戦姫絶唱シンフォギアAB   作:株式会社の平社員

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119GVOLT

「ガンヴォルト…私…頑張ったよ…貴方が来ると信じて…歌を歌って」

 

「ああ、翼の歌声…シアンの歌は聞こえたよ…ありがとう…あの時言った事を守り続けてくれて。ボク一人だけの力じゃないけど…そのお陰で辿り着けた…だけど…ごめん…あの時言ったのに…翼をアシモフに傷付けさせないと言ったのに…翼をそこまで傷が付くまで戦わせて…」

 

ボクは再度謝りつつ、翼へと手を当てると雷撃を流す。海上でのアシモフとの戦闘で見せた痛みを与える雷撃ではなく、傷付いた細胞を活性化させ、翼を癒していく雷撃。

 

ボクは翼を回復させる為に、雷撃を流し込んだ。

 

「させるわけないだろう!紛い者!」

 

だが、そんなボクと翼へアシモフは雷撃を纏う銃弾の雨を浴びせる。

 

ボクは雷撃鱗を展開してそれを全て打ち払う。雷撃鱗に銃弾は雷撃鱗を貫く事もめり込んで軌道を変える事なく、雷撃鱗と接触した瞬間に銃弾に纏う雷撃を凌駕する威力で弾丸を破壊する。

 

「ッ!?」

 

その光景を見てアシモフは表情を顰めた。しかし、その瞬間にはアシモフはボクと翼へと駆け出して雷撃鱗を展開してボクの展開する雷撃鱗と衝突させる。

 

「たかが銃弾を消したぐらいで調子に乗るなよ!紛い者!」

 

ボク自身もその衝撃を耐える為に翼に手を置いて回復させる事を止めず、ダートリーダーを握る手を地面へと置き、そして足に力を込めてそれを踏ん張って堪える。

 

「ガンヴォルト!」

 

翼は雷撃により回復されながらもボクの名を心配そうに叫んだ。

 

「大丈夫だ、翼にはもう指一本触れさせない。アシモフにもう翼を傷付けさせない」

 

ボクは翼を回復させながらそう言った。そしてアシモフへと向き直り言う。

 

「紛い者じゃないと言った筈だよ、アシモフ…ボクも本物だ。ボクもガンヴォルトだと。貴方が認めないのなら、貴方があの世界で殺されかけた様に、今度こそ貴方を殺して証明すると」

 

「そんな妄言は死んでから好きなだけ吠えていろ!」

 

ボクは最後にボク自身も本物だと、そしてアシモフを殺すと告げると共にさらに雷撃の出力を増してアシモフの雷撃鱗を押し返した。

 

まさか押し返されるとは思わなかったアシモフ。だが、その表情は驚きなどではなく飽くなき怒りをを滾らせた憎悪を彷彿させる表情。

 

「紛い者が…何度も言った筈だ。貴様が奴を語るな…私が育て上げた傑作を侮辱するなと!何を言おうが貴様は紛い者!魂が本物!?そんな物で貴様が本物であると証明になるものか!貴様が幾ら言おうが本物など断じてありえん!貴様は紛い者だ!何度も言ってやろう!私が育て上げた奴こそが本物だ!私を死に追いやり!電子の謡精(サイバーディーヴァ)と融合した姿を見せた奴こそが本物だ!この世界ではなく!あの憎たらしくも私の理想が実現するあの世界にいる奴こそが本物だ!貴様などでは断じてない!」

 

憎悪を込めた言葉がボクへと浴びせられる。だが、そんな言葉は何度も聞いた。何度も浴びせられた。

 

しかし、何と言われようとボクの答えは変わらない。

 

「貴方が幾ら否定しようともボクも…ボク自身も本物だ。ボクも何度でも言う。貴方が認めないのなら認めようとしないのなら証明すると。貴方を今度こそ殺してボク自身もガンヴォルトであると証明すると」

 

ボクはアシモフに向けてそう言った。

 

「耳障りだ…聞くに耐えん…紛い者…貴様はやはり今すぐにでも殺さねばならん!奴を侮辱し続ける貴様を!奴の存在を侵食していく貴様と言う害悪を!今ここで!」

 

アシモフがそう叫ぶと同時に、サングラスを投げ捨てると雷撃を解放するかの様に身体中から強力な雷撃を迸らせた。

 

