戦姫絶唱シンフォギアAB   作:株式会社の平社員

202 / 246
110GVOLT

ガンヴォルトがフロンティアの中央に居ると思われるアシモフを殺す為に。そして今もなおアシモフと対峙して時間を稼いでくれている翼を救う為に駆け出しているを時を同じくして、雷撃鱗の展開されている二課本部へと辿り着いた切歌と調。

 

ノイズの強襲もあったが、今の二人にとってノイズなど障害にもならなかった。

 

そして再開するナスターシャと切歌。

 

アシモフの手によって奪われ、大切な親友をその手で殺めなければならなかった状況。そして挙句の果てには今は無くなったが、一度目にしている首につけられた爆弾によって死へと向かっていた状況。

 

その全てを覆し、切歌は生きて帰った。

 

だからこそ、切歌を見たナスターシャは涙し、切歌も再び会え、そして抱き止めてくれたナスターシャにごめんなさいと泣きながらも生きて再び会えた事を喜びあっていた。

 

それを側から見る調もそんな状況に涙を流す。そしてナスターシャは近くにいる調も抱きしめて言う。

 

「ありがとう…ありがとうございます…調」

 

「うん…フィーネと…ガンヴォルトのお陰…私一人じゃ無いよ…みんなで…みんなで助けたの」

 

そう言った調。一人では救うことが出来なかった。自分の歌だけでは無理だった。だが、それでもフィーネが手を貸してくれ、そのアシモフの洗脳から、アシモフの仕掛けた爆弾から。

 

フィーネがいなければ洗脳から切歌を解放することが出来なかった。自分も助かることはできなかった。ガンヴォルトがいなければ切歌に付けられた爆弾を処理できなかった。爆発の衝撃で大きなダメージを負っていた。

 

だからこそ、一人ではなくみんなでと言った。

 

その言葉にナスターシャも頷き、よく頑張りました。よく二人とも生きて戻って来てくれましたと涙を流しながら言った。

 

そして少しの間だが、再会を噛み締める。だが、三人とも分かっている。まだ終わっていない。まだ助けたい人達が残っている。

 

未だこの場にいないマリア。そしてネフィリムを通してアシモフとウェルに良い様に扱われているセレナ。

 

だからこそ、三人は涙を拭う。

 

そしてそのタイミングを見て弦十郎が切歌に向けて言う。

 

「まだ終わっていない。だが、ガンヴォルトがいる。奏がクリス君を助ける為に、翼がガンヴォルトの到着までアシモフを食い止める為に動いている。アシモフの計画を止める為に。だから、切歌君も協力してくれるか?」

 

「当たり前デス。マリアも…セレナも…あんな外道共から助け出したい。それに、二度もガンヴォルトに助けられたデス…受けた恩を返したい…だからどんな事にでも協力するデス」

 

弦十郎にそう言った。その言葉に弦十郎は頼んだと言うと、未だ生きている唯一の通信を繋げる。

 

「ガンヴォルト、切歌君と調君が本部に到着した。此方に回している雷撃を解いても大丈夫だ。今後は二人に本部の警護をしてもらう」

 

『分かった。なら、雷撃鱗は解除する。それとフロンティア中央までもう少しかかる。どうやらウェル博士が、フロンティアの中央に向かわせたく無いのかノイズをボクの周辺に大量に出現させて来た。だけど、絶対にそっちには向かわせない。そして一秒でも早く翼の元に辿り着く。だから、切歌、調、ボクじゃないとしてもマリアを…セレナを救う。だからみんなを頼んだ』

 

最後は弦十郎にではなく、切歌と調へと向けた言葉。再度の確認だろう。だが、確認されなくとも二人の言葉は決まっている。

 

「当たり前デス!」

 

「絶対やり遂げるから!ガンヴォルト!マリアを!セレナを!お願い!」

 

通信越しに二人はガンヴォルトへと向けて言った。

 

その言葉を聞いたガンヴォルトはありがとうと言うと雷撃鱗を解いたのだろう。本部を覆っていた雷撃鱗が消えると共にガンヴォルトが回していた此方への出力を戦闘へと還元させたのか、無線機越しからでも聞こえる雷撃の音が更に大きくなり、通信機にノイズが走り始めた。

 

そしてみんなをお願いと最後に言ってそこからが沈黙が続いた。

 

フロンティア中央まで駆けているのだろう。ガンヴォルトがやるべき事をなす為に。フィーネから託された想いを、自分の理想を実現させる為に。

 

そしてガンヴォルトから通信がなくなった事でそれぞれが再び情報収集、被害の状況、そして本部の完全復旧の為に動き始める。

 

そして切歌と調もギアペンダントを握り、ガンヴォルトから頼まれた二課本部の護衛を行う為に外へと駆け出す。

 

