戦姫絶唱シンフォギアAB   作:株式会社の平社員

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白き鋼鉄のX2をようやくプレイすることができる様になった昨日。
とりあえず普通にクリアし終えてハードモードに突入しました。
さて、真エンドは今回はあるっぽいので確認する為に頑張ります。


101GVOLT

「まさか、フィーネが本当にいるのは想定外だ…」

 

動力炉のある部屋で調がフィーネの力を発現した事を見て苦虫を噛み潰したように表情を歪めるウェル。

 

想定外の事でどう処理するかを考えるウェル。

 

奏と翼がこちらへと向かって来たとしてもまだこちらに来るまでは時間がかかる。まだ二人を足止めする為の人員はいる。

 

だが、フィーネが切歌をどうにかしてアシモフの施した洗脳を解いた場合、二人を足止めする人員は同様に戻り、不利な状況に陥るのは目に見えている。

 

どうすれば?

 

アシモフが少しでも回復に専念している今、自分がどう判断を下せばいいか頭をフル回転させるウェル。

 

その近くには誰にも宿らなかったと思われていたフィーネが調にある事を知り、そしてフィーネが調へと顕現した事により、調がフィーネとなり、調という存在がフィーネにより塗り潰された事により悲しみに暮れていた。

 

身寄りのないマリアにとって大切だった家族がまた一人目の前で失われた。セレナ。ナスターシャ。そして調まで。奪われていく大切な家族。

 

そしてアシモフによってフィーネとなった調とアシモフによって操られ、戦わせられる切歌。そして死してなお、利用され続けるセレナ。そして今もなお、セレナに助けられなければ死んでいるマリア。

 

相手に常に絶望を叩きつけると共に、マリアにも何度も絶望を叩きつける。ギアペンダントを奪われ、ボロボロにされ、力無くその光景を見ている事しか出来ない。

 

自分の無力さに静かに涙を流す。

 

そしてマリアに更なる絶望を見せるかのように今まで息を潜め、回復に専念していたアシモフがゆっくりと立ち上がる姿が視界の端に映った。

 

「フィーネ…貴様が本当にあの中に混じっていたとはな…」

 

アシモフはモニターの様な物に映る調を見てそう呟いた。だがその表情には怒りが相変わらずこびり付いており、その表情に呼応する様に周りに迸る雷撃がバチバチと激しく音を立てる。

 

「アッシュ!?もう立ち上がって大丈夫なのかい!?」

 

だが、そんな怒りを気付かぬウェルがアシモフに心配そうに詰め寄った。

 

「貴様も私の心配せず自分がやるべき事をしろ。英雄になるのだろう。私はもう問題はない。暴走も治り、万全だ」

 

アシモフはそんなウェルを突き放し、怒りながらも冷静にウェルに指示を飛ばす。ウェルは無事なアシモフに安心しながら、迫り来る奏と翼に向けて刺客としてクリスに切歌同様阻む様無線で指示を出した。

 

もう少しで衝突するであろうクリス、奏と翼。

 

「正規適合者。操られていても、あの者よりは時間を稼ぐだろう」

 

ウェルの指示を聞き、奏と翼へと接近するクリスを見てそう呟くアシモフ。

 

元よりクリスに奏と翼を倒せるとは思っていない。切歌も同様だ。元より、自身が回復する為の時間稼ぎ。そしてかつての仲間であった者との殺し合いが目的。時間とかつての仲間との殺し合いによる精神を削り、着実な勝利を、計画の遂行を目的としたもの。

 

それで殺せればなおよし、奏を殺せなくとも、翼を奪えなくとも、自身が回復すれば戦況はひっくり返る。まだこちらに分があるのだ。

 

例えフィーネが現れようと、切歌が敗れようと、クリスが元に戻り、再び立ち塞がろうと関係ない。

 

自身さえいれば何の問題もない。

 

たった一つの障害を除いて。

 

自身がトドメを刺さなかった過ちが、何度も相対し、何度も殺したと思っていた男。ガンヴォルトの名を語る記憶を持つだけの紛い者。

 

紛い者だけが唯一、そして最大の障害。

 

そして自身の計画を為せたとしても紛い者の存在をこの手で殺さねば本当の意味で計画が完遂したと言えない。

 

自身の怠慢が生み出した障害を、存在を、この手で潰す。

 

