戦姫絶唱シンフォギアAB   作:株式会社の平社員

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もうそろそろそれぞれの最終決戦が始まります。


116GVOLT

「ッ!?ウェル博士!?」

 

気絶した筈のウェル博士の声に、ボクはそちらへと顔を向けていた。

 

確かに気絶させた。だが、ウェルは直ぐに意識を取り戻し、何かを起動させていた。

 

その直後の大きな揺れ。動力炉自体が大きく蠢いていた。

 

「クソッ!だけどセレナだけは!フロンティアだけは止めてみせる!」

 

ボクはそんな揺れにも耐えながら避雷針(ダート)をネフィリムの心臓へと向けて撃ち出した。

 

ネフィリムの心臓は避雷針(ダート)が直撃し、紋様が浮かび上がる。

 

後は雷撃を流し込んで破壊するだけだ。

 

そうしてボクは雷撃を腕から放とうとした。

 

しかし、

 

「きゃあ!」

 

マリアの悲鳴にボクは動きを止めざるを得なかった。

 

そちらを向くとマリアは揺れる動力炉の揺れに立っていられず、地面へと伏せていた。それだけならばよかった。

 

だが、その揺れと共に起きている事が問題であった。

 

地面が盛り上がり、亀裂を作り上げ、蠢く様に動力炉内部が動いていたのだ。蠢いた地面はまるで生き物の様に動き、まるでウェル以外を排除する様に、亀裂へと追い出そうとする。

 

「ッ!」

 

先ほど回収したギアペンダント。それをマリアへと返していればこんな事にはならなかった。自分の落ち度に悔む。

 

マリアの命かセレナの解放。どちらもやらなければならない。だが、今目の前の危険な目に遭っているマリアを見過ごせる程腐ってはいない。

 

ボクは雷撃を放つ事を止め、マリアの方へと駆け出した。

 

だが、それと同時にマリアは大きくなる亀裂にマリアのいる場所まで達してしまい、そのまま奈落とは行かないまでも暗くなった穴へと落とされてしまう。

 

「マリア!」

 

ボク自身も穴へと飛び込んでマリアへと手を伸ばす。

 

「ガンヴォルト!」

 

マリアも落ちていきながらもボクへと手を伸ばす。

 

絶対に見捨てはしない。絶対に救ってみせる。

 

切歌と調とナスターシャに約束したんだ。助けてくれたセレナに約束しているんだ。

 

それにまた目の前で救える命を見捨てたく無い。シアンの様にあんな悲惨な結末をもう見たくはない。

 

ボクは落ちていくマリアへと必死に手を伸ばした。

 

そして、落ちながらもマリアが伸ばした手をボクは掴む事が出来た。ボクはそのままマリアを自分の方に抱き寄せる。

 

直ぐ様雷撃鱗を展開してボクは落下速度を緩めながらも壁の方へとゆっくりと近づいて行く。

 

「ごめんなさい…私のせいで…」

 

「気にしないでいい…ボクが君にギアペンダントを先に渡しておけばこんな事にはならなかった…それよりも」

 

マリアへとそう言ってボクはようやく辿り着いた壁面を蹴り出すとそのままマリアを抱えて駆け上がる。

 

「ここから抜け出そう。君の安全の方が大事だ」

 

そう言って壁面を落下してくる瓦礫を雷撃鱗で砕きながら駆け上がった。

 

マリアを救う為にそれなりに落下している。だが、それでもその程度の落下幾度となく経験している。何度もこんな壁など駆け上がってきた。

 

だが、そんなボク達を嘲笑うかの様に気付けば壁面がどんどんと狭まっていっている。

 

「ッ!?壁が!」

 

「動力炉から排除出来れば修復か!」

 

幾ら瓦礫などは破壊出来ようともこれだけの質量が迫れば雷撃鱗でも打ち消せるかどうか怪しい。

 

「このままじゃ!」

 

「分かっている!しっかり捕まっていてくれ!」

 

そう言ってボクは全速力で迫り来る壁から逃れる為にも駆け上がる。

 

駆け上がるのに数秒も満たない。だが、その時にウェルの声が響き渡る。

 