アシモフがボクと言う存在を憎み、消し去らねばならないと言う思いが、そしてアシモフの怒りが高まり続けて結果、精神へとバイアスをかける事で今まで以上の雷撃を解放させたのだ。

 

迸る雷撃がボクと後ろで倒れる翼へとその威力を伝えるかの様にすぐそばを通り過ぎて、後方にある岩肌を破壊していく。

 

「翼、どのくらい回復出来た?もう動けるかい?」

 

「う、うん…なんとか…」

 

翼へと動けるか確認を取り、翼はなんとか動けるくらいまでは回復した事をボクに告げる。

 

「翼…回復してすぐに悪いけど、翼はみんなの元へ行ってくれ…今みんなはウェル博士を止める為にフロンティアの中央にいる。装者達全員に、弦十郎と慎次もいる。過剰な戦力かも知れないけど、ウェル博士の事だ。まだ何か隠しているかも知れない。だから、翼。みんなの元へ行ってくれ。みんなの力になる為に行ってくれ」

 

「…分かった。今のガンヴォルトとアシモフの戦闘に確実に私は着いていけない…だから、ガンヴォルトの言う通りにする。だけど約束して、ガンヴォルト…今度は無事に戻ってきて…私だけじゃ無い、奏も、雪音も、立花も、小日向も…みんな貴方の無事を信じて願っている。だから次こそは無事に戻ってきて…シアンと共に」

 

「守れてないからボクが言っても説得力がない…だけど、今度こそボクはみんなのその約束を守りたい…信じて欲しい」

 

「私は貴方を信じ続ける。何があっても、何が起ころうとも、私はガンヴォルトを信じ続けるわ」

 

翼はボクに向けてそう言った。

 

「ありがとう。信じてくれて。信じてくれる翼の為にも絶対に勝つよ」

 

翼へと向けてそう言うと、翼はボクにアシモフの事を頼み、立ち上がると全速力でこの場から離れる様に駆け出した。

 

だが、それをさせない様にアシモフが一瞬で翼へと駆け出して翼へと雷撃を纏う腕で翼を捕らえようとするが、それを見過ごすわけもなく、ボク自身もアシモフ同様に雷撃を解放させるが如く迸らせてアシモフの腕を掴み、アシモフが翼へと掴みかかろうとする腕を止める。

 

「貴方の相手はボクだ。アシモフ」

 

「紛い者風情が調子に乗るなよ!」

 

ボクが掴んでいる腕を振り払わず、雷撃鱗を展開する。ボクも同時に雷撃鱗を展開し、ボクの雷撃鱗とアシモフの雷撃鱗が衝突して掴んだ腕を無理やり引き剥がした。

 

だが、それでも引き剥がされたとしてもアシモフとの距離を一定に保ち続け、意識を翼ではなくボクに釘付けにさせる。

 

僅かながらの雷撃鱗の衝突による膠着状態。だが、互いの雷撃鱗の展開時間が切れかかった為にボクとアシモフはその衝突の衝撃を利用して距離を取る。

 

「ああ、そうだな。今は風鳴翼よりも貴様を殺す方を優先させよう。貴様と言う存在が目に止まるだけで不愉快だ。虫唾が走る。今度こそ殺してやる、今度こそ私の手で貴様を葬り、その巫山戯た事を宣う口をもう二度と動かなくしてやろう」

 

「それはこっちの台詞だ。今度こそアシモフ、貴方を殺す。この世界を破滅へと導こうとする貴方を…翼を、クリスを、セレナを、身勝手な理由で操り、あの世界を混沌と変えようとする貴方を。響を、未来を、マリアを、切歌を、調を、恐怖に陥れた報いを死という形で貴方に送る。そして取り戻す。シアンを。貴方に奪われたボクの大切な人を」

 

装者達を、シアンを苦しめ続けたアシモフを殺すとボクは宣言した。

 

今度こそアシモフを下し、ボクがこの手で殺す。この世界の未来と元の世界の未来を守る為にボクは雷撃を迸らせる。

 

「何度もほざくな、紛い者!貴様の妄言など聞くに耐えん!」

 

「こっちの台詞だよ、アシモフ!ここで終わらせよう!貴方の野望をここで断つ!」

 

