戦姫絶唱シンフォギアAB   作:株式会社の平社員

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92GVOLT

ガンヴォルトの勝利。幾度とない戦いで敗北し続けたガンヴォルトだったが、敗北しても諦めず、絶望しても立ち上がり、アシモフに戦いを挑み続けた結果、手にした勝利。

 

アシモフが倒れ、ガンヴォルトの手には大切な友達、シアンが囚われたギアペンダント。そしてネフィリムの心臓。長い戦いの終わりが見えた。

 

だが、そんな希望を塗り替える様にアシモフの身体から雷撃が迸った。ガンヴォルトとアシモフが常に纏う自己強化などを行う雷撃とは違う、攻撃に使う様な強力な雷撃。それを身体中から。

 

「まだアシモフの奴は力を隠していたデスか!?」

 

敗北したアシモフが、悪足掻きの様に雷撃を身体中から放つ姿を見た切歌がそう言った。

 

「違う!あれはあの時と同じだ!」

 

切歌と調、そして未来も響も知らないがそれ以外の全員はその力がなんなのかを知っている。

 

かつて響が暴走しながらアシモフと対峙した際に見せた雷撃。第七波動(セブンス)の暴走。ガンヴォルトには起きた事が無いためにどの様な事が起こるか分からない。

 

アシモフから迸る雷撃がガンヴォルトへと襲い掛かる。だが、ガンヴォルトはそれでもアシモフを殺そうと雷撃をダートリーダーから放ち、反撃していた。

 

だが、ガンヴォルトの強力な雷撃を同様の力を持つ雷撃が弾き、アシモフにトドメを刺すに至らなかった。

 

ガンヴォルトは決して油断していたわけじゃ無い。だが、アシモフを殺せなかった。そしてそれを援護する様に響いた銃声。銃型のアームドギアを持つクリスではない。そして同じく銃を扱うガンヴォルトでも無い。その銃声の元に視線を向けると輸送機から狙撃銃を構えたウェルの姿。

 

そしてその弾丸はガンヴォルトが持っていたネフィリムの心臓を弾いた。思わぬ伏兵。今まで最前線へと姿を現していたが、ソロモンの杖を使用してこれといった戦果を挙げていないウェルにこの様な事が出来るなど思いもよらなかった。

 

そして弾かれたネフィリムの心臓が再びアシモフの手に奪われる。

 

その瞬間、奏と翼、クリスが駆け出した。

 

「二人は立花と小日向を逃してくれ!」

 

翼が切歌と調へ今はもう戦えそうに無い二人を逃す様に頼む。

 

アシモフが再びネフィリムの心臓を取り戻した以上、侮れない。ガンヴォルトはそれを打ち破り、一度は勝利を掴んだものの、暴走した蒼き雷霆(アームドブルー)。アシモフも限界が近いのかもしれないが、何をしでかすか分からない。だからこそ早期に決着をつける為に、アシモフにトドメを刺す為に駆ける。

 

だが、

 

「キャァ!」

 

突如未来が悲鳴を上げる。振り返ると未来の頭を掴む、謎の手。

 

その手には見覚えがある。

 

アシモフの手。小さな穴を開き、未来の頭を掴み、再び雷撃を浴びせていた。

 

「未来!」

 

最も近くにいた響が限界だろうが構わず、未来を掴むアシモフの手を離れさせようと拳を振るう。

 

だが、響の拳が当たる前にアシモフの手が穴の中へと消えていった。

 

「未来!しっかりして!未来!」

 

「ぁぁああ!」

 

雷撃を浴びた未来へと叫ぶ響。その瞬間、未来の身体からアシモフの様に力が暴走したかの様に、纏うシンフォギアから強大なフォニックゲインが漏れ出した。

 

アシモフによる聖遺物、いや、シンフォギアへの干渉。未来のシンフォギアへとアシモフが雷撃により力のリミッターを外し、それに耐えきる事が出来ない未来を暴走させた。

 

第七波動(セブンス)と聖遺物。異なる力であるものの干渉が出来るのか?

