戦姫絶唱シンフォギアAB   作:株式会社の平社員

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光柱が更に大きく瞬いた。

 

瞬いた光は弾ける様に光の粒子となって辺りへと降り注ぐ。

 

そして光柱のあった中心に制服姿で倒れる響。私服姿で倒れる未来。そして蓄積されていた暴走の力によりボロボロになり、アシモフの蝕む雷撃により膝を突いたボク。

 

耐え切ったのか?暴走は抑えられたのか?

 

倒れる二人の呼吸と脈拍を確認する。

 

呼吸は気を失っているが正常。それに響の身体からは先程まで突き出ていた結晶の様な物は消え去っていた。

 

何が作用したか分からないが、ガングニールの侵食後が見当たらない。響がどうなったのか分からないが急いで検査をしなければならないだろう。

 

未来も響も呼吸と脈拍は安定しているが、出血をしている為に急ぎの治療が必要だ。

 

二人を二課の本部へと運ぶ為に抱えようとするが、耳に入る嫌な音にボクは上空を見上げた。

 

「ッ!」

 

上空にはこちらへと向けて放たれたミサイル。

 

何故あんな物がこちらへと向けられているかなど考えなくても分かる。

 

アシモフだ。ボクが未来と響を救う為に離れるや否や、光柱へと向けて軍艦に搭載されていたミサイルを放っていたのだ。

 

普段であれば対処は簡単であろう。

 

雷撃鱗に避雷針(ダート)。だが、未来を救う為にアシモフの施された雷撃を身に受け過ぎた事。そして力の奔流の中で活動出来るように常に生体電流を極限まで高めた事。それにより先程までの強化状態が維持する事すら出来ない。更にEPエネルギーまで使い果たし、オーバーヒートしてしまった為に蒼き雷霆(アームドブルー)はしばらく使い物にならない状態だ。

 

あれ程のミサイルは避雷針(ダート)で破壊は不能。雷撃も放てない今、ボクにミサイルを対処する事は不可能。

 

どうすればいい?本部へと連絡を取っても時間が足りない。短く伝えようと対処するまでのタイムラグで間に合わないだろう。

 

だが、そんな事を考えている間に、ミサイルはどんどんとボク達へと向けて距離を縮める。

 

だがそんなミサイルへと向けて、何かが飛来していた。

 

それは奏と翼のアームドギアである槍と剣。異常事態に気付いた奏と翼が対処しようと放ってくれたようだ。

 

まだ離れてる為に撃墜出来れば二人を守る事は可能だ。離れるべく、二人を抱え上げる。

 

だが、再び予想だにしなかった事が上空で起きた。

 

ミサイルを撃墜する為に放ったと思われる奏と翼のアームドギア。だが、ミサイルが透過した光の粒子に触れた瞬間、まるでノイズが炭化する時同様に、光の粒子が二人の放った槍と剣は分解して完全に消し去った。

 

「ッ!?」

 

その光景を見て驚愕する。

 

何故アームドギアが?まさか、この力にもAnti_LiNKERと似たような作用があるのか?だが考えている時間などはありはしなかった。

 

もう既にミサイルは後数秒でボク達のいる地点へと到達してしまう。ミサイルの威力は分かっている。シンフォギアを纏っていない響や未来。そしてボクが巻き込まれてはひとたまりも無い。

 

諦めるのなどもってのほかだ。必ず助ける。ボク自身も。響も未来も。

 

だからこそ、ボクは響と未来を抱え、海へと駆け出した。

 

地上で爆発が起きればひとたまりもない。だが海中へと逃げればその爆発の威力を最小限に抑えられ、助かる可能性が高い。今取れる最善の対応。シンフォギアを纏わない二人、そして蒼き雷霆(アームドブルー)が使えない今の自分にとって助かる方法が最も高い物。

 

だが危険はある。未来と響が気を失っている為に海中へと飛び込むのは危険だ。だが、二人を死なすわけにはいかない。危険だとしても二人を助けるにはその方法しかない為に、そう取らざるを得ない。だが、助かれば二課の医療施設がすぐ近くにある為に助かる可能性が高い。

 

だからボクは急ぎ、海中へと飛び込んだ。

 

だが、

 

「ッ!?何で地面が!?」

 

飛び込んだと思った海。しかし、飛び込んだ瞬間に、急激に水が引き、地面が出現したのだ。

 

地殻変動?陸地へとこの場を飛ばされた?いや、亜空孔(ワームホール)の力など見なかった。ならば何故?

 

他の聖遺物?まだアシモフが力を隠していた?

