ウェルを倒す為に弦十郎と慎次は地面を駆ける。
それを対応するかのように背中の半月のような刃を飛ばし、操作して弦十郎と慎次へと向けて大量な光線を放ち、肩の装甲から黒い粒子を放つ。
弦十郎と慎次は光線をかけながら躱し、黒い粒子は駆けながら弦十郎が地面を一部抉り出して、岩盤を手にする。その表面に慎次が再び取り出した焼夷手榴弾で火炎を纏わせ、突っ込む。
今の二人にはそのような攻撃は無意味。攻撃の出所さえわかれば光速の攻撃だろうとその射線に居なければ回避出来る。岩盤を持つ弦十郎は少し離れた位置に位置にて弦十郎へと指示を出し、それを可能としていた。
そして黒い粒子。物質を喰らうが物質ではなく現象である炎でどうにかすればいい。
だから炎の盾となる岩盤を前にすれば物質を喰らう黒い粒子は現象である炎に焼かれ、無力化される。
しかし、そうと分かれば手を変える。意識ではなく本能で。
そうして作り上げだ穴を通して岩盤に隠れて姿の見えない弦十郎へと穴を繋ぎ、弦十郎を喰らいつくそうとした。
だが、その瞬間に慎次も動いた。穴が出現したタイミングに慎次も岩盤の後ろへと姿を隠す。その瞬間に急に岩盤後方で爆発の様な何かが起こったかと思うと速度が増した。
何の為にかはわからない。一点突破か?いや、意識のないウェルにそんな事を考える事すら出来ない。ただ本能のまま目の前の敵を殺す事に執念で動くウェルに、獣の知性しか持たぬネフィリムにとってその意味を理解する事は出来なかった。理解するよりも本能がその行動を突き動かした。
だが、送り込んだ筈なのに弦十郎と慎次の声は聞こえない。初めに喉を喰われ、叫ぶ事すら出来ず死んだか?意識のないウェルは、そしてネフィリムはそう考える。
しかし、そんな簡単に弦十郎と慎次は死ぬのか?ウェルの狂気と呼べる執念とネフィリムの意志は本能で既に結論を出していた。
この程度であの男達が死ぬ筈がない。脅威であり、恐怖を抱く存在がこうも簡単に死ぬ筈がない。殺したいと思いやまない二人。これで殺せているのであればどれだけ嬉しいだろう。だが、本能が、恐怖が依然としてこの身体から消えていない。だからこそウェルは、ネフィリムは、爆炎を放ち、炎を纏いし岩盤を破壊する。破壊に使われた炎が辺りへと散り、燃える岩が辺りへと四散する。
その背後には血溜まりも、人を喰らい尽くした痕すら残っていない。ただ自身が送り込んだ黒い粒子が自身の放った爆炎によって焼けている光景と謎の爆発の様な現象が起きたせいか、砂塵が舞う光景のみ。
「ッ!?」
何がどうなっているか分からない。だが、そんな疑問よりもウェルとネフィリムがそれを見て思うまたのは怒り。殺すべき者が自身の視界から殺してもないのに消えた。この手で殺すと決めた者が消えている事に怒りを覚えた。
「アァァァ!」
獣の様に叫び声を上げる。
しかしその瞬間に、叫びは嗚咽へと変わる。
「ガラ空きだぞ!」
弦十郎の声と共に、ウェルの、ネフィリムの腹に強烈な一撃が与えられた。
「ガァ!?」
その正体は勿論弦十郎であり、地面を砕きながらウェルの足元へと至り、アッパー気味な拳を腹へと叩き込んだのだ。
何故弦十郎が地面から出て来たのかは慎次の危機察知によるものだ。
その穴は地下空間に繋がった。フロンティアの巨大な地下空間に一部。慎次が駆けながらも駆けた大地からの振動から僅かな違和感を捉え、それを弦十郎へと伝える。そして力強く踏み抜いた事で数メートル地下にある空間へと穴を打ち抜いたのだ。弦十郎はその瞬間に岩盤を投げ飛ばし、慎次共にその穴へと躊躇いもなく飛び込み、その地下空間を駆け出し、そのまま地面を蹴り上がり、ウェルの叫び声と共に全力で飛んで阻む岩を打ち砕き、ウェルの足元へと浮上するとそのままウェルの腹へと強力な一撃を見舞ったのだ。