 

既にそれは実証されている。シアンの電子の謡精(サイバーディーヴァ)。それが最たる例だ。

 

聖遺物、いや、シンフォギアと電子の謡精(サイバーディーヴァ)。共に歌に力による身体に纏うシンフォギアを第七波動(セブンス)の能力のブーストをする。

 

だが、蒼き雷霆(アームドブルー)は違う。歌を介さず使用する力。その力が聖遺物への干渉は不可能に近い。

 

ならば何故、この様な事が可能なのかはアシモフが使い続けた聖遺物。神獣鏡(シェンショウジン)が関係している。

 

聖遺物への干渉は蒼き雷霆(アームドブルー)には出来ない。それはアシモフは承知だ。だが、それを可能とする方法についてはアシモフは知っている。

 

かつて皇神(スメラギ)がとっていた手法。聖遺物への因子封印。皇神(スメラギ)は過度の摘出で能力の暴走を抑えていたが、アシモフは科学者であるウェルに協力させ、七年という長い時間をかけて、自分の能力因子が宿る血を聖遺物へと干渉させた。それを行った結果、自身の能力因子をそのままに聖遺物へと自身の力の一部を聖遺物へと埋め込んだ。

 

そして自身の力による封印した能力因子の解放。そうする事で可能にした技術。それが暴走の正体。

 

能力者でない者が能力を使おうとする事で蒼き雷霆(アームドブルー)特有の成功個体以外の使用による拒絶反応を利用して起こる暴走。そしてそれを引き金に聖遺物も同様に暴走する。フォニックゲインではなく、能力因子による無理矢理の能力の引き上げ。それが聖遺物の暴走を引き起こす。

 

そしてその暴走状態によって未来から全員が理解しているアームドギアを分解してしまう強力な力が放出された。

 

近くにいた響はその力を受け、吹き飛ばされる。切歌と調は巻き込まれなかったものの、暴走する力の圧力に奏、翼、クリスや元に飛ばされた。

 

「ッ!あの外道が!未来にまた何かしやがった!」

 

奏が力の圧力に負けない様に踏ん張りながらもそう叫んだ。

 

「とにかく!立花の救出と小日向を止めるぞ!」

 

「分かってるよ!だけど!」

 

吹き荒れる力を踏ん張り、三人はそう叫んだ。

 

だが近付く事が出来ない。未来から放出された力が、シンフォギアを分解する力が、全員の身体を思う様に動かせない様にしている。

 

シンフォギアを分解する力。その力が暴走して強大な力の圧力によって放たれる為に、アームドギアが、シンフォギアが遠くに居ても分解されていく。未だ完全に回復していない三人、そしてボロボロになった切歌と調はそれに打ち勝てる程の力を今持ち合わせていないからだ。

 

「どうすればいいデス!」

 

「何処までも卑劣な事を!」

 

切歌も調も何とかしようと踏ん張っているが、先程までの戦闘によるダメージ、そしてLiNKERの時間が迫り、行動が出来ない。

 

どうすればいい?どうすれば未来を救える?考えても答えなどではしない。

 

だが、そんな中でも、動く影は存在した。

 

響だ。

 

吹き飛ばされ、ボロボロになりながらも力の奔流など気にも留めず立ち上がり、未来の元へ駆け出していた。

 

◇◇◇◇◇◇

 

「未来!」

 

力の奔流により、身に纏うシンフォギアは、身体から突き出た結晶が分解されながらも接近する。

 

響の想いはただ一つ。未来との約束を守る。そしてあの時離してしまった手を、もう二度と離さないために。そして未来を助けると誓ったのだ。

 

だからこそ、響はボロボロになりながらも突き進む。約束を守る為に。東京スカイタワーで誓った約束を守る為に。

 

「未来!」

 

響はシンフォギアが分解されながら、そして荒れ狂う力の奔流、圧力に負けじと未来へと駆ける。

 

力の奔流が常に響を襲う。身体が軋む。押し返されそうになる。身体はとうに限界を迎えている。侵蝕されゆく身体、蓄積されたダメージ。だがそれでも響は救いたいという、助け出したいと言う強い意思を原動力に無理矢理身体を動かして進み続けた。

