戦姫絶唱シンフォギアAB   作:株式会社の平社員

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115GVOLT

フロンティア中央へと向けて動き始めた弦十郎達。

 

ガンヴォルトがアシモフに勝つ為に少しでもそのサポートとして奏、クリスの救援へ、そしてソロモンの杖、ウェルの回収をする為に。

 

だが、本部から少し進んでから本部から通信が入った。

 

『大変です司令!ウェル博士はまだ捕まってません!今先程、世界に向けてウェル博士の姿が確認されました!』

 

「なんだと!?」

 

朔也から入ったその報告に弦十郎はすぐ様車に備え付けられたナビを操作してワンセグへと切り替えるとそこに映し出されたボロボロのウェルの姿を確認した。

 

「奏とクリス君が逃した…クソっ!」

 

「そんな!?奏さんとクリスちゃんが頑張って倒した筈なのになんで!」

 

響も映し出されたウェルを見て狼狽が隠せない。

 

「でもソロモンの杖を持っていない…何も無いはずなのに何故今になって?」

 

「アシモフと協力している外道デス…まだ何か隠しているに決まっているデス…でも…一体何をしようと言うのデスか」

 

調も切歌も急にウェルが行った世界への放送ジャックになんの意図があるか読めず、その動向を見続ける。

 

そしてウェルは世界へと向けてこの星が終焉に向かっている事を告げた。そしてそのリミットがあまり残っていないと。

 

「ッ!まだこの男は混乱を招く様な事を!」

 

運転する慎次もウェルが言った言葉に、そして隠さなければならない終焉をバラした事に怒りを隠せない。

 

そして更にはウェルとアシモフを英雄と崇拝する者だけが生き残ると言ったのだ。

 

今度は何をしでかす?そう思ってウェルの放送を見ているとウェルは何かに変化した腕を叩き下ろす様に振るうと背後の地面が盛り上がり、怪物の様な何かを大量に出現させた。

 

「ッ!?まだこんな物を隠していたんですか!」

 

その出現した何かを見て慎次が声を上げる。ウェルが出現させた怪物達。それを使ってウェルのことを崇拝しない人類への殺害宣言。そして更にはデモンストレーションと称してこの国の首都を壊滅させると宣った。

 

「そんな巫山戯たことが出来る訳ありません!」

 

響はウェルの映る画面を見てそう叫んだ。誰しもそう思っていた。だが、それはそんな怪物が動き始めた事により何も言えなくなってしまう。

 

怪物達が動き始めたと思うと怪物達が見せつける様に出現させた力に誰もが絶望した。

 

それもその筈。その力とは幾度となく絶望へと叩きつけてきた時に、必ずと言って良いほど見ていた力。

 

蒼き雷霆(アームドブルー)と同様の第七波動(セブンス)能力。亜空孔(ワームホール)残光(ライトスピード)爆炎(エクスプロージョン)翅蟲(ザ・フライ)生命輪廻(アンリミテッドアムニス)

 

その全てを保有する怪物の群れを見てこの場の全員が絶望に叩きつけられた。

 

だが、それでもその絶望を少しでも取り除く為に弦十郎がすぐ様通信を入れる。

 

「斯波田事務次官!放送をご覧になっていますか!?」

 

『あたりめぇだ!馬鹿野郎!とんでもない爆弾を落としたかと思った瞬間に矢継ぎ早で更に爆弾をあの野郎が落としやがった!』

 

通信を繋げたのは斯波田事務次官であり、少しでも避難誘導を行なってもらう様に連絡したのだ。

 

これ以上の被害を齎すわけにはいかない。だから地上で動け、被害を抑える為に何か策が無いかを弦十郎は斯波田事務次官に聞く。

 

『この国から堕とすなんて馬鹿なことを言いやがる!だが!それを可能とするものを見せられたら別だ!俺の方もなんとかしてみるが正直、この国の一般人はこんな放送聞いたところで何かの撮影やらなんかと思って動きはしねえだろう!しかも放送がジャックされている以上!勧告を出すことも出来ねぇ!俺達はなんとか避難誘導やらを足を使ってでもなんとかしてみる!テメェ達もなんとか足止め!もしくはあの怪物を動けない様に出来ねぇか!』

 

斯波田事務次官も慌ててそう言った。そして通信を切ると多分慌ただしく動いているのだろうとこれ以上繋がることはなかった。

 

「クソッ!ウェル!貴様は何度こちらを嘲笑い続けるんだ!」

 

「師匠!これからどうすれば!?」

 

