戦姫絶唱シンフォギアAB   作:株式会社の平社員

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22VOLT

リディアンへ帰投するためにハイウェイに戻ると、ボクがいた頃よりも派手に壊れており水道の配管が破裂したかのように水が吹き出して雨のように降り注いでいる。

 

「…派手にやったね、弦十郎」

 

「ガンヴォルトか。二人のシンフォギア装者の仲裁は俺もここまでしない止められないからな」

 

ボクは溜め息を吐く弦十郎に苦笑いを浮かべる。

 

「それより、翼と響は?」

 

近くにいる二人を見る。顔を下に向け涙を隠す翼と、頰が少し赤みを帯びている事から翼に打たれたのだろう、何でこんな事になっているか分からないと言った表情をする響の姿があった。

 

ボクは翼と響の方に歩み寄る。先程弦十郎に連絡をして仲裁をしてもらおうとしたが、今の翼を見るとそんな事をしてもらっている場合ではない事は分かる。ボクは響に弦十郎の元へ行くように伝え、翼に声を掛ける。

 

「翼、響が纏うガングニールが奏のギアと同じ物だから納得がいかないのは理解しているよ」

 

「…ガンヴォルト…ならなんであなたはあの子に対してなんの感情も抱かないの!」

 

翼は先程のように叫ぶ。確かに、ボクは翼とは違い、響に対してそのような感情を抱いていない。響には悪いがボクは今の彼女を一つの戦力として考えている。

 

「ボクは響に対してはなんの感情も抱いていない訳じゃない。でも、翼みたいに受け入れたくないなんて考えてない。響はこれから一緒に戦う仲間になるんだから」

 

「あなたにとってあの子は奏の代わりなの!?奏とあの子は違う!ギアが同じだからってあの子が奏の代わりになる事なんて出来ない!」

 

翼は涙を流しながらボクに向けて叫ぶ。彼女にとってガングニールとは奏の物である事は揺るがないだろう。だからボクは自分の思っている事を口にした。

 

「奏の代わりなんて考えてないよ。奏と響は同じギアを纏おうが別人なんだから」

 

「ならなんで!」

 

「ボクにとって、ガングニールが誰の物なんてどうでもいい。ボクが最も失いたくないものは人の命なんだ」

 

翼はその言葉に顔を上げる。その表情は薄情にも程があると言いたそうに怒りを表していた。それでもボクは話を続ける。

 

「響を、奏が救った命だからこそ否定したくないんだ」

 

その言葉に表情を変える翼。

 

「奏は命を懸ける覚悟までして響を救ったんだ。例え、その行為により響を適合者にしてしまったとしてもその行動を間違っているなんて思いたくない。だから、ボクは響を否定したくないんだ。それを認めると奏の行動が間違っている事になると思っているからね」

 

ボクは親指で翼の涙を拭う。

 

「今すぐに響を認めるなんてボクと会った頃の奏みたいに凄く難しいかもしれない。だけど、翼。時間はあるんだ。直ぐにとは誰も言わない。ゆっくり考えて翼自身の答えを出せばいい」

 

「…そんな話を出すなんて、ガンヴォルトはずるい人だ…」

 

翼は涙を拭い、ボクに言った。

 

「あなたの言う通り、簡単に割り切る事は出来ない。だけど、善処してみるわ。あなたの言う通り、時間はあるんだから」

 

少しだけスッキリした顔で言う。ボクは翼の表情を見てボクは安堵する。

 

「そうだね」

 

「でも、あなたには聞かなきゃならない事があるの」

 

先程とは違い、何処か威圧感のある笑顔を放つ翼。

 

「ガンヴォルトの探す人について私の勝手な考えを言った事は謝るわ。ごめんなさい。でもね、これだけは聞かせてもらえる?そのシアンって子が大切な人っていうのはどういう意味かくらい?」

 

先程までの威圧感が更に増し、その威圧感は以前手合わせをした弦十郎の本気を出した時の威圧感に似てる。これも風鳴の血統というものなのか…。

 

「翼はどうしてその事を気になるか知らないけど、シアンはボクにとって家族みたいな人で妹みたいなものだよ」

 

そう言うと翼の威圧感が嘘みたいに収まり、先程同様スッキリした表情に戻る。そして、響に謝りに行くと言って弦十郎達の方に向かっていった。

 

ボクは何故翼がシアンを気にしていたのか見当がつかないが、とにかくなんとか翼が響とのわだかまりが無くなってくれたならいいかと、その考えを放棄して、しばらくして到着した一課と共にノイズの戦闘記録と炭の回収作業を行った。