「貴方ならこの程度、どうにか出来るんですよね!だからこそ、ダメ押しです!見えなくても!感じる君の元に!僕があなたを殺すために贈る最高のプレゼントですよ!」

 

そのウェルの声と共に、さらに大きな揺れが起こる。だが、大きな揺れであろうとボクは足はもつれたりもせず駆け上がって行く。

 

だが、その駆け上がるボクへは無情なものが落ちてきていた。

 

「ッ!?」

 

「そんな!?」

 

それを見てボクとマリアは驚愕に染められる。

 

その落ちてくるものとは巨大な支柱。いや、支柱ではない。綺麗に切り取られる様に削られ、そのまま押し出されてきた天井の一部が埋まろうとしている亀裂へと向けて落ちてきているのであった。

 

「腕を折ろうが足を折られようが!僕を殺さなかった事が貴方の敗因だ!ガンヴォルト!裏切り者と共に潰れて死んでください!」

 

僕とマリアが駆けあがろうとしている亀裂を埋めようとする天井。

 

亀裂ももう後少しで完全に閉じてしまう。絶体絶命。諦めて死ぬしかないのか?

 

だが、そんな選択肢はありはしない。絶対に生き延びなければならない。マリアを救わなければならない。セレナを解放させなければならない。アシモフを殺さねばならない。

 

やらなければ世界が終わる。この世界だけじゃない。元いた世界もだ。

 

そんな事は絶対にあってはならない。切歌を取り戻す為に調が頑張った。調に手を貸して亡くなったフィーネの意志を無駄になんか出来ない。

 

奏の頑張りが実り、クリスを取り戻したのに。ソロモンの杖を取り戻したのにボクが何も出来ずに終わるなんて出来ない。

 

翼が今もアシモフを足止めしているのに。危機的状況にも関わらず、覚悟を決めて頑張っているのにこんなところで終わってたまるか。

 

ボクの肉体に更に雷撃が迸る。迸る雷撃がボクの細胞を活性化させる。全速力を更に超えた速力を与えてくれる。

 

そうしてボクは本当に雷速の速さで壁を駆け上がり、危機を脱出した。そして駆け上がった場所に天井が落ち、完全にその場を塞いでしまった。これで大丈夫。

 

その筈だった。

 

「でもやっぱりこれだけじゃ貴方を殺すまで足りませんよね!」

 

駆け上がり、亀裂から脱出したボクとマリアへと向けて放たれたウェルの一言。

 

その一言と同時に、ボクとマリアへと向けて何かが放たれた。

 

「ッ!?」

 

ボクは空中で身を逸らし、その放たれた何かをなんとかマリアにも当てずに躱す事に成功する。

 

「どれだけあがこうが結果は変わらない!どんなに貴方が強くなろうが!貴方の腕に抱かれた裏切り者は守り切れますかね!」

 

その言葉と同時に更に大量の何がボクを襲ってきた。

 

それは見覚えのある火球。爆炎(エクスプロージョン)の能力。それがボクの目の前を覆い尽くさんばかりに襲い掛かってきた。

 

そしてそれを可能としているのは先程、全て消滅させた筈の異形の怪物達。

 

ウェルがボク達を亀裂に落とした瞬間、新しく生み出したコンソールを使い、ウェルはそれを更に呼び出していたのだ。

 

そしてボクはマリアを守る様に雷撃鱗を展開しながらもその爆炎に巻き込まれる。直撃しなくともボクへと向かいながら爆発した事で爆風が身を焦がす。

 

「くっ!」

 

「ガンヴォルト!」

 

マリアも心配そうに叫んだ。

 

「更にダメ押しですよ!」

 

そう言ってウェルが何かし出すと再びボクとマリアが爆風で身動きが取れない中で天井が落下してくる。

 

どうすれば助かるのか?そんな考える暇など与えない様に、落下してきた天井がボクとマリアを押し潰した。

 

「やったぞ…遂に…遂に僕はやり遂げたんだ!僕がこの手でガンヴォルトを殺してやったぞ!」

 

ただ無慈悲な現状。たが、ウェルに取っては待ちに待った現実が起こり、動力炉では歓喜の叫びが木霊していた。

 