響も映し出された光景を見て狼狽えながら弦十郎に言った。

 

こちらがどれほど急ごうと間に合わない。だが、それを可能とする人物はいる。

 

ガンヴォルト。今まさに中央へと向かっており、この中で一番それを可能とする最も大きな戦力。

 

すぐに弦十郎、ガンヴォルトに連絡をすると返してガンヴォルトの通信機へと発信しようとした。

 

だが、それは映る画面に入った声で中断してしまう。

 

それはマリアの声であり、その声にいち早く反応したのは切歌と調。

 

「マリア!?」

 

そしてウェルの視線と同様にカメラワークが移り変わり、マリアの姿を見る事になった。

 

拘束され、ボロボロになったマリアの姿。

 

その姿に弦十郎、慎次、響は辛そうな表情をする。だが逆にその姿を見た切歌と調は画面に向けてただ怒りを撒き散らす。

 

「よくもマリアを!この外道!」

 

「マリアになんて事をし続けていたデスか!」

 

マリアが傷付けられていた事に、そして拘束されている姿を見て激昂する。

 

画面に映るマリアをどうにかしなきゃと思うがどうしようもない状況。

 

そんなマリアは拘束されてでもウェルがやる事を許せなかったのだろう。ウェルに止める様言葉を掛け続けていた。

 

マリアが何を言ったところで何も変わらない。だが、それに苛ついたのかウェルがとんでもない事を口にした。

 

マリアを殺す。ウェルはそう言ったのだ。

 

「止めて!マリアを殺さないで!」

 

「止めるデス!マリア!逃げてデス!」

 

無情なる宣告に切歌と調は画面に向けて叫んだ。勿論画面の向こうに二人の声は届きはしない。

 

何をしても二人の声はウェルの元にもマリアの元にも届きはしない。

 

そしてウェルの号令と共にマリアへと死と言う概念が降り注ごうとした。

 

「止めてぇ!」

 

言葉が届かなくても、二人は無理だと分かっていても叫ばずにはいられなかった。

 

降り注ごうとする絶望。

 

だが、その絶望を振り払う希望の雷光()が瞬いた。

 

一瞬で何かが、画面の向こうで降り注ぐ。その瞬間に絶望を降り注ごうとした怪物達に紋様が浮かび上がった。そしてその紋様が浮かび上がったと思った刹那の瞬間、強力な雷撃が画面いっぱいを照らし出し、その光が収まると同時に炭化して崩れていく怪物の残骸が映し出されていた。

 

そしてその光景を作り上げだ人物を映しながら。

 

「ガンヴォルトさん!」

 

その光景を見て初めに声を上げたのは響。

 

安心感を与える希望の雷光()。それを纏うこの戦いを終わらせる眩い光の存在を見て、全てをひっくり返してくれた事に響だけでなく、誰もが安堵した。

 

勿論、弦十郎も慎次も新たに発生した絶望を振り払ってくれた事とガンヴォルトの姿を見て安堵する。

 

だが、それ以上にその姿を見て嬉しさを滲ませて涙を流す切歌と調。

 

「ガンヴォルト…ありがとう…マリアを守ってくれて…」

 

「ありがとうデス…ガンヴォルト…」

 

マリアの前に立つガンヴォルトを見てマリアが助かった事に二人はとめどなく涙を流した。

 

「…ガンヴォルト…良くやってくれた…そっちはなんとかしてくれ…ならば俺達も急ごう…まだウェルが何かを隠し持っている可能性もある。まだ戦いが終わったわけじゃない。急いで奏とクリス君の元に向かい、先に進もう。こんな悲劇を終わらせる為に…」

 

弦十郎は二人を見て必ずこの戦いを終わらせる為に慎次に更に車を飛ばす様に指示を出す。

 

まだ終わらぬ戦い。それに完全なる勝利を掴む為。

 

◇◇◇◇◇◇

 

アシモフと戦闘をする最中、翼と対峙していたアシモフの動きが急に鈍るのを感じた。

 

誘っているのかと翼も隙を窺う。

 

だが、アシモフは鈍って少し離れると共に舌打ちをした。

 

「Dr.ウェルめ…勝手な事をしてくれたな…それがちゃんと出来れば何も言わなかったが、全く…やはり無能力者は役に立たん。フロンティアを起動してアレを受け取った時点で殺しておくべきであったな」

 

呟く様にそう言ったアシモフ。翼は何があったかは分からない。だが、ウェルがまた何かを始め、それが何者かによって阻止されたのだと察した。

 

調か?奏か?ガンヴォルトか?

