戦姫絶唱シンフォギアAB   作:株式会社の平社員

203 / 246
気付けば100万文字超えてた…



111GVOLT

ウェルへと襲い掛かる奏とクリス。

 

だが、ウェルはそれを阻む為にソロモンの杖でノイズを大量に呼び出した。

 

「必ず殺してあげますよ!天生奏!雪音クリス!僕達の英雄譚(サーガ)を新生した世界で語り継ぐ為に!僕達が英雄となる世界の為に!」

 

「そんな事させる訳ねぇってんだろ!何が新生した世界だ!勝手に私達の大切な場所を終わらせるんじゃねぇ!」

 

「何が英雄だ!テメェ達を誰も英雄なんて呼ぶ事はねぇ!テメェ達は世界を破滅へと導くテロリストだ!」

 

「テロリストですか!確かに僕達は今は(テロリスト)!ですが、そう罵られようと耐え!計画が完遂出来れば生き永らえた誰もが僕達を英雄と呼ぶでしょう!僕達がやってきた事が正当化され、今までの事が世界を破滅などではなく、人類の救済と変わり、僕達が起こした事こそが正しい!僕達が行った事が正に英雄が取るべき行動だった!そうなるでしょう!そして後世にこの事が僕達の英雄譚(サーガ)として語り継がれる!だからこそ僕達は英雄なんだ!」

 

ウェルは襲い掛かる奏とクリスをノイズ達で押し返そうと襲わせながら叫んだ。

 

自分達は今は(テロリスト)だと。だが、後にはこの行いが英雄譚(サーガ)となると。

 

しかし、そんな事にはならない。何故ならアシモフにその気がないからだ。奏もクリスも知っている。アシモフの本来の目的を。アシモフの本当の計画を。ガンヴォルトから聞いたからこそ、未来永劫、ウェルの思い描いた理想など来ない事を。

 

「テメェ一人がそう思っても絶対にそうはならねぇんだよ!テメェはアシモフにいい様に使われているだけだ!アシモフの本当の目的は英雄なんかとは真逆なんだよ!お前の英雄譚なんてものはアシモフと協力したその時から初めからありはしない!」

 

「出まかせで僕が動揺するとでも!そんな話が本当で信じるとでも!?アッシュが僕を裏切るとでも!?それは絶対にない!アッシュは僕を英雄にすると約束してくれた!初めて僕の夢を受け入れ!僕にそれを実現させようとしてくれる人だ!脅しはするがそれは僕に英雄となる為に喝を入れているだけだ!」

 

盲信的なウェル。アシモフは奏達の言う通り、ウェルの計画の完遂など興味など無い。アシモフがしたい事はこの世界の破滅。そしてアシモフとガンヴォルトの居た世界を自身の理想へと変える事。だからウェルの理想など叶いはしない。

 

しかし、ウェルはそんな事など微塵も思っておらず、アシモフが自信を英雄へと至らせると思い込んでいる。

 

「言っても無駄だ!それにこいつに何を言ったって変わりはしない!それに変わらなかろうがこいつはここで終わらせる!私達がこいつを!ソロモンの杖を取り返せばあいつがアシモフとの戦いに勝ってくれる!だから気にする必要なんてねぇんだよ!」

 

ウェルが返した言葉に、クリスは言うだけ無駄だと言う。

 

「そうだな、クリス。この男に何を言っても無駄。ならやる事は決まってたな…テメェはぶっ飛ばす!ガンヴォルトを殺すと言ったお前を!」

 

「今までやってきた事の付けを今ここで払ってやる!」

 

許せない事を言った。許せない事を幾つもやった。

 

ネフィリムの登場で響を危険へと追い込んだ。ソロモンの杖を使い、関係ない人達まで巻き込んだ。切歌と調にもLiNKERを無理矢理打ち、自滅へと追い込む絶唱をさせようとした。未来を辛い目にあわせ、最低な事をしでかした。そしてガンヴォルトがアシモフの勝利をもぎ取った後に邪魔をして再びボロボロにした。

 

アシモフと同様にウェルもこの戦いで数々の悪行を積み重ねている。だからこそ、ぶっ飛ばす。殺しはしない。だが、今までの事を全てこの場で清算させる。

 

奏とクリスは襲いくるノイズを蹴散らしてウェルのいる場所に突っ込んで行く。

 

どれだけノイズが居ようと関係が無かった。

 

ボロボロになった奏。だが、口遊む歌が力を与えてくれる。シアンの歌の奇跡が奏に活力を与え、振るう槍が新たな嵐を呼ぶ。

 

