戦姫絶唱シンフォギアAB   作:株式会社の平社員

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残りあと二話。
多分今回よりも文字数は増えると思います。
一文字万越えまで書くつもりなかったけど、あと二話で終わらせる為なので仕方ないんです…


137GVOLT

アシモフとネフィリムに必死に食らい付き、現状を変えようとするボク。

 

だが、その奮闘など虚しいもので一切アシモフに、ネフィリムにダメージを与えられない。

 

逆にボクはアシモフとネフィリムの攻撃を耐え忍ぶばかり。あまりの強力な一撃、そして乱打される今までよりもかなり強力な七宝剣の第七波動(セブンス)達。

 

劣勢とも呼べない一方的な展開が続いている。

 

何とか致命傷を避けてはいるものの、生体電流の活性化では到底追いつく事が出来ない程の傷が夥しい量ボクの身体に刻まれている。

 

だが、それでもボクは一方的な展開の中で、ほんの僅かに生まれるかもしれない勝機を信じ、立ち回り続ける。

 

だが、依然として猛攻は止む気配が無い。寧ろ更に進化する様に威力、速度が増していく。

 

アシモフの言っていた真なる雷霆の力の出力確認。長ければ長い程より強力なものへと変化し続ける。

 

そしてネフィリムも。アシモフの言う能力者達の頂点(ゼニス)としての象徴となるシアンとセレナを取り込んだネフィリム。取り込んだ事により、更に強力な力を扱い、アシモフ同様にその頂点とも言える様な能力者を扱い出す。

 

亜空孔(ワームホール)も、残光(ライトスピード)も、爆炎(エクスプロージョン)も、翅蟲(ザ・フライ)も。

 

戦闘してる際にはまだ使われていないものの亜空孔(ワームホール)は初めにボクやマリアを連れ込んだ様に、次元すら超える事の出来る力まで昇華している。

 

そしてそれが意味するものは既に理解出来ている。

 

アシモフのあの世界へと帰る手段。それが強化された亜空孔(ワームホール)の力を利用したものだ。

 

残光(ライトスピード)

 

ビットなどを使わずに光を作り、集めて凝縮させた熱線へと昇華させた力。その威力を間近に受け、本来の能力者のスペシャルスキルなど比較にならない力を有していた。強化されていなければその熱量に跡形もなく消されるほどの威力であった。

 

爆炎(エクスプロージョン)

 

こちらも本来の能力者をも超える火球を生み出す事が出来、装者達があの世界で対峙した際にも見た火球よりもより大きさは同じだとしても内包している熱量は更に強力なものとなっている。

 

翅蟲(ザ・フライ)

 

ボクが今日せずとも展開する雷撃鱗ですぐに炭化する筈の黒い粒子は雷撃鱗を耐え、今出せるボクの最大限の雷撃鱗ではほぼ目の前まで車で消えない程の耐久性を備えている。

 

そして生命輪廻(アンリミテッドアムニス)

 

付随する石化の光線もその効果範囲はまし、そして本来の能力者同様の力を今のアシモフは持っている。セレナの蘇生、今はそれだけしか見せていないが、ノイズに生命を与え、復活させる力。

 

その全てをアシモフは本来の能力者よりもネフィリムを通して使いこなしている。

 

限界すら未だ見せずに。

 

力の差は余りにも大きい。たった一つの第七波動(セブンス)蒼き雷霆(アームドブルー)しか持たず、アンイクスプロードヴォルトにも至れないボクが勝てる要素など限りなくゼロに近いだろう。

 

例え、アンイクスプロードヴォルトに至れたとしても、アシモフの蒼き雷霆(アームドブルー)の到達点である真なる雷霆に、ボクの到達した力も何処まで通用するかも分からない。

 

だが、限りなくゼロに近い、通用するかも分からない。つまりは勝機は低くても掴める可能性があるという事。

 

だから、その限りなく低い可能性を手繰り寄せるためにボクは抗う。

 

アシモフを殺す為に、シアンを、セレナを救う為に。

 

「抗い続けても結果は変わらない!貴様の様な紛い者にもう勝機などありはしないのだからな!」

 

「黙れ!抗い、生きているならまだ可能性は残っている!アシモフをボクが殺せる機会はある!勝機がないなんて貴方が決める事じゃない!」

 

