戦姫絶唱シンフォギアAB   作:株式会社の平社員

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あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。
そしてお久しぶりです。ようやく仕事にワクチン接種にひと段落がつきましたので投稿いたします。
音信不通で申し訳ありませんでした。
私は元気でやってます。


98GVOLT

浮遊するフロンティアが更に上空へと持ち上げられた。その影響により、船内が大きく揺れる。

 

モニターに映る巨大な手。それが遥か彼方に伸びていき、何かを掴んだかと思うと、フロンティアを持ち上げたのだ。

 

そしてそれと同時に鳴り響くアラート。

 

船内の異常を知らせる物ではない。以前、ウェルが目的を話した際に月の落下タイミングを計算して出した予測が大幅に狂い、かなりの時間が減らされている事を知らせるアラート。

 

「何故月の落下が急激に!?」

 

アラートの正体を知り、何故このような事が起きたのか分からずに叫ぶ弦十郎。

 

「フロンティアです…アシモフとウェルは、フロンティアの浮上の為に月を掴み、フロンティアを持ち上げた。その影響により、月の落下軌道が変化し、リミットを強制的に早めた…あの男達ならやりかねません」

 

ナスターシャが弦十郎へとそう告げた。ナスターシャもフロンティアの知識があり、そしてアシモフとウェルという男達と行動していたからこそ、そう言った行動を起こすと考えていたからだ。

 

「クソッタレ!」

 

弦十郎はそう叫んだ。この星の滅亡が近付いてもまだ時間がある。まだ止める算段をつけられるかもしれない。しかしフロンティアが完全に起動してしまった事により、アシモフの目的がどんどんと進み、終末が近付く。星の滅亡よりも先に人類が滅亡してしまう。

 

悪態をついている暇など無い。フロンティアを止めねば。ウェルを止めねば。アシモフを止めねば。

 

すぐさま弦十郎は奏、翼へと命令を下す。

 

「二人は直ぐ様に出撃準備を!これ以上アシモフの!ウェルの好きにさせてなるものか!これ以上誰も犠牲にならないようにするためにも!取り戻す!そしてあいつらの野望を打ち砕く!」

 

「言われなくても!これ以上あの外道共の思い通りにはさせるかよ!」

 

「分かっています!これ以上は悪い方向などに進ませやしません!」

 

弦十郎の言葉にそう返すと二人はそう返し、司令室を出て行った。

 

そして弦十郎はナスターシャと調へと視線を向ける。

 

「分かっています…全て私達があの外道達に協力してしまい、この様な事態になってしまいました…今更私達が貴方達と協力してアシモフを倒すと言った所で自分達の罪が消えるなどと思っていません…ですが罪を償う為にはあの外道共を倒さねばなりません…世界を救わなければなりません…そして…切歌を…マリアを…そしてセレナ助けなければなりません…救った後はどんな事だろうと受け入れます。こちらからお願いします…私達も協力させてください」

 

ナスターシャは弦十郎へと頭を下げる。

 

ナスターシャ達のやった事は確かに許されない。テロリストの幇助。それも世界の存亡を左右する程の。アシモフという男と協力していたという事は消えない。

 

だが、それでも自分達の罪を受け入れて、アシモフと敵対するという意志を、世界を守ろうとする意志を弦十郎は振り払う筈も無かった。

 

「ご協力感謝いたします」

 

その言葉を聞いてナスターシャは頭を上げ、調へと向けて言う。

 

「調…頼みます…この方達と共に…切歌を…マリアを…セレナ…」

 

「分かってるよ、マム。絶対…絶対助ける…切ちゃんも…マリアも…セレナも…みんな助け出す」

 

ナスターシャへと向けて調がそう言う。

 

「お願いします、調」

 

そして調が協力することを言うと奏と翼の後を追う様に調も出て行った。

 

「調…貴方もどうか無事で…」

 

「…大丈夫です…必ず全員無事に帰って来てくれます」

 

弦十郎は願う様に手を握るナスターシャへと声をかけた。

 

そして司令室の全員へ声を掛ける。

 

「総員!此処が正念場だ!必ず世界を救うぞ!」

 

その言葉に全員が頷き、それぞれが最大限のサポートを行おうと動き始める。

 

