戦姫絶唱シンフォギアAB   作:株式会社の平社員

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ついに終わりが見えて来た…あと二十話くらいで本編は終了する予定であります。
多分仕事が忙しく無ければ九月か十月で終わるとは思います。
取り敢えず本編終了後は異聞録の白き鋼鉄のXの更新を再開と迸らないを書いて少し本編の補完とかを更新するくらいですかね。
三周年も二周年同様特に考えていません。
本編を終わらせるのに忙しいので。


118GVOLT

「マリア!」

 

ガンヴォルトとの通信からしばらくしてから画面にはマリアが再び現れた事に切歌と調が声を上げる。

 

そしてマリアは今までと違う聖詠を歌うと共にシンフォギアを纏い怪物達へと戦いを始めた。

 

「ガンヴォルト…マリア君がそこにいると言う事はお前は翼の元に…シアン君の元に…アシモフを止めに向かったと言う事か」

 

弦十郎はマリアが現れ戦う姿を見ながら、その場に先程通信した後現れないガンヴォルトが自分の使命を全うしていると願う。

 

「マリアさんが頑張っている!師匠!私達も早く!」

 

「分かっている!」

 

響の言葉に弦十郎はそう返す。急がなければとは思っていても既に車は最高スピードを出し続けている為に加速する事は不可能。

 

だが、その加速のおかげでもう目の前にはフロンティアの入り口が見えている。

 

「このまま突っ込みます!全員捕まっていてください!」

 

そう言うと傾斜にそのままのスピードで乗るとそのままの勢いを緩めずに走らせ、フロンティア内部へと繋がる入り口に傾斜から車が中を浮きながらも走り抜けてフロンティア内部へと突入する。

 

「ッ!正念場だ!装者全員!シンフォギアを纏え!」

 

そして突入したと同時に弦十郎が叫ぶ。そして各々が聖詠を歌い、響以外がシンフォギアを纏った。

 

「敵はいないが何が起こるか分からない!いつでも戦闘になる可能性を頭に入れておけ!」

 

そう叫ぶ弦十郎に装者達は頷く。

 

「司令、ここまで辿り着きはしましたがマリアさんがいる場所までのルートは?」

 

『既に把握してますよ!緒川さん!』

 

慎次の言葉に反応したのは本部のオペレーターである朔也であった。

 

『ガンヴォルトが簡易的にルートを通信機から自動で送信していてくれていたので今車の備え付けられたナビに送りました!」

 

そしてあおいが通信機越しにそう言うとマリアが映されている画面を切り替え、戦闘しているマリアとウェルの元に向かうルートが映し出された。

 

「よくやった!」

 

だがそのルートは複雑であり、ガンヴォルトも迷いながらも辿り着いたのであろう。かなりの道のりがあり、到着まで時間がかかりそうであった。だが、その他に矢印で一直線のルートが作られている。

 

ルートを見て慎次が弦十郎へと聞く。

 

「…幾らなんでもこのルートまで考えますかね?」

 

「急がねばならないんだ。藤堯も友里も考えて、そして装者もいるから一応作ったのだろう。それにこのルートならば時間をさらに短縮出来る」

 

慎次は苦笑いを浮かべながらもそうですね。時間がないですからねと言う。そして弦十郎はすぐさま装者達に向けて言った。

 

「悪いが最短距離で行くぞ!だが、そのルートは君達の力が必要だ!やってくれるな!?」

 

「分かってるよ!でも、まさかここでシンフォギアを纏って一発目が戦闘じゃなくてこれだとはね」

 

「別にいいだろ。そんな事。あの野郎を早くブッ倒せるのなら願ったり叶ったりだ」

 

「マリアの元に少しでも早く辿り着けるのなら問題ないデス!」

 

「うん。早くマリアの力になりたい」

 

装者達はそのルートに呆れもせず、その案に直ぐに乗っかる。

 

「お願いします!みんなでマリアさんの元にすぐ向かいましょう!」

 

響がシンフォギアを纏う装者達に向けてそう言うと全員が任せろ各々の口でそう言った。

 