その勝利を深く噛み締めながら、英雄になったと確信したウェルはボロボロになりながらも声高らかに笑うのであった。

 

◇◇◇◇◇◇

 

「奏!クリス君!」

 

「旦那…」

 

「おっさん…」

 

五人はようやく奏とクリスの元へと辿り着いたが、そこにいた二人はボロボロの姿ではある物の何処か痛みよりも悔しさを滲ませていた。

 

「すまねぇ…ウェル博士だけ捕まえ損ねた…せっかく倒した所なのに…せっかくガンヴォルトの為にアシモフの計画を潰せるところまで来ていたのに…」

 

奏が悔しそうに弦十郎に報告した。

 

「…こいつだけは取り戻せたのに…クソッ!」

 

クリスも自身が握るソロモンの杖を見てそう言った。

 

「それだけでも十分だ…よく頑張った、奏、クリス君。よく耐えてくれた」

 

そんな二人に労いをかける弦十郎。

 

「それよりも旦那…今状況はどうなってんだ?旦那にそれにこの二人…よかったな…大切な人を取り戻す事ができて…」

 

車に乗る切歌と調を見て安堵した。ガンヴォルトが来たからなんとなく察してはいたが、二人の無事な姿を見て本当に良かったと安堵する。

 

だが響を見て驚く。

 

「だけど響はなんでいる!?今お前にはガングニールはないんだろ!?」

 

奏の言葉に響はどう説明すればいいかアワアワと慌てるがそこは弦十郎がカバーに入る。

 

「何か力になれると行ったから連れて来た。俺の判断だ。状況が状況だ。少しでも救援に向かえる人員が欲しいんだ」

 

「分かった…でも、危険な真似をするなよ」

 

「全く…こいつの言う通りだ。誰かを救いたいと思うのはいい事だろうけど、自分も勘定にしっかり入れとけよ…あいつが悲しむだろうが」

 

「ごめんなさい」

 

弦十郎の判断という事とそれでも危険な真似をするなと釘を刺された響はシュンとする。

 

「そんなに責めるな。今はそんな事をしている場合じゃない。今の状況はこちらが優勢か劣勢か判断しづらい所だ。それにウェル博士が世界に向けて宣戦布告をした」

 

「ッ!?」

 

その言葉に奏とクリスが一番驚き、悔しそうな表情をした。自分達が倒し損ねたせいでそこまで事態が発展してしまった事に悔しさが滲み出る。

 

だが悔やんでる場合でもないと二人は弦十郎へと急いでなんとかしないと弦十郎に指示を仰ぐ。

 

「大丈夫。ウェル博士はガンヴォルトがやってくれる」

 

「マリアも救ってくれたガンヴォルトならどうにかやってくれるデス」

 

切歌と調が二人に向けて言った。

 

そう言って指を刺したのは車に備え付けられたナビ。それがワンセグに切り替わっており、そこにはガンヴォルトがウェルを殴り飛ばしている瞬間が映し出されていた。そして画面外へと飛ばされていくウェル。そしてそれと共にウェルの飛ばされて言った方へと歩むガンヴォルト。そして聞こえる地面へと叩きつけられる音と何がが折れる音。多分、ウェルを行動不能にする為に骨を折ったのだろう。だが、それでも装者達はウェルに行われた行動には何も口を出さなかった。今までの悪行からすれば当然の報いである。響もそこまでする様な事なのかと思ったが、そこまでしなければウェルは止まらない為に仕方ないと思うしかなかった。

 

「やっぱり…あいつは美味しいところを持って行きやがる…」

 

「私達がやりたかったが、世界の危機なのにそんな事を言ってられねぇか」

 

悔しそうだが、どこか晴れやかな顔でガンヴォルトがやってくれた事に胸を撫で下ろした。

 

「本当か!ならば急がねば!」

 

弦十郎もそれを確認するとすぐに奏とクリスに乗る様に言った。狭くなった車内だがそれでも二人の回収が済めば後はマリアをどうにかしなければならない為にそちらに向かう事に専念する。

 

だが、

 

「あいつ!」

 

「ガンヴォルトに何してやがる!」

 

目を向けていた奏とクリスの声が重なる。

 

「どうした!?」

 

