戦姫絶唱シンフォギアAB   作:株式会社の平社員

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フロンティア中央へと向かう為地下空間を駆けて移動する中、ボクは本部へと通信を入れる。

 

「弦十郎、クリスは奏が救った。後に遭遇したウェルとソロモンの杖を無力化に成功した」

 

『それは本当か!?』

 

「うん。この目で見届けた。本部のノイズを片付ければ出現しない筈だ」

 

『となれば残るは敵はアシモフただ一人』

 

「うん…アシモフはボクが必ず倒す。必ず翼を…シアンを…マリアを…セレナを取り戻す。みんなの為に…この世界を終わらせない為に」

 

ボクは自身へと必ず実行するんだと思い、そう口にした。

 

『そうだ…俺達はそうしなければならない…そうしなければ俺達に未来は無い。全ての元凶…アシモフを倒さぬ限りは…俺達はここまでだ」

 

「そうだね…だけどそんなことはさせないよ。ボクがそうさせない…今度こそアシモフを殺してこんな絶望を終わらせて見せる」

 

『…お前には苦労ばかりかける…』

 

「そんなことないよ。これはボクがやらなきゃいけないことだから」

 

弦十郎にボクはそう言った。

 

これはボクがケリをつけなきゃならない事。元の世界のポッドの中に生かされたこの肉体。アシモフの怠惰によって生かされ、あの世界のシアンによってボク自身の切り離された魂を入れられてこの世界に辿り着いた。

 

生かされたからこそ、ボクはこの生を全うしたい。そして切り分けられた魂にもあの世界のボク同様に同じ思いがある。

 

誰もが平和な日常を謳歌出来る世界になる様にと。

 

だからその理想を壊そうとする者を打ち倒さなければない。

 

この世界に生を受けたボクの意志。そしてこの世界にボクを飛ばしたあの世界のシアンの意志。そしてそれを望んだフィーネとの約束。

 

ほかにもかけがえの無い人達との出会いがあったからこそ、それを実行しなければならないと強く思う。

 

弦十郎に慎次、朔也にあおい、奏、翼、クリス、響、未来、そして二課のみんな。

 

みんながいる世界を守りたい。この世界をアシモフの手によって滅ぼされてなるものか。

 

今度こそ完全にアシモフを殺し、世界を救う。

 

『今度こそ勝てるか?』

 

弦十郎が通信機越しにそう言った。

 

その言葉にボクは弦十郎が言いそうな言葉で返事を返した。

 

「勝てるか勝てないか今更言う必要がある?ボクは勝つよ。勝率なんて可能性を数字で語れない。例え低い可能性だったとしてもみんなが起こした奇跡で繋いだんだ。運じゃなくてこの手で手繰り寄せ、掴み取るよ」

 

ボクは弦十郎にそう言った。

 

その言葉に弦十郎は満足そうに言った。

 

『必ず勝てよ』

 

「必ず勝つさ。全てを取り戻す為に。アシモフとの因縁を終わらせる為に」

 

ボクはそう言い切った。

 

そして弦十郎に伝える。

 

「弦十郎、ボクはこのまま翼の救援とアシモフとの戦闘で通信が出来なくなるかもしれない。だからその前に聞いてほしい。アシモフと遭遇したのならば、弦十郎達にもやって欲しい事がある。奏とクリスの回収。二人とも戦闘でボロボロだから、二人を回収してくれ。そしてソロモンの杖と二人が捕まえたウェル博士を本部に捕まえておいて。ボクが会わなければ二人を助ける事が出来るのは本部にいる人達しかいない。頼めるかい?」

 

『任せとけ、ガンヴォルト。必ず二人を救出してソロモンの杖を回収してウェル博士を捕まえておく」

 

「頼んだよ」

 

そう言ってボクは通信機を一旦切るとそのままフロンティア中央へとさらに加速して駆け出した。

 

翼の歌が聞こえる所まで。アシモフのいる所まで。

 

◇◇◇◇◇◇

 

「ガンヴォルトからの通信で奏、クリス君がソロモンの杖を奪還、そしてウェル博士の捕縛に成功したそうだ」

 

本部にて再度現場を報告する様に弦十郎が言った。

 

「奏さん…クリスちゃんを助けられたんですね…良かった…」

 

「クリス…良かった…ありがとうございます…奏さん」

 

響と未来は奏により、クリスが元に戻った知らせを受け、とても安堵する。

 

「ウェル博士の戦闘不能、ソロモンの杖を奪還に成功したのならば残りはアシモフただ一人」

 

そしてナスターシャも状況を簡潔に述べた。

 