 

分からぬとも状況が好転している事に翼は安堵する。翼がこうして時間を稼ぐ事により何かが変わっている。

 

だからこそ力が湧く。

 

シアンの歌。翼自身の覚悟。全てが噛み合って事が上手くいっている。

 

「何があったかは知らないが…全てひっくり返り始めている様だな…」

 

「ひっくり返る?何を馬鹿な事を?どんなに貴様達側の状況が好転していても結末は変わらない。私がいる限り、私の計画が狂っても成功することは変わりない」

 

「その驕りが貴様を狂わせている事に気付けないとはな…分かっているのだろう…お前がどんなに強かろうとここで終わる…私ではなくともガンヴォルトがそれを終わらせる」

 

翼は剣を構えながらそう言った。

 

「だから!紛い者が私を殺せるなど不可能だと何度言えば分かる!いい加減に貴様を手に入れてその希望を絶望に変えてやる!」

 

何度目かも分からぬアシモフの宣言。

 

だが翼にはその言葉に恐怖など微塵も感じない。

 

「ならばこちらも何度でも言おう!絶望はもうない!ガンヴォルトが起きた今!貴様の計画などはもう崩壊していると!」

 

「ほざくなよ!」

 

「何度でも言ってやる!私達は負けないと!貴様の計画など何が起ころうと破綻していると!」

 

そして再び二人の戦闘が始まる。

 

◇◇◇◇◇◇

 

「何度も…何度も何度も何度も!僕が英雄になるのにそれを良くも邪魔してくれるね!ガンヴォルト!」

 

「もう何も喋るな、ウェル博士…ボクは貴方を許せないんだ…貴方の言葉がアシモフと同じくらいにボクを苛立たせる…」

 

ウェルと対峙するボクは駆け出した。

 

今までの怒りをウェルへとぶつける為に、ウェルをこの場でノックアウトさせる為に。

 

「ッ!?」

 

一瞬でウェルへと距離を詰め、ウェルに雷撃を纏った拳を叩き込んだ。

 

アシモフの様な第七波動(セブンス)能力を持たず、装者達の様にシンフォギア装者でもなく、弦十郎や慎次の様に、修練を積み、装者と同等の力を身につけた者とは違うウェルには今のボクの動きを目で追うことすら出来ず、ただ拳を受ける事しか出来なかった。

 

「ぶへぇ!?」

 

そして吹き飛ばされるウェル。宙に浮かぶモニターの様なものをすり抜けて転がっていく。

 

だが、ボクも止まらない。奏とクリスから逃れたようにウェルはまだやられていない可能性があるからだ。

 

今度こそここで終わらせる必要がある。マリアを完全な意味で救う為にも。

 

ボクは転がっているウェルに追撃を加える。

 

立ちあがろうとするウェルに向けて雷撃を纏った拳を更に放ち、再び顔面を地面へと叩きつける様に振るった。

 

「がふっ!?」

 

痺れて動けないウェルに更なる追撃。

 

そしてその一撃を与えた事により、ウェルは気を失い、事切れた様に動かなくなった。

 

「殺しはしない…だけどもうこれ以上何も出来ない様に」

 

ボクはそう呟くとウェルの腕を容赦なく踏み付けて折った。

 

非情だと言われるかもしれない。だが、そんなの誰かを救う為ならば厭わない。ボクは腕を、足を踏んで骨を折って完全に動けない様にした。変化した腕も折ろうとしたが、完全聖遺物によって異形と成り果てた腕は何をしても折る事はできなかった。

 

だが、それでも両足と片腕を折ったのだ。これで逃げることも出来ない。

 

そしてウェルが戦闘不能になった事を確認する。それと同時にウェルの近くにある物が落ちていた。

 

それはギアペンダントで有り、シアンの気配がなかった事、そしてその他の知りうるギアペンダントは奪われていない事からこれがマリアの持っていたガングニールのペンダントだと察した。

 

それを拾い上げるとボクはマリアの元に向かう。

 

ボロボロになったマリア。ボクはその姿に悲痛な表情を浮かべながらも、拘束を解いた。

 

「もう大丈夫だ」

 

そう言った瞬間にマリアはボクに抱きついた。

 

「ありがとう…ありがとう…敵なのに…あんなにも貴方を苦しめていたのに…そんな私を助けてくれて」

 

「…違うよ…君達はボクに何もしていない…ボクを苦しめていたのはアシモフだ。それに君達は初めは敵だったかもしれない…だけど今は違う…アシモフを止めようと抗った人達だ…だからボクは君達を救おうとする事は当然だよ…それに約束したんだ…絶対君を助け出すって」