「頼んだぞ!」

 

弦十郎がそう言うと共に慎次は今まで同様にアクセルをベタ踏みでそのルートに向かって突き進む。

 

そのルートとは存在する壁をぶち抜いて進むと言う至ってシンプルな方法。装者という第七波動(セブンス)以外の人智を超えた力を持つ元がいるから出来る芸当。

 

だからこそ、装者達は立ち上がると奏が車のフロントへ飛び移り、そして切歌と調が側面に、クリスが後部座席から更に後方へと乗り出す。

 

「前が見えないかもしれないけど我慢してくれよ!緒川さん!」

 

「前が見えなくてもそのくらい大丈夫です!奏さん!道を切り開いてください!」

 

「任せろ!三人共!吹き飛んだ瓦礫は頼んだぞ!」

 

そう言って奏が槍を構えると同時に穂先が回転する。

 

回転する穂先をそのまま振るうと巨大な竜巻を形成し、それを壁に向けてぶつける。

 

ぶつかり合った竜巻と壁。アームドギアが生み出した強力な力は壁などものともせずにぶち抜いていく。

 

そして飛び散った瓦礫が車へと襲い掛かろうとするが、側面は切歌と調が、上空から落ちてくる物はクリスがそれぞれ破壊していく。

 

大きく揺れる車内。だが、慎次はブレーキなど踏まずアクセルを踏み続けて速度を落とさない。

 

道なき道を切り開いて進む一行。極力時間をかけずマリアの元へと辿り着こうと壁をぶち破って突き進む。

 

そして、車内の位置が目的地である動力炉の前に来て、最後の壁をぶち破った瞬間、大きな空間に出ると共に車は大きく浮遊する。

 

「司令!響さん!しっかり捕まってください!」

 

そしてその瞬間に装者達は勢いよく飛び出す。そして浮遊する車が地面へと上手く着地すると同時に大きな揺れで響は飛び出しそうになるが、弦十郎がそれを抑える。

 

そして着地して止まった車。

 

それと同時に何度も聞いた悪き声が全員の耳に響いた。

 

「次から次へと!本当に面倒臭い人達ですね!機動二課!」

 

それは腕を折られ、足も折られながらも未だ健在するこの事件の首謀者である片棒のウェルであった。

 

「切歌!調!」

 

それに気付いたマリアも二人の大切な物達の乱入に声を出す。

 

「マリア!」

 

二人はその声に応えると共にマリアの周辺にいる怪物を各々のアームドギアで斬り伏せるとマリアに抱きつく。

 

「よかったデス…マリア…本当に無事で良かったデス」

 

「無事でよかった…マリアが本当に無事でよかった…」

 

そんな二人同様に、マリアも二人を抱き止める。

 

「切歌…調…ごめんなさい…心配をかけて…迷惑をかけて」

 

マリアも二人との再会に涙を流しながらも二人の存在を強く感じるように強く抱きしめる。

 

「感動の再会に水を差すのは悪いと思っているけど、後にしてもらっていいか?」

 

奏がそんな三人へと向けて爆炎(エクスプロージョン)の火球を放とうとする怪物を斬り伏せてそう言った。

 

「ああ。そういう事はこの戦いが終わった後にしてくれ。まだあの外道がそんなお前達を殺す勢いで睨んでるんだからな」

 

クリスは周辺にいる怪物達をガトリングで一掃しながらそう言った。

 

「分かっているわ…貴方達にも悪いとは思っている…私達のせいでこんな事になって…こんな後始末を任せる事になって」

 

切歌と調を離し、マリアは己がアームドギアである短剣を強く握りながらそう言った。

 

「もう過ぎた事だ。そんな事を気にしていても終わるわけじゃない」

 

奏はマリアに向けてそう言いながら、迫り来る火球や光線、穂先を回転させて迫り来る黒い粒子を吹き飛ばしながらそう言った。

 

「こいつのいう通りだ。過ぎた事を気にしても仕方ねぇ。私もその気持ちは分かるからな…」

 

かつても自身の過ちによって過去の凄惨な現場を作った事があるクリスはマリアの気持ちをよく理解出来る。

 