「Dr.ウェル、私も出撃する。全てを終わらせに、計画を完全な者とする為に、風鳴翼を奪い、それ以外を全て消し去る。そして奴をこの手で今度こそ屠る為に」

 

そしてアシモフはウェルに向けてそう言った。あの時残した言葉通り、ここで全てを終わらせる。こちらの勝利で、ガンヴォルトを語る紛い者を殺して。

 

強欲なる簒奪者(グリードスナッチャー)は無くなったが、電磁結界(カゲロウ)を突破してこようが、こちらが勝つ。計画を遂行させ、本来の野望を成就する為に。

 

「今度こそ確実に殺してやる…終焉(デッドエンド)を迎えさせてやろう」

 

そしてアシモフは再びウェルへと指示を出す。

 

「更なる絶望を叩きつけてやる」

 

「絶望ってもう僕達に残っている手札はあの二人だけ…他に何があるって言うんだい?」

 

ウェルは既に切った手札しか残っていないと思いそう言った。

 

「貴様も巫山戯るのは大概にしろ。その手にあるだろう。絶望を与える最高の物が」

 

アシモフはウェルに苛つきながらもウェルの変態した手とは逆の方を見てそう言った。

 

「装者は全員出払っている。紛い者も出て来ていないを見るに意識を失う程のダメージを負っている。だからこそ、本部を叩く。定石だろう。そのくらい直ぐに答えを引き出せ」

 

その言葉に、ウェルはすぐに悪い笑みを浮かべた。

 

「アッシュの言う通りだ。帰る場所も、大切な者達が居なくなる事は最大の絶望…僕もすぐに考えつくべきだったよ」

 

アシモフの言葉通り、ウェルはノイズを二課の本部へと向けて解き放つようにソロモンの杖に念じた。

 

その光景を見たアシモフは誰にも聞こえないように舌打ちをして、動力炉から走り去る。

 

「やはり、無能力者は使えない。貴様も全てを終えれば貴様も用済みだ。あと僅かの時間、道化として踊っていろ」

 

アシモフはそう言って計画を遂行すべく、戦場へと赴くのであった。

 

◇◇◇◇◇◇

 

一方、アシモフの計画を足止めすべく、フロンティア中央へと向かう奏と翼。

 

かなり時間を割いた為に、全力で駆け抜けている。

 

ノイズも現れない為に、かなり順調に中央へ進んでいた。

 

だが、奏と翼には不安が残っている。

 

切歌があのような事があった為に、そう思わざるを得ない事。

 

クリス、そしてマリアの事だ。

 

アシモフは絶望として切歌を送り込んだように、クリスも同様の事を施している可能性が高い。そしてマリアもだ。

 

救わなければならない者達と戦わざるを得ない状況が不安なのだ。

 

救わなければならない。だが、本当に救えるのかと少し弱気になってしまう。

 

しかし、ガンヴォルトが奏を救った様に、響が未来を救った様に、救えた事例があるのにそれを信じないでどうする。

 

信じ切れば変わる現状がある。例え小さな可能性でも手繰り寄せる軌跡がある。だからこそ信じるのだ。自分達の歌がシアンの思いを呼び起こし、電子の謡精(サイバーディーヴァ)の力の一端を覚醒させ、救える事を。

 

弱気になるな。信じ続けろ。

 

そう自信を鼓舞させる二人。

 

だが、その鼓舞を遮るかの様に、脳によぎった可能性が目の前に現れ、二人の足を止めさせた。

 

「…やっぱり、こうなるのかよ…」

 

先に口を開いたのは奏。

 

そう。二人が足を止めた数十メートル先に見える共にアシモフと戦い、世界を守ろうと共に歩んだ仲間であった赤いシンフォギアを纏うクリスの姿。

 

切歌同様に操られた影響でギアの形が僅かながらに変化しており、纏う鎧の顔の部分がバイザーによって表情が見えなくなっている。そして同様に首には切歌が付けていたものと同様の物。爆弾だ。

 

「…奏、やれるか?」

 

翼は既に戦闘体制に入り、奏へとそう言った。

 

「やるさ、救わなきゃならないんだから…だけど、翼。ここは私一人でやる」

 

奏も戦闘体制に入りながらそう言った。

 

「アシモフが出張ってない今がチャンスなんだ。少しでも多くの邪魔をする為に、翼は先に行って計画を引っ掻き回せ。そうすれば、ガンヴォルトが目覚める時間を稼げる」

 