「その通りです。ですが、まだ救わなければならない人がいる。貴方達の大切な二人。マリア•カデンツァヴナ•イヴ。そして死してなお、アシモフとウェル博士によって使われ、ネフィリムの心臓に囚われているセレナ•カデンツァヴナ•イヴ。そしてアシモフと戦いを続けている翼。そしてそのアシモフに未だ囚われているシアン君。この四名をアシモフの手から取り戻さないといけません」

 

弦十郎はナスターシャに最重要項目を言う。

 

「必ず助けなければなりません。マリアも…セレナも…あの外道から」

 

「ガンヴォルトならやってくれます。アシモフを倒す。それが、全員が救われる方法なのですから。それにガンヴォルトは言いました。必ず勝つと。だから我々もガンヴォルトを信じ、ガンヴォルトから頼まれた事を遂行すべく動きましょう」

 

その言葉にナスターシャは頷く。

 

ガンヴォルトが本部に託した事。

 

奏とクリスがウェルを倒し、ボロボロになりながらも奪還に成功したソロモンの杖。二人とソロモンの杖の回収。ウェルの捕縛を行わなければならない。

 

「ノイズが発生しない今、それらを行う。ガンヴォルトがアシモフを終わらせる為に最大限のサポートとなるのがガンヴォルトが言ったソロモンの杖とウェル博士の回収。奏とクリス君の回収。それが成功すればガンヴォルトはやってくれる。ガンヴォルトなら今度こそ終わらせてくれる」

 

弦十郎は総員に向けてそう告げた。

 

「それなら私達を連れてって下さい!」

 

その声に一番先に反応したのは先程まで外でノイズの掃討を担当していた調であった。そしてその後に続く様に切歌も言う。

 

「ガンヴォルトからの通信は聞こえてました!でもソロモンの杖を奪還してもまだ召喚されていたノイズがまだ何処かに潜んでいる可能性だってあるデス!」

 

ガンヴォルトとの通信が調と切歌の二人にも聞こえていた様でそう言った。

 

「切歌…調」

 

「マム…ガンヴォルトならマリア達を救ってくれる…必ず。でも、ガンヴォルトはアシモフの元へ向かわなきゃならない。だったらその後も考えなきゃならない。ガンヴォルトがマリア達を救ったとしても、その後。ガンヴォルトはアシモフを止めなきゃならない。あの二人の事。マリアに何か非道な事をしている可能性がない訳じゃない。だから、確実に救う為にも私達がいかなきゃいけいない。本当の意味で勝つ為にも。マリア達を本当に救う為にも。この場にマリアを無事に連れて帰って本当の意味で助かる為にはこの方法しかない」

 

調はナスターシャに対して言った。

 

「調…」

 

「ガンヴォルトはマリア達を必ず救ってくれる。でも、ガンヴォルトにはその後がある。だから私達が本当の意味でアシモフに勝つ為に、ガンヴォルトのサポートの為に、私たちが行かなきゃならないデス。少しでもアシモフに勝つ為のサポートを」

 

切歌がそう言った。

 

ガンヴォルトならマリア達を救ってくれる。だが、その後に起こるかも知れない悲劇をどうにかしないといけないと切歌は言ったのだ。

 

ただでは転ばないアシモフ。響と未来の様に。まだアシモフは隠しているかも知れない現状。

 

だからこそ、最善の選択をするべきだと切歌も進言する。

 

「…そうですね…二人の言う通り、マリア達はガンヴォルトが救ってくれる…ですが、完全に救う為にも、私達も何かするべき…お願いです。二人を…切歌と調を連れて行ってください…二人を救う為にも…この戦いを最良の終結に向かう為にも…二人を行かせてあげてください」

 

切歌と調の言葉に賛同して、ナスターシャも弦十郎に頭を下げる。

 

「…勿論です。最良の終結に向かう為にも、二人にも協力を仰ぎたかった所です。終わらせましょう。こんな絶望しかない戦いを。誰もが望んでいた最良の結末の為に」

 

弦十郎はそう言った。元より望んでいるのは誰も犠牲にならない未来。だからこそ三人の申し出を快く快諾する。

 

そして救援メンバーを弦十郎、慎次、切歌、調に絞り、残りは復旧や、支援に回ろうとしていた中、響が声を上げる。

 

「師匠!私も連れて行ってください!」

 

「響君。これは君の思う様な人助けではない。命を懸けた互いの意志を懸け、生存を懸けた戦いなんだ。今の君がなんの役に立つ?」

 

響の申し出に弦十郎はすぐにそう返した。

 