 

失ってなるものか。取り戻したのにまた離れてなるものか。

 

響は未来の元にボロボロになりながらも手を伸ばし、進み続けた。

 

「ひ…ひび…き」

 

未来もその姿を見て痛みに堪え、手を伸ばす。未来も同様なのだ。あの時離してしまった手を再び掴んでくれたのに、また離れてしまう。折角握り返してくれた手を離してなるものか。もう離さない。どんな障害があろうと突き進んで、命を賭けて救おうとしてくれる響の手を伸ばしているのに、自分がその手を握ろうとしないのは間違っている。力の暴走を気力で抑えようとする。響へと手を握る為に。

 

だが、それでも暴走は止まらない。未来の意思を無視して力は吹き出し続ける。血がギアインナーを濡らし、目から血涙が、口からは身体をボロボロにした結果、血が流れ出る。

 

響も近付くにつれて、完全にギアが形状を保てなくなりつつある。結晶が剥がれ、血が流れる。

 

しかし、それでも二人は手を伸ばす。互いがもう二度と離さないと決めた手を再び握る為に。

 

そして暴走する力の奔流を進み続けた響が、未来の伸ばした手が届く。

 

だが、その瞬間、暴走した力が臨界に到達して、紫色の光が輝き出し、光が二人を飲み込んだ。

 

未来が暴走した起点から生み出された空を貫く巨大な光柱。力の塊が甲板を貫き、船体に大きな穴を開け海中までそれが出現した。

 

船体に穴が空き、船が大きく傾き、沈没していく。

 

◇◇◇◇◇◇

 

「響!未来!」

 

船が沈みゆく中、何とかアームドギアを突き立て、奏達は飲み込まれた二人の名前を叫ぶ。だが、返事は帰ってくることはない。

 

それと同時に起こる海上をも揺らす大きな揺れ。

 

船の沈没からなる揺れなどではない。何か海底から目覚めた様に、海底から何が引き剥がれようとする様に海上を揺らしていた。

 

「何が起こっているデス!」

 

「とにかく二人を早く助けないと!」

 

切歌と調がそう叫ぶ。だが、暴走した力の奔流が収まらない為に誰も行動がままならない。

 

しかし、それでも動ける人物は響以外にも存在した。

 

全員の傍を高速で通り過ぎていく影。

 

ガンヴォルトだ。アシモフとの戦闘から未来を救う為に動いたガンヴォルトがその光柱へと駆けていた。

 

「ガンヴォルト!」

 

全員がガンヴォルトの名を叫ぶ。ガンヴォルトはただ全員に落ちない様に指令を出す。

 

「全員退避してくれ!ここはもう持たない!可能な限り、今いる船の人を逃して退避してくれ!」

 

ガンヴォルトはそう言うと光柱へと接近して躊躇いなく入って行った。

 

ガンヴォルトまで巻き込まれ、ただ行く末を見守るしかない。だが、そんな中、再び悪魔(デーモン)が姿を見せる。

 

「必要な者だけは手に入れさせてもらうぞ」

 

声のみが届き、そして翼とクリスの背後に現れる穴。そこから伸びる二つの手。

 

アシモフだ。アシモフがこの機に乗じ、翼とクリスを連れ去ろうとした。暴走状態でも尚、負けと認めて尚、己が目的を完遂させる執念が、暴走を凌駕して突き動かしていた。

 

「ッ!?」

 

急な事にそれぞれが対応が遅れる。アシモフの出した手がクリスを掴む。それと共に暴走状態のアシモフの雷撃が襲いかかる。

 

「ガァァ!」

 

そしてアシモフの雷撃が、クリスを蝕み、気を失わせた。そして気を失ったクリスを穴へと連れ込み、姿を消す。

 

「クリス!」

 

クリスが連れ去られた事により奏が叫ぶ。だが、もう連れ去られてしまった為もう遅い。そして翼も同様に連れ去られようとした。しかし、翼がアシモフに囚われるより早く、翼を突き飛ばし、切歌が入り込んだ。

