戦姫絶唱シンフォギアAB   作:株式会社の平社員

225 / 246
133GVOLT

バビロニアの宝物庫から脱出した装者達。

 

ネフィリムの肉体を貫いた腕はバビロニアの宝物庫から脱出するとともに砕け、装者達の纏うシンフォギアの決戦兵装、エクスドライブはその力を失ったのか、大きな衝撃と共に崩れ去る。

 

勿論エクスドライブだけでなく、シンフォギアも力を出し尽くしたのか、纏う鎧の部分が殆ど失い、地面に落下した際に完全に崩れ去った。

 

「グッ!?」

 

元の場所へと戻ったはいいが、ボロボロになった装者達。

 

だが、もう終わった。ネフィリムは心臓を穿ち、倒した。

 

「セレナ…終わらせたわ…今度こそ…貴方を解放した…さようなら…私の大切な妹…セレナ」

 

ようやくの思いで達成した事にマリアは涙しながらそう呟いた。

 

本当の意味でセレナとの別れ。だがもうセレナが苦しまなくて済むと。割り切ることも出来ない複雑な感情を抱いていた。

 

だが、これしかなかった。それ以外なかった。セレナの望んだ事。自分には何も言う事すら許されない。知らず苦しめた自分に望む事すら許されないだろう。

 

だからセレナ。安心して眠って。もうこんな間違いを犯さない様、道は違えないから。

 

罪を償い、貴方の誇れる姉であり続ける為に。

 

マリアはそう心に誓う。

 

しかし、ついに終わりを迎えたと思った戦いを嘲笑う様に起きる出来事。

 

未だ開いたバビロニアの宝物庫の巨大な穴。

 

その穴の中、バビロニアの宝物庫から出ようとするネフィリムの姿。

 

心臓が破壊されようとも未だ健在のネフィリム。心臓を破壊され、その肉体は崩壊の一途を辿っているのは明らか。

 

そしてその身が崩壊すると共にその身に宿るエネルギーが昂り続けている。昂ったエネルギーは辺りへと放出されようとしていたが、ネフィリムは何をしようとしているのか分からないが、その身にそれを留め続けている。

 

だが、見るからにそれは危険なものだと知っている。フロンティアを起動させた莫大なエネルギー。そしてフロンティアを喰らい、動力炉として動かしていたフロンティアを吸収し、その中に混在していた第七波動(セブンス)の力と莫大なエネルギーを手にしたネフィリム。しかしその心臓が破壊された今、それを留め続ける事は不可能。

 

そのエネルギーを留め続けだとしてもいずれ限界を迎え、そのエネルギーは爆発に変わる。そしてその莫大なエネルギーはどんなものかも予想がつかない。

 

「クリス!あれを閉めろ!」

 

「ッ!早く閉めろ!雪音!」

 

ボロボロの身体に鞭を打ち、奏と翼が叫んだ。

 

「言われなくても…ッ!?」

 

クリスは二人に言われるまでもなく、直ぐに行動を起こそうとしていた。

 

だが、その行動はある事に気付き、止まってしまった。

 

奏と共に取り返し、機転を作り、自分達がやらねばならぬネフィリムの心臓を破壊する道筋を作ったソロモンの杖がクリスの手元になかったからだ。

 

なんとかそれを探すが、クリスから離れた位置に落下しており、落下した砂浜に突き刺さるソロモンの杖。

 

先程の落下の衝撃によってクリスの手元から離れ、離れた位置に落ちてしまったのだ。

 

「クソッ!」

 

それに気付いたクリスはそれを取りに行こうと立ちあがろうとする。

 

しかし、決戦兵装であるエクスドライブ。そして今までの戦いにて蓄積された疲労がクリスの足を動かそうとしない。

 

「ようやく終わらせられるんだ…動け!動けよ!」

 

クリスは叫びつつもなんとか動こうと必死に足掻く。だがそうしても疲労した身体は言う事を聞いてくれない。

 

「ようやく…ようやく終わったと思ったのに…」

 

「こんなの…こんなのって…」

 

