戦姫絶唱シンフォギアAB   作:株式会社の平社員

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一期同様に真最終決戦を始めます。
後は今回が真最終決戦導入1、次回真最終決戦導入2、そして真最終決戦戦闘序盤、真最終決戦戦闘中盤、真最終決戦戦闘決着の五話で終わり、エピローグで本編終了予定です。
多分九月中に完結しますのでそれまでお付き合いいただければと思います。


134GVOLT

戦闘が終わり、再びナスターシャと再開したマリアは車椅子に乗るナスターシャと近寄り、抱きつく。

 

その後に続く様に切歌と調もマリアと同じ様にナスターシャへと抱きつく。

 

「良かった…マム…本当に良かった…」

 

「ええ…」

 

ナスターシャも嬉しそうに、だが何処となく悲しそうにそう言った。その二つの感情の中に潜む不安。

 

その理由はマリアにも切歌にも調にも理解出来ている。ネフィリムの心臓の破壊。それと共に行われたセレナの解放。その二つを成し遂げた。

 

三人の無事の帰還。ネフィリムに取り込まれ、アシモフに使われようとしていたセレナを解放することに成功した。

 

つまりセレナとの今生の別れとなったのだから。もう二度と会えない。マリアとは違い、ナスターシャはセレナの声すら聞くことなく終わったのだから仕方がなかった。だから解放されて嬉しいのだが、最後にこんな事になって悲しそうにしていた。

 

そして不安。この戦いにおいて敗走したアシモフの事だ。最後に不穏な言葉を残し崩壊していくネフィリムと共に消えたアシモフ。

 

それが理由だ。

 

あの状態でも執念によって生還したアシモフ。そしてバビロニアの宝物庫へと消えたアシモフ。未だ危機がある可能性がある事にナスターシャだけでなく他の人達も不安を覚えている。

 

この戦いが終わろうとも首謀者は未だ生きている可能がある。

 

ここでの戦いが終わろうとまた近くに想像を絶する戦いが始まるのではないかと、そしてその首謀者が生きている事、そしてこの戦いにおいて取り戻すべきであった電子の謡精(サイバーディーヴァ)、それを失った事がどれだけの不安要素を引き起こすか。

 

ナスターシャはそんな感情が混じり、何とも言えない不安を抱えながらも、僅かにガンヴォルトへと視線を移すのであった。

 

◇◇◇◇◇◇

 

魂と肉体の因縁の宿敵、アシモフとのフロンティアでの戦い。

 

その戦いは勝利と言える程の戦績を収めていた。

 

だが、勝利と言える戦績を収めようが、ボクは己に課した目的は何も達成されていなかった。

 

アシモフをこの手で殺す事。アシモフに奪われたシアンを取り戻す事。

 

アシモフと言う男の本心を理解し、殺す事でしか止められないからこそ求めた結果。何度も敗北して生き残り、心を折られ、あの世界のシアンと、装者達の言葉でものにしたチャンスをボクは全て掴み取る事は出来なかった。

 

(スキル)によって漸くアシモフを殺す程の致命傷を負わせ続けた。だが、その全てアシモフの執念と備えによりそれを防がれた。

 

アシモフの使う電影招雷(シャドウストライク)を今までの戦闘から自身の推測から完全に使いこなす事に成功した。そしてアシモフへと必殺のスパークカリバーを使い、アシモフの身体を貫いた。しかし、ネフィリムの細胞を取り込んで脅威的な傷の治癒力を得て防がれた。

 

そして装者達の歌の力、そしてシアンの思いが齎した蒼き雷霆(アームドブルー)の極地の先、未踏の領域へと踏み込んだ(スキル)、アンイクスプロードヴォルトでのヴォルティックチェーンの一撃。

 

だがそれも脅威的な治癒力とアシモフがガンヴォルトと無能力者を殲滅し、この世界ではなく、あの世界を自身の理想へと変える執念によって防ぎ切った。

 

そして今度こそ最後のフロンティアからの落下しながらの戦闘。そこでもアシモフを追い詰め、ライトニングスフィアで心肺停止まで追い込んだのにも関わらず、アシモフを殺し切る事が出来なかった。