その不意に入れた一撃はウェルの、ネフィリムの肉体を僅かに綻びを生じさせる。
常人では不可能な一撃が、その肉体に小さなヒビを入れたのだ。
そしてその小さなヒビへと向けて放たれた銃弾。地面を突き破った弦十郎の後から現れた慎次が更なる一撃を与えようと放ったのだ。
だが、それを防ぐ様に熊のような腕を盾にして、更に
全てが脅威、全てが二人にとって必殺。
「だからなんだ!」
「脅威だろうと必殺だろうと知った事とではありません!」
何度も見せられた、何度もその脅威を思い知らされた。だが、それで諦める筈もない。何度も使われた。何度もその身に受けた。だが、それでも死んでいない。倒れていない。脅威だろうと防いできた。必殺だろうと耐えて来た。
今更この程度で怯むわけが無い。焦るわけが無い。
慎次は素早くまたもやどこから取り出したのか分からないが焼夷手榴弾取り出すと弦十郎にも投げ渡し、自身を手榴弾を持つと互いの足を合わせ、蹴り合って二つの光線を躱し、爆炎を躱す。それを追従するように黒い粒子が二人へと向かう。だが、互いに持った焼夷手榴弾のピンを引き抜くと、起爆タイミングに近い時に黒い粒子と投げつける。
二人の全力の投擲。高速に接近する焼夷手榴弾は黒い粒子とぶつかる前に破裂して、黒い粒子を燃やし、肩の装甲から未だ湧き出る粒子までその炎が燃え広がる。
黒い粒子が燃えて視界が閉ざされる。
「ッ!」
見えなくなった事でウェルとネフィリムは次の行動に移る。光線が駄目、爆炎が駄目、黒い粒子が駄目。幾度となく躱された。幾度となく防がれた。
だからこそ、ウェルの本能が、ネフィリムの意志は二人を倒すにはやはり肉弾戦しかないと考えた。
光速で放たれる拳。それは今の二人にダメージを与えた事実のある攻撃。そして更にその拳に炎をを纏わせて。不可避の一撃に加え、身を灼け焦がす業火を纏わせた。
この拳で殺す。自らの手で殺す。
ウェルが、ネフィリムが込めた殺意の塊。
炎を突き抜けて来た弦十郎と慎次。
拳を構え、二人へと光速という速度で接近して二人へと襲い掛かる。
目にも止まらぬ速さ。回避不能であり、腕に纏われた炎の熱量が接触した箇所から焼き尽くして殺し、接触しなくてもその熱量が肌を焼き、痛みで動きを鈍らせる。時間が経てば経つほどその真価を発揮する。
そしてその一撃が弦十郎と慎次へ同時に放たれる。
その一撃は刹那も立たない時間に振るわれ、二人を吹き飛ばした。
と思った。
振るった拳が同時に二人にぶつけた瞬間に、姿が消えたのだ。二人の存在が霞に消えるように、ぶつけた感触など無く、ただ二人の存在が初めからなかったように消えた。
「ッ!?」
何が起こった?そう考える頭もないのだがそんな暇もなく、再び弦十郎と慎次が炎を突き抜けて現れた。
そして地上に足が着く前に、弦十郎と慎次がウェルへと向けて拳を叩き込む。光速の動きをするよりも、その身に炎を纏う前に。
突然の事に反応出来なかったウェルは、ネフィリムは二人の拳を肩に、顔面に叩き込まれ、肩に、顔面に腹同様に小さなヒビを入れられる。
何故二人が消えて再び現れたのかは知る由もない。それを理解しようにも理解出来る程の材料が足りない。
何が起きたか一生語られぬから分からないであろう。
勿論、ウェルとネフィリムは理解出来なくとも弦十郎と慎二だけはそれを理解している。何故ならそれを使い、実行したのが慎次であるから。
緒川家に伝わる忍術の複合させた奥義の一つ。
慎次の使える忍術は影縫い、変わり身、物体を口寄せするだけではない。
分身、変化、他にもあるがここでは割愛する。
使える手の中で最良の選択を導き、慎次がそれを実行したのだ。
分身を立て、変化で弦十郎になりすまし、ウェルの、ネフィリムの前に先に立たせた。