弦十郎はそう言った。この場の全員には役割がある。装者達はアシモフを除いたウェルの捕縛、クリス、切歌、マリアの救助、そしてソロモンの杖の奪還。オペレーター達には少しでも有益な情報を得る為に情報収集。医療班は傷付いた仲間達、そして救出した米国軍の治療。慎次達エージェント達もオペレーターのサポートを行い、最悪の事態に備える。弦十郎もこの場の指揮官としてそんな最悪の状況にならない様、全ての指揮を取る。ナスターシャもだ。唯一のアシモフやウェルの情報をもつ彼女もこの場に居なくてはならない。

 

そんな中、響と未来だけが自分達がどうすればいいのか分からず、オロオロしている。自分達は何をすればいいのか?何をするべきなのか?

 

「君達はガンヴォルトの元へ向かってくれ」

 

そんな二人を見かねて弦十郎がそう言った。

 

「祈るだけじゃ無い。願うだけじゃ無い。ガンヴォルトが少しでも目を覚ましてくれる様、声を掛け続けてくれ。それは君達にしか出来ない事だ」

 

ガンヴォルトが我が身を顧みず助けたかった二人。その二人の声がガンヴォルトの覚醒を促してくれると信じている。

 

そんな事が起きるのか?そう思われるだろう。

 

だが弦十郎はそれを信じている。二人の声がガンヴォルトを目覚めさせてくれると。立ち上がらせてくれるきっかけを作ってくれると。

 

その言葉に響も未来も自分達のやるべき事を理解して頷いた。

 

「師匠!分かりました、ガンヴォルトさんのお陰で助かった事を伝えます!」

 

「自分達は助かった事をガンヴォルトさんにいち早く知ってもらえる様声を掛け続けます!」

 

二人もそう言って司令室を出て行った。

 

「頼んだぞ、二人共…ガンヴォルト…二人がお前が目覚めるのを待っている…奏が…翼がお前がアシモフを殺す事を信じている…だから頼む…早く目を覚ましてくれ…みんなお前が立ち上がるのを待っている…何度も挫けようが立ち上がり、奇跡を見せて来たお前を待ってるんだ…ガンヴォルト」

 

弦十郎はそう呟きながら、モニターに映る情報を整理して対策を練るのであった。

 

◇◇◇◇◇◇

 

奏と翼の後を追う様に出た調。

 

急いで二人に追いつく為に走り出したが、少し離れた場所に奏と翼が待っていた。

 

「!?どうして?」

 

待っている二人を見て調がそう言った。

 

「どうしても何も、一緒に行く為だろう?救いたい人達がいる。私達にも、あんたにも。やるべき事が同じだろ?」

 

「敵対していたが、今は思いは同じ。ガンヴォルトが目覚めるまでアシモフの足止め、全員生きて世界を救う事。ならば手を取り合い、共に行く方が可能性が高くなる。

 

奏と翼がそう言った。

 

かつては敵対していようが関係はない。今なすべき事を理解しているのならそれだけで構わない。

 

ただ世界を救う。友を救う。大切な人を救う。

 

「そうだね…必ず救おう…みんなを…世界を!」

 

調の言葉に奏も翼も頷き、すぐに潜水艦の出撃口へと向かう。

 

出撃口へ着いた三人はギアを纏い、勢いよく飛び出した。向かうはアシモフ達が輸送機で向かったフロンティアの中心部。

 

そこにアシモフとウェル。そして救出しなければならない三人がいる筈だから。

 

三人は救う為に。そしてガンヴォルトが目覚めるまでの時間を稼ぐ為に走る。

 

フロンティアを駆け一直線で中心部へと向かう三人。

 

だが、それを阻む様に、ノイズが大量に現れる。

 

しかし今の三人には障害にもならない。

 

突きつける槍がノイズを貫き、その突きの衝撃波が辺りのノイズを蹴散らす。

 

振るう剣がノイズを斬り裂き、斬撃で周囲のノイズごともろとも炭へと変える。

 

回転する丸鋸がノイズを切り刻み、そのまま丸鋸を飛ばして辺りのノイズを細切れにする。

 

周囲の損害など考えないで済むこの場ではノイズなど相手にもならず、ただ無惨に散っていく。

 

ここで立ち往生する気など無い。こんな所で足止めを食らうわけにはいかない。

 