そう言ってボクとアシモフは先程と同様に同じタイミングで雷撃を迸らせた。

 

そして互いに銃を握る手を前に、もう片方の腕をフリーにしながらも、隙のない構えを取る。

 

両者同じ構えで対峙する。

 

アシモフはボクを殺す為、目的であるこの世界の破滅、そして元の世界をアシモフの理想である世界に変える為に。

 

ボクはこの世界を守り、守るべき人達の未来を終わらせない為に。そしてあの世界でアシモフによって殺されかけた肉体と、そして同じく殺されかけた魂、あの世界で果たせなかったボクの因縁を断ち切る為に。

 

ボクも本物である事を証明する為に。

 

「迸れ!蒼き雷霆よ(アームドブルー)!自身の過ちを断つ為に!我が敵に終焉(デッドエンド)を齎す雷霆(いかずち)となれ!」

 

「迸れ!蒼き雷霆よ(アームドブルー)!己を縛る因縁の鎖を断ち切り、二つの世界に安寧を齎す雷光()となれ!」

 

同時に叫ぶ蒼き雷霆(アームドブルー)能力者の精神を昂らせる常套句(キーワード)

 

その瞬間ボクとアシモフの雷撃が更なる力を解放させた。

 

迸る雷撃が地面を焼き焦がし、互いの雷撃がぶつかり合って火花の様に雷撃を散らせる。幾重にも戦いを重ね、今までの戦いの中で最高の威力をもう二つの雷撃が周囲にも影響を及ぼし続けた。

 

そして一瞬にも満たない間に、ボクとアシモフの雷撃を纏う腕がぶつかり合い、交差する。

 

「殺してやる!今度こそ貴様という存在を消去(デリート)してやる!」

 

「いいや、ボクが貴方を殺す!貴方という存在をこの世界とあの世界を守る為に!貴方の野望はボクの雷撃が打ち砕く!」

 

そしてボクとアシモフ。互いの理想を手に入れる為にボクとアシモフはフロンティアにて何度目かなど数えていない戦闘の火蓋が落とされた。

 

◇◇◇◇◇◇

 

装者達がいるのは亀裂などが再び復元され、怪物が群がるフロンティアの動力炉。ウェルが消え、怪物達のみが闊歩する場所に残った装者達。

 

ガンヴォルトがアシモフと対峙する。ウェルは弦十郎と慎次が対峙する。

 

主犯二人はそれぞれに任せた装者達は、残りのやらなければならない事を、そのやらなければならない事を邪魔をする怪物達と戦う。

 

それは目の前でまるで人間の心臓が鼓動する様に瞬き、光を放つフロンティアの動力となるネフィリムの心臓。

 

奏、クリス、響にとってガンヴォルトから頼まれているネフィリムの心臓の中にいるセレナを救う事。魂となりながらも抗うセレナをネフィリムの心臓を壊して救う事。

 

本当にこんな事が救いになるのだろうか?と思いもある。だが、それ以外の方法がない以上、そうする事でしか救うことは出来ない。

 

そしてマリアと切歌と調。そうする事でしか救えないと分かっているからこそ、セレナという大切な存在をいち早く苦しみから解放させたいとアームドギアを振るい怪物を蹴散らしていく。

 

最も思いが強いのは姉であり、セレナにお願いされたマリア。

 

唯一の肉親をこの手で破壊しなければならない辛さもある。しかし、それ以上にセレナにこれ以上苦しみを味わう事をさせたくない、これ以上セレナをアシモフやウェルのせいで嫌な目に遭って欲しくない、優しいセレナの意思を無視した使い方をするウェルとアシモフによってそんなセレナが傷付く行動をさせない為に、怪物達を破竹の勢いで倒し続ける。

 

だが怪物は一向に減っては居なかった。装者達とネフィリムの心臓がある場所までの距離はまるで縮んで居なかった。むしろ遠ざかっている。

 

確実に怪物は屠られている。

 

装者達のアームドギアが怪物達の猛攻を耐えながら確実に怪物を屠っている。だがそれ以上に、次から次へと怪物が増え続けるのだ。

 

七人の装者達が怪物を以上な速度で屠る。だが、それを上回る速度で地面が盛り上がり、怪物達が誕生している。そして誕生したそばから亜空孔(ワームホール)によって作られた穴からどんどんと装者達の前に立ちはだかる。

