倒れる装者達。それをニヤリ裂けた口を吊り上げる怪物。そして穴が空いた動力炉を見下ろす巨大な怪物。
何故こんな怪物がいる。何故こんな怪物が今出現したのだ。響は倒れながらも考える。
だが、響には何も分からない。巨大な怪物が何故現れたのかなど、この中の装者は誰一人理解出来ない。
巨大な怪物。
それは弦十郎と慎次が戦うウェルの存在、いや、その体内に存在するある物が起因している。ネフィリムの細胞を多量に摂取した事により、ネフィリムの意識が再び芽生えた。その意識が生まれた事により、自身の細胞を埋め込まれたフロンティアへと干渉し、自身の本体である心臓を守る為に生まれたのだ。
それが巨大な怪物の正体。ネフィリムの意思が顕現した事による副産物がその怪物であった。
だが装者達はその事を知る由もない。
ただ目の前に現れた脅威にどうすればいいのか考える事しか出来ない。いや、それすらも装者達を囲む怪物が装者達を殺そうとする為にそれすらも考える暇がない。
「…セレナを救わなきゃ…約束したんだ…救うって…解放するって…」
だが、そんな中でも、倒れていたマリアがいち早く立ちあがろうとする。巨大な怪物の振るった腕をまともに食らい、ギアがボロボロになっていても、マリアは立ちあがろうとする。
理由はセレナの為。自分に課した使命、そしてセレナと交わした約束を守る為に、マリアは立ちあがろうとしている。
だが、それを嘲笑うかのように火球がマリアへと向けて放たれ、それをまともに受けるかと思われた。
だが、マリアを襲う火球は
それはセレナがマリアを守ろうとする意思が起こした物。
巨大な怪物の一撃はセレナが解放されると思い、その意思が弱まったせいにより、何も出来なかったが、今度はマリアを守る為に、セレナの意志が再びマリアを守った。
「…ッ!ごめんなさい…セレナ…こんな私を守ってくれて…今度こそ貴方を救うから…今度こそ貴方を解放してあげるから!」
再びマリアは叫ぶ。
マリアを未だ守ってくれているセレナの為に。約束を果たす為に、こんな所で燻って居られない。こんな所で倒れている訳にはいかないと。
そして近くにいるマリアを屠らんとする怪物へと短剣を振るい、薙ぎ倒し、離れている怪物をその短剣が蛇腹剣の様に分割されると鞭の様にしならせて怪物を屠る。
「ッ…マリアさん…」
その姿を見る響。
マリアはセレナを救おうとしているのに、立ち上がり、再び怪物と戦っている。
倒れていていいのか?このままマリアを一人で戦わせていいのか?
否。
倒れていていいわけがない。マリアを一人で戦わせていいわけがない。
自分は何の為にここに来た?何を成す為にここに来た?
マリアを救う為。ガンヴォルトがこの世界を守ろうとする為にアシモフと戦っている。その手助けの為に来たのだ。
なのに今の自分はどうだ?大きなダメージを受け、未だ倒れている。
助けようとしたマリアはどうだ?響同様に大きなダメージを受けた筈なのに立ち上がり、ボロボロの身体でも自身の使命を、大切な妹を救おうと奮闘している。
そんな姿を見ながら自分はこのままでいいのか?救いたい人を救えず、アシモフと言う巨悪に立ち向かうガンヴォルトの助けになる事を出来ずにいていいのか?
