボロボロの理由が自分であると言う事を知ってしまった。

 

「あっ…あっ…」

 

その事を理解した未来の心は響を傷付けたと言う事に、助けてくれた切歌と調を傷付けた事に、そしてこの場にいない翼、奏、クリスを傷付けたと言う可能性、そしてもしかしたら誰かを殺してしまったと言う可能性が未来の心を崩そうとする。

 

理解出来ないが自身がしてしまったかも知れない事態を重く受け止めてしまい、未来の心を蝕み、キャパオーバーしてしまう。

 

呼吸がままならない。自身が記憶に無い間に起こった事を知るのが怖い。

 

「未来!しっかりして!未来!」

 

「大丈夫デスか!?」

 

「ッ!?まだアシモフの暗示の影響が!?」

 

未来の状態に三人が声を上げる。三人は未来に何が起こったのか分からない。だが、今の未来の状態は危険だと分かる。どうすればいいと考える中、誰かが此方へと駆け寄ってくるのに気付いた。

 

「響!」

 

奏の声が聞こえた。

 

その後を追う様に翼とクリスが奏も来た。

 

「みんな!未来が!?」

 

響は辛いながらも未来の状態を簡潔に伝えようとするが、響は言葉足らずにより伝わらない。いや、今の響の状況に加えて、大切な親友の状態がこの様な状態であれば仕方が無い。

 

だが奏は嘗ての同様な状況があった為に、響に言った。

 

「響!未来を落ち着かせるんだ!今未来は今までの出来事を思い出している可能性がある!違っても記憶がないのなら今起こった事を知らないからこそ、響達の姿を見て自分が何かを起こした不安で心が押し潰されそうになっているんだ!」

 

奏も同様の状態になり、後悔の波に押し潰されそうになった。だからこそ、それを塗り潰す必要がある。奏の場合は赦し。ガンヴォルトにやってしまった行動の後悔をガンヴォルトが赦しを得て、持ち直した。そして大切な人だからこそ、持ち直す事が出来た。

 

未来も持ち直すには押し潰されそうになる心の支えになる物。そして大切な人による心に届く言葉。だからこそ、奏は響に言ったのだ。

 

響は奏の言葉にどの様な行動が最も最適なのか分からなかった。

 

押し潰す後悔の波。目に見えない傷を癒すのにはどうすればいいのか?思いを叫ぶのか?大丈夫と心配しないでと言い続けるのか?答えは出ない。

 

考えるのは得意ではない。だったら、どうすればいいのか?響は無我夢中で未来を抱き締める。

 

「大丈夫!未来!みんな無事なんだよ!誰も居なくなっていない!」

 

未来は過呼吸になり視界が定まらない未来に対してそう言った。

 

「奏さんも!翼さんも!クリスちゃんも!みんな無事だよ!ボロボロになったのも未来の所為じゃない!全部アシモフが悪いんだ!未来の所為じゃないんだよ!そんな姿になっても未来は何もしていない!未来が悪い訳じゃないんだよ!」

 

伝える。みんなの無事を。そして未来は何もしていないと。本当は違う。だが、全ては未来の意思ではない。だから響は落ち着かせる為にそう叫んだ。未来は何もしていないと。悪いのは全てアシモフだと。

 

全てはアシモフが引き起こした暗示の所為。未来の意思ではなく、アシモフの所為でしたくもない戦いに参加させられたと言う事を。

 

「私は未来を助けたくて纏ったんだよ!未来の所為じゃない!未来は何も悪くないよ!」

 

ただ未来は悪くないと抱き締めながら言い続けた。

 

未来が重く受け止めそうな事を幾つでも挙げてそれは未来の所為ではないと言い続けた。

 

その結果、未来の崩れかけた心に響の想いが届き、少しだけ落ち着きを見せる。

 

「でも…私は…私が…みんなを…」

 

「違う!貴方の所為じゃない!全部この人の言う通りアシモフの所為!貴方は何も悪くない!貴方は自分を責める事なんて自分の意思でしていない!」

 

未来の言葉に調がそう言った。調だけじゃない。それに続く様に切歌が、奏が、翼が、クリスが。ボロボロになったのは未来の所為ではないと己の想いを未来にぶつけた。

 