切歌と調もようやく終えたと思ったはずの戦いが未だ継続しており、そして勝利の喜びも束の間にこんな事になっているのに何も出来ない自分達を歯痒く思い唇を噛む。

 

響も、そう思った。

 

だが、響はそんな時地面から伝わる僅かな振動を感知した。

 

その方向に目を向け、響の中の絶望は振り払われた。

 

「大丈夫…みんな…大丈夫だよ…」

 

独り言に思える言葉。だが、その言葉は全員の耳に届いていた。

 

そして装者全員が浜辺に刺さるソロモンの杖に向けて全力で駆ける少女の姿を目に映す。

 

「…そうだな…私達にはまだ…シンフォギアを纏わなくとも頼れる仲間がいる…」

 

「…ああ…そうだったな…」

 

翼がその姿を見てそう言い、奏も安心した様にそう言った。

 

「…今はそうは言ってられない…だから美味しいところを持ってけ…」

 

「全く本当にどんな奇跡よ…」

 

クリスもその姿に安堵し、マリアは自身のせいで辛い目にあったはずの人が無事な姿と、そしてこの戦いを終結に導こうとする人を見て安堵する。

 

「…お願いデス…この戦いを…」

 

「こんな戦いを終わらせて」

 

そして切歌も調もその人に託す。この戦いを終わらせてくれと。

 

「未来!」

 

そして響は叫んだ。力が出なくても腹の底から出した大きな声で。自身の陽だまりであり大切な親友の名を。

 

◇◇◇◇◇◇

 

潜水艦の一部を切り離し、潜水艦を軽量化して、なんとか下降用のパラシュートによってなんとか海岸の浜辺へと着地した。

 

だが、それと同時にこの付近に現れた穴。

 

それから飛び出した何かを見て未来は弦十郎達の静止を聞かず、潜水艦から飛び出した。

 

飛び出した先にはやはり未来の予想通り、七人の装者達。だがその姿はボロボロ。しかし、未来はそれよりも空の穴。その中で蠢く何かに気付き、絶句する。

 

そこに居たのは腹に大きな穴を開けているのにも関わらず蠢く怪物。潜水艦が下降して行く際に少しの間存在した強力な力を持つ怪物。

 

その怪物はその穴に向かい、動いていた。

 

そしてその怪物が持つ計り知れないエネルギー。

 

絶望。まさにそうとしか言い表せない。

 

だが、装者達があそこまで頑張った。あんなにボロボロになるまで。倒れる装者達はもうほとんど動けていない状況。それなのに装者の頑張りを無碍に出来るのか?

 

自分に何が出来る?力のない自分には何か出来ることはないのか?

 

未来は考えさせられた。しかし、その考えの答えを出す様に、未来の僅かに離れた所に突き刺さる何か。

 

見覚えのある何か。それはソロモンの杖。かつてフィーネが使い、弦十郎達が捕らえたウェルが使っていた。ノイズを呼び寄せる杖。

 

それを見て未来は駆け出す。

 

(みんなが頑張った…みんながようやく終わらせてくれた頑張りを無碍にさせない!)

 

その思いが未来をソロモンの杖へと駆け出させる。

 

(私だって何か出来る!私だって戦える!)

 

そしてその時自分の名を呼ぶ親友の声。

 

その声が未来の足に更に力を与える。

 

そしてソロモンの杖に辿り着いた未来は引き抜くと共に駆け出した助走を力に変えてソロモンの杖を空の穴に。

 

穴から出ようとする怪物が出る前に投擲しようとした。

 

「お願い閉じてぇ!」

 

そして投げられる瞬間、

 

「貴様達に私の計画(プラン)を終わらせられてなるものか!」

 

これで終わる。誰もがそう思った瞬間、未だ健在する諸悪の根源が姿を現す。

 

その声と共に亜空孔(ワームホール)の穴が出現し、中からある人物がそこから出てくると同時に未来に降り掛かろうとする魔の手。

 

アシモフだ。

 