いいわけがない。そんな事あっていいわけがない。そんな為に自分はここにいるんじゃない。その為にここに来たんではない。
「ッ!いつまで寝そべっているつもりだ…いつまで立ち上がらないつもりだ…救いたい人を救いに来たのに!ガンヴォルトさんの力になる為に来たのに!いつまでここで倒れているんだ!私!」
そう叫び、ボロボロの身体に鞭打って立ち上がる。
「師匠も!緒川さんも!ガンヴォルトさんも!戦っている!自分が倒れて言い訳がない!救いに来たのに!終わらせに来たのに!何も出来ないまま!何も為せないままいていい訳がない!」
そしてボロボロの身体を言葉で、気持ちで奮い立たせる。
響の叫びに呼応する様にボロボロになった装者達も立ち上がる。
「ッ!当たり…前だ!託されたのに!未来を繋げに来たのに!アシモフの計画を終わらせに来たのに!逆に終わらせられてたまるかよ!」
奏が叫ぶ。槍を杖代わりに地面へと突き立てて。響同様に何も為せないまま、終わっていい訳がないと。終わらせに来たのに自身が終わらせられてたまるかと。
「託され…だんだ!それを実行する為にここに居るんだ!私達が倒れてどうする!一人に任せて自分達倒れてただ終わるのを待っていていい訳がねぇ!ガンヴォルトも戦っている!おっさん達も戦っている!自分の使命を全うしようとしている奴も戦っている!それなのに倒れてていい訳がねぇ!みんなでここを終わらせるんだ!あの外道だけが望まない未来を!こんな破滅しかない未来を!」
クリスもボロボロの身体に鞭打って立ち上がりながら叫ぶ。響の言う通り、ガンヴォルトもそれを止めに戦っている。弦十郎も慎次も戦っている。マリアも自身の使命を、そしてセレナとの約束を果たそうと戦っている。だからこそ、自分も戦わなければならないと。ガンヴォルトより託されたこの場の戦いを終わらせる為にと。この場にいなくともその三人とマリアだけではなくみんなで終わらせると。
「マリアが戦っているのに…ボロボロになっても使命を全うしようと戦っているのに!倒れてていい訳がない!マリアを一人で戦わせていい訳がない!セレナを一刻でも早くこんな辛い状況から解放しなきゃならないのに!何もしないなんて有り得ない!あっちゃだめなんだ!」
調も叫び、自身の身体へと喝を入れて立ち上がる。マリアがセレナを解放しようと戦っているのに倒れている訳にはいかないと。マリア一人に全てをやらせる訳にはいかないと。そんな事あってはならないと。
「倒れてていい訳ないデス!やるべき事も!やらなきゃいけない事も!何も出来ないまま!誰も救えてないのに倒れている訳にはいかないんデス!何の為に自分はここにいるデス!何の為にここに来たデス!この戦いを終わらせる為に私はここにいるデス!セレナを救いにここに来ているデス!それなのにマリア一人が奮闘しているのに!セレナを救おうとしているのに!それをただ黙って見ているなんて有り得ないデス!」
切歌も立ち上がる。自分のやるべき事を。やらなければならない事を何も為せていないのに倒れている訳にはいかないと。自分が何の為にここにいるのかを自分自身に問いただし、その答えを叫びながら立ち上がった。
この場にいる誰もが一人しか望まない結末を変える為に来ている。それなのにマリアはセレナをたった一人でも解放しようと奮闘しているのを見て、何もせず見ている事なんて出来ない。ガンヴォルトが頼んだこの場の戦いを逆に終わらされていていい訳がない。
だからこそ、ボロボロになっても装者達は立ち上がり、自分達がやるべき事を。託された事を全うする為にアームドギアを強く握りしめる。
そして奮い立たせた気持ちを胸に装者達はボロボロの身体で再び怪物達へとアームドギアを振るう。
だが、それを嘲笑うかの様に、巨大な怪物が動力炉のあるこの広い空間を破壊しながら巨大な腕を振るう。他の怪物など気にも止めず。ただ圧倒的な巨大な身体を活かし、この場では回避する事が難しい一撃を装者達へと振るう。