だが、それを呼び止めるものがいた。

 

弦十郎だ。

 

「…了子君…いや…フィーネはどうなった?」

 

その言葉に二人は足を止める。切歌もフィーネに助けられたが故に、そして時間がない事を告げられた故にどうなったかはなんとなく理解している。

 

そして調。フィーネが本当に宿り、その身にフィーネを顕現させ、切歌を救う為に力を借り、その者の最後を見届けた者。

 

「…フィーネは消えてしまった…私の為に、自らの魂を犠牲にして…」

 

「そうか…」

 

弦十郎は何処か悲しそうな表情を浮かべてそう言った。

 

かつて共に過ごした仲間にして、この事件の前にあったルナアタックと呼ばれる事件の首謀者。一度過ちがあったが、心を入れ替え、再び歩み寄る事が出来たかもしれない未来が潰えてしまった事を酷く悔やんでしまう。

 

「フィーネの魂は消えてしまった…でも、意志は…想いは消えてない。ガンヴォルトだけじゃない…私も託された。ガンヴォルトの…フィーネが望む未来。それをこの目で見る様に…」

 

調は弦十郎に向けてそう言った。

 

「…ならば良かった…」

 

どこか寂しそうにそう言った弦十郎。調は何か間違えた返答をしてしまったかとは思ったが、アラートが鳴り響き、再びノイズが出現した事を知ると切歌と調は駆け出してノイズを殲滅する為に外へと出て行った。

 

二人を見送る弦十郎。

 

そして、

 

「…俺にも何か託しと欲しかったよ…了子君」

 

彼女がいないとはわかっている。だが、弦十郎は少し心残りとばかりに誰にも聞こえぬ声音で呟くのであった。

 

◇◇◇◇◇◇

 

切歌と調がノイズの掃討に励む中、フロンティア中央の近く。

 

そこでは依然として奏とクリスが戦いに興じていた。

 

「目を覚ませよ!クリス!」

 

未だ声をかけ続ける奏。

 

依然として答えないクリス。

 

だが、奏は先程の口の動きでクリスは洗脳が解け、既に意識があると既に分かっている。

 

だが、クリスはそれでも洗脳が継続しているフリを続けている。何か意図があるのだろう。

 

アシモフがそうさせたのかも知れないが、それなら初めからそうしている。本当は奏を信用させて本当に殺そうとする演技であり、高度な騙しの可能性もあるかも知れない。

 

だが、奏はクリスを信じている。

 

(口パクとは言え、あのクリスが"奏"って名前を呼んだんだ)

 

それだけでその可能性を全て拭い去る事が出来た。

 

普段から誰かの名前を呼ばないクリスがそう言った。たったそれだけの事かも知れない。だが奏にとってはそれだけで十分であった。

 

だからこそ奏はクリスを信じている。この流されている様な戦いの先に、何か重要な事柄に繋がる事を。

 

奏はクリスの全力の攻撃を避け、弾き、防ぎながらも全力で此方も応える様に槍を振るう。

 

幾度となく繰り返される銃撃、幾度となく振るう槍。何度も続けて来た攻撃はようやく終わりを迎える事になる。

 

弾丸を放ちながら奏へと距離を詰めるクリス。

 

そしてそれを弾き、躱し、クリスと同様に距離を詰める。

 

そしてぶつかりあう銃と槍のアームドギア。ぶつけた事によって火花が散り、力が五分の為拮抗して膠着状態に陥る。

 

「そろそろもう一発いっとくか?クリス」

 

奏はクリスに向けてそう言った。もちろん返答が無いことは分かっている。だが、壊れたバイザーから見える目には光、意志が宿っている。

 

そして口がゆっくりと動く。

 

声は出てないが、奏はその動きを読み取り、此方も分かったと口を動かした。

 

そしてクリスが頷くのを確認する。

 

その瞬間奏の腹に強烈な一撃が食らわせられた。

 

「かはっ…」

 

それは拮抗していたアームドギアを受け流したクリスの蹴り。その蹴りを受けた奏は後方へと僅かにのけぞらせる事になった。

 

その瞬間にクリスも後方へと飛び去って腰からミサイルを出現させると奏へと向けて一斉掃射する。

 

奏は立て直せないままそのミサイルの一斉掃射に避ける事が出来ず、そのまま爆炎に巻き込まれた。

 

爆炎と共に大きな地響きと共に地面が崩れ去っていく。

 

奏へと向けて放たれたミサイルが地面を穿ち、その地面の底にあった空間へと繋げたからだ。

 

そしてクリスは躊躇いもなくその空間へと飛び込んで行った。

 

そして数秒の浮遊感を終え、地下空間に降り立ったクリスは新たに銃を取り出すとマガジンをその銃に装填する。

 