そしてクリス。洗脳から解け、自身の歌を取り戻し、歌う事により、奏と戦った時よりも威力が段違いに変わっている。

 

地下空間が揺れる。

 

吹き荒れる嵐が、荒れ狂う弾丸が、二人の歌声が地下空間を揺らしているのだ。

 

そしてその揺れと同時にウェルの元へ向かう道を阻むノイズが次々と炭化していく。

 

今の奏とクリスにとって先程にも言う様に障害になり得ない。

 

シアンの歌。そして奏とクリスの思い。怒りだが、その根幹にあるものはガンヴォルトとの掛け替えの無い日々。そしてそれを奪おうとしたウェルが目の前にいるからこそ、二人の持つアームドギアがその想いに応え、力が溢れ出ている。

 

ウェルに迫り来る二人。ノイズが障害になり得ない為に、もう目の前まで追い詰められそうになるウェル。

 

「クソっ!クソっ!」

 

諦めが悪い様にウェルは迫り来る二人を押し戻そうとソロモンの杖を使い、次々とノイズを召喚している。だが、それでも間に合わない。

 

幾らノイズを召喚しようとも、今の二人を止められるほどの力を持ったノイズなど存在しないのだから。

 

そしてウェルへとの距離を残りわずかとばかりになった時、ウェルの焦りと絶望の表情を浮かべる。

 

「僕は英雄になるはずなのに!僕はアッシュ共に英雄になるはずなのに!」

 

「だから、テメェが英雄になる事はねぇって言ってんだろ!」

 

「お前はここで終わりだ!いい加減に寝てろ!」

 

そして二人とウェルの距離があと数歩となる。あくまでウェルは捕縛。だからこそ、二人は拳を握りしめた。

 

ガンヴォルトを殺すと言ったその口を閉ざす為。ウェルをここでダウンさせ、ガンヴォルトがアシモフを倒す勝ち筋をより明確にする為。

 

「ちくしょーう!…なんて言うと思っていましたか?」

 

先程まで焦りと絶望を浮かべていたウェルが一変し、ニヤリと不気味で苛つく様な表情へと一変する。

 

そしてそれと同時に足元へと転がる何か。手榴弾の様な何か。だが、奏がそれをすぐ様蹴飛ばしてウェルへと返した。

 

だが、ウェルはそれを読んでいたかの如く、目と耳を塞いでいた。

 

その瞬間、奏とクリスはしまったと、すぐ様ウェル同様に行動を起こそうとした。

 

だが、間に合わず、閃光が二人の視界を、そして大きな音が二人の耳を潰す。

 

閃光手榴弾。

 

迂闊だった。だが、目が潰れようとも、耳が潰れようとも二人は歌を止めない。止まること止めない。

 

判断が遅かろうと既にウェルとの距離はあと数歩。シンフォギアを纏った二人ならば一瞬で詰められる。ウェルに逃れる術は無い。だからこそ、見えなかろうと聞こえなかろうと二人は拳をさらに強く握りしめた。

 

しかし、振りかぶろうとした瞬間に訪れる虚無と脱力感。その瞬間に、シンフォギアの出力が一気に低下して二人のギアが一瞬で解除されてしまった。

 

「ッ!?」

 

驚く二人。だが、そんな二人へと容赦の無いない一撃がクリスの腹を。奏の足を捉えた。

 

容赦なく振るわれたネフィリムと一撃がクリスを吹き飛ばし、奏はその一撃に体勢を崩され、その場に倒れると追撃とばかりに何かが奏を襲い、クリスと同じ方向へと蹴り飛ばされた。

 

「がはっ!?」

 

訳がわからない状況。だが、目に見えないだけで、何も聞こえないだけで、ウェルがいやらしい笑みを浮かべている事など想像に容易かった。

 

奏とクリスの思う通り、その一撃を加えたのはウェルであり、そしていやらしい笑みを浮かべ、吹き飛ばされ倒れると二人を見て言った。

 

「聞こえないでしょうが、幾ら僕でも装者と戦闘になる可能性を考えず、この場に来るなんお思いですか?何の対策も無しに僕が装者の前に現れると思っていたのですか!そんな馬鹿なことする訳ないでしょう!常に二手三手、手を打つのが常識でしょう!天羽奏が殺されてるのならばよし!ですがそうでないのならより確実な死を与える為に手を用意していたんですよ!ただ雪音クリス、貴方がアッシュの洗脳から解放されていたのは予想外でしたが、所詮は装者!Anti_LiNKER!それも完全聖遺物をも抑える事の出来る物だ!これさえ有れば僕にでもどうにか出来るんですよ!」

