戦姫絶唱シンフォギアAB   作:株式会社の平社員

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99GVOLT

ノイズを倒し進み突き進む三人。

 

「このまま突き進むぞ!二人共!」

 

「言われなくとも!」

 

「分かってる!ここで終わらせるんだ!」

 

アシモフの計画を阻止する為に。ガンヴォルトの覚醒までの時間を稼ぐ為に。そして囚われたクリス、マリア、切歌を救う為に。

 

アシモフの邪魔をする為に突き進む。少しでもこちらの有利な状況を作り、ガンヴォルトとアシモフとの戦闘を有利に進める為に。

 

ノイズは群れをなして三人へと襲いかかる。これ以上の進撃を邪魔する様に。これ以上の歩を阻むかの様に。これ以上進む事を遮る様に。

 

だが、三人はそんなノイズの群れをものともしない。邪魔するのならば突き穿つ。阻むのなら斬り伏せる。遮るのならば切り刻む。

 

三人の進撃は止まる事はない。ノイズだろうが、障害物であろうが、ただ真っ直ぐに目的地であるフロンティアの中心部を目指して。

 

ノイズ達を物ともしない三人は進み続ける。

 

だが、その進行を止める様にノイズを切り裂きながら飛んでくる緑のエネルギーの斬撃が三人に襲い掛かる。

 

「!?」

 

三人は想定外のノイズを切り裂いて来た攻撃であったが、躱した。ダメージは受けていない。だが、三人の進撃がその一撃で止まる。

 

だが、その歩みを止めたのは想定外の攻撃に対してではない。

 

現れた存在に対して、攻撃して来た存在に対して、驚きのあまり歩みを止めてしまった。

 

「そんな…何で…」

 

現れた存在に、初めに声を上げたのは調であった。だが、驚く調に対して現れた人物は何の躊躇いもなく再度斬撃を放った。

 

呆然とする調を奏が抱えて斬撃を躱す。

 

「アシモフの野郎!何処までもこっちの神経逆撫ですれば気が済むんだ!」

 

調の無事を安堵する奏。だが、それ以上に現れた人物に対して思う事があり、アシモフの名を叫ぶ。

 

「あの男は本当に何処までも下衆な事を!」

 

翼も剣を構えてそう叫ぶ。

 

既に経験しているからこそ、現れた人物が味方ではなく敵として現れた事に憤りを隠せない。

 

「そんな…こんなのって嘘だよね…嘘だと言ってよ!切ちゃん!」

 

そう。三人の目の前に現れたのは翼の代わりにアシモフによって連れ去られた切歌の姿であったからだ。

 

その首にはかつてガンヴォルトの手によって外された筈の首輪の様な物。そして目元には未来同様にギア形状が変化してバイザーの様なものが出現している。

 

そしてこちらへの攻撃、調の声が聞こえている筈なのに何の反応を見せない切歌。その事から切歌は先の戦いで未来にも行われた洗脳を施されていると考えられる。

 

何度も戦闘を重ねたが先の戦いでアシモフを裏切り手を貸してくれた者。救わなければならないと思っていた筈の人物。その筈だった。

 

だが今は敵として目の前に立ち塞がっている。

 

かつての未来の様に。

 

「切ちゃん!目を覚まして!私だよ!調だよ!ねぇ!切ちゃん!」

 

そんな切歌へと声をかけ続ける調。しかし、先ほどと同様に調の声は切歌には届いていない。響が未来へと声をかけ続けても反応がなかった様に。

 

今の切歌に調の声が届いていない。

 

それでも調は嘘だと、いつもの切歌だと信じ続けて叫び続ける。

 

だが、切歌は声をかけ続ける調に反応を見せず、調に向けて鎌を構えて距離を詰めてくる。

 

ただ機械的に、自分の意思とは関係のない様に。ただ殺す為に振るう一撃。容赦のない一撃が調に振り下ろされる。

 

だが、その一撃は調の前に出た奏が槍で受け止めた。

 

「しっかりしろ!」

 

槍で鎌を受け止め、それを弾き、切歌を吹き飛ばす。

 

