戦姫絶唱シンフォギアAB   作:株式会社の平社員

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122GVOLT

ボクとアシモフは互いに打ち付けた腕を振り払い、同じ様に互いの持つ銃を撃ち出した。

 

ボクはアシモフの銃弾を雷撃鱗で無力化し、アシモフは避雷針(ダート)を僅かに身を逸らして躱す。

 

だがその一撃で互いに距離を離れない。離れる意味がない。この手で殺すのであれば距離を詰めていなければならないという意思の表れ。

 

そのまま銃と己の身体を武器に距離を詰め続ける。

 

互いに拳をぶつけ合い、時には躱して蹴りを繰り出す。銃を放ち、雷撃を放ち、互いの存在を消し去ろうとする為に殺しに掛かる。

 

それでも互いの殺意が攻撃に転化しても未だダメージと言う傷を与えられていない。ボクは先の戦闘でアシモフは一度だけ破った体術を駆使するが、一度使った手をアシモフは容易に対処して見せている。

 

そう簡単にはいかないとは分かっている。ボク自身が相手にしているのが誰かわかっているからこそ、こんな事で動揺などしない。

 

自身が相手にしているのはアシモフだ。ボクを育て上げた師であり、シアンを殺してあんな姿にした怨敵。そしてボクの魂を切り分けた人物であり、この肉体を殺そうとした張本人。

 

そして二つの世界を破滅と混沌へと誘おうとするボクの敵。そんな男だからこそ、このくらい出来て当然だろう。そんな男だからこそボクは何度も敗北を喫し、絶望させられた。

 

だからこそ、今ここで殺さねばならない。そんな事をさせない為にもボクは今度こそ勝たねばならない。

 

この身を縛る因縁という鎖を断つためにも、ボク自身をガンヴォルトと信じてくれているみんなの為にも、そんなみんなのいる世界を守るためにも。

 

今ここでボクがアシモフを殺さねばならないんだ。

 

アシモフに対処されようがボクは拳を、脚を、避雷針(ダート)を放つ。

 

しかし、アシモフもボクの攻撃、いなし、受け止め、躱し、反撃をしてくる。

 

同様にボクもアシモフの攻撃を防ぎながらも接近戦でアシモフと攻防を繰り返す。

 

互いの存在を消すまで終わらないこの戦い。

 

雷撃で蒼く照らされる戦場に互いの理想をぶつけ合ってケリをつけるために戦闘を続ける。

 

銃声と拳や蹴りがぶつかり合う音、そして雷撃が弾ける音だけが戦場に響き渡る。

 

そして互いの弾倉の弾が空になる瞬間が訪れる。

 

打ち出した避雷針(ダート)と銃弾。その瞬間に弾数を頭に入れていたボクとアシモフは再び撃ち合うために再装填しなければならなくなる。

 

だが目の前の相手はそれを許さない事ぐらい理解出来る。だが、それでもボクの雷撃をより強力に、確実に当てる為にも避雷針(ダート)の装填が必要なボク、ボクを確実に殺す為にも銃弾が必要なアシモフ。

 

どちらが先に再装填出来るかで戦況が変わるかも知れない局面。

 

その瞬間にアシモフが先に動き出した。銃を持つ腕をボクに向けて振るい、その勢いを利用して銃から弾倉を抜き放ち、ボクに向けて飛ばして来たのだ。

 

「ッ!」

 

ボクはその空の断層を避けずに掴み取る。だがアシモフはボクの行動を読んでいたかのように、ボクに向けて前蹴りを叩き込もうとする。ボクは弾倉を持った腕で跳ね除けて既に新しい弾倉を取り出し、再装填をするアシモフに向けて握った弾倉を再装填しようとする銃と弾倉の間に先程の弾倉を入り込ませ、装填されるはずだった弾の入った弾倉が入り込ませた弾倉を叩き、空の弾倉をアシモフの銃に装填させる。

 

アシモフもそんな事で動揺などしない。すぐさまボクの腕を折るように前蹴りを放った足を素早く引き戻すとボクの腕をガッチリと抑え込んで膝を叩き込もうとする。それを見越してボクはなんとか抑え込まれた腕をひねり、折られない様に位置をずらして肘を曲げてその蹴りを受けながらもなんとか腕を折られずに済む。

 

だが、ここで初めてアシモフの攻撃からダメージを受けた。

 

先にダメージを受けた事。勝敗を握る事には至らないが、膠着した戦況をアシモフが開けた小さな風穴。それを広くし、優位を取るべくボクへと更に苛烈に攻撃を叩き込もうとする。

 

しかし、こんなダメージでアシモフに優位を取らせてなるものか。ボクはすぐに出力最大の雷撃を捕まれた腕からアシモフに向けて流し込む。

 