 

そう叫ぶウェルの足元から立ち上り、辺りを漂う赤く濃い煙。

 

Anti_LiNKER。LiNKERとは真逆の性質を宿しているフィーネの研究データからウェルが作り出した対装者において圧倒的な効力を及ぼす物。

 

だが、ウェルの付近に漂うAnti_LiNKERは更に強化された物。かつてアシモフがフィーネからウェルの持つソロモンの杖の奪取のために使用した完全聖遺物ですらその効力を失わせる程の強力なAnti_LiNKER。

 

ソロモンの杖を一時的に使えなくなるほど強力だが、そんな事は今のウェルにとって些細な事。

 

「どうですか!希望が絶望に変わる瞬間は!目も見えず!耳も聞こえず!何も出来ない状況に追い込まれた状況は!さぞ悔しいでしょう!?でも安心してください!そんな恐怖ももう終わる!君達は今ここで終わるんだから!」

 

そう言ってウェルは見えも聞こえもしない二人へと歩み寄る。

 

そしてうまく立ち上がれない二人を痛めつける様に踏み付け、地面へと何度も何度も二人を踏み付ける。

 

「でも!僕はそれでも簡単に終わらせない!僕がどれだけ君達のせいでイラつかせられたか!どれだけ僕がむかついたか!君達はそれをその身に刻んでから殺してあげましょう!」

 

楽しげに笑いながら二人を交互に踏みつける。

 

閃光手榴弾によって視界も、聴覚も奪われた二人はただ致命傷を受けない様身体を丸める事しか出来ない。

 

蓄積されゆく痛みが身体の自由を奪おうとする。鈍痛が二人を縛っていく。

 

だがそれ以上に二人は悔しさで涙する。

 

せっかくクリスを救ったのに。せっかくウェルを追い詰めて、ガンヴォルトにアシモフとの戦闘を有利に進めさせる事が出来たのに。

 

何も出来なかった。そして今はただウェルに手も足も出せない状況に陥らされ、ただ致命傷を避ける様に体を丸めるしか無い。

 

どうしょうもない状況にただ悔しさを募らせていた。

 

だが、それでも二人は諦めない。まだ負けていない。死んでいない。

 

そして死ぬ気など毛頭無い。

 

二人の心は今の状況などで折れはしなかった。

 

そして、身体を丸め、痛みに耐えながらどれだけの時間が経っただろう。

 

ようやくウェルが二人から足を離し、攻撃を辞めた。

 

「もっと痛め付けたい、傷付けたい、君達如きが僕達の邪魔をした報いには程遠いですが、生憎時間がな苦なってきていましてね。ガンヴォルトがもうすぐそこまで来ている。だからもうここで死んで下さい」

 

そう言ってウェルはまずは奏へとソロモンの杖を突き立てる為に振り上げた。

 

そしてその瞬間、奏が歌う。クリスが歌う。聖詠を。

 

「無駄ですよ!Anti_LiNKERが充満したこの空間で聖詠を歌った所でシンフォギアは纏えない!纏う事すら出来ない!」

 

最後の足掻きとばかりに歌う二人を嘲笑いながらウェルは叫んだ。

 

だが、それでも二人は聖詠を歌う。

 

Anti_LiNKERによって二人の歌によるフォニックゲインはウェルの言う通りAnti_LiNKERに阻害され、シンフォギアを起動させるに至らない。

 

しかし、それが何だ。

 

シンフォギアとは何だ?

 

ノイズを倒すための力。人々を守るための力。過去の遺物がフォニックゲインにより自身の心象を読み取り、それを鎧に変えた物。

 

だが、その根本的な力の源は?

 

歌だ。歌に込めた思いだ。

 

その歌を何のために歌っているのか?その歌で何をしたいのか?それがシンフォギアを起動させる力。

 

Anti_LiNKER如きでその思いを消し去る事が出来るものか!

 

思いを、気持ちを込めて歌う奏とクリス。確かに歌の力、フォニックゲインは高まる気がしない。

 

だが、その歌に呼応する様にギアペンダントがキラリと輝く。

 

そしてギアペンダントが蝶の羽を思わせる光が溢れる。

 

ギアペンダントが、いや、そのギアペンダントの中に混じったシアンの電子の謡精(サイバーディーヴァ)が、歌の思いに応える様に力を貸してくれた。

 

高まらないのが何だ。足りないのが何だ。そう言わんばかりに胸から溢れる思いが、ギアペンダントに残る電子の謡精(サイバーディーヴァ)が足りないのなら補う様に、二人の歌に合わせる様に光り輝く。

 