その結果、ウェルの、ネフィリムの殺意が二人の存在を殺す為に反応して攻撃を始めたのだ。目の前にいるのは偽物であると知らずに。
そして叩きつけた二人は地面に降り立つと共に弦十郎と慎次が更に拳を、蹴りを叩き込もうとする。
だが、一度目の攻撃には間に合わなかったがその攻撃をウェルは自身の身体を発光させて光速で移動して躱す。
だが、その行動がウェルに、ネフィリムに苛立ちを増長させる。何故自分が後退しなければならないのか。更なる力を手に入れたのに。人間程度に何故後退しなければならないのか。胸の中に燻る堪えることの出来ぬ怒りを曝け出すように咆哮を上げる。
自身は英雄だ。英雄であるから負けるわけが無いと言う様に。
自身がたかが何も持たぬ人間に負けるわけが無いと言う様に。
その苛立ち、怒り、そして自身が必ず勝つ疑わない感情が、ウェルの肉体に、ネフィリムの肉体に、いや、正確にはネフィリムの取り込んだ能力因子がその感情に反応してより強力な力を帯びる。
ガンヴォルトが絶望という状況から立ち上がり、アシモフを殺すという目的を達成する為に力を増幅させた様に。
アシモフが何度も立ちはだかる紛い者と呼ぶ存在が殺しても殺しても自身の目の前に立ち、憎悪により力が増していく様に。
ウェルも、ネフィリムも、自身が英雄であるからこそ負ける筈がないという自己暗示が、聖遺物も持たぬただの人間に自身が負けるはずがないという思いに体内に存在する能力因子がその思いに呼応するように熱を帯びる。
変異した肉体に帯びる熱。その熱を解放する術を理解している。
そしてその熱を解放するように、言葉を紡ぐ。だが、その言葉はまるで獣の鳴き声。
弦十郎と慎次には理解出来ないだろう。
それでも言葉をウェルもネフィリムも理解している。
英雄たる我が身の糧となった五つの因子、その力を奮い立たせ、阻みし愚者この力の前に鏖殺を。
初めに解き放たれるは
そして周囲に飛び散っていた背中にあった刃が、一点に集まり、巨大な剣へと変化し、
そして肩の装甲が外れ、周囲に飛び回ると灼熱でも焼ける事ない
そしてそれと同時に空中に
そしてその合間を縫う様に穴が、
力を増幅させた
ガンヴォルトの様に、アシモフの様に、力を極限まで高めて出す
コリオラヌス•エグゼキューション。
自身が英雄であると証明を。自身が完璧な存在である証明をする為に死を執行するスキルの名前。
殺す。この場で。この手で。自身の英雄であると今一度証明する為に。自身が完全なる存在であると二人に刻み込む為に。執行しよう。
そして解き放たれる様に、炎の柱から火球が、飛び回ると装甲からは黒い粒子が、現れた紋様から石化する光線が一斉に弦十郎と慎次へと襲い掛かる。
それと同時に、発光して光速で移動すると二人に斬りかかる。動きが直線的であるがそれでも回避しようのない刺突。だが、何度も見続けている弦十郎と慎次はその刺突を掠りながらも回避する。
だが、そんな回避も無意味であった。
その向かった先にあるのは
そうして初めに弦十郎の腕に巨大な剣が突き立てられる。
「ッ!?」
だがそれで終わらない。再び光速となって消える瞬間に、火球が、黒い粒子が、石化の光線が弦十郎に向かい、火球が爆発し、そして爆発から飛ばされていなくとも石化する光線が、爆炎に向けて放たれ、そして黒い粒子が爆発など物ともせず、弦十郎を喰らう為に群がり、喰い殺さんばかりに襲い掛かった。
そしてそれと同時に今度は慎次へと巨大な剣が突き立てられた。
「ガッ!?」
そしてその威力に慎次は吹き飛ばされた。迫り来る火球の、光線の、黒い粒子のある方に。
そして迫り来る火球が、光線が、黒い粒子が一瞬で慎次を飲み込んでいった。だが、これで終わらない。