ただ動力であるネフィリムの心臓を守る様に。自身の本体である心臓へと迫る脅威を排除する様に。
「ッ!負けるかぁ!託されたんだ!ガンヴォルトさんにこの場を!この場の戦いを終わらせて欲しいって!それに約束しているんだ!未来に!必ずみんなで無事に帰るって!」
怪物を拳で殴り飛ばし、迫り来る巨大な怪物の腕と対峙する響。そして自身のアームドギアを全力で振るわれる腕へと殴りつける。
圧倒的な質量と力を持つ巨大な腕。
たった一人の響の拳など物ともせず響の拳を押し返す程の一撃。拮抗すらせず、響の拳は押されていく。
だが、
「当たり前だ!ガンヴォルトに託されたならやり遂げなきゃならねぇ!」
「あいつが戦って勝つのに私達がここで負けていい訳がねぇだろうが!」
響を援護する様に振るわれた腕へ怪物を倒した奏が槍を、クリスが銃をしまい、六角形の結晶を出現させると壁を作り上げ、響と奏に加勢する形で振るわれる腕に押し付ける。だが、その三人でも振るわれる腕を受け止める事が出来ず、押される。
「セレナを助ける為にここを凌がなければならない!この馬鹿でかい怪物を倒さなければならない!」
振るわれた腕によってセレナへと繋がる道を閉ざされ、それに加勢する形でセレナへと、ネフィリムの心臓へと立ち塞がった腕へとマリアも短剣にフォニックゲインを込めて、エネルギーの刃を作り上げるとその腕へとぶつける。
「切り刻むデス!セレナを助ける道をつくる為に!」
「切り開く!!マリアをセレナの元へ向かわせる為に!」
切歌と調も加勢し、振るわれる腕へと全てを切り刻む鎌をぶつけ、調も丸鋸をぶつける。
六人の装者の負けない思いと切り開く為に振るわれたアームドギア。
一人では押され、三人でも止められなくとも、六人の力がぶつかれば押し切れない事はない。
思いと願いが合わさり、更なるアームドギアが呼応する様に振るわれる腕を拮抗すらさせず、合わさった力で振るわれた腕を押し返した。
行ける。やれる。装者達が一斉に駆け出そうとしたその瞬間。
視界を何が遮ると共に、六人へと物凄い衝撃が走り、フロンティア中央の入り口まで壁を破壊しながら吹き飛ばされてしまった。
ボロボロの身体に鞭打って無理やり立ち上がった六人にキャパオーバーのダメージを与えた何か。
辛うじて見えたそれは吹き飛ばした筈の腕と同じ怪物の腕。
それは響達は知らない弦十郎と慎次がウェルとの戦いで、ウェルが、いや、ネフィリムが使った腕にのみ
他の怪物とは違い、ネフィリムの意識が生まれた事により作られた怪物も同様の能力を使用する事が出来たのだ。
だが、それすらも分からない装者たちは吹き飛ばされた場所から立ち上がろうとする。
先程にも述べた通り、現在の装者が立ち上がる為に奮った覚悟すらも打ち砕き、肉体にキャパオーバーな一撃に、装者達は立つ事すらままならない。
そんな中、巨大な怪物は聳え立つ建造物から顔を覗かせ、不気味な笑みを浮かべて、装者達を亡き者にしようとゆっくりと装者達へと向けて歩み始めた。
◇◇◇◇◇◇
その戦いのみが中継されており、本部でも確認していた者達はあまりの光景に口を手で覆う事しか出来ない。
「マリア!切歌!調!」
だが、その中でも叫ぶ者がいた。三人の母親の様な存在のナスターシャだ。三人のボロボロの姿、それに何度も傷付く姿、そして倒れる三人の姿に三人の名前を叫ばずには居られなかった。
「響!奏さん!クリス!」
そしてもちろん未来もだ。傷付き、託された使命を、自身との約束を守ろうとした響、そして奏とクリス。その三人もまた倒れて、巨大な怪物により、危険な状況にある為に叫ばずには居られなかった。
何も出来ない自分に腹が立つ。今この場でどうする事も出来ない自分に腹が立つ。