 

「ッ!」

 

切歌が誰よりも早く動けたのかは切歌のシンフォギアに搭載されていたブーストによって無理矢理動き、翼を突き飛ばしたのだ。

 

そして翼の代わりにアシモフの手が切歌を掴み、雷撃を流し、気を失わせるとそのまま穴の中へ連れ去っていく。穴が切歌を飲み込むとクリスの時同様に消え去っていった。

 

「切ちゃん!」

 

調が連れ去られた切歌の名を叫ぶが決して声が届く事はなかった。

 

◇◇◇◇◇◇

 

暴走する力の奔流へと飲み込まれた響と未来を救う為にボクは光柱の中へ飛び込んだ。

 

入り込んだ暴走する力の奔流。その全てがボクの身体を傷付けていく。

 

「ッ!」

 

エネルギーの塊に無謀にも飛び込んだボクはボロボロになりながらも突き進んだ。

 

無謀だろうと誰もが思うだろう。ボク自身もそう思う。だが、失いたくない。響も。未来も。ボクを必要としてくれる二人。そしてボクの居場所にいるべき二人を失いたくない。そんな思いがボクを行動させた。

 

光の奔流。力の塊が全方向から襲いかかる。

 

それでも身体により雷撃を流し、生体電流を活性化させて、無理矢理でも活動可能にして突き進んだ。

 

そして辿り着いた響と未来の元。甲板を貫き、沈没していく船の甲板があった場所に浮遊していた。

 

未来の暴走する力を響がそれを飲み込もうとしている。

 

響のアームドギアの特性。他者と繋がる為に武装を持たない。だが、それこそが未来を救う手立て。無手だからこそ、他者のギアの持つエネルギーを吸収する事が出来る。

 

だが、それを邪魔する様に響と未来の周りに迸る雷撃。

 

アシモフが未来にまだ何か施していたのか。

 

響未来を救う為の行動。だが、それを邪魔するアシモフが残した雷撃。どうすればいいのかなんてわかっている。

 

ボクは浮遊する未来と響の元へと飛び出し、響と未来の握る手の上から掴んだ。

 

「ガ…ガンヴォルトさん…」

 

響と未来がボクの存在に気付き、ボクの名を呼んだ。

 

「何も言わなくてもいい!響!未来を救えるか!?響自身も救えるか!?」

 

ボクは響へとそう問いかけた。響は辛そうにだが、頷く。だが、それをさせない様に雷撃が邪魔をする。

 

「ガンヴォルト…さん…」

 

未来も救いを求める様にボクの名を呼んだ。

 

「助ける!絶対に!」

 

ボクは避雷針(ダート)を取り出すとダートリーダーへと装填して自身へとへと打ち込む。そうする事により響の邪魔をする雷撃がボク自身へと流れ込んでいく。

 

響が聖遺物の力を受け止めるのならボクがそれを邪魔する雷撃を受け止める。未来を救うには方法が他にあるのかもしれない。だが、時間がない故に強硬手段を取らざるを得なかった。

 

ボク自身の力と同等の雷撃。キャパオーバーした雷撃はボク自身を蝕んでいく。

 

更に力の奔流中故に更に身体への負荷が想像を絶する。

 

だが、それでも意識を手放さない。響が未来を救う為に頑張っている。未来がそれを信じている。そんな中、ボクが協力しないでどうする。

 

ボクは更にボロボロになりながらも雷撃を受け止め続ける。

 

だが、その雷撃。そして響の想いに応える様に、響に残るシアンの力がボクの蒼き雷霆(アームドブルー)に呼応して最後の力とばかりに電子の障壁(サイバーフィールド)を展開した。

 

シアンの意思ももう何処にもない。だが、それでも力を貸してくれている。

 

ここまでされて救えないなんて事を起こしてはならない。力の奔流が無くなった分、ボクは雷撃を更に受け止めて響の吸収をサポートする。

 

そして暴走する力を響が。雷撃がボクが全てを受け止めきる。

 

その結果、未来と響、そしてボクを更に強力な光ガ飲み込んでいくのであった。

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