 

ボクはマリアへとそう告げた。

 

「切歌も調も…ナスターシャ博士も待っている…みんな生きて君の帰りを待っている」

 

ボクはマリアを待つ人達がいることを告げた。

 

「切歌も操られていたけど、調がどうにかしてくれた。もう二人を縛る鎖はありはしない。ナスターシャ博士もだ。本部で今君の無事を願っているよ」

 

その言葉にマリアは更に涙を流しながら言った。

 

「ありがとう…切歌も…調も助けてくれて…マムの無事を知らせてくれて」

 

「…気にしないでいいよ…だけどまだ戦いは終わっていない。まだやる事がある」

 

ボクはそう言ってマリアの抱きつきを離すように言うと立ち上がってある方向を向き直る。それはフロンティアの動力炉であるネフィリムの心臓。

 

「マリア…この場からすぐに離れて…ボクはセレナを救わなきゃならない…アシモフを殺さなきゃならない。こんな悲劇を終わらせなきゃならないんだ。今この場に二課の誰かが向かっている。その人達の元に向かってくれ」

 

「ッ!セレナをどうする気!?」

 

マリアはその言葉にボクにどうするのか尋ねた。

 

「セレナの魂をこの呪縛から解放させる。もう彼女の意志を反したアシモフ達からいい様に使われない様に…もう彼女が苦しまなくていい様に。ネフィリムの心臓を破壊してセレナを助け出す」

 

それはセレナを救い出す事。いい様に使われ続けたセレナをネフィリムの心臓という名の檻から解放してあげる事。

 

「…分かった…妹を…セレナをあんな外道共から救って…」

 

「勿論だ」

 

そう言ってボクはマリアから離れ、ネフィリムの心臓へとダートリーダーを構えた。

 

◇◇◇◇◇◇

 

ガンヴォルトによって気絶させられたウェル。

 

闇へと意識がどんどんと落ちて完全に動けない状態の黒い空間の中でウェルはもがいていた。

 

「巫山戯るな…巫山戯るな…僕がこんなところで終わるなんてあり得ない!僕は英雄になる存在なのにこんなところで終わるなんてあるわけが無い!」

 

暗闇の中でもがきながらそう叫んだ。

 

ガンヴォルトにやられてもまだ終わっていない。こんなところで終わるなんてあり得ない。何度もそう叫んでいた。

 

だが、いくら叫ぼうが精神である為に、何も起きるはずが無い。

 

肉体はガンヴォルトによって変化した腕以外は折られ、もう動くことも出来ないのだから。

 

だが、そんな事を知らないウェルはただ闇雲にもがき続ける。

 

「終わらない…終わってたまるか…僕は英雄になる男なんだ…アッシュと共に英雄になる男なんだ…そんな僕が終わるわけない!終わるわけないんだよ!」

 

だが、そんなもがきがウェルの精神を肉体へと戻そうとする。

 

そんな事はあり得ないと言える。だが、確実にとは言えない。

 

それはウェルの持つ英雄というものになりたいという願い。その願いと自身が望む結果でないからこそ、それをまだ望むその執念がそれを可能とした。

 

「終わらない…終わらないんだよ!僕の夢は!僕の理想は!こんなところで終わるなんて有り得ないんだよ!」

 

そう叫ぶとウェルは暗闇から解放されて肉体へと意識が戻っていくのを感じた。

 

そうして目を開けたウェル。

 

身体はまるで言う事を聞かない。ガンヴォルトによって浴びせられた雷撃で体が麻痺しているからだ。それに加えてウェルの腕と足は変化した腕以外全て折られている。

 

だが、運がいい事に、雷撃により麻痺したのは痛覚も同様であった為になんとか目を覚ました事に気付かれていない。

 

だが、ウェルの目に映るのはマリアを救い、そしてネフィリムの心臓を破壊する為にダートリーダーを構えるガンヴォルトの姿であった。

 

巫山戯るな、そんな事させないに決まっている。ウェルが英雄になる為に必要な存在。それを壊されてなるものか。

 

ウェルの狂気じみた執念が麻痺した身体を、折れていない変化した腕を突き動かす。

 

触れた床に現れるコンソールの様なもの。それを再び叩きつけるように手を翳し、ウェルは叫んだ。

 

「こんなところで終わる訳がない!僕は英雄になるんだ!貴方なんかにその理想を壊されてたまるものですか!」

 

その叫びと共に動力炉であるこの部屋が大きく揺れるのであった。

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