「過ちと認めるならもう止める事に集中するしかねぇだろ。謝るも償うのもそこからだ。終わらせないと何も始まらねぇ。何も出来ねぇ」

 

そう言ってクリスも光線と火球、そして黒い粒子を放とうとする怪物達を蹴散らしながらそう言った。

 

「デスね…マリア…償う為も…終わらせるデス」

 

「何も失わない為にも、終わらせようマリア。一人じゃなくてみんなで一緒に」

 

「…そうね…終わらせましょう!」

 

そして三人は己がアームドギアをそれぞれが構え、怪物達を蹴散らそうと駆け出した。

 

その一方で怪物達から離れた場所に降り立った車。あたりにいる怪物達がクリス達が倒してくれた事で一時的な安全を確認すると弦十郎と慎次が車から飛び降り、ウェルの方へと向かう。

 

「辿り着いたぞ、ウェル博士。ガンヴォルトの代わりにお前の野望を止めに来た」

 

「あの時のようには行きません。もう貴方を逃しません。ここで終わらせましょう」

 

弦十郎は拳を握りながら、慎次は懐から銃を取り出してウェルへと向けて言った。

 

「ッ!?」

 

弦十郎と慎次の言葉に狼狽えるウェル。

 

ウェルにとって目の前の二人は恐怖を掻き立てる存在である。ガンヴォルトや装者とは違い、生身で、しかもガンヴォルトの様に第七波動(セブンス)などの特殊な力を持たないが完全聖遺物、ネフィリムを倒せるだけの力を持った規格外の存在。そして同様に過去の戦闘でノイズを使い、殺したはずなのに生きていたなど、弦十郎とは何をしたのかわからないからこそ、異質な恐怖を掻き立てる慎次。

 

今のウェルにとって装者達よりも、ガンヴォルトよりも、その異質さが恐ろしさとして認識されている。

 

ソロモンの杖を奪われ、手足は変異した腕のみを残し全て折られている状態。ウェルはそんな状態であるからこそ、喚き散らしたくもなる。

 

だが、それでも自身はもう英雄となったと言う思いがそれを踏み止まらせる。

 

「何が僕を止めるだ…何がガンヴォルトの代わりだ!貴方達は今の僕に何も出来ない!この怪物はまだ沢山出せる!この怪物が!ネフィリムの細胞によって作られた第七波動(セブンス)を持つ兵器に敵うわけないだろう!」

 

そう叫ぶとウェルは唯一動かせる変異した腕を動かして更に怪物達を作り上げる。

 

だが、

 

「フンッ!」

 

出現する前に弦十郎が力強く地面を踏み抜くとそこから亀裂が走り、折角作り上げた怪物達は完全に顕現する前に粉微塵となって消えていく。

 

だが、それでも倒しきれなかった怪物達もいたが、動き始める前に幾つかの銃声が響くと共にその怪物達は動けなくなり、離れた所で戦う装者達の攻撃の余波によって砕け散った。

 

「ッ!?」

 

あまりの突然の出来事。そしてその二人が無傷で出現した怪物達を一瞬で蹴散らす様を見てウェルは更に狼狽えてしまう。

 

「巫山戯るな…巫山戯るなよ!何なんですか貴方達は!何者なんですか貴方達は!聖遺物を起動して纏うシンフォギアを持たないのに!ガンヴォルトやアッシュの様に特別な第七波動(セブンス)と言う力を持たない貴方達は!一体何なんですか!」

 

あまりにもこの二人の異質さに恐怖が更に助長してウェルが叫んだ。

 

「大人だよ。この国を守りたいと言う思いと、お前達の様な輩にこの世界を終わらせないと言う信念を持って立ち、子供達だけに全てを押し付けない為に、そして仲間に頼まれてお前を止める為にここまで来た大人だ」

 

「貴方達とは違い、終焉や破滅などではなく、この世界を守ろうとする立派な大人ですよ」

 