そして落ちた場所から立ちあがろうとする奏の脳天へと向けてその銃弾を撃ち込むのであった。

 

◇◇◇◇◇◇

 

「はぁ…はぁ…はぁ…よくやりましたね。でも時間がかかり過ぎですよ」

 

ウェルが走って来たのか息を切らしながら地下空間へと脚を踏み入れるとクリスに向けて言った。

 

ウェルの目の前には銃を構え、奏へと止めの一撃を与えた直後の所だった。そして倒れた奏を見て不気味な笑みを浮かべた。

 

「しかし、時間が掛かってもやり遂げたならば構わない。これで始末出来る…ここが僕の英雄譚(サーガ)の重要な場面になる…アッシュは自身で殺そうと考えている様だけど、アッシュ同様に僕ももう限界だ…僕自身もイライラさせられっぱなしだ…あいつがいる所為で…あの男がいる所為で…だけどもうここで終わりだ…お前達に快進撃など存在しない…快進撃が存在するのは僕達の方だ…今この時が!僕達の快進撃が始まる!ガンヴォルトを殺し!君の名前を僕の英雄譚《サーガ》に出る大罪人として刻んであげるよ!」

 

高らかに笑うウェル。だが、ウェルは高らかに笑う中あり得ない状況を見て笑いを、動きを止めてしまった。

 

「そういう事かよ…クリス…この外道を誘き寄せる為に芝居をしたのか?」

 

そう言いながらクリスによってトドメを刺され息絶えた筈の奏がゆっくりと立ち上がった。

 

「そういう事だ…アシモフとこいつ…アシモフは私達じゃどうにもならねぇ…だけどこいつがならな。態々出向くって言ったから芝居を打っていたんだよ」

 

その言葉を返す様にクリスは壊れたバイザーを取っ払い投げ捨てて言った。

 

「どういう事だ…アッシュの洗脳は…それにさっき脳天に銃弾を…」

 

「残念だが、アシモフの洗脳はこいつの歌とぶっ飛んだ一撃でとっくに解けてるよ。ったく、どんだけ痛かったと思っていやがる」

 

クリスはウェルに向けてそう言った。

 

「さっき蹴りとミサイル掃射でおあいこ…ではないな…ミサイルは当ててはないにしても衝撃がすげぇ来て相当痛かったぞ。後一発は今度返してやるからな」

 

「そんな事はどうでもいい…チッ…電子の謡精(サイバーディーヴァ)…やはりアッシュの手の中にあっても装者達の中に残した残滓で邪魔してくる…だが、それでも!君は死んだ筈だろう!君の頭に銃弾を撃ち込まれたのを遠目からでも見ている!それなのに何故!?君は生きている!?」

 

「だから、その時はクリスの洗脳はとっくに解けてんだよ。それと、確かに私は頭を撃ち抜かれた。だけど、撃たれた物が特殊な弾丸でね」

 

そう言って奏はしまっていた弾丸を取り出した。

 

奏が持って居るものは避雷針(ダート)。ガンヴォルトが使用する特殊な弾丸。人体に避雷針(ダート)を埋め込んで雷撃を誘導させる物であり、生身ならまだしもシンフォギアを纏った装者にとって実害はほぼないと言っていい弾丸。

 

ガンヴォルトがダートリーダーを使用して撃ったならば別だが、クリスの様に雷撃を持たぬ物が撃ち出したところでベースがひしゃげて出るだけの柔らかい弾丸にすぎない。

 

「御守り代わりに持ってたこいつがあって助かったぜ…そのお陰でどうにかなった」

 

そう言ってクリスは完全に演技はここまでとばかりに大きく息を吐いた。

 

「だな。さてと…ようやく掴んだ計画を阻むチャンスだ…だけどお前は許せねぇ事を口にした…」

 

奏は避雷針(ダート)をしまい、ウェルの方を向くと睨みつける。

 

「ああ、出来もしねぇだろうがな。あいつを殺す?それに私とこいつを盾にしてでもなんてふざけた事を通信機で言ってたな」

 

そしてクリスも避雷針(ダート)を装填していた銃を仕舞うと再びお馴染みのアームドギアをウェルに向けて構えた。

 

「ガンヴォルトを殺す?そんな事、出来るわけもねぇだろ!させるわけねぇだろ!私達の大切な居場所…それを壊そうとしたテメェだけは許さねぇ!」

 

そして奏とクリス。ウェルの言葉は不可能だとしても二人にとって断じて許容出来ない事であった。

 

「許す許さないなんて関係ないんですよ!ああ本当に装者も目障りだ!ガンヴォルトの前に貴方達二人を殺してやる!アッシュに何を言われようが計画を完遂させればどうにかなる!」

 

そして奏とクリスとの戦いは完全に終わり、共闘して次はウェルとの戦いの火蓋が切って開けられた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。