確かに響も救う為に戦ってきた一人。だが、もうその身には戦場で役に立つ装備、シンフォギアを纏えない。言い方は酷いかもしれないが足手纏いにしかならない。

 

「響!なんで自分から危険な目に飛び込もうとするの!?」

 

未来もその言葉に響に対してそう言う。誰もがそう思っただろう。何故自ら危険に足を突っ込むのだろうと。

 

だが、響は言う。

 

「確かに危険だよ…でも、ガンヴォルトさんが頑張っているのに…師匠や緒川さんが危険を承知で行く様に…切歌ちゃんと調ちゃんが助けたいと思う様に…私もマリアさん達を助けたい!ガンヴォルトさんの力になりたい!何も出来ないままただ待っている事なんて嫌なんだ!」

 

響は未来にそう言った。

 

響の心の奥底にある誰かのために力になりたい。その想いがあるからこそじっとしていられない。危険なのは承知だ。だが、それでも。

 

ガンヴォルトが、翼が、奏が、クリスが、切歌が、調が、そして今から救援に向かう弦十郎と慎次だけ頑張ろうと言うのに、何もしないなんて嫌だ。

 

助けになりたい。今の自分にもまだ何か出来るとすれば救援なのだ。

 

響にはパソコンからサポート出来るほどの知識もない。本部を復旧させる為の技術もない。なら出来る事はこの救援に参加する事。

 

「今の自分にはシンフォギアを纏う事も出来ない…でも、今の私でも出来る事はある…誰かの力になれる…それがこの救援なんだよ。未来の心配も分かる。でもやらなきゃいけないんだ。みんなが帰って来る為に。ガンヴォルトさんの頑張りに応える為にも」

 

響は未来にそう言った。

 

「私だって力になりたいよ…頑張っているみんなの為にも…この戦いを終わらせる為に動いているガンヴォルトさんの為にも…でも、私達にはこの戦いを終わらせる為の力が無いだよ…それに…せっかくまた会えたのにまた何処かに響が入ってしまうのはやだよ」

 

泣きそうになりながら未来は懇願する。行って欲しく無い。もう離れ離れにはなりたく無いと。

 

響も未来にそんな表情をさせて申し訳ないと思う。だが、それでも自分は行かなきゃならない。ガンヴォルトの為に、マリア達を救わなきゃならないと。

 

「…俺も反対だ。今の響君にこの救援に力になれる事はない」

 

弦十郎も反対とそう言った。

 

だが、それを肯定したのは意外にも切歌と調であった。

 

「お願いです。この人も一緒に連れて行ってください。私達でマリアを救う事は勿論です。でも、その道のりにまだ障害がある可能性がある」

 

「危険は誰もが同じデス。ここに居たってアシモフの魔の手が来ないとは言い切れない。それに救うための人手は多い方がいいデス。もし私達二人が、二人が足止めされた時、最悪の事態も考えられるデス」

 

調と切歌がそう言った。

 

最悪の事態。ガンヴォルトが救ったとしてもマリアが助けを待っていた場合、誰も助けに行けず、不幸な目に遭えば目も当てられない。それにマリアは二人にとってとても大切な家族。だからこそ、力がなくても、マリアの元に辿り着いて救える人が多いに越した事はないと言った。

 

「多いに越した事はない…それはこちらも承知している。だが、これは遊びじゃないんだ。アシモフの願望の成就とこの世界の命運がかかったやり取りなんだ」

 

「だからこそ、人員を確保すべきなんです。全員とは言えなくても、救おうとする人が多ければ可能性が上がる。それが出来るのは今この場にこの人しかいない」

 

「例え私達が足止めされてマリアの元に向かえなくても、セレナの元に向かえなくても、たった一人でも向かえれば救われる命があるデス」

 

弦十郎に切歌と調がそう言った。

 

どうしようと考える弦十郎。

 

確かに多いに越した事はない。だが、その人員が二課のエージェントなどでは無く響でいいのだろうか?確かにエージェントも総出で復旧に臨んでいる。引き抜いて良い人材などいない。

 

行かせないと拒もうとする。だが、調は次に弦十郎にではなく未来に向けて行った。

 

「大丈夫です…この人も一緒に帰ってきます…必ずみんなで帰ってきます。だから行かせてあげてください。もう誰も居なくならないようにする為にこの人の力も必要なんです」

 

「奇跡を何度も起こして来たこの人だから必要なんデス。お願いデス…この人を連れて行く事を、帰って来る事を信じて欲しいデス」

 

未来に向かって二人はそう言った。

 

確かに響が起こして来た奇跡。だが、ガングニールがあってこその奇跡。切歌と調の絶唱を受け止めて、二人を助けた奇跡。蝕まれた肉体で未来を救い出した奇跡。ガンヴォルトがいたからこそ、シアンがいたからこその奇跡。それが今の響に出来るのだろうか?