 

漸く殺せたと思い込み、シアンを取り戻したと思ったらそれすらも偽装(ブラフ)で、シアンを取り戻す事は叶わなかった。

 

だからこそ、ボクは涙を流し、海岸でただ己の行動に悔いていた。

 

スパークカリバーで貫くのではなく、斬り刻めばアシモフを殺し、こんな事にはならなかったのかもしれない。

 

ヴォルティックチェーンでアシモフを絡め取り、アンイクスプロードヴォルトの齎した熱量を持って治癒すら追いつかぬ雷撃で殺せればこんな事にはならなかったかもしれない。

 

ライトニングスフィアで完全にアシモフの心配を停止させた時も、更に雷撃を、(スキル)を駆使してアシモフへと追い討ちをかけ続けれいればこんなことにはならなかったのかもしれない。

 

だが、それはもう思っても何の意味もない。どうすれば望む形で終われたのか考えた所でもう遅い。

 

たらればがどれだけ思い浮かべようがどうしようもない。

 

結果は既に出ている。

 

アシモフをこの手で殺し切る事が出来なかった。アシモフを逃した。バビロニアの宝物庫でネフィリムの崩壊と共に死んだとしても、シアンを奪われたまま。そしてシアンを自分が殺した事になる。シアンを封印された神獣鏡(シェンショウジン)のギアペンダントが奇跡的に無事だったとしてもシアンをあの場所に止まらせ続けることになる。

 

自身がアシモフを逃した事で。自身がアシモフを殺し切る事が出来なかったせいで。

 

この戦いは終結しようが、その事実がボクへと突きつけ続ける。

 

まるで呪いの様に。

 

だが、アシモフの存在。アシモフの言葉がボクにとっての希望となっている。

 

正直、そんな物にボクは縋りたくはない。あんな男の事をもう一度信じようとする事に嫌気が差す。だが、アシモフと言う男と幾度となく戦い、その執念をこの身が理解している。

 

まだ何かを隠している。そしてそれを実行する為に逃げた。

 

ならば必ず、アシモフはボクの前にまた現れる。敗北したまま逃げる様なアシモフではない。

 

だからボクは涙を拭う。

 

まだシアンは取り戻せる可能性があると。まだアシモフを殺せる機会が必ず来ると。

 

だから待つ。

 

「貴方はボクを殺す為にまた戻ってくる…ただ逃げる為にバビロニアの宝物庫へと向かったわけじゃないんだろう…貴方が戻ってくるかは分からない…だけど…ボクは貴方を今度こそ殺す…シアンを取り返す…アシモフ今度こそ貴方を…」

 

ボクはそう呟いた。

 

◇◇◇◇◇◇

 

海岸で涙を流し、その場から動かずにただ佇むガンヴォルト。

 

装者達、それに二課の主要メンバー達、そしてナスターシャ博士はガンヴォルトへと声を掛けようとするが未だ声を掛けれない。いや声を掛けれない。

 

どれだけの時間が経っても、今のガンヴォルトへと掛ける言葉見つからなかった。

 

ガンヴォルトにとってシアンという存在がどんなものか理解しているから声を掛けられなかった。

 

そしてそれ同様に、奏、翼、クリス、響、未来も同様に涙を流し、大切な仲間の喪失を受け入れる事が出来ていなかった。

 

装者達にとってのシアンとは、友達、同居人、恩人、そして大切な仲間。

 

助けたかったシアンはもうこの場にいない。助けられる可能性が限りなくゼロに近い場所にシアンは送られたからだ。

 

バビロニアの宝物庫。ソロモンの杖によって繋がるこの世界とは別のノイズが棲まう魔境。

 

だが、ソロモンの杖はそのバビロニアの宝物庫へと投げられた。だからこちらから開くことも向かう事も出来ない。

 

そこに逃走したアシモフと共に。

 

不穏な言葉を残し、シアンと共に消えたアシモフ。

 

だがあの場に消えたとしても崩壊しようとするネフィリムがいる。その莫大なエネルギーは留まる事が出来ず、その莫大なエネルギーは同質量の爆発を伴うだろう。

 