 

ほんの僅かな時間で疑問が浮かぶ。しかし、その疑問を一つ一つ解消する時間などはありはしない。

 

既にミサイルがボク達の頭の目と鼻の先に迫っている。

 

海中へ逃げる事も不可能。蒼き雷霆(アームドブルー)で撃墜する事も不可能。装者や二課の救援も間に合わない。

 

絶体絶命。

 

その言葉以外形容出来ない状況。

 

だが、どんな絶望的な状況でも諦めない。諦めきれない。

 

アシモフによって全て奪われていいのか?シアンも。アシモフの手の中にいるボクを救ったセレナを。

 

アシモフによって壊されていいのか?ボクが居てもいい場所を。みんながボクを受け入れてくれてくれたあの場所を。

 

また繰り返してもいいのか?あんな絶望を。アシモフによって再びボクと同じガンヴォルトが再び苦しむ様な事を。あの世界で。

 

そんな事あってはならない。奪われてはならない。壊されてはならない。繰り返してはならない。

 

響を未来を失いたくない。奏や翼、クリスの元に今度こそ無事で帰らなければならない。ボクを受け入れてくれた二課に戻らなければならない。シアンを、セレナを取り戻さなければならない。そうしなければ悲劇は繰り返される。その渦中にいるF.I.S.の面々。救わなければならない。

 

アシモフの手によってその全てを奪われてなるものか。

 

こんな所で死んでたまるか。アシモフにもう二度と殺されてなるものか。

 

絶対生きて帰る。

 

誓ったのだ。ボク自身も本物である事を証明すると。アシモフを今度こそ殺すと。

 

ボクは絶望に抗う。

 

そしてミサイルがボクのいる場所へと着弾して、大きな爆発が起きるのであった。

 

◇◇◇◇◇◇

 

「ガンヴォルト!響!未来!」

 

「ガンヴォルト!立花!小日向!」

 

奏と翼がミサイルが着弾した場所へと叫ぶ。黒煙が舞い、着弾して辺りが火の海に包まれ、あの場で何が起きているか分からない状況になった。

 

無情にも落とされたミサイルの場所を結果的に何も出来なかった事に二人は絶望した。

 

「そんな…」

 

調もあまりの事にただ短くそう言うことしか出来なかった。

 

ガンヴォルトと響、未来がいる場所にミサイルが放たれており、それを撃墜しようとする所までは良かった。だがしかし、あの光の粒子が二人の攻撃を阻んだ。

 

未来の纏う神獣鏡(シェンショウジン)の力の残滓。暴走してそれが極限まで高まった事による粒子は二人の放った槍と剣を一瞬の内に分解して消し去ってしまった。

 

その結果、三人はミサイルが着弾した事による爆発に巻き込まれた。

 

あれ程の力を持ったガンヴォルトであればミサイル程度、全く問題にならなかった。だが、あの時のガンヴォルトは先程の力である蒼いオーラも雷撃も纏っていなかった。

 

力の奔流に巻き込まれ、未来と響を助けた結果オーバーヒートしていた。あまりガンヴォルトのなる事のない状態。だが、その状態故に蒼き雷霆(アームドブルー)が使えないと知っている。だからこそ助けようとしたのに、それは残された光の粒子によって阻まれた。

 

ガンヴォルトも生存する為に海中へと飛び込もうとしたのだが、地面が盛り上がり、戦艦ごと何かが浮上した。

 

翼や奏、調の立つ軍艦をも持ち上げだ巨大な島のようなもの。それがガンヴォルトの邪魔をした。そしてそれは今も尚空中へと浮かび上がっている。

 

「奏!翼!」

 

そして軍艦の底の地面にこちらへと向けて叫ぶ弦十郎の姿。その近くには二課の面々が浮かび上がった地面の上で戦艦の乗組員を続々と救助している。

 

「ミサイルの存在を視認するのを遅れた!アシモフの蒼き雷霆(アームドブルー)の妨害でレーダーが機能しなかった!ガンヴォルトへ向かっていたミサイルは撃墜できたか!?」

 

弦十郎の言葉に奏も翼も答えられない。撃墜は失敗。ガンヴォルト、それに響と未来がどうなったか分からない故に答えられなかった。

 

希望を担う存在の再びの生死不明。そして二人にとって大切な人であるガンヴォルトのその状態の為に弦十郎の言葉に何の反応を示さなかった。

 

それを察した弦十郎が異常に気付き、二課の面々に向けて叫んだ。

 

「手の空いているものはこっちだ!」

 

その言葉に慎次や二課のメインメンバーが弦十郎の元に集う。そしてすぐさま弦十郎達は黒煙が舞うミサイルの着弾箇所に向かった。

 