切歌は地面に鎌を突き立て、吹き飛ばされる距離を短くすると突き立てた鎌を引き抜いて再度奏に、いや、その背後にいる呆然とする調へと攻撃を仕掛ける。

 

だが、そんな事をさせるはずもなく、奏が切歌を止め、互いの鎌と槍で押し合う。

 

そんな奏をサポートするべく翼が切歌へと切り掛かるが、奏との鍔迫り合い利用して押し出されながら回避する。

 

そして距離取りこちらの様子を伺う切歌。

 

だが、翼が様子を伺う切歌へと接近して剣を振るう。切歌は振るう剣を躱し、弾き、逸らして対応する。

 

「どうして…何でこんな事に…何で切ちゃんと戦わなきゃいけないの…助けたいだけなのに…救い出したかった筈なのに…何で…何で…」

 

呆然と立ち尽くす調。

 

救いたかった筈の一人が、大切な人の一人と何故戦わなければならない状況になってしまったのか?どうして?どうして?

 

ただ呆然と立ち尽くし、何故、どうして思い続ける。

 

どうして戦わなきゃならないのか?何故傷付け合わなければならないのか?調の脳内はそればかりが巡っている。

 

だが、そんな呆然と立ち尽くす調へと奏が叫んだ。

 

「しっかりしろって言っただろ!」

 

翼が切歌の注意を引いている状況で奏が調へと向けて言う。

 

「お前は何のために覚悟を決めたんだよ!?何の為に一緒に出て来たんだよ!?助けるんだろ!?救うんだろう!?」

 

奏が狼狽える調へと喝を入れる。

 

「他に方法があるかもしれないけど今は時間がないんだよ!救うには今は戦うしかないんだよ!戦ってお前の声を!歌を届けるしか方法がないんだよ!さっきの戦いで分かってるだろ!大切な人の声!そして歌をあいつにぶつける!それしか方法がないって!」

 

アシモフによって操られた未来を救うにはそれしかなかった。時間をかければ他の手立てはあったかもしれない。しかし、あの時はアシモフが居た為に不可能であった。今もアシモフによる終末のカウントダウンが迫っている。だからこそ今分かっている方法で救う。戦って声を届ける。響が未来へと歌を、声を届けた様に。

 

戦って思いをぶつけ、歌を、声を届けるしかない。切歌を救うには今はそれしか方法がない。

 

「そんな事…私には出来ない…切ちゃんを…切ちゃんを傷付けるなんて…」

 

しかし、調には親友を傷付ける事が出来ないと言った。

かつての日々が、切歌との思い出がそれを邪魔をする。覚悟を決めたが揺らいでしまうほどの大切な思い出。親友の切歌との共に歩んだ人生が、調の覚悟を鈍らせる。

 

「お前の気持ちはよく分かるよ…でもな…あいつを止めないと…私達が止めないとあいつがもしも戻れた時に、お前以上に辛いを思いをするんだよ…」

 

奏もかつて操られた事があるから言った。あの時、かつてのカ・ディンギルでの戦いで、ガンヴォルトがシアンが止めてくれなければ?シアンの言葉を受け入れず、ガンヴォルトを殺していたのならば?

 

それは一度は考えた事。あの時はガンヴォルトが、シアンが助けてくれたからその思いを味わう事がなかった。

 

助けられず、翼にクリス、響と戦い、殺し、本物のフィーネが思い描いた先の世界で自我を取り戻した時の事を。

 

自身の手で殺した大切な人を。親友を。その重責に耐えられるはずがない。手に残った大切な人を手に掛けた感触を。大切な親友を手に掛けた感触を。その自責の念で自らを傷付け、追い込み続ける。

 

そう言う考えがあるからこそ、傷付けてでも止めなければならないと、ぶつかってでも叩き起こすしか無いと奏は思っている。

 

翼も奏の想いを理解しているからこそ、切歌を止めようとしている。

 