ただ圧倒的な存在に、大切な人達を目の前でどうにかされていくのを見届けるしかないナスターシャと未来は歯痒い思いと苦しさに苛まされる。
『ッ!何がどうなってやがる!嬢ちゃん達は大丈夫なのかオイ!弦十郎やガンヴォルトは何をしてやがる!』
突如として響く男の声。
それは斯波田事務次官であり、今の状況が最悪であるとわかっている為に怒鳴り込んできたのだ。
「斯波田事務次官…司令は緒川さん共に首謀者の一人、ウェル博士と交戦中…ガンヴォルトは首謀者であり、このふざけた戦いの元凶…アシモフと戦っていると思われます…」
斯波田事務次官の質問に朔也が答える。正確に、だが、朔也も辛いのであろう、途切れ途切れになりながら斯波田事務次官へと報告する。
『あの野郎共か…』
斯波田事務次官は怒りを堪え、そう言った。アシモフと言う存在は嫌と言うほど理解している。ウェル博士の外道さも。だからアシモフと戦っていると思われるガンヴォルトに対して装者達を救えと言うのは憚られる。そして弦十郎と慎次にも。アシモフと同じ枠には入らないが、その知力としぶとさで今まで苦しめてきた者。だからこそ、ウェルと戦う弦十郎と慎次にもすべきことを全うしようとしている者達に何を言えない。
『こっちは…ラジオやその他メッセージである程度避難をさせている…だが、今の状況を見ている国民は終わるかもしれない人がいる中、それが終われば次が自分達の可能性があると言う絶望に駆られている。…テメェらばっかりにこんな事を押し付けて役に立たねぇ、役人で悪いとは思っている…だけど前線で戦うお前達なら何か!何か変えられる手立てを思いつがねぇか!?お前達ばかり背負わせてこんな事しか出来ない俺達に悪態ならいくらでも付いていい!だから俺達に何が出来る!他に何がやれる!どうすれば装者達の嬢ちゃんを!この国の人々を!世界中の人間を守れる!どうすればこの絶望が終わる!無能な俺に何が出来るか!国民を非難させる事しか出来ねぇ俺にも!何か出来る事はねぇか!』
声だけでも焦りが見て取れる。そして頭を机へと叩きつけたのだろう、鈍い音が聞こえる。国民を避難させることしか自分には出来ないから。それ以外に何が出来るのかオペレーター達に問う。
その問いに誰も答える事は出来ない。今の装者達を救う方法が思い浮かばない。巨大な怪物という絶望。ボロボロになって立ち上がる事の出来ない装者六名。
どうしようもできない状況。ガンヴォルトがいればとも考えるが、あの絶望と同様の絶望を携えるアシモフと言う存在と対峙している。弦十郎と慎次。人類の限界を突破していると思われる二人もウェルと対峙しており、倒して二人には悪いが、その怪物をどうにか出来るかと言われれば無理だと思われる。
どうする事も出来ない。だが何かある筈と。絶望など何度も味わい、その絶望は拭われてきた。装者達によって。ガンヴォルトによって。だから誰も諦めていない。
何かあると考え続ける。
そんな中、未来が、ナスターシャがポツリと呟く様にいう。
「歌を…歌を届けてあげれば…響なら…みなさんなら…」
「フォニックゲインを…六人ではなく…この危機を乗り越えると信じる者達の歌によるフォニックゲインがあれば…」
かつての戦いでフィーネとの戦闘で起こした奇跡。それを未来は思い出し、ナスターシャはシンフォギアの可能性を導き出してそう呟いた。
その言葉を聞いたあおいが叫ぶ。
「斯波田事務次官!歌を!あの子達ならやってくれると信じる者達の歌を!一人でも多くの歌を!あの子達へと届く様に!あの子達に力を与える歌を!」
『歌!?今そんな事をしてる場合じゃ』
「必要なんです!歌が!歌が起こす奇跡が!あの時と同じ様に!かつての戦いで奇跡を起こした様に!今回も必要なんです!」
斯波田事務次官が何を言っていると言おうとしたが、それを未来が遮った。
かつてのフィーネとの戦いで起こした奇跡。あの時に起きた奇跡を再び起こせばなんとかなるかもしれないと。響を、装者を信じる未来が斯波田事務次官へと言う。