「ッ!?まさか!でもさせる訳ないでしょう!」

 

まさかの出来事にウェルは焦りを見せる。Anti_LiNKERによってシンフォギアを纏うためのフォニックゲインは生まれないはず。だが、第七波動(セブンス)である電子の謡精(サイバーディーヴァ)の力。それはAnti_LiNKERの効力の及ばない異界の力。だから何が起こるか分からない。

 

だからこそ、すぐに殺すためにソロモンの杖を奏へと振り下ろした。

 

しかし、

 

ガキン!という金属がぶつかり合うような音が空間に響き渡る。

 

「ッ!ふざけるな…ふざけるなよ!電子の謡精(サイバーディーヴァ)!」

 

その金属がぶつかる音が響くとともにウェルが叫んだ。

 

それは振り下ろしたソロモンの杖が何かによって阻まれたからだ。

 

奏はシンフォギアを纏っていない。勿論、クリスも。

 

だが、目の前には見覚えのあるものがあるからだ。

 

ウェルの振り下ろしたソロモンの杖。それを阻んだ物。

 

それは奏のアームドギアである撃槍、一振りのガングニールであった。

 

奏の歌が、クリスの歌が、そしてそれに電子の謡精(サイバーディーヴァ)の力が起こした奇跡。

 

シンフォギアを纏うことは叶わなかった。だが、それでも、奏とクリスの歌に呼応したギアペンダントがシンフォギアを生み出すことは叶わなかったが、アームドキアを呼び出したのだ。

 

だが、それでもウェルは止まらない。

 

突き立てられた様に阻んだ奏の槍を避けて奏へとソロモンの杖を再び振り下ろした。

 

だが、

 

ウェルの頬を何かが掠めた。

 

頬に伝わるドロッと垂れる何か。杖を振り下ろすのを辞めて、変形した腕でその何かを拭う。

 

それは赤い液体。だがその頬から感じる鈍い痛みでそれが血であると理解する。

 

そしてその掠めた物の正体は勿論倒れた奏の横にいる人物であった。

 

ボロボロになりながらも、握られた銃をウェルに向けて構えているクリスの姿。

 

奏同様にシンフォギアを纏わずともアームドギアを出現させていた。

 

そしてその手に持った銃。それは奏へと向けて一度撃ち放った避雷針(ダート)の込められた銃。

 

そしてそれが再度ウェルへと向けて撃ち込まれた。

 

勿論、今のクリスはボロボロであり、先程の閃光手榴弾によって視界がまだ完全に戻っていない為に、ウェルには当たらなかった。

 

だが、当たりはしなかったが、その後に振るわれた一撃でウェルが吹き飛んだ。

 

「ガァ!?」

 

それはソロモンの杖を防いだガングニール。それを奏が持ち上げ、ウェルへと槍の腹で押し飛ばしたのだ。

 

そして地面を転がるウェル。だが、転がりながらも体勢を立て直して立ち上がる。

 

二人同様にボロボロとなるウェル。

 

そして槍を杖代わりにして立ち上がる奏、そしてその肩を借りながら立つクリス。

 

「ッ…ようやく視界と耳が少しだけまともになった…」

 

「…ああ…さっきのアレで終わってればよかったんだがな…」

 

そう言いながらシンフォギアを纏えず出現したアームドギアを握り、ボロボロの身体を鞭打って構えた。

 

「…だったら今度こそ終わらすぞ!クリス!」

 

「たりまえだ!受けた痛みを倍に返してやる!やるぞ、奏!」

 

そう言って二人はウェルと対峙する。

 

「何度も何度もふざけるなよ!」

 

そしてその言葉に応える様にウェルが叫んだ。

 

「本当にうんざりだ!絶望に叩きつけても立ち上がるその姿が!僕の英雄の道を阻む君達が!いい加減に死んでくれ!」

 

そう言って取り出された何か。だが、その何が取り出された瞬間に寒気を感じ取る。

 

首筋に冷たいなにか押し当てられている様な背筋の凍る感覚。

 

何かは分からない。だが、取り出した物の大きさは小さく視界が安定しない二人には判別出来ない。

 

「死ね!雪音クリス!」

 

そう叫ぶとともにウェルはその何かを押した。

 

その瞬間、奏とクリスは爆発に巻き込まれた。

 

その正体とは、クリスの首につけられた爆弾の起爆装置であり、命を刈り取る死神の鎌。

 

その鎌は唐突に二人の首を狩る様に振るわれた。

 

だが、この時ウェルは気付かなかった。

 

爆発の前にこの空間の上部では蒼い雷撃が迸っていた事に。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。