 

だが、それを信じずして何が親友だ。否定ばかりして信じないで何が親友だ。響はいつもそうだ。帰ると約束すれば必ず帰って来る。他の約束は破られた時もある。だが、帰ると言う約束は必ず守り続けて来た。

 

「二人は…響が帰って来れる確信がある?」

 

未来は涙を拭いながら二人にそう聞いた。

 

「みんな無事に帰って来る…ガンヴォルトがそう約束したように、私達も全員無事で」

 

「調の言う通り、誰一人欠けずに戻って来るデス。ガンヴォルトが頑張ってそうする様に、私達もそれを手伝うなら確実デス」

 

二人は確実に全員で戻ると口にした。響だけじゃなく、調と切歌もそう言った。今戦力となる二人の言葉。マリア同様に自身を助けてくれた二人の言葉。

 

だから未来も覚悟を決める。響ならやってくれると。必ず帰って来てくれると。切歌と調がいる。弦十郎に慎次もいる。

 

だから未来は弦十郎に頭を下げる。

 

「否定した手前、私が言うのもおかしいと思いますが、お願いします。響も連れて行ってください」

 

「未来君まで…」

 

未来の言葉になんとも言えないと弦十郎は頭を悩ませる。

 

救援の最も頼みの綱である切歌と調。この二人と未来までも響の同行を求めている。危険な事を承知にだ。

 

大人としてそれを見過ごすわけには行かない。

 

だが、それでもその行動を、勇気を阻むのも大人として正しいのか迷う。

 

人の命が掛かっている所に向かう。だが、それは未来を担う子供ではなく大人が行かなくてはならない。

 

だが、一方今までシンフォギアを纏い、戦って来た事、そしてその勇気と救う気持ちを弦十郎は無碍には出来ない。

 

迷いに迷った結果。

 

「分かった…同行を許可しよう…危険な場所に突っ込むんだ。君達にも責任がある。それを全う出来るか?俺達も守るが自分の命を捨てる様な真似をしないか?」

 

「誰かを悲しませない為に、自分の命を犠牲にするつもりはありません!みんなが笑ってこの戦いを終える様に頑張ります!それにガンヴォルトさんも行っていました!言葉は違うかもしれませんが、そんな可能性は数字で語れません!私もみんなも無事で帰れる様頑張ります!」

 

響もそう言った。

 

「ならば急ぐぞ!奏とクリス君の救援!ウェル博士の捕縛!ソロモンの杖の回収!ガンヴォルトがマリア君を救うと信じて俺達も現場に行くぞ!」

 

「はい!」

 

その言葉に弦十郎、慎次、切歌、調、そして響は動き出す。

 

「響!」

 

動き出した響に未来が言葉をかけ、足を止めた。

 

「必ず帰って来て!みんなを連れて!ガンヴォルトさんの頑張りに応える為に!」

 

その言葉に響は頷いた。

 

「絶対帰って来るよ!」

 

その言葉を残して四人の後を追い、響も司令室から出て行った。

 

「お願い…みんな無事で帰ってきて…」

 

未来はそう願って五人を見送った。

 

◇◇◇◇◇◇

 

「クソッ…クソッ…」

 

地下空間を一人ボロボロになって歩くウェルが悪態を吐きながらフロンティアの中央に戻ろうとしていた。

 

ソロモンの杖を奪われ、奏とクリスの殺害も失敗し、ガンヴォルトを殺す事も出来なかった。

 

「ふざけるなよ…僕は英雄になるはずなのに…こんなことあってはならないのに…」

 

顔面が腫れて言葉を出すだけでも痛い筈なのにウェルはつぶやく様に言い続ける。

 

「殺してやる…僕の邪魔をしてきたあいつら全員ぶっ殺してやる…アッシュと僕の為に…僕達が英雄になる事を阻むあいつらを!」

 

ソロモンの杖を無くしてもう手がないと思っているだろうが、そんな事はない。この戦況をひっくり返す事など出来る手段はまだ残っている

 

今度こそ思い知らせてやろう。誰がこの戦いで勝つのかを。

 

「僕達が勝つんだ…僕達が英雄になるんだ…」

 

黒い笑みを浮かべながら、ウェルはただ英雄となる為に、目的を達成する為に、戦況をひっくり返す為にフロンティアの中央へと歩み続けた。

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