「クッ!」

 

今までとは違う出力の違う雷撃。アシモフの銃を無効化してしまうほどの雷撃にアシモフの顔が歪む。だが、知っている。アシモフは止まらない。この程度での痛みなど気に留めないと。

 

ボクの予想通り、アシモフは雷撃をその身に浴びながらもボクへと向けて拳を叩き込む。

 

その拳をダートリーダーの銃床で受け、逸らすとボクは逸らした勢いでダートリーダーの弾倉を抜く。

 

それと同時にアシモフもボクへと雷撃を流し込み始めた。

 

動きを阻害させるほどの痛みを与える雷撃。だが、アシモフ同様にボクも雷撃をその身に浴びながらも止まらない。

 

アシモフがかつてシアンの補助を受けたボクの雷撃を受けても痛みを堪えても動き続けた様、今も同様にその身に宿す執念とボクに対しての憎しみでその痛みを堪える様に、ボクもアシモフを殺す為に、世界を救う為に、みんな受けて来た数々のアシモフの雷撃に比べれば、アシモフに今まで受けた絶望と痛みと比べればこの程度の痛みで動けないなどと思う訳がない。

 

ガッチリ掴まれた腕を無理矢理にでも振り解く。だがアシモフもボクへと蹴りを放つ。蹴りを解いた腕を使い蹴りを受け止め、片足だけでバランスを取るアシモフを押して倒す。

 

だが、アシモフはそれを見越して自ら後方へと倒れ、倒れた勢いを利用し、バク宙と共にバランスをとっていた足でボクの顎へと蹴りを放った。

 

その蹴りを頭を逸らして避けるが、アシモフはすぐさま体制を立て直す。

 

しかし、ボクも躱してアシモフの元へ既に接近していた。距離を取る事はもうしない。

 

距離を取ればアシモフに再び銃弾という手を与えてしまう。こちらも再装填出来ないがそれでもアシモフを殺す為に攻め続ける手を止めない。

 

そうして再びボクとアシモフの腕が交差する。

 

そこから再び始まる拳と銃すらも武器として使い、蹴りを放ち続ける応酬の連打。

 

互いのぶつかり合う拳が、蹴りが纏う雷撃が弾け、辺りへと迸り、地面に焼き焦げた跡を残す。

 

だが、そんな事を気にする余裕もなく、応酬を続ける。

 

しかし、どの攻撃も躱し躱され、防ぎ防がれる。長い応酬、長い膠着状態。だが、ボクもアシモフもその膠着状態の中、少しでも隙を見せれば強烈な一撃を喰らわせようとする。応酬の中でも、膠着の中でも一進一退の攻防を続ける。

 

そんな中、アシモフがボクの拳を受け流すと共に、その殴られた勢いで背を向けて一瞬でボクの側頭部へと向けて裏拳を放つ。

 

ボクはそれを腕で受け、アシモフに向かって蹴りを放った。

 

勿論アシモフもそれを飛んで勢いを殺し、そしてそのまま足を掴む。そしてバランスを取る足をアシモフは踏みつけると先程同様にボクの足を掴んで押し倒してくる。

 

飛ぶことすら出来ないボクはアシモフの様に反撃する事も出来ず地面へと転ばされる。

 

だが、アシモフがボクの足を踏んだ瞬間、ボク自身も反撃出来ないと判断して既に次の手を打っていた。

 

地面へと転ばされ、ボクへと更に追い打ちを掛けようと、アシモフの肘がボクの顔面へと向けて高速で振るわれる。

 

ボクはそれを両腕で受け止めてから首を振るい、鞭の様に叱らせた髪を、その髪を束ねるプラグをアシモフに向けて放つ。

 

アシモフもそれを理解してから銃を握る腕で髪の部分を跳ね除け、更に肘を引いて再び肘を落としてくる。

 

何度も喰らう程ボク自身も甘く無い。振り下ろされる肘を片手で受け止め、衝撃を緩和させるとボクはダートリーダーを構える。

 

弾の入っていないダートリーダーで何をするつもりかとアシモフは嘲笑を浮かべようとするが、アシモフの勘が何かを訴えたのか、条件反射の様に、銃口から身体を逸らす。

 

その瞬間ボクのダートリーダーから放たれた避雷針(ダート)。それを躱されるがボクを覆いかぶさるアシモフの体重が移動した事によってボクはその窮地を脱する。

 

脱した後はすぐに体制を立て直し、アシモフへと蹴りを振るう。

 

アシモフはそれを腕でガードして転がる様に後退する。

 

ボクはすぐさま避雷針(ダート)で追撃する様に転がるアシモフに放ち続けた。そしてすぐさま体制を立て直すアシモフに向けて拳を振るう。

 