「…誰だか分からねぇがそれでなんとかなるのか?それで装者の嬢ちゃん達を救えるのか?俺達の歌で何か奇跡でも起きるのか?」
どこか疑いの声を響かせる斯波田事務次官。斯波田事務次官も歌の奇跡は知っている。だが、それを今ここで起こせるのかといえば疑ってしまう。
だが、未来は言う。
「一人でも多くの歌が奇跡を起こせます!ガンヴォルトさんが前に言っていました!歌には無限の可能性を秘めた力があると!だからお願いです!私の言葉じゃなく、ガンヴォルトさんの言葉を信じて下さい!一人でも多くの歌が!その歌に込められた想いが奇跡を起こします!だから聞いている人に!歌を歌う様に頼んだ下さい!」
かつてガンヴォルトがフィーネとの戦いで言った言葉。歌の無限の可能性を持つ力であると。そしてその思いに応える様に、響は装者達は絶望を払った。だからこそ、今度も信じるのだ。歌が起こす奇跡を。
「歌を力に変えた力、シンフォギア…それがあるのであれば奇跡は起こせます。奇跡を手繰り寄せられます。あの子達を救うのはもうそれしかない。何も出来ない私達がこの状況を変えるにはそれ以外ありません」
ナスターシャも斯波田事務次官へと言った。歌の奇跡をナスターシャは知らない。それを見ていないのだから。だが、それでも、シンフォギアと言う物は歌を力に変えている。だからこそ、歌の奇跡を知らぬとしても、歌に込められた無限の可能性を知っている。だからこそ進言する。
「シンフォギアを知る者としてそれが一番の最善な手です。その歌を多くの人が歌えば高まるフォニックゲインがある。そのフォニックゲインがシンフォギアに力を与えます。だから…今の私が言うのはお門違いかもしれません…ですが、それがこの状況を変える手なのです」
ナスターシャも斯波田事務次官へとそう言った。F.I.S.の研究者。完全聖遺物を知り、シンフォギアのシステムをこの中で誰よりも理解しているからそう言った。
未来の言葉もナスターシャの言葉も説得力はある。かつて歌で奇跡を起こした一人。そして聖遺物を理解する研究者の一人であるから。
だから斯波田事務次官はその言葉を信じる。
『…それで変わるなら幾らでも歌ってやる!俺達が!その絶望を振り払うと信じる国民が!今の状況にどうにかしようとしている諸外国の政府に!世界中の人達に!歌を歌わせてやる!信じるぞ!その言葉を!」
そう叫んだ斯波田事務次官は通信を切る。
そして誰もが願う。歌を歌ってと。装者達に歌を届けてくれと。
◇◇◇◇◇◇
通信を切った斯波田事務次官はそこから忙しなく動いていた。
今ジャックされて映っている状況は本当である事を。月の件は曖昧にさせながらただ、この前映る光景で装者達がやられれば次はこの国である事を。
だからそれを防ぐ為には歌を歌って欲しいと。
この国だけではない。諸外国にもだ。
通訳を通して諸外国に呼びかける。この状況を打破するのは歌を歌う事だと。
だが、そんな事で変わる状況ではない。何を言っていると一蹴する国もあり、上手くは進まない。
「国を守る者として!ふざけて言っているつもりなどない!それが最善!それが世界を救う為に必要な事!この世界をアッシュボルト!いや、アシモフと言う男に終焉をもたらされていいのですか!いいわけがない!そんな事あっていいわけがない!だからこそ、この場にいる諸外国に!国民に頼んで下さい!歌を歌って欲しいと!世界を救って欲しいと願いを込めて!この絶望を終わらせて欲しいと言う思いを込めて!」
だが、それでも時間のない斯波田事務次官は何度も頭を下げ、諸外国に呼びかけた。
誰もがこの状況で歌がなんになると疑い、答えを出さない。
一つの国を除いて。
「力になれるのならば歌います。この国人達全員で。私にもその責任はあるのだから。日本だけに背負わせるわけにはいかないのでね」