「ッ!何が大人だ!答えになってないんですよ!何なんですか!?本当に意味が分からない!分かりたくもない!いい加減死んでくださいよ!僕の目の前で!英雄である僕の目の前で!」

 

そう叫ぶウェル。

 

だが、

 

「死ぬわけにはいかないんだよ!誰ももう殺させるわけにはいかないんだよ!決めているんだからな!この中の誰一人欠けずに終わらせると!ガンヴォルトと約束しているんだよ!」

 

「ガンヴォルト君がアシモフを倒し、シアンさんも翼さんも無事に連れて帰る!だから僕達全員がここで貴方を止める!」

 

そう叫んだ弦十郎と慎次がウェルへと駆け出す。

 

「来るな!来るんじゃない!こいつらをやれ!僕の目の前で殺してくれ!」

 

そう喚くウェルは装者達を襲わせている怪物達の一部を弦十郎と慎次を殺す様に命令をする。

 

その命令に反応した一部は亜空孔(ワームホール)を開いて立ちはだかる様に二人の前に現れる。

 

しかし、

 

「やらせるわけねぇだろ!」

 

その現れた怪物達は遠方からの狙撃で倒されてしまう。

 

「ッ!?」

 

ウェルはすぐさま狙撃された場所を見ると怪物達がウヨウヨいる中、奏やマリア、そして切歌と調の四人に自身へと迫る怪物達を任せながら二人の前に居る怪物を処理したクリスの姿。

 

「私達がもう一度ぶちのめしたいのは山々だが、そうは言ってられねぇ!だから代わりにぶちのめしてこい!」

 

二人へと向けてクリスがそう言った。

 

「任せておけ!」

 

「任せてください!」

 

弦十郎と慎次は崩れゆく怪物を避けながらウェルへと向けて更に加速して駆け出した。

 

「来るな!来るな!」

 

ウェルは怪物達を生み出して二人を止めようとするが、装者達、そして異質な二人によって全てが無意味と化す。

 

「ッ!来るんじゃない!」

 

そう叫んだウェルが唯一動く変異した腕でもう一つのコンソールに触れた。

 

それと共に動き出す動力炉。

 

「ッ!?」

 

突然の事に弦十郎も慎次も僅かに駆ける速度が失速する。

 

それは車内で見たことのある光景。動力炉が形を変えて、怪物達以外の存在を、装者と弦十郎と慎次と言う遺物を排除しようと蠢き始めた。

 

地面は弦十郎が踏み砕いた亀裂よりも大きな亀裂を生み出し、更にウェルのいる場所が盛り上がると共に、天井が割れて、その中にウェルを逃す様に勢いよく登り始めた。

 

「逃すか!」

 

「逃しません!」

 

弦十郎と慎次はウェルを逃すまいと失速する前よりも早く、駆ける。

 

装者達も怪物を倒しながら、亀裂に落ちたりしない様にウェルへと向かい駆け出す。

 

だが、

 

「きゃぁ!」

 

装者達は勿論、弦十郎達もその声に足を止めてしまう。

 

車に未だ残っていた響が車にまで到達した亀裂により、車が落下しそうになっているのを目撃してしまった。

 

「何をしているの!?ギアを纏いなさい!」

 

たった一人だけ響がギアを纏っていない理由を知らないマリアがそう叫んだ。

 

「ッ!無理だよ!マリア!あの人はもうギアを纏えない!聖遺物を持っていないの!」

 

マリアに向けて調がそう言った。怪物の相手をしながら響の元に駆け寄ろうとしているが調どころか他の全員、怪物の相手をして響を救う余裕すらない。

 

「何でそんな子を連れて来たの!?」

 

マリアの叫びは真っ当だ。だが、そう決めたのは響で弦十郎もそれを了承した。だからその叫びに何も言い返せない。

 

そしてウェルよりも響を救う事を優先しなければと弦十郎と慎次は足を止めようとしてしまう。だが、二人だろうとこの距離が間に合うのだろうか。

 

間に合わない。

 

装者達は?

 

先ほども言った様に怪物がそれを阻む様に立ち塞がり、響へと装者達を向かわせない。

 

誰一人欠けてはならない。それなのに響を失わせない様にするにはどうすればいい?