「私達が止めなきゃあいつはもっと残酷で、取り返しのないものを背負う事になる。だから私達は傷付けても止めるんだよ。もしあいつを私たちが止められなきゃあいつは私達が大切に思っている人を殺す。それを守ろうとする人を殺す。アシモフの事だ。あの外道ならそうする。お前はそれをあいつにさせるのか?あいつにお前の大切な人達を殺させるのか?」

 

「ッ!?」

 

奏はそう言った。冷たいと思うだろうが、そうでも言わないと分からないと思ったから。

 

調もそう言われて自分を妹の様に愛情を持って接してくれたマリアが、親の様に接したナスターシャの姿が思い浮かぶ。

 

切歌も大切に思っている二人。その二人が切歌の手で。自我のないままそうさせていいのかと考えさせられる。

 

「あいつにあんたの大切な人も殺されるんだよ!それでもいいのかよ!あいつは自我のないまま大切な人を殺させるのを黙って放っておくのか!あいつを止めなきゃあいつ自身が罪に苛まれる!そんな事をさせない為に戦うしかないんだよ!そんな事をさせない為にもお前の声を!お前の歌をあいつにぶつけるしかないんだよ!」

 

奏は調へと叫んだ。切歌にそんな事をさせていいのかと。そんな追い込む様な事をさせていいのかと。

 

「助ける為には自分の想いをぶつけるしかないんだよ!救う為に戦って目を覚まさせるしかないんだよ!」

 

だからこそ、奏は調へと再度喝を入れた。やるしか無いと、救う為に今やるべき事は戦う事なのだと。そして救うには最も切歌との繋がりの深い調がやらなければならないという事を。

 

「私はそんな事させない。させたく無い。あいつにそんな想いをさせたく無い。だからこそやるんだよ。あいつとはそんな付き合いあるわけじゃない。だけど同じ境遇を味わったからこそ、止めなきゃならないんだよ。そんな辛い目に遭わせるわけにはいかないんだよ。その為にはお前が必要なんだよ。私達じゃなくてお前が。助けたいのならお前がやらなきゃならないんだ」

 

切歌に誰かを殺させない様に。そんな想いをさせない為に。それには調が戦うしかないと言った。

 

「方法が…まだ他に方法が…」

 

「あるかもしれないけど今は時間がないんだよ!それしかないんだよ!取り戻すんだろ!あいつを!救うんだろう!みんなを!だから!」

 

奏が調へと戦え。そう言おうとした。だが、それを阻むかの様に、翼の叫びが二人に届く。

 

「奏!」

 

奏の呼ぶ声。その声に遮られると共に、いつの間にか翼との交戦を潜り抜け、鎌を振りかぶる切歌の姿が。

 

奏はすぐさま槍を鎌へとぶつけて攻撃を受け止める。

 

だが切歌は戦意を失った切歌を殺そうと奏を吹き飛ばそうとする。

 

奏はそうはさせまいと力を込めて切歌を止め、硬直状態を作る。

 

「覚悟を決めろ!お前しかこいつを止められねぇんだ!」

 

そして奏は調へと再度叫んだ。

 

◇◇◇◇◇◇

 

調は未だどうすればいいのか迷い、動けずにいた。目の前では奏が切歌と対峙している。だが一歩、小さな一歩が踏み出せないでいた。

 

奏の言う通りにするしかないと分かっていても、切歌を傷付けたくないと言う思いで葛藤していた。

 

だが、そうしなければ、大切な人であるナスターシャが、マリアを救えないとも言われた。

 

大切な人を失いたくない。それと同じくらい切歌を傷付け、失いたくない。

 

どうすればいいのか迷い続ける。響が未来を救った様に本当に自分が救えるのか?あの時はガンヴォルトがいた。切歌もいた。響もいた。みんながいたからこそ出来た。そしてそれ以外にも電子の謡精(サイバーディーヴァ)の力が他のみんなにあった。

 

自分にはそれがない。電子の謡精(サイバーディーヴァ)のない自分にはそんな事が出来るのか?切歌を本当に取り戻す事が出来るのか?