ただ三人はひたすらに攻めてくるノイズを片っ端から消しとばしながら中心へと向けて駆け続けるのであった。

 

◇◇◇◇◇◇

 

「やっぱりノイズだけじゃ足止めにすらなりはしないね」

 

フロンティアの中心部、動力炉部分でモニターの様になった光の板を見ながらウェルはそう呟いた。

 

ソロモンの杖によって呼び出されたノイズ。そのノイズ達がただひたすらに蹂躙される様子を見ながらも、焦りは全くなく見ていた。

 

普段のウェルならばこの映像を見ただけで絶叫し、慌てふためくであろう。だが、そんな心配もする必要もない。

 

なぜならウェルの側にはアシモフがいる。アシモフは無敵であり、最強だ。あのガンヴォルトに一度敗北しているが、そんな事は関係はない。何度もガンヴォルトを追い詰め、敵を絶望へと貶めて来たアシモフは同じ過ちを起こさないと信じているから。

 

だからこそ焦る必要も慌てる必要もない。

 

そして三人だけという事はガンヴォルトは死んだか行動不能になっていると分かる。

 

ガンヴォルトのいない装者であれば勝ち筋はいくらでも見える。

 

それが先の戦闘で実証されているから。

 

だからウェルは余裕を持ち続ける。

 

「さて、また絶望を与えるとしましょう。卑怯と言われようが外道と言われようが勝てばいい。勝者は何をしても許させる!さあ!何度でも貴方達に絶望を与えましょう!」

 

モニターを見ながらウェルは高笑いを浮かべる。

 

そのモニターに映し出されたフロンティアのマップに移された地点を見ながら。

 

それはノイズと戦う三人の少し先にある赤い点。そしてその更に先にある赤い点に三人へ向けた絶望の刺客を思い浮かべながら。

 

◇◇◇◇◇◇

 

心電図の鼓動を移すモニターから流れる機械音だけが響く病室。

 

その中心に横向きに寝かされているガンヴォルトの脇に響と未来はガンヴォルトの手を握り、目覚めを待っていた。

 

「ガンヴォルトさん…助けてくれてありがとうございます…私達は無事です…」

 

「守ってくれて…助けてくれてありがとうございます…私達の為に庇ってくれて…」

 

響と未来は静かに眠るガンヴォルトに向けてそう言った。

 

しかし、反応はない。目覚める兆しを見せない。響と未来を守るために負った大きな傷。そのダメージがある為にガンヴォルトは目を覚さない。

 

だが、それでもガンヴォルトに声をかけ続ける。弦十郎に言われた様に、ガンヴォルトの目覚めを促す為に。

 

無駄だと見られるが、響も未来もそんな事を気にせず、声をかけ続ける。

 

「みんなガンヴォルトさんが目を覚ますのを待ってます…」

 

ガンヴォルトの手を握る響の手に力が入る。目覚めて欲しい。また無事な姿を見せて欲しいから。

 

「信じています…ガンヴォルトさんが目覚めるのを…こんな悲劇を終わらせてくれるのを…」

 

ガンヴォルトの手を握る未来の手にも力が入る。また一緒にいる日々を送りたいから。みんなと共に笑い合いたい。

 

自分だけじゃない。みんなガンヴォルトを待っていると。

 

響と未来は声を掛け、祈り、願い続ける。

 

「奏さんや翼さん…調ちゃんが頑張っています…」

 

「ガンヴォルトさんが目覚めるのを信じて戦っています…」

 

「だから目を開けてください…ガンヴォルトさん」

 

二人の言葉が重なってそう紡いだ。

 

その言葉の返事を返す様に、ガンヴォルトの握る手に力が入るのを感じた。

 

「!?」

 

聞こえていたのか分からない。だがしっかりとガンヴォルトが二人の言葉に答えてくれた気がした。

 

その反応に二人は更に力を込める。目覚めてくれと。

 

今度は反応を示さなかった。だが、二人にとって先程の事でガンヴォルトが目覚める兆しを感じ、先ほどまでと同様に声を届け続けた。

 

だが、ガンヴォルトの手に力が入らなくとも、二人の言葉が届いている様に、ガンヴォルトに繋がれている心電図には二人の言葉に応える様に大きく波打っていた。

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