だが、蔓延する火の手。それに阻まれて、思うように状況を知る事も、ガンヴォルト、響と未来の安否も分からない状況。

 

「ガンヴォルト!響君!未来君!」

 

「ガンヴォルト君!響さん!未来さん!」

 

だが、それでもガンヴォルトの生存を信じ、火の中へと飛び込もうとする弦十郎と慎次。

 

だが、そんな二人を安心させるように、黒煙と火の海からゆっくりと歩く存在が確認出来た。

 

あの場で行動出来たのはガンヴォルトのみ。そのゆっくりと歩く存在がガンヴォルトだと分かると全員が安堵する。奏も翼も、そして調もその姿を確認するとその場から急いで離れて二課のメインメンバーが集う場所へと駆け出した。

 

そして黒煙を抜け出してくるように、ゆっくりと現れたガンヴォルト。無事であった事に誰もが安堵した。

 

火の手が回っていることを気にぜず、奏と翼が、ガンヴォルトの元へと駆け寄った。

 

「ガンヴォルト!」

 

安堵の表情を浮かべ、近寄る奏と翼。その腕の中には煤けてしまったが、無事な響と未来の姿。

 

全員の無事に本当に良かったと安堵するが、それはほんのひと時であった。

 

奏と翼は焼けた肉の匂い。そしてガンヴォルトへと近付いていくごとに強くなる血の匂い。そして二人の声に反応をせず、ただゆっくりと歩くガンヴォルトの姿に不安がよぎった。

 

その不安は見事に的中した。

 

ガンヴォルトの目は焦点があっていない。だがそれでも二人を助ける為に火の海から抜け出そうとしていた。そして奏と翼の姿を視認すると、響と未来を二人へと託すと、そのまま倒れ込んだ。

 

なんとか二人で支えるが、支えた二人の手にはべっとりと血が付着した。

 

その血はガンヴォルトが流していたもの。正面はなんともなく見えていたがその背中には大量の鉄片がこれでもかと言うばかりにガンヴォルトの背中へと突き刺さっていた。

 

「…ごめん…二人はなんとか…なったけど…ボク自身はどうにも出来なかった…」

 

か細い声で二人へと向けてガンヴォルトはそう言った。

 

「ガンヴォルト!喋るな!」

 

「何も言わなくていい!」

 

二人はそう言うガンヴォルトへとそう叫ぶ。支えるガンヴォルトの身体はとても冷たく、かなりの血を流していることが分かったから。

 

「しっかりしてくれ!ガンヴォルト!」

 

「ガンヴォルト!目を瞑るな!気をしっかり持って!」

 

無茶だと知っていても二人はそう叫ぶことしか出来ない。死んで欲しくない。こんな所で失いたくない。そう思うからこそ、叫んだ。

 

だが、ガンヴォルトもそれを理解している。ガンヴォルトもこんな所で死ぬわけにはいかないと思っている。

 

「ごめん…奏…翼…少しだけ休む…アシモフを倒すから…この手でアシモフを…殺すから…少しだけ…少しだけ休ませてくれ…」

 

そう言い残してガンヴォルトは気を失った。アシモフを倒すことを、アシモフを殺すことをこんな状態になってまで言い切った。

 

だからこそ、二人はすぐさまガンヴォルトを火の手が回るこの場からガンヴォルトと響、未来を連れて急いで離脱した。

 

そしてガンヴォルト、響、未来を弦十郎へと引き渡した。

 

弦十郎もガンヴォルトの間近で見た姿に何も言うことが出来ない。そしてそれと共に引き渡された未来と響。未来も響もあの爆発で煤けてしまったが、ガンヴォルトよりも軽症に見える。だが見えるだけ。まだ弦十郎達は知らないが未来の身体はLiNKERにより侵されている。そして響もまたガングニールによって侵食されている。今は体表に現れていないが、どうなったか分からない状況。

 

「旦那!全員治療出来るよう手配してくれ!」

 

「司令!三人を早く!」

 

二人は叫んだ。弦十郎もそんな事分かっている。倒れは三人は一刻の猶予すらもないかもしれない状況。三人をそれぞれのストレッチャーに乗せて、急いで本部の医務室へと連れて行くように叫んだ。

 

「緊急治療が必要な者達がいる!今すぐオペの準備をしてくれ!三人分だ!全員必ず助けるんだ!」

 

そう叫び、ガンヴォルト、そして響と未来を乗せたストレッチャーの後をついて行く。その後に奏も翼も。そして調もその後へ着いていくのであった。

 

「必ず…必ず全員助ける…絶対に死ぬんじゃないぞ…」

 

弦十郎は自身を安心させるかのように、そしてガンヴォルトを絶対に助けると誓いながら走っていった。

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