 

一瞬にも満たない時間で弦十郎や慎次はその答えを探す。だが、そんな時間すら、猶予すら与えない様に、車が完全に亀裂に飲まれた。

 

だが、響は間一髪の所で車から脱出して何とか危機を脱した。

 

だが、危機を脱しても危機は終わらない。

 

次は響を落とそうと更に亀裂が広がり、響を囲んで身動きを取らせなくさせる。

 

そして最後の足場から落とそうと足場を亀裂が飲み込み込もうとしている。

 

「ッ!貴方達はウェルの元へ!あの子を連れて来たのは間違っている!でもさっきも言われた様に過ぎた事を今になってとやかく言ってられない!」

 

そう叫んだのはマリアであった。

 

何か策があるのか?そう考えるが、今は考える暇すら惜しい。弦十郎と慎次は上がっていく地面を飛びながらウェルのいる場所へと駆け上がる。そんな中、マリアも動き出する。何かを取り出すと響へと向けて叫んだ。

 

「歌いなさい!貴方の信じる胸の歌を!貴方に力を与える歌を!立花響!」

 

そしてマリアは何かを響に向かって投げる。

 

響はマリアが何の為に歌えと言うのか分からなかったが、その投げられたものを見て亀裂により無くなる足場から勢いよく飛んだ。

 

そして投げられた物を掴むとマリアが言う様に今までシンフォギアを纏う際に歌う馴染みの聖詠を歌う。

 

「Balwisyall Nescell gungnir tron」

 

そして響は光に包まれる。そして光が収まると共に亀裂を脱した響は見慣れた黄色いシンフォギアであるガングニールを纏っていた。

 

マリアが投げたものはガングニールの聖遺物が収められたギアペンダント。ガンヴォルトがウェルより奪い返し、マリアに返されたガングニール。それをマリアは響へと投げ渡したのだ。

 

そして本当に生身という危機を脱した響。

 

そして近くにいる怪物達を己がアームドギアである拳で怪物達を粉砕する。

 

「ありがとうございます!マリアさん!もう足手纏いにはならない!私も守るんだ!この世界を!みんながいるこの世界を!」

 

響は再び得たシンフォギアを纏い、そう宣言した。

 

ウェルのいる場所に駆ける弦十郎と慎次もそれを聞いて安心し、そして世界の危機を二人も救うべく、ウェルの逃げる空間にギリギリで突入する事に成功した弦十郎と慎次。その空間は先程の動力炉とは蓋周りも小さい空間であり、こじんまりとしていた。

 

装者と離された。だが、今の装者達ならば大丈夫。今のあの六人なら大丈夫と信じ、二人は怯えるウェルと対峙する。

 

「ケリをつけるぞ、ウェル博士」

 

「ここで終わらせましょう」

 

そう言ってウェルを追い詰めていく二人。

 

ウェルもまさかここまで来れるとは思っておらず、二人が近付く度に折れた腕と足を、変異した腕を使い、弦十郎達から離れようとする。

 

だが、そんな事では二人の歩くスピードと這うスピードにかなりの差がありすぎる為に、ウェルとの距離は縮まっていく。

 

「巫山戯るな!こんな所で終わってたまるか!僕はもう英雄なんだ!僕はこの世界の英雄なんだ!僕は終わらない!僕達の理想はこんな所で終わりなんかするはずがない!」

 

錯乱したウェルがそう叫んだ。

 

「いいや終わりだ。お前はここで終わる。アシモフもガンヴォルトが終わらせる。お前達の理想は絶対に叶わない」

 

弦十郎はウェルに向けてそう言った。

 

「終わらない!こんな所で終わるわけがない!」

 

まるで駄々をこねる子供の様にそう叫び続ける。

 

そんな状況のウェルを終わらせようと二人は駆け出した。

 

だが、

 

「僕とアッシュの理想は終わらないんだ!」

 

ウェルはそう叫ぶと唯一正常に動く変異した腕を懐へと突っ込んだ。

 

