戦姫絶唱シンフォギアAB   作:株式会社の平社員

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104GVOLT

銃撃と雷撃が荒れ狂う戦場ではアシモフと翼が戦闘を繰り広げる。

 

しかし、戦闘と言ってもアシモフの独壇場と言っても過言ではない。

 

翼の全てを上回るアシモフ。接近しても電磁結界(カゲロウ)で翼の攻撃を全て遮断し、銃撃で、体術で、戦術で、確実に翼の体力を削り、翼を捕縛する為にアシモフは翼を追い詰めていく。

 

「クッ!」

 

「本当に貴様が此方へ来て助かった。保険(バックアップ)が多いに越したことはないからな。風鳴翼、雪音クリス。貴様達を手に入れれば全ての(ピース)が揃う」

 

一方的な展開。アシモフと相対したフロンティアの入口からどんどん離される。その方向は奏や調が戦う場所とは全く違う方向。勿論、翼も切歌を救おうとする調、クリスを救おうとする奏の戦闘を邪魔するわけにはいかないと別の方向へと後退していた。

 

翼を削り、隙を見ては翼へと雷撃をお見舞いするアシモフ。翼はそれを紙一重で躱し続け、何とか凌ぎ続ける。

 

銃弾を弾き、アシモフの体術を全力で捌く。だがそれでも、完全に受け流し、ダメージを抑えることは出来ない。

 

アシモフの体術に、銃撃に纏う雷撃、蒼き雷霆(アームドブルー)が翼にダメージを蓄積させていく。

 

痺れゆく身体。それでも翼はアシモフに捕まらぬ様に必死に応戦する。

 

だが、翼の攻撃は届かない。

 

電磁結界(カゲロウ)。ガンヴォルトも言った無敵の防御(スキル)。シアンの力を引き出せない今、その(スキル)の突破口が見出せない。

 

追い込まれては距離を取り、距離を取れば、アシモフは雷撃を、銃弾を翼へと放ち、それを翼は躱し、剣で弾く。

 

止まらない猛攻。反撃の隙すら無い。

 

「貴様に勝ち目などありはしない。電子の謡精(サイバーディーヴァ)を使えぬ貴様に、私を越える事など出来はしない」

 

「シアンの力が出なくとも…何とかして見せる…」

 

「何をどうする?初めから貴様が私を殺す事など不可能だ。例え可能でひっくり返そうと躍起になろうが、その可能性を悉く潰す。それは変わらない。自ら首を絞めに行くのは別に私は構わない。どうせ貴様は此処で私の手に落ちる」

 

「そんな事は絶対にない…私は約束したんだ…ガンヴォルトが目覚めるまで、アシモフ…貴様の邪魔をすると…貴様の計画を完成させない様にすると」

 

そう言って翼は駆け出す。アシモフへと接近する為に。剣を構え、アシモフの雷撃を、銃撃を躱しながら前へ。

 

「やはり、まだ奴は生きているか…しつこい奴だ…だが、それはそれで好都合だ。今度こそ殺してやろう…今度こそ私の手で」

 

そう言いながらアシモフも翼に依然攻撃をし続けながら、翼との距離を縮める。

 

そして振るわれる剣を電磁結界(カゲロウ)で無効化し、翼を捕まえる為に銃撃を、拳を繰りだす。

 

「ッ!」

 

銃撃を躱し、拳を何とか凌ごうとするがその全てに纏う雷撃が、翼の身体の動きを鈍くする。

 

そして防戦一方であった翼がまともにアシモフの一撃を食らってしまう。

 

「ガァ!」

 

雷撃が身体を迸り、アシモフの一撃により吹き飛ばされる。

 

身体に流れる雷撃が翼の身体を蝕む。だが、それでも剣を杖代わりに立ち上がる。痺れる。痛い。苦しい。辛い。だが、それが何だ。何だと言うのだ。

 

例え、身体がボロボロになろうとアシモフの計画を邪魔をする。ガンヴォルトが目を覚ますまでの時間を稼ぐ。

 

その思いが翼に立ち上がる気力を齎す。

 