そう答えたのは米国。
「元を辿れば我が国も非がある。テロリストであるアッシュボルトに…アシモフと言う男に研究器官を襲われながらも何も出来なかった。ここまでの大事になりながらも何も出来なかった。そして裏切り者まで出してしまった。そんな我が国の尻拭いをしようとしているのに協力をしないわけにはいかない。盟友の国、そしてその国を守る者の言葉を信じないわけにいかない」
最も世界への影響力を持つ国の言葉。
その言葉に諸外国もたじろいてしまう。
「だから我が国は協力を惜しまない。盟友が言うのならばそれを信じましょう。実行しましょう。だから頼みます。この国だけじゃなく、世界を救いましょう」
その言葉に、他の国もノーとはいえない状況を作られる。
そして諸外国も国民に対して歌を歌う様に動き始めた。
「ありがとうございます」
「それを言うのはまだ早い。終わらせましょう。この世界の滅亡をかけた戦いを。絶望を」
米国の役人である男はそう言った。
「歌があれば、終わらせます。必ず、あの場にいる世界の滅亡を止める者達が」
斯波田事務次官は米国の役人に感謝しながら、自身も救いを求め、絶望を装者達が振り払うと信じて、歌うのであった。
◇◇◇◇◇◇
諸外国も政府から告げられた事により、映像が空想ではなく現実であると突きつけられた世界中の人々。それは絶望の言葉であり、終わりを突きつけられた。その言葉を信じ、終わりを待つ者。未だ嘘だとばかりに過ごす者。それぞれだろう。だが、世界中の国がそうである事を告げてこれが現実だと突きつける。勝たねば終わりだと言う事を。今画面に映る少女達に託すしかない事を。
だが、諸外国はその絶望を振り払う一言を国民に告げる。まだ生きたいものは歌えと。あの少女達が救ってくれると信じて歌えと。
どんな歌でも構わない。ただ救いを信じ、この絶望を終わらせてくれる事を願い歌えと。
その言葉でいち早く歌を歌い始めたのは日本。ノイズという脅威が最も多く襲いかかっていたから。そして何より、雷鳴と歌が響く場所に居合わせた人達が救われていたから。ノイズによる脅威にさらされながらも歌とそして雷鳴が響き、救われた事がある者は歌い出す。
雷鳴を鳴らし奇跡を起こして者と共にいた者達が倒れている。歌が力になる。それならばかつて救われた者達からすればそれを為そうとする事は当たり前であった。
そしてその歌が伝播する様に、何も知らぬ者の心を動かす。
それは拡散される様にまずは日本という国が歌で満たされる。
そして国がそれを諸外国へと発信し、最も絶望に近い国は誰もが疑わず歌を歌っている事を知らせる。
そしてそれを使い、最も影響力のある米国が歌が世界を救う鍵となる事を告げ、全員に歌を歌うことを促す。
そして日本から米国。米国から諸外国へと伝播して歌が世界を満たしていく。
それと共に見えはしないが強大な力となりつつあった。
一人一人が生み出したフォニックゲイン。たった一人では矮小な力しか生み出せない。だが、世界の人々というとてつもない人達が思い、願い、歌った事により生み出されたフォニックゲインは結束するかの様に集まって巨大な力へと変わりゆく。
そしてその歌が生み出したフォニックゲインはある一人の少女へと向けて流れていく。
希望を信じ、自分の正義を信じる一人の少女の元へ。
何故この肉体にのみ起こったのか?
何故この世界に流れついたのか?
-もっと見せてくれ。君という存在が…この世界の命運を守れるかを。だから…神さびれ-
それはボクがシアンによってこの世界へと流れ着いた理由とある運命を背負い、極点の境地に至り、新たな神話を刻む物語。
戦姫絶唱シンフォギアABGV
四期のあらすじ的なやつです。
ここで紫電がこの世界にいた理由、そして何故クローンの中で唯一変異が起こったのか、何故アシモフがこの世界にいたのか語る予定だった話。