翼に一人で先に進ませようとする奏。

 

「でも…」

 

「この戦いは私がやらなきゃならねぇんだ。クリスと共に苦楽を共にした私がやらなきゃいけない。ガンヴォルトがいない以上、クリスは私が助けなきゃいけない」

 

奏は翼にそう言った。

 

奏とクリス。出会ってまだ半年も経っていないだろう。だが、それでも、クリスの事は一番奏が分かっているから。共に同じ人を好きになり、一緒に暮らし、同じ痛みを…家族を失った痛みを知る者だから。

 

奏がクリスと戦って戻すしかない。可能性があるのはガンヴォルト以外だと自分だと思うからこそそう言ったのだ。

 

「…分かった…奏、雪音のことをお願い…確実に雪音を元に戻して追いついて来て」

 

「分かってる、みんなで戻るって決めただろ?」

 

奏はそう言うと翼と共に駆け出した。

 

そんな二人を足止めすべく、クリスが二丁のガトリングを出現させ、一斉射撃を開始する。

 

弾幕の雨が放たれるが奏は翼の前に出て槍の穂先を回転させると弾を弾きながら前に進む。

 

奏を先頭に翼がその後に続く。

 

ガトリングから放たれる弾幕は穂先で全て排除出来る事はなく、幾つかは回転する穂先を通り過ぎ、奏の身体に被弾する。

 

だが、それでも奏も翼も止まる事はない。

 

奏はクリスを助ける為に、翼もこれ以上アシモフの計画を進ませるわけにはいかない為に、傷付きながらも真っ直ぐに進み続ける。

 

そしてクリスとの距離を詰める十メートルを切った所で奏の背後から翼が飛び上がり、クリスの上を飛び越えようとする。

 

だが、それをクリスは逃さない。片方のガトリングを奏へと照準を合わせたまま、もう片方のガトリングで翼を落とそうとする。

 

だが、それを奏が許さない。片方のガトリングとなった事で弾幕が勢いを落とすと共に、十メートル程の距離を被弾しながらも一気に詰め、槍をクリスに振るう。

 

「クリス、余所見するな。私が相手してやる!」

 

クリスは奏の攻撃を両手に持つガトリングを受け止めた。だが、その結果、翼はクリスの頭上を飛び越え、フロンティア中央へと単身で駆け出した。

 

クリスは翼を逃さない様に追撃を試みるが、受け止めていた槍で奏がそれを阻止した。

 

「翼!頼んだぞ!」

 

「奏!雪音の事を頼む!」

 

そして翼が一気に加速して、既に二人からはかなりの距離を取り、追撃は不可能なものとする。

 

「クリス…お前は私が助ける…少し痛いが我慢しろよ!」

 

そして奏は単身で操られたクリスへと向けて槍を振るうのであった。

 

◇◇◇◇◇◇

 

奏とクリスの戦闘が始まる音が、遠くの方で響いている。

 

奏ならやってくれる。必ずクリスを取り戻してくれる。そう信じながら翼は中央へと駆け出す。

 

既に中央は目と鼻の先。

 

翼は出来るだけ多くの妨害の為に、全速で中央へと駆け出す。

 

そして辿り着いた先に、入り口が見える。

 

あの中に入り、出来るだけの妨害をすれば、ガンヴォルトの目を覚ます時間を稼げば、必ずガンヴォルトがアシモフを止めてくれる。

 

そう信じて翼はフロンティア内部へと突入しようとした。

 

だが、それは叶わなかった。

 

大きく開けたフロンティア内部への入り口。そこから放たれる悍ましい殺気にさっきまでの勢いがかき消された。

 

「ッ!?まさか…ここでお前と鉢合わせるなんて…」

 

冷や汗を垂らした翼は剣を構えてそう言った。

 

「天羽奏ではないのか…奴ならば殺していた所だが、まさか貴様からこちらへと来るとは手間が省けたぞ…風鳴翼」

 

その言葉と共に奥から姿を表した全ての元凶であり、ガンヴォルトを何度も追い詰め、こちらに何度も絶望へと叩きつけて来た首謀者、アシモフの姿があった。

 

「まさか…貴様がここで出てくるとは…」

 

圧倒的な絶望たる存在が、今、万全な状態で翼の前に立ち塞がった。

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