腕で受けるアシモフとボクの拳から雷撃が迸る。

 

「貴様の避雷針(ダート)は既に切れていたはず!弾数に間違いはない!なのに何故撃てている!」

 

戦いを始めて初めて口にしたのがその言葉。

 

その理由はアシモフに倒された時、躱せ無い事を既に知ったボクはポーチから弾倉を一つアシモフに見えない様に地面へと落とし、倒れるタイミングでダートリーダーを地面に接触する際に、弾倉を無理矢理装填させたのだ。勿論、そんな乱雑に使えば銃は上手く使えないであろう。だが、メンテナンスと何度も壊されたダートリーダー。二課の技術開発がそれを対策し、強度を高めたからこそ成せるものであった。

 

だが、ボクは答える気などさらさらない。

 

「そんなこと気にする程余裕なのか!アシモフ!」

 

そしてアシモフのガードを弦十郎から模倣した発勁で吹き飛ばすと更に避雷針(ダート)を放ち、アシモフへと撃ち込もうとする。

 

アシモフは銃口から自身の身体を斜線から外しながら身を躱すが、更に距離を詰めて避雷針(ダート)を至近距離から撃ち込もうとする。しかし、アシモフはボクの腕を浮かんでダートリーダーの銃口を自身から外すと共に肘をボクの顔面へと向けて振るう。それを躱してボクも更にアシモフへと膝蹴りを叩き込もうとするが、アシモフはそれを片手で受け止める。

 

「貴様とて自身が優位に立っているつもりか!紛い者!」

 

ボクの言葉に怒りを込めた言葉に反応するアシモフ。

 

そしてボクとアシモフが互いに強力な雷撃を相手に流し込もうと膝から、そして掴むと腕と掴まれた腕から放出する。

 

そしてボクとアシモフがここで初めて距離を取る。

 

弾かれた雷撃が生んだ磁界により、ボクとアシモフが無理矢理にでも距離を取らされたのだ。

 

そして互いに距離を取らされながら言葉を紡ぐ。

 

「瞬くは雷纏し聖剣、無慈悲なる蒼雷よ、敵を穿て!」

 

「煌めくは雷纏いし聖剣、蒼雷の暴虐よ、敵を貫け!」

 

「迸れ!蒼き雷霆よ(アームドブルー)!スパークカリバー!」

 

同時に紡がれた言葉と共に出現した巨大な聖剣同士の激突。

 

その威力は今までと桁違いだ。聖剣が纏う雷撃が辺り一面を吹き飛ばす程の衝撃波と辺りをその雷撃の熱量で焦土と化す。

 

そしてその威力がぶつかり合い、まるで爆発するかの様に反発したボクとアシモフ。

 

距離を取り、アシモフも弾倉を素早く再装填すると憎悪の籠った視線をボクに向ける。

 

それはボクとアシモフが今までにない接戦を繰り広げている事の怒り。そしてボクが以前にも増して更に強力な雷撃を扱える様になった事に対する憎悪。

 

「貴様がその域に達するな…それは奴だけが辿り着いた極地!本来の蒼き雷霆(アームドブルー)を持つ奴が到達すべき極地だ!貴様が!貴様如きが!紛い者如きがその域に立つなど許されないのだ!」

 

アシモフはそう叫んだ。

 

「だからボクも本物だ。ボク自身も本物であるからこそ、そしてアシモフを倒すと、殺すと誓い、幾度とない敗北と絶望を乗り切ったから蒼き雷霆(アームドブルー)が…ボクにも宿る能力因子が…あの世界のシアンが残したメッセージがボクをここまで至らせたんだ」

 

だからボクもそう言った。本物であると。幾度とない敗北と絶望を乗り越え、そしてあの世界のシアンが残したメッセージがボクに力を与えたと。

 

「巫山戯るな!貴様の言葉は矛盾がすぎる!あの世界の電子の謡精(サイバーディーヴァ)!そう言うのであるならば貴様は決して本物ではないだろう!」

 

「切り分けられた魂であれば本物だ!同じ意志を!同じ魂を持っていれば例え肉体が別物であろうと本物なんだ!」

 

「何が魂だ!何同じ意志だ!そんな物は関係ない!」

 

アシモフはボクに向けてそう叫ぶ。

 

何度目かもわからぬ問答。幾ら話したところで無意味。だからこそ、証明するのは相手を殺す以外ない。

 

もうそんな問答は飽きるだろう。ならば答え合わせをしよう。

 

「死んだから認めればいいさ。ボク自身も本物であると言う事を」

 

「何度もほざくな!紛い者!」

 

再び雷撃を迸らせながらぶつかり合う。互いの言い分は存在を殺し、生き残る事で証明する事は出来ないのだから。

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