再び光速となって、その火球を、光線を、黒い粒子も関係なしに、弦十郎と慎次が飲み込まれた場所に何度も斬撃と刺突を繰り返す。
自身の攻撃は肉体に何ら影響を及ぼさない。だからこそ、二人が死ぬまで、死ぬ事が確認出来るまで何度も何度も繰り返す。
これで幕を引かせる様に。自身の肉体の限界を超えた力を常にウェルはネフィリムは二人を殺すという合わさった意志によって動き続けた。
光となって振るわれる斬撃、焼き尽くす火球、石化する光線、喰らい尽くす黒い粒子。集約させた一撃が確実な死を二人へと送る。
そして幕引きをするがの如く、離れた位置で動きを止めると巨大な剣へと光を集約させる。
「アアァァ!」
そして獣の如き雄叫びと共に光を集約させた剣を振り下ろす。
それと共に剣から集約された光が放たれる。
その爆発が幕引きとばかりに辺りに出現していた炎柱が、穴が、紋様が無くなり、剣となった刃が再び背中へと戻り、黒い粒子を吐き出していた装甲も肩へと戻る。
終わった。この手で終わらせた。
遂に自らの手で憎き者達を屠る事に成功した事に再び雄叫びを上げる。
勝利をようやく確信して凱歌を歌うが如く。ただ獣の如き雄叫びを上げ続ける。
だが、
「何を勝手に…勝ちを…確信しているんだ…」
「まだ…勝負は…着いていません…まだ終わっていません…」
「ッ!?」
先程の爆発によって立ち上る煙の奥。そこからその様な声が聞こえた。
ウェルとネフィリムにとっては悪夢の様に。聞きたくもなく、聞くはずもないと思っていた二人の声。
あり得ない。自身の全力を尽くしてもまだ生きているのか?
あり得ない。剣には肉を斬る感覚があった。だが、それでも深手を追わせられなくとも、
例え斬撃でトドメをさせなくとも、この全てを躱しきることなど出来るはずがない。
幻聴。そう信じたかったが、煙が晴れた先にウェルにとって、ネフィリムにとっての悪夢が未だ立っていた。
身体全身に無数の切り傷、さらに火傷、そして傷の幾つかは黒い粒子に喰われたのだろう。齧られた様な傷がついていた。更に石化の光線の影響もあり、二人の至る所に石化した跡が残っている。
だが、それでもなお、五体満足で生存している。幻覚だ。幻聴を聞いたせいで脳が悪夢を見せているに決まっている。
そう願いたかった。
「あれが貴様の全力か…人生で一番…死にかけたぞ…」
「ええ…この先にも…こんな事が起きても…切り抜けられるかどうかは怪しい…ですね」
ボロボロになりながらも弦十郎と慎次はスペシャルスキルを食らってなお生存していた。
どうやって?そう誰もが思うだろう。
弦十郎と慎次もあの膨大な量の攻撃に一度は死を覚悟する程であった。沸き続ける黒い粒子に逃げ場なく現れた石化の光線を放つ紋様。四方八方から襲い来る火球。そして光速で移動しながら斬りつけるウェルとネフィリムの融合した怪物。
そんな状況に陥ろうが、どんな絶望が襲いかかって来ようが、大人としての矜持が諦めるなどという選択肢を取らせなかった。
生きて全員帰ると言う任務。それを二人が全う出来ないなんてあって良いわけがない。装者達が全員帰ってくると信じているから、ガンヴォルトもシアンを取り戻し、帰ってくると信じているから、自分達もそれを実行する為に迫り来る絶望を振り払う事に全身全霊を持って相対した。
迫り来る黒い粒子。二人にとって最も厄介な力。そして熱の耐性得て焼夷手榴弾など無意味となった厄災。
その厄災に弦十郎と慎次は肉体で対抗した。無茶、無謀な事。誰もがそう思うだろう。
だが、二人を知る者からすればそれが最適と応える。二人は人でありながら、人の到達出来る限界を超えた力を有している。
そしてこの状況が二人の力を更に向上させた。