 

迷いと葛藤が調を動きを阻害する。

 

やらなきゃならない。やらねばならない。奏が言った様に自分がやらなきゃいけない。大切な人を守る為。大切な親友と対峙しなければ。

 

だが、どうしても一歩が踏み出せない。

 

もし出来ない場合は自分が救おうとする親友を傷付け、最悪の場合、手に掛ける可能性があるからだ。そんな事したくない。

 

そんな可能性があるからこそ調は動けない。

 

どうすればいい?どうすれば自分の思い描く最良の選択が選べる?

 

奏の言う様に戦うしかないのか?だが、それが可能でない場合は?

 

最良を考えても最悪の考えが思い浮かんでしまう。

 

覚悟は決めたはずなのに。

 

たった一つの絶望がその覚悟を踏み躙る。

 

目の前では奏が切歌と戦い、そのサポートをする為に翼も戦闘に加わる。だが、奏も翼も切歌を救おうとする為に、有効打を与える事が出来ず、逆に操られ、自我の無い切歌は二人をダメージを受けながらもそんなの関係ない様に殺す気で二人へと襲い掛かっている。

 

救おうとする者と殺そうとする者。実力差があれど、戦闘が長引き、疲弊が重なれば状況が覆るかもしれない状況。

 

そうなれば二人の身も切歌の身も、そして止める事を託した二課が、そしてナスターシャが殺される。

 

アシモフの計画が完遂すれば全てが終わる。

 

やるしか無い。だが、覚悟を決めてもどうしても切歌の笑顔が脳裏に浮かぶ。止める為に傷付け合い、その末に切歌を取り戻す事が出来るかと言う思い。それが出来ず、世界を救う為に、親友を手にかけてしまうと言う思い。

 

天秤にかけてもどちらも並行したままだ。調にとって切歌とはそれほど大事な存在。

 

そんな迷いが調を動かせようとしない。

 

救いたい。みんなを。切歌を。マリアを。ナスターシャを。そしてセレナも。

 

一歩が踏み出せない。

 

覚悟が持てない自分に嫌気がさす。

 

『貴方はどうしたいの?』

 

そんな迷う中、調の頭に声が響く。

 

誰か分からない声。だが、調はその声を知らずとも、正体を何故か知っていた。

 

(ッ!?フィーネ!?)

 

『私の事を知っているとかはどうでもいいの。いつまでも答えを出さず、そこで黙ってあの外道の思う様にさせたいの?それともあの子を救いたいの?』

 

フィーネの声が調へ問う。

 

だが、調は答えなくともフィーネは既に知っている様に言った。

 

『助けられる確証がない。傷付け殺してしまうかもしれない』

 

調の考えを読んで悩んでいる原因を言う。

 

『やりもしないでそんな考えを持つ事自体間違っている。確かに貴方には電子の謡精(サイバーディーヴァ)はない。だから潜在意識を呼び起こすための力が無い』

 

(ッ!?だったら私に切ちゃんを殺せって言うの!)

 

その答えに調はフィーネへと怒りをぶつけた。つまりはもう切歌を助ける術がないと殺すしか方法が無いと言っているからだ。

 

世界を救う為に切歌を殺す。もう切歌を殺す以外方法が無い事を知った。

 

(殺したく無い!切ちゃんに誰も殺させたく無い!世界も!全部守りたいのに!)

 

調は絶望する。親友を殺すしか無い現状に。殺すしか選択肢がないこの理不尽な世界に。絶望が調に覆いかぶさる。

 

だが、そんな絶望を振り払う様に、温かい何かが包み込む。そして調へとフィーネは言った。

 

『答えが出てるならそれでいい。私自身もあの外道にあの子に託した未来を絶やす事はしたくない』

 

そう言うと調の胸の辺りに体温と違った温もりを感じる。

 

『力を使いなさい。シンフォギアの力じゃない。電子の謡精(サイバーディーヴァ)の力じゃない。私の力を。魂に刻まれた、貴方()の力を』

 

そして更に胸が熱くなるのを感じた。

 

その背後にはフィーネがおり、まるで何かを託すかの様に、動けないでいる調の背中を押していた。

 

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