「違うデス!貴方は何も悪くない!貴方は自分の意思であんな事を起こした訳じゃない!だから何も悪くない!全部アシモフの!あの男とウェル博士!全ての元凶はあの二人デス!」

 

「未来!響やこの二人の言う通りだ!お前は何も悪くない!そんなに自分を責めるな!」

 

「小日向!貴方は何も悪くないんだ!貴方はこの傷は貴方の所為じゃない!」

 

「お前は何も悪くないんだよ!お前はただ操られていただけだ!悪いのは全部お前じゃなくアシモフだ!」

 

全員が未来の所為ではないと言った。

 

その言葉が未来の崩れかけた心を完全とはいかないが、支えとなる。

 

「みんなの言う通り、未来の所為じゃない。未来がそんな悪い事を自分からみんなしないってわかっているからこう言うんだよ。違うんだよ。未来が悪い訳じゃない。未来は何も悪くない。悪いのは未来にこんな事をさせたアシモフなんだよ」

 

響が未来に対してそう言った。

 

「響…みなさん…」

 

全員の言葉のお陰でなんとか呼吸が安定して、ようやく落ち着きを取り戻す。

 

「ごめんなさい…それと私を助けてくれてありがとう…」

 

そしてそう言った。落ち着いた未来を見て全員が安堵する。

 

だが、その落ち着きがあの空間であったシアンの光を思い出す。

 

「そうだ!シアンちゃんは!シアンちゃんは何処に!?」

 

シアンはアシモフに囚われたままだったはず。だが、こうして戻ってこれたのはシアンと響のお陰だ。響は無事とは言い難いが目の前にいる。だが、シアンは何処に?

 

「シアンちゃんは…まだアシモフの手の内にいる…でも大丈夫!絶対シアンちゃんはガンヴォルトさんが取り戻してくれる!」

 

響が未来に対してそう言った。

 

「ガンヴォルトさんが…生きてる…?…本当なの…死んでないの?」

 

未来に衝撃が走った。アシモフにより殺された。そう聞かされていたガンヴォルトの存在。もう会う事が叶わないと思っていた未来にとっての大切な恩人。

 

「嘘じゃないよ…ガンヴォルトさんは生きてる…アシモフになんてガンヴォルトさんは殺されてない…ガンヴォルトさんは生きて、今も戦ってる」

 

そう言って響は未来にガンヴォルトのいる方向を示唆する。

 

姿は見えない。炎が常に吹き荒れ、黒い粒子が覆い尽くし、光るレーザーが一点に向かい放たれ、レーザーと同様に雷撃を纏う鎖が複雑に動き、何かを絡め取る様に蠢いている。

 

「あの中にガンヴォルトさんとアシモフがいる…シアンちゃんを取り戻す為…みんなを救う為…あの中でガンヴォルトさんは戦っているの」

 

生きている事にホッとし、そして未だあの巨悪に戦っている事に不安になる。

 

「大丈夫だよ、未来。今のガンヴォルトさんならアシモフを倒してくれる…アシモフからシアンちゃんを取り戻して無事に帰ってくる」

 

響は未来にそう伝える。今のガンヴォルトの姿を、頼もしさを知らない未来だが、響の言葉、そして他の全員が響の言葉通り、ガンヴォルトなら勝つと頷いた。

 

だから未来もその言葉を信じる。

 

今度こそアシモフに勝ち、この戦いを終わらせてくれると。

 

「だが、その前に立花と小日向。今の貴方達の状態は危険だ。それに、少し離れているだけの此処も、ガンヴォルトとアシモフの戦闘に巻き込まれるか分からない。兎に角此処から一旦離れよう」

 

翼がそう言った。

 

確かに今この場がガンヴォルトとアシモフの戦闘に巻き込まれるか分からない。そして響のガングニールの侵蝕、そして翼達は分からないが、未来の身体もLiNKERによって身体はボロボロ。

 

だからこそ、響と未来を助ける為にそう言った。

 

「そうだな。響は早くシンフォギアを一旦解除して本部に戻ろう。二課の医療班に早く二人の状態を見せないと。それと二人も。二人の救いたかった人も到着してる。治療もしてくれるだろうし、一緒に行こう」

 

奏も切歌と調にそう言った。

 

二人もその言葉に頷いた。

 