火事場の馬鹿力。極限状態によって自身では外す事が出来ないリミッターを外したのだ。
そんな状態で振るわれる拳は大気を殴り飛ばし、その力で飛ばされた圧が黒い粒子を跡形もなく消し去った。
だが依然にも黒い粒子は沸き続けている。そんな中、二人は襲い来る黒い粒子を同様の手で屠り続けた。
そんな中、火球が、光線、そして斬撃が襲い掛かる。
だが、それも限界を超えた弦十郎と慎次は対応する。火球も黒い粒子同様に圧によって破壊する。光線は最小限の動きでなんとか躱す。斬撃は光速の為に避けきれない。だが、リミッターの外れた二人はそれをあり得ない方法で受け切っていた。
切られた瞬間、肌に斬撃が届いた瞬間に、光速の速度には及ばない。だが、その光速に近い速度で斬られる方向に動かして無効化させたのだ。
絶対にあり得ない。だが、リミッターが外れた二人にはそれすら実現させてしまった。
終わるまで捌き続ける。だが、リミッターが外れて人外に近い動きを出来るようになったとしても、その全てを完全に捌ききる事は出来なかった。石化する光線に触れて、身体に激痛が走る。だが、それでも動き続ける。火球によって火傷が出来ようが、斬撃によって肉が裂かれようが、捌ききれずに黒い粒子に肉を喰われようが止まらなかった。
そして斬撃が来なくなり、攻撃が終わりを見せようとした瞬間、黒い粒子の隙間から強力な光が見え、それがどんどんと近づいてくるが如く、眩くなっていく。
その瞬間に弦十郎と慎次は地面を強く踏みつけた。それと共に地面が陥没し、再び地下空間へと繋がった。
そしてそのまま重力に身を任せながら落下していくと同時に、ぎりぎりのタイミングで光が頭上を通り越した。
それと同時に起きる爆発。火球が爆発を起こし、地下空間にも爆風が流れ込んできた。
勿論、落ちていく弦十郎と慎次はまともに爆風を喰らう。だがそれでも共に未だ生きている黒い粒子を倒しながら、落下していく。
そして地面へと叩きつけられる。
受け身すら取れずに肺の中の空気が一気に抜けて呼吸がままならない。だが、それでも二人は生きていた。身体中にかなりの傷を受けてなお、あの攻撃を受け切り、生存していた。
「ッ…まだだ…まだ終わってない…」
「ッ…ええ…終わっていません…だからこそ今度で終わりにしましょう…」
ボロボロの身体を鞭打って立ち上がり、呼吸も整えず、弦十郎と慎次は地面を蹴り、高く跳躍すると再びあの場に舞い戻った。
それが弦十郎と慎次が生きている理由。その超人的な肉体があの場から二人を生存させたのだ。
そして幾度となく対峙を繰り返した三人。
その最後の瞬間が訪れた。
生きている事に怒りに身を任せ、光速となって目の前に現れるウェルもといネフィリム。
ボロボロになった二人へと光速の拳の乱打が放とうとする。
だが、それよりも早く、二人は目の前に現れる事を予測しており、拳を構えて全身全霊、ここで負けてたまるかと言う思い、そして幾度となく絶望を装者達に、ガンヴォルトに、自分達に、与えてきた事への怒りを込めた拳を乱打が来る前にぶつけた。
リミッターが外れた人知を超えた力。聖遺物であろうが、なんだろうが打ち砕く程の威力を携えた拳がウェルをネフィリムを捉えた。
「終わりだ!」
そして捉えた瞬間に弦十郎と慎次は叫ぶと同時に地面を強く踏み込んだ。
その瞬間に拳へと伝わる爆発的な力。その力が、ウェルの、ネフィリムの傷が入った肉体の亀裂をより大きくし、その肉体を破壊した。
変異した怪物の肉体が二人の拳により吹き飛ばされ、そしてその肉体の内側から変異する前のウェルが現れてばたりと倒れた。
「ハァ…ハァ…終わりだ…ウェル博士」
「ハァ…僕達の…勝ちです…」
動かないウェル。ボロボロになってでも諦めず、力を出し切って勝ちをもぎ取った二人はそう言った。