ガンヴォルトと対峙していたはずのアシモフ。激しい戦闘を行なっていたのであろう。その姿はかつての無傷で、現れていたアシモフとは異なり、ボロボロの姿。だが、そのボロボロの姿が、ガンヴォルトの敗走という最悪の結末を助長させる。だが、今装者達、その他の者達が浮かぶ心配は目の前で危機に瀕する未来。

 

「未来!」

 

その姿を目視して叫んだのは響。

 

大切な親友がまた奪われるかもしれない恐怖が響へと、仲間が奪われるかもしれない恐怖が二課装者へと、終わったと思われた存在が現れた事の絶望がF.I.S.装者へと降り掛かろうとする。

 

未来も背後出現したアシモフに気を取られてしまう。

 

だが、

 

「未来!君はそのままソロモンの杖を!」

 

その瞬間に響く声。

 

その声が響くと共に、未来はアシモフの事を気にせず、ソロモンの杖を投擲した。

 

そして、それと同時に振るわれるアシモフの迸る雷撃の拳。

 

だがその声を聞いた未来は必ず自身を救ってくれると信じている。

 

そして振るわれる刹那にも満たない時間で何者かがアシモフと未来の間に降り立つと共に、振るわれた拳を受け止め、そのままアシモフへと向けて拳を握り、強力な雷撃を纏い、顔面へと振り抜かれた。

 

そして穴が消失して吹き飛ばされたアシモフ。吹き飛ばされた方向へと向けて再び雷撃が迸るとそのまま地面へと踵を振り下ろし、アシモフを地面へと叩きつけた。

 

その正体は誰もが知っている。ガンヴォルトだ。

 

アシモフが現れたせいで最悪の考えがよぎったが、そんな事をなかったと敗走していたのはアシモフの方であり、ガンヴォルトは依然として強力なオーラを纏い健在していた。

 

そして踵を振り下ろされた瞬間誰もが終わりと思っていた。

 

しかし、

 

「ああ…本当に憎たらしい…だが、これで終わりなどではない…」

 

ガンヴォルトがいる場所から離れて聞こえる声。

 

誰もがその方向へと視線を向けるとソロモンの杖が投擲された空に浮かぶバビロニアの宝物庫の中。

 

巨大な怪物であるネフィリムの腕にボロボロの姿で倒れたアシモフがいた。

 

「ッ!?アシモフ!」

 

仕留め損なったとガンヴォルトはアシモフの元へと一瞬で距離を詰めようとした。

 

だが、

 

「すぐに貴様達を地獄(デッドエンド)へと送ってやる…待っていろ…今度こそ貴様達は消去(デリート)だ…」

 

敗北しているにも関わらず、未だそう宣うアシモフ。

 

だがその瞬間にアシモフとネフィリムのいるバビロニアの宝物庫へとソロモンの杖がガンヴォルトよりも早く到達し、到達と同時にソロモンの杖が起動するとバビロニアの宝物庫の扉が一瞬にして閉まってしまった。

 

だが、閉まる直前に見えた光景。それはバビロニアの宝物庫の内部でネフィリムが限界を超えたのか臨界点を突破した事による光と共に齎したエネルギーの放出と共に。

 

そうしてガンヴォルトは何もない空中に浮かび、ただ宿敵の名を叫んだ。

 

「アシモフゥ!」

 

不穏な言葉を残し消えたアシモフ。

 

アシモフのこの世界からの逃亡。ある意味では勝ちと捉えられ、ある意味では負けと捉えられる結末。

 

アシモフと言う存在がこの世界からの姿を消した。ネフィリムが消えた。ウェルも倒れ、この戦いは終結した。こちらの勝利として。

 

だが、ガンヴォルトにとってそんな物は勝利でもなかった。

 

大切な人を取り戻す事が出来なかった。大切な人を奪った宿敵を殺す事が出来なかった。

 

ガンヴォルトは何一つ達する事が出来なかった。

 

勝利と言える結果と敗北と言える結果。

 

だが、その結果がもう出された以上、この戦いは終結してしまった。




短いですが不穏を残して最終決戦は終了致します。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。