となればアシモフは死ぬ。だが、それはシアンも同様だ。魂だけの存在のシアン。魂だけならば無事であると思われる。だが、それは何かと一緒にあってこその可能性がある。神獣鏡(シェンショウジン)によって封印されていた為、ガンヴォルトと共にあった為。

 

そうでなくなった状態であればどうなるかなど誰にも分からない。

 

だから二課の装者、そして未来、ガンヴォルトはシアンとのこんな別れに涙する事しか出来ない。

 

だが、そんな時にガンヴォルトは腕を上げ、涙を拭う。

 

そして振り返ったガンヴォルト。ひとしきり泣いた為か少しだけだが、すっきりとした表情をしている。

 

そして、その目には未だ光を失っていない。こんな状況でもガンヴォルトは未だ何か希望があると思わせる目をしていた。

 

「…ガンヴォルト」

 

未だ二課装者達は悲しみに暮れている為に代わりに弦十郎がガンヴォルトの名を呼ぶ。

 

「もう大丈夫だよ…少しだけ楽になった…」

 

そう言ってガンヴォルトは弦十郎へと何かを手渡す。それはアシモフから奪ったギアペンダント。アシモフがガンヴォルトからシアンを奪われない様にシアンの入ったギアペンダントと偽装した神獣鏡(シェンショウジン)であった。

 

それがシアンの封印されているギアペンダントであれば良かった。だが、弦十郎は分かっている。そうじゃない事を。そうでなければガンヴォルトがここまでなるはずがないからだ。

 

「アシモフから奪ったギアペンダントだよ…」

 

「でもこれに…シアン君は…」

 

弦十郎はシアンの事を言う。だが、ガンヴォルトは首を振り、言う。

 

「…分かっている…これは押収品ってだけだよ…シアンはこの中にいない…でも…まだ僅かながらに希望がある…」

 

ガンヴォルトは弦十郎へと向けて言った。

 

「敗走してバビロニアの宝物庫へと消えたアシモフ…アシモフはまだ生きている」

 

「ッ!?…ネフィリムと共に消えたアシモフ…奴はまだ生きていると?だが、ネフィリムの宿していた莫大なエネルギー…あれが放出されれば幾らアシモフだろうと生きていられない…と思いたい…」

 

「アシモフが態々崩壊しゆくネフィリムの元に向かうなんて何かあるに違いない。何の考えもなしに向かう事をアシモフはしない。それにあんな言葉を残しておいて何も無いなんてあり得ない」

 

ガンヴォルトはそう言った。

 

弦十郎も聞いていたアシモフの消える前に残しているあの言葉。

 

『すぐに貴様達を地獄(デッドエンド)へと送ってやる…待っていろ…今度こそ貴様達は消去(デリート)だ…』

 

滅びゆくネフィリム共にいるのに普通はそんな言葉を残すだろうか?何の考えもなく、崩壊してゆくネフィリムの元へ向かうだろうか?

 

アシモフと言う男と戦いを経験している弦十郎もそれには引っ掛かっていた。

 

アシモフは無駄な事をしない。それなのに態々崩壊しゆくネフィリムの元へ向かって逃げた。そしてそれが何を意味するのか分からない。だが、あの不穏な言葉を言うとなれば何かあると思われる。

 

「アシモフは再びお前を殺す為に現れる…そうなるのか?」

 

「そうなるよ…ごめん…ボクがアシモフを確実に殺せればそんな事もなかった…」

 

ガンヴォルトは申し訳なさそうにする。再び起こると思われる戦いを予見するガンヴォルト。

 

フロンティアは無くなり、一つの危機が去った。だが、アシモフと言う存在が死なない限り、危機は終わらない。

 

月の落下も世界へと共有して対策せねばならない今、アシモフと言ういつ戻るか分からない脅威にも対応しなければならない現状に頭を悩ませる。

 

「…でも…次アシモフが現れれば確実にボクが殺す…今度こそシアンを取り戻す…ボクが今救えなかったせいでもうみんなを悲しませたくないから」

 

申し訳なさそうに弦十郎の背後で泣く装者達を見てガンヴォルトは更に申し訳なさそうにそう言った。

 