 

ちなみにハイウェイの無残な姿になった経緯を説明したら誰一人として信じてもらえなかったのはここだけの話だ。

 

◇◇◇◇◇◇

 

あのハイウェイでのノイズ出現から数日後。街から少し離れた豪邸のような家。そこには二つの人影があった。

 

「フィーネ!あいつはなんなんだ!お前の言っていた情報では二人のシンフォギア装者しかいないって言ってたじゃねぇか!それなのにあんたの言う通り、ノイズを出現させてみれば意味の分からない男にノイズを全部倒されるし、説明してくれよ!あいつは一体なんなんだ!」

 

フィーネと呼ばれる人物は少女、雪音クリスの方を向けて言った。

 

「私は嘘は言っていない。シンフォギア装者は二人だ。一人は風鳴翼、もう一人はつい最近シンフォギアを纏う事が出来るようになった立花響」

 

「そんな事はあんたが言ってたから知っている!私が聞いてるのはあの男についてだ!なんであんたはあいつについて何も私に伝えなかった!」

 

クリスはフィーネに向けて叫ぶ。

 

「クリス、その事を伝えたところで見ていない存在を信じる事は出来たか?お前の事だ。どうせ信じずに行動しただろう?」

 

そう言われて黙ってしまうクリス。その様子を見て溜め息を吐いてからフィーネはクリスが求めている男の情報を話し始める。

 

「奴の名前はガンヴォルト。特異災害対策機動二課に所属するエージェントの一人であり、ノイズに対抗するシンフォギアとは異なる力、第七波動(セブンス)という聖遺物とは異なる力を使い、ノイズを退ける事の出来る唯一の存在だ。そして、シンフォギア装者とは別に最も厄介な存在であり、我々の目的の最大の障害となる者だ」

 

第七波動(セブンス)…ガンヴォルト…フィーネ、そいつがいる限り、私達の目的を達成できないのか?」

 

クリスはその事を聞いて何処となく不安そうにフィーネに尋ねる。

 

「そうね、奴が居なければかなり楽に物事を進ませる事が出来る。だけど、奴が居てもある程度は回り道をしながらでも進める事は出来るわ」

 

それを聞いて少し安心したように表情を緩めたクリス。しかし、フィーネはそんなクリスに向けて更に

 

「問題があるとすれば奴の持つ雷撃の第七波動(セブンス)の技だ。クリス、あなたも見たでしょう?奴の言葉に呼応して出現する公転する雷撃の球体、巨大な雷の剣を」

 

その言葉にクリスはハイウェイでのガンヴォルトの出していたものを思い出す。その力はシンフォギア装者にも劣る事のない凄まじいエネルギーを感じた。あんなものを何度も出せるようであれば一筋縄ではいかなくなる。

 

「そして最も厄介なものが一帯のノイズを全て屠る事の出来る鎖を召喚する技だ。あれだけの出力の雷撃を放っておいて何の疲れも見せない奴の底が見えない」

 

フィーネは少し忌々しそうに言うと表情を戻してクリスに近寄る。

 

「だけど、それでもなんとかなるわ。クリス、あなた次第でどうとでもなるわ。私達には協力者によってもたらされたノイズを制御する事の出来るソロモンの杖。そして、私達の所有しているネフシュタンの鎧。この二つさえあれば、あなたの理想である争いのない世界を作り上げる事が可能なんだから」

 

フィーネはそう言ってクリスを抱きしめた。クリスはそれを聞いて安心したように頷く。しかし、

 

「でも、あなたのせいで奴に我々の存在に気付くヒントを与えてしまった。その罰は受けてもらわないと」

 

そう言うとクリスから離れ、いつの間にか手に握られていたスタンガンのような物をクリスの腹に当てると電撃を流す。

 

「あぁぁ!?」

 

「あなたの事についてなんの手掛かりも残していなかった事はいいけど、それでもやはり持ち物をその場に残すのはとてもよくないわ」

 

クリスがハイウェイ近くで落とした双眼鏡。それをガンヴォルトが回収しており、それによってなんらかの作為が働いていると感じて、聖遺物についてかなり嗅ぎ回っている。文献でなど残ってないにしろ、その事を知っているかいないかで動き方も変わってくる。

 

「クリス、罰とは言ったけどあなたが今受けているその痛みこそが人が結ぶ絆の在り方なのだから」

 

フィーネはそう言うと更に強くスタンガンを押し当てて電撃を流す。

 

家中に響くような絶叫。苦しむクリスの姿を見てフィーネは口角を上げて更にスタンガンを強く押し当てた。

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