もう何もさせない。二人はウェルにもう何もさせないとばかりに一気に距離を詰めると互いの拳をウェルへと全力で叩き込んだ。

 

「ブゥ!?」

 

何とも情けない悲鳴をあげるウェル。だが、情けないの悲鳴も仕方ない。

 

片や素手でコンクリートや完全聖遺物を圧倒するほどの腕力を持つ人間の拳、もう片方の人物もそこまでとは言わないが、ガンヴォルトの雷撃を纏った状態に匹敵する程の運動能力を持つ程の人間の拳。

 

その二つをまともに、そして今まで積み重ねの様に装者である奏とクリスにも、そしてガンヴォルトにも打ち込まれ続けた顔面はもう限界を超えていた。

 

それをまともに受けたウェルは壁まで吹き飛ばされ、肉体も壁へとめり込む。

 

「これで終わりだ。ウェル博士。貴様の野望もここまでだ」

 

弦十郎は壁にめり込んで動けないウェルへとそう言った。

 

だが、

 

「アアァァ!」

 

突如としてウェルが叫び始めた。

 

「ッ!?あれだけ受けてもまだ叫ぶ元気があるみたいですね…」

 

二人の全力を受けてもまだ意識のあるウェルに二人は少しだけ狼狽えた。

 

だが、ウェルの叫びはいつしか獣の様に変化していくと共に、ウェルの身体が、徐々に変化していく様を見て戦慄する。

 

「ッ!?」

 

「フザケルナァ…フザケルナァ…ボクハ…ボクハコンナトコロデオワラナイ!」

 

先程から聞き飽きるほど聞いたその台詞。だが、その台詞を叫ぶウェルはもう人と呼べるそれでは無かった。

 

人に近い身体は保っている。だが、その身体は変異した腕が丸でウェルを乗っ取った様に身体を埋め尽くし、そして先程生み出していた怪物に近い形を作り出した。

 

その姿は丸で人の形をしたネフィリムそのものであった。そして先程懐に入れた腕が露わになり、その腕がウェルの胸に向けて注射器の様な物を指している所を露わになった。

 

「一体何が起こった…」

 

その何かに底抜けぬ不安が二人を襲う。

 

「ボクハエイユウダ!ボクタチハエイユウダ!オマエタチニオワラセラレテタマルカ!オマエタチノヨウナ

ナニモモタヌモノにオワラセラレテタママルカァ!」

 

だが、そんな不安など感じる魔を与えぬ様に怪物と化したウェルがそう叫ぶと共に壁にめり込んでいた筈なのに一瞬で二人の前に移動する。

 

「ッ!?」

 

二人はすぐさま距離を取ろうとした。

 

だが、まるでそうはさせないとばかりに怪物となったウェルはネフィリム同様に口を大きく開くとそこから爆炎(エクスプロージョン)と思しき火球を出現させるとすぐさま爆発させた。

 

「ッ!」

 

弦十郎は地面を踏み抜いて盾に、それに飛び込む様に慎次も入り事なきを得る。

 

だが、先程折られた腕がまるで回復したかの様に、その盾をぶち破ったウェルは弦十郎に拳を振り抜き、そして同じく折られていた足で慎次を蹴り飛ばした。

 

「ッ!?」

 

二人はガードするものの骨まで軋む一撃を受けて後方へと下げられた。

 

「全く…いつまでも巫山戯た事をしてくれる」

 

「何をしたのかわかりませんが本当ですね…何度も何度も…」

 

弦十郎と慎次は体制を立て直しながら獣の様に吠えるウェルへと向けてそう呟く。だが、装者達があの怪物達を倒している様に、ガンヴォルトがアシモフから翼とシアンを救う様に、弦十郎と慎次は怪物と化したウェルに立ち向かう以外選択肢が以外ない。

 

「どんな姿になろうが貴様は必ずここで倒す!」

 

「何が起ころうとその事は変わりません!」

 

そう叫んで怪物となったウェルに弦十郎と慎次は戦いを挑むのであった。




それぞれの最終決戦、最後はウェルVS弦十郎&慎次でした。
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