ウェルがまた何か起こしたのかと不安になりながら、弦十郎も何が起こったのか確認する為にワンセグへと目を向けた。

 

救出されたマリアが、ガンヴォルトに抱きついている姿であった。

 

切歌と調べに関しては何も言っていない。だが、助けられた事、そして不安から解消された事から仕方がないのではないのかと言った風な表情であった。

 

響はそんな奏とクリスをあんな状況じゃ仕方ないと二人を宥めていた。だが、なんか本部でも一悶着あるのではと少し不安そうな表情で合った。

 

「二人共!今世界の危機にさらされているんだぞ!?嫉妬なんか後でいいだろ!」

 

弦十郎は頭を抱えながら、画面から目を離し、フロンティアの中央へと向き直る。

 

だが、

 

「そんな!?」

 

再び今度は装者達の声が重なった。

 

「今度はなんだ!?ガンヴォルトとマリア君が何をやらかした!?」

 

呆れながらも再びワンセグに目を移す。そこに映し出されていたのは揺れる光景。それと共に画面に再び映っていたガンヴォルトとマリア。だが、マリアが亀裂へと飲まれそうになる危機的状況であった。

 

「何が起こったんだ!?」

 

「わかんねぇ!だがはっきり聞こえた!あいつだ!ガンヴォルトがミスするとは考えられねぇ!あの野郎!まだ意識があって何かしやがった!」

 

クリスがそう言った。

 

「マリア!」

 

せっかく救われたのに再びの危機。そのマリアの危機に切歌と調も声を出す。

 

だが、無情にも亀裂が大きくなり、マリアを亀裂へと飲み込んでしまう。

 

「ガンヴォルト!マリアを!」

 

二人の声が再び重なった。今あの場にマリアを救えるのはガンヴォルトしかいないと。その思いが届く様に、画面に映っていたガンヴォルトもマリアの落ちた亀裂へと飛び込んでいった。

 

「お願いです…マリアさんを助けてください…ガンヴォルトさん」

 

響も画面に向けて祈る。

 

だが、それ以上にその願いを打ち消さんばかりの悲劇が映し出された。

 

それは落とされ、ガンヴォルトが飛び込んだ亀裂が徐々に元に戻ろうとしている事。そして更には天井が切り落とされた様にその亀裂を更に埋めようと動き始めた事。更には先程ガンヴォルトが倒したはずの怪物達が再び大量に姿を現した事。

 

目の前に現れた絶望。ガンヴォルトとマリアを必ず殺すという殺意の表れ。二重三重にも張り巡らした絶望。

 

ガンヴォルトなら大丈夫だと信じたい。だが、あまりにも絶望的な展開に誰もが何も言葉に出せなかった。

 

そして雷撃を迸らせながら二重の絶望を退けたガンヴォルト。だが、その絶望を退けたとしても三重目がそれを許さなかった。

 

初めに牽制とばかりに放たれた光。それをガンヴォルトはマリアを庇いながらも躱す。だが、それと同時に幾重にも出現した火球が画面を埋め尽くし、それが躱したガンヴォルトへと一斉に放たれる。

 

「やめろぉ!」

 

「ガンヴォルト!マリア!」

 

「ガンヴォルトさん!マリアさん!」

 

全員がその悲劇を否定して欲しいとばかりに叫ぶ。ガンヴォルトはマリアを守る様に自身の身体を盾に、そして雷撃鱗を展開させる。

 

だが、ワンゼクから鳴り響く爆発音。そして更には何が落とされた様な重厚ある音。

 

そして絶望が再び目の前に。

 

爆発が晴れた時には何も残っていない。あるのは瓦礫。そしてガンヴォルトがいた筈の空中には天井が再び落とされたのか、四角く切り抜かれた支柱が聳え立っていた。

 

ガンヴォルトの姿もマリアの姿も見当たらない。そこに有るのは希望の光が消えた絶望という光景のみ。

 

「ガンヴォルト!マリア!」

 

「ガンヴォルトさん!」

 

それぞれが誰も写らなくなったワンセグに叫んだが、その声には誰も反応を示さない。

 

そして、誰もいなくなったワンセグからはウェルの狂った様な叫びと未だに揺れる光景だけが残された。

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