その瞬間、今まで感じていた強大な力が消えるのを感じる。そちらを見るとアシモフとガンヴォルトが戦っていた場所から炎球が、レーザーが、黒い粒子が、鎖が消え、アシモフがガンヴォルトがもう剣、スパークカリバーによって切り裂かれたアシモフの姿。

 

ガンヴォルトが勝った。そう思ったが、ガンヴォルトは巨大な雷撃鱗を張って別の方向に雷撃をダートリーダーから放った。

 

そしてそこに現れた先程切り裂かれたアシモフの姿。何が起こったか分からないが、まだ勝ちではなかった。だが、それでも、アシモフと接近戦を繰り広げ、今度こそアシモフを倒し、シアンを助け出したガンヴォルトの姿。

 

これで戦いは終わった。全員がそう感じた。

 

しかし、それは間違いであり、此処からまた絶望が始まろうとしていた。

 

◇◇◇◇◇◇

 

ボクはアシモフに向けてダートリーダーの引き金を引こうとした。しかし、それと同時にアシモフの身体からまるで暴走したかの様に雷撃が迸り、先程と同様の威力の雷撃がボクに放たれた。

 

それでもボクはアシモフに向けて雷撃を放った。だが放った雷撃はアシモフの身体を迸る、いや、迸ると言うよりも許容量を超える雷撃をそのまま放出させた様な雷撃に弾かれ、アシモフに当たる事はなかった。

 

ボクはなんとか躱し、アシモフから距離を取る。

 

時間切れ(タイムアップ)…普段なら苛つくが、良い時に来てくれた…」

 

辛そうにボクが離れた事により、苦しそうにだが、立ち上がるアシモフ。

 

だが、ボクはアシモフを殺そうと再び雷撃をダートリーダーから何発も撃とうとする。

 

だが、そうする前に銃声が響くと同時に、ボクの握ったネフィリムの心臓が弾かれた。

 

「ッ!?」

 

何が起きたかのか。弾かれた方向を辿り何が起きたのか視界の端で捉える。そこにあったのは輸送機。そしてそこから狙撃銃を構えるウェルの姿。

 

「よくやった!Dr.ウェル!」

 

苦しそうに叫ぶアシモフだが、ネフィリムの心臓が弾かれた方向におり、再びアシモフの元にネフィリムの心臓を手に入れた。

 

「ッ!シアンを返せ!アシモフ!」

 

再びアシモフによりシアンを奪われ、取り戻す為に接近する。だが、アシモフはそれよりも早く、ネフィリムの心臓を起動させる。

 

だが、小さな穴。逃走する気ではないのか?

 

「此処は負けを認めよう。紛い物如きに負けを認めることは屈辱だが、仕方ない。今の状態で貴様を殺す事は難しい」

 

苦しそうにアシモフはそう言った。負けを認めはしているが、それでもまだ何か策があるとばかりの表情を浮かべていた。

 

「だから引かせてもらうぞ。紛い者。次こそ、貴様を殺す」

 

「そんな事をさせると思っているのか!アシモフ!」

 

「ああ、簡単に引かせてはくれないだろう。だが、逃さざるを得ない状況を作った」

 

そう言うと、背後から悲鳴が聞こえた。

 

それは未来の悲鳴。

 

「アシモフ!未来に何をした!」

 

「計画通りとはいかなかったが、計画の最終段階に移らせてもらう。奴の神獣鏡(シェンショウジン)のシンフォギアの力を使い、フロンティアを起動させる。人柱として、奴の死を利用するだけだ」

 

「アシモフ!貴方はなんて事を!」

 

「どうとでも言えば良い」

 

そう言って背後から第七波動(セブンス)とは別の強力な力の奔流を感じる。

 

ボクはアシモフを殺す事と未来の命を天秤にかけ、その結果、誰一人もアシモフに殺させないと言う思いが、勝ち、アシモフから離れ、未来の元へ走り出した。

 

そう言うと共に、アシモフは甲板に手を突いて呟いた。

 

「ダメ押しだ。これで死ねば良いが、死なぬのなら今度こそ、貴様を殺してやる。そして…」

 

アシモフは甲板から雷撃を流し、看板の端にあるミサイルを未来の元へと放った。

 

「手に入れさせてもらう。風鳴翼。雪音クリス。貴様の大切な者を奪わせてもらうぞ」

 

そう言ってアシモフは穴を開くと、苦しそうにだが、その穴へと入って行った。

 

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