だが、立ち上がる気力だけ。アシモフを足止めさせる力も算段もない。

 

吹き飛ばさてなお立ち上がろうとする翼を見ながらアシモフは言う。

 

「その程度の力で私の計画を完成させない?邪魔をする?何度も言っているだろう?どんなに貴様が足掻こうが私の邪魔など貴様に出来るわけがない。実力も、戦術も、経験も何もかも足り無い貴様に私を止める事など不可能だ。もし仮に電子の謡精(サイバーディーヴァ)を使えたとしても、それは不可能だと言う事を嫌と言うほど理解しているだろう」

 

アシモフと先の海上での戦闘。電子の謡精(サイバーディーヴァ)であるシアンの力を、そして奏、クリスと三人係でも傷つける事も叶わなかった。だが、それでも、倒せなくともそれでいい。アシモフを倒すのは自分では無い。

 

「そうだとも…貴様の言う通り、私はガンヴォルトと違って貴様との戦闘で一度も勝ち筋を見出す事は出来ない…だが、それでも!貴様と幾度となく対峙し、貴様を倒す事の出来るガンヴォルトが目覚めるまでの時間を稼ぐ!私が倒せなくとも!ガンヴォルトが必ず貴方を殺して計画を破綻させる!」

 

翼は振り絞った力でそう叫び、ボロボロになった身体を鞭打って剣を構える。

 

「口だけは達者だな、風鳴翼。たった一度の敗北をその様に捉えるとはな。確かに敗北はした…腹正しい事にな」

 

苛つきながら話し始めたアシモフ。

 

「だが、もう見極めた。次はない。それに、もし奴が起きたとしても、正気を保てるかな?」

 

「何?」

 

だが直ぐに表情が変わった。まるで何か既に仕掛けをしており、その仕掛けは既に作動しているとばかりに。

 

「地の理、武装、此方の手の上だと言うのに使用可能の戦力を全て私の邪魔をする為に、奴等を取り戻す為に送り込むとはな。まあ、此方としてはそれはそれで好都合」

 

「貴様は何を…何を言っている…」

 

翼は脈絡のないアシモフの言葉の意味をすぐに理解出来ない。

 

「ああ、此処まで行っても理解する事をしない、いや、しようとするのが怖いのだろう。だが、理解しなくても直ぐにそれは現実となる」

 

アシモフが一拍置いて絶望の一言を発した。

 

「手薄となった本丸。脆い所から攻めるのは定石だろう。貴様達の本部に向けてノイズを仕向ける様Dr.ウェルに命令した。既に本部にノイズが出現している頃合いだ。貴様達が思い描く希望は幻想に過ぎない。あるのは私が齎す絶望と言う名の現実だけだ」

 

「ッ!?貴様ァ!」

 

翼はその意味を理解するとともに吠えた。

 

そして指令本部へと連絡をしようとするが、通信が故障しているのか全く機能しておらず、本部の状況が分からない。

 

「通信をした所で無駄だ。貴様達の仲間は奴以外全て炭化し、骸の山と化している」

 

アシモフは翼に向けてそう言った。

 

「だが、安心しろ。奴だけは生かしている。だが、あの紛い者が目覚め、それを見て正気を保てるかな?仲間の亡骸を前にして。守ろうとしていた者達の残酷な死を目の当たりにして。まぁ、目覚めぬのならその前に奴を殺してやるがな」

 

楽しげに話すアシモフ。その姿に翼は怒りが、憎しみが滲み出る。

 

「だからもう終わらせよう。風鳴翼。私の計画の為に、貴様を捕らえ、この世界を終わらせよう」

 

アシモフは翼へと向けてそう宣言した。

 

◇◇◇◇◇◇

 

翼へとアシモフがそう宣言する前、本部内では阿鼻叫喚に包まれていた。

 

それはモニターに映し出された大きなアラートという文字。そのアラートはノイズの出現を感知する警報の物。

 

それと同時に全員がノイズの出現箇所を確認しようとしたが、そんな物を見なくても分かる様に、本部内の壁から、床から、天井から、至る所からその姿を現していたからだ。

 