 

側から見れば絶望。倒しても倒しても増え続ける怪物。終わりのない戦い。

 

それでも誰も諦めもしなかった。弱音を吐かなかった。

 

何故なら初めに説明した様にガンヴォルトがアシモフと決着をつける為、殺す為に戦っている。絶望を常に叩きつけてきた敵と戦っている。絶望を乗り越えて己が因縁にケリをつけ、世界を守る為にガンヴォルトは戦っている。

 

そして弦十郎に慎次。この怪物が消えないという事は弦十郎と慎次もウェルのあの狂気に近い執念を持ち、装者達の前にアシモフ同様に常に絶望を叩きつけたウェルに苦戦を強いられていると考えられる。だが、それでも二人はそんな中でも諦めずに戦っている。ガンヴォルトの様に、もう何も奪われない為に、世界を守る為に、これ以上被害を出させない為にも。

 

それなのに弱音や泣き言を言えるものか。何も出来ていないのに。

 

だからそれぞれが己のアームドギアを奮い続ける。

 

「邪魔をするな!」

 

そんな中でマリアが吠える。

 

屠り続ける怪物達に邪魔されようともネフィリムの心臓を破壊する為に。セレナを救う為にマリアは怪物達を屠り続ける。

 

だが、それを怪物達が増え続け、その距離を埋まらせない。

 

爆炎(エクスプロージョン)の火球がシンフォギアを纏っていなければ消し炭になってもおかしくない熱量を持って。

 

光速で飛び回り、肉体を貫けば必殺の威力を持つ光線である残光(ライトスピード)の力を持って。

 

辺りへと撒き散らされる紫色の光線が、生命輪廻(アンリミテッドアムニス)の付随する能力である石化の光線を持って。

 

飛び交う黒色の粒子が、翅蟲(ザ・フライ)の物質を食らい尽くす能力を持って。

 

そしてそれをサポートする様に作り上げられている穴、亜空孔(ワームホール)の力を持って。

 

ネフィリムの食らった宝剣の能力をフルに活用して装者達を追い込もうと、倒そうと襲い掛かる。

 

だが、

 

「こんなところで止まるわけにはいかない!師匠が!緒川さんが!ガンヴォルトさんが!翼さんが!頑張っているのに止まるわけにはいかないんだ!」

 

「たりめぇだ!ここも終わらせなきゃ全てが終わる!何もかも終わっちまう!だから止まるわけねぇだろ!」

 

「終わらせねぇ!守りたいものがある以上!止まるわけにはいかねぇに決まってる!」

 

響、クリス、奏が怪物達の勢いが増しながらもそれでも止まらないと口にする。

 

止まれば全てが終わる。響のいる日常が消え去る。未来に危険が及ぶ。それ以外にも学校の友達や、救いたいと思う人達にも。だからこそ止まらないと叫ぶ。

 

クリスと奏も同様だ。響同様に守りたい人々がいる。そしてガンヴォルトと過ごした居場所が無くなってしまう。だからこそ、止まらないと叫ばずにはいられなかった。

 

「終わらせるわけにはいかないデス!マリアがセレナを助けたい様に!もう苦しむセレナを見たくない!だから止まるわけにはいかないんデス!」

 

「セレナが一人で今も頑張っている!苦しんでいる!それなのに、止まるなんて考えられない!どんなに絶望的になっても!絶対に止まらない!」

 

「セレナに託された以上!立ち止まるわけには行かない!あの子の願いを聞き入れる為にも止まるわけには行かない!」

 

切歌も調も、未だに苦しんでいるセレナを前にして、ネフィリムの心臓を前にして止まる事など考えていない。

 

たった一人で苦しみ続けていたセレナを解放するべく止まるわけには行かないと叫ぶ。

 

そしてマリアも。

 

セレナに託された思いを、願いを。それが悲しい今生の別れだとしても耐えなければならない。成し遂げなければならない。それが姉としての役目であると感じて。

 

だからこそ、装者達は己がアームドギアを振るい奮闘する。

 

先が見えぬ戦いの先にある勝利を信じて。悲しき結末があるとしても、一人の少女の願いを叶える為に。

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