だが、その瞬間、ガンヴォルトの表情が変わり駆け出した。

 

驚き、焦り、そして僅かながらに混じる歓喜。

 

何が起こった?そう思った弦十郎はガンヴォルトの駆け出した方へ向き直る。

 

そこには信じられない光景が目に映る。

 

それは何度も見た事がある亜空孔(ワームホール)の穴。それが二つ開いていた。

 

一つは二課装者達の背後、そしてもう一つはナスターシャ含むF.I.S.装者達の元に。

 

そして開いた穴からは青黒い巨大な手が伸ばされており、装者達を掴もうと大きく手を広げていた。

 

「煌くは雷纏いし聖剣、蒼雷の暴虐よ、敵を貫け!迸れ!蒼き雷霆よ(アームドブルー)!スパークカリバー!」

 

素早く言葉を紡いだガンヴォルト。出現した巨大な雷剣を出現させるとその現れた雷剣で二つの青黒い手を一刀両断した。

 

そして消えゆく腕。

 

何が起きたか分からない装者達は唖然としていたが、斬り落とされた腕を見てすぐさま聖詠を歌い、シンフォギアを纏おうとした。

 

だが、その聖詠を歌う前に今度は鎖の様な物が穴から現れ、装者達を絡もうとした。

 

「ッ!逃げろ!」

 

ガンヴォルトはそう叫んで二課の装者達を押し退け、その鎖を斬り伏せ続けたが、その数が多く、ガンヴォルトはその鎖の多さに対応出来ず、そのまま穴へと引き摺り込まれる。

 

「ガンヴォルト!」

 

「ガンヴォルトさん!」

 

そしてもう一つの穴から伸びる鎖にガンヴォルトが対応出来なくなった中、マリアがナスターシャを、切歌と調を押し退けてその絡み付く鎖から自身を犠牲に逃した。

 

「マリア!」

 

そしてガンヴォルト同様に穴へと消えていったマリア。

 

何処かへと消えたと二人の名が海岸に木霊する。

 

終わった筈の戦い。だが、残された不穏の言葉が突拍子もなく現実へと襲い掛かってきた。

 

◇◇◇◇◇◇

 

鎖によって亜空孔(ワームホール)の穴へと吸い込まれたボクはその亜空孔(ワームホール)に繋がる場所を見てやはりと言う思いを抱く。

 

だが、それでも抱いただけで、ボク自身はこのタイミングで来られた事に焦りに満たされていた。

 

それはボク同様に鎖に絡まれたマリア。ボクが全てを斬り払えなかったせいでこの場に連れてこられてしまった。

 

ボクは未だ出現しているスパークカリバーを振り、自身の身体を絡めとる鎖を断ち斬り、近くにいるマリアの鎖を断ち斬って鎖から解放すると共にボクはマリアを抱えて落下する。

 

「ガンヴォルト!これは一体!?」

 

鎖から解放されたマリアはボクに向けてそう言った。

 

「ごめん…ボクが残してしまったせいで起きた物だ…アシモフ…逃走して生き残ったアシモフが引き起こした」

 

「ッ!?」

 

マリアはその言葉に驚き、そして辺りの景色が目に入り、ここが何処であるかも理解する。

 

バビロニアの宝物庫。

 

今ボクとマリアがいるのはその場所であった。

 

だがそれはマリアが戦っていた時、そしてボクが最後、ネフィリムとアシモフを逃した時と大きく景観が変わっている。

 

とんでもない爆発が起きた様に、辺りには何も存在していない。そしている筈のノイズも。唯一ある落下した先にある唯一無事である大きな島の様な場所。そこだけがまるで何事もなかった様に存在している。

 

そこに降り立つボクとマリア。

 

だが、その先にいる人物を見てボクはやはりと声を漏らす。

 

「生きていたか…アシモフ!」

 

「ッ…この男は…どこまでしぶといの…」

 

「しぶといか。ああしぶといとも…私には目的がある…それを為せずにやられてなるものが…それに…貴様なぞに殺されてなるものか!紛い者ぉ!」

 

そこに居たのはやはりアシモフ。先程同様のボロボロの姿だが、異様な気配を纏うアシモフがそう叫んだ。

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