弦十郎はすぐさまオペレーター達を近くに集合させる様指示して、被害を抑えようとする。

 

だが、既に囲まれている状況。たった数秒、死という概念を遠ざけるに過ぎない物であった。

 

ノイズに対抗出来る装者達は既にこの場に居ない。悪手であった。アシモフの邪魔をする為に、アシモフに奪われた者を取り戻す為に此方の今可能な戦力を全て投入した事が。

 

悲鳴と絶叫が司令室を木霊する。それに反応する様に、ノイズは人を炭化しようと一人一人に狙いを定め、その命を刈り取ろうと動き始めていた。

 

そして刹那も経たぬ瞬間、一体のノイズの動き出しと共に、中央に集まった弦十郎達に向けて襲い掛かった。

 

◇◇◇◇◇◇

 

それと同時刻。

 

響と未来は未だ目を覚まさぬガンヴォルトの病室で何度も声をかけ続けていた。

 

だが、その声をかき消すほどの警報。聞き馴染んだ、ノイズ出現の警報。

 

またウェルがノイズを装者である奏、翼、調へと向けて差し向けたのだろうと考える。あの三人ならノイズに負ける事は無い。

 

必ず、奪われたクリスを、切歌を救ってくれる。必ずアシモフの計画を足止めしてくれる。

 

そう信じる。だから響と未来は未だ目を覚まさないガンヴォルトへと声をかけ続ける。

 

だが、声をかけ続ける中、不安がよぎり始める。

 

いつまでも鳴り響くアラート。

 

翼、奏、調の三人が対応しているのならもうアラートは聞こえなくなる状況。なのになぜ今も鳴り続けている?

 

まさか三人がやられてしまったのか?

 

そんな筈はない。奏と翼の実力を知っている。そして調も、ノイズにやられるとは考えられない。

 

だからこそ不安が付き纏い続ける。

 

それを体現させるかの様に、絶望が姿を表す。

 

至る所からノイズが現れた。ノイズの出現を知らせるアラート。それが鳴り止まぬ理由。三人が対峙しているのではなく、三人の手の届かない場所にいるから消滅せず、残っていたからこそアラートが止まらない。

 

「ノイズ!?」

 

「そんな!?」

 

現れたノイズを前に恐怖が襲い掛かる。響にはもうガングニールがない。その為にノイズに対抗する術がない。もちろん未来にも。

 

ノイズが至る所から出て来た為に逃げ場などは存在しない。まさに絶体絶命。

 

ノイズ達は響と未来へと既に狙いを定めている。そして、二人の後ろで未だ目を覚まさないガンヴォルトにも狙いを定めているだろう。

 

危機的状況。

 

どうすれば良いのか考えを巡らせている時間もなく、ノイズは襲い掛かって来る。

 

「お願いです!目を覚ましてください!ガンヴォルトさん!」

 

だからこそ、響も未来も、希望を信じて叫ぶ。

 

装者以外にノイズを退ける力を持ち、アシモフという絶望を齎す存在を倒せる存在が目を覚ましてくれる様に。

 

二人の願いが通じたのか、蒼い雷撃が、病室どころか潜水艦を覆い尽くすほどの雷撃鱗が出現し、ノイズを掃討していった。

 

ノイズの残骸が舞い散る病室。

 

恐怖がなくなり、力なく崩れ落ちそうになる二人の背中に、頼もしく、そして力強い手の温もりが二人を支えた。

 

「ありがとう…響…未来。ずっと声を掛け続けてくれて…起きるのが遅くなってごめん。危険な目に遭いながらも信じてくれてありがとう」

 

聞きたかった声。目を覚ましてくれた事に二人は振り向いて涙しながら抱き着いた。

 

「遅いですよ…ガンヴォルトさん」

 

「本当ですよ…でも…本当に良かったです…ガンヴォルトさん」

 

「ごめん…二人共…でも、もう終わらせるから…もうこんな戦い終わらせるから」

 

二人の頭を優しく撫でた。

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