「違うな!今の貴様が生きているのは本来の真なる雷霆の力を調整(アジャスト)している為に過ぎないのだよ!そこまで言うのであれば、今すぐに本来の真なる雷霆の力を存分に使い!ネフィリムの持つ能力者としての頂点(ゼニス)の力を使い、貴様を終焉(デッドエンド)へ誘ってやろう!」

 

その言葉と共に、アシモフの雷撃が、ネフィリムの扱う第七波動(セブンス)達が桁違いのエネルギーを持ち始める。

 

ここからがアシモフとネフィリムの全力。今持てる力を最大限に使用してボクを殺しに来る。

 

だが、何度も言う様にボクは諦めない。

 

抗って抗って、僅かな勝機を掴み取り、アシモフを殺す。

 

だからこそ、ボクは限界を越える為にオーラを更に溢れ出させる。アンイクスプロードヴォルトに届かないが、今出せる最大限の力を振り絞って。

 

だが、そんな時、アシモフは動きを止めた。

 

「何故あれが未だ現存している?」

 

ボクに視線を向けず、そう言った。

 

何が現存している?

 

ボクはアシモフの視線の先へと目を向けると、それは雷撃鱗に守られるマリアが、地面から何かを掴み、引き抜いていた。

 

マリアが引き抜いたもの。それはソロモンの杖。

 

何故あれがまだ残っているんだ?ボクもそれは疑問に思ったが、アシモフの気が一瞬でもそれた今が反撃のチャンスとばかりに、空中を駆けてアシモフに殴りかかった。

 

だが、アシモフは先程同様にボクの拳を避ける事もせず、それをまともに喰らう。しかし、殴ってもアシモフはなんともない様に、マリアから視線を逸らしてボクを見る。

 

「あれが何故まだ現存しているかは知らないが、ノイズすらもういないこの世界とあの世界を繋ぐだけの完全聖遺物。ならば、私の障害となり得ない。だが、その気の緩みが今までだ。貴様をあの世界で見過ごしたせいでこんな事になった。この世界でも貴様を完全に殺し切れなかったせいでこんな事になってしまった。だからこそ、もう見過ごしはしない。何か起こりうる可能性がある物ならばここで壊す。ここで殺す」

 

そう言うとアシモフはボクの腕を掴み、拳を殴られた箇所から離すとボクの腹に蹴りを叩き込む。

 

ボクはダートリーダーを持つ腕でその蹴りをガードするが、ガードしてもあまりの膂力にボクは吹き飛ばされた。

 

そしてアシモフはネフィリムに命令を下し、マリアを殺す為に、ソロモンの杖を破壊する為に、火球を作り上げ、かなりの速度でマリアへと放つ。

 

ボクはそれを防ぐ為に、空中で吹き飛ばされながらも体勢を整え、火球をどうにかしようと、マリアへと向かう火球へと空中を駆け出す。

 

「ッ!?」

 

「行かせるとでも?」

 

だが、火球の射線へと向かうボクの前には既にアシモフが立ち塞がっていた。だが、時間などない為に、ボクはアシモフを無視してマリアの元へと向かう。

 

しかし、それをアシモフが許す訳もなく、ボクの前に一瞬で移動すると立ち塞がって道を阻む。

 

「邪魔をするな!」

 

「邪魔をするとも。どんな些細な可能性をもう起こしなどしない。ソロモンの杖もろとも、マリア(レディ)には消えてもらう」

 

そう言ってアシモフはボクへと攻撃を開始して、マリアの元へと向かわせない。

 

「マリア!逃げろ!」

 

あれ程の火球、速度、そして遮蔽物のない陸地である場所。そんな事を叫んでも無駄な事を理解している。だが、ボクはそう叫ばずにはいられない。

 

逃げ場のない陸地にいるマリア。その火球がどんどんとマリアへと向けて近づいていく。

 

「ガンヴォルト!絶対!絶対生き残りなさい!貴方が死ねば全てが終わる!そんな事あってはならない!だから耐えなさい!私の事は気にしないで!」

 

マリアがボクに向けてそう叫んだ。

 

逃げる事が出来ないからそう叫んだのか?死を受け入れたからそう叫んだのか?そうしてはならない。そんな事になって仕舞えば待つべきものは悲しみのみ。それに、マリアの帰りを待つ人達がいる。

 

「駄目だ!君が居なくなればナスターシャ博士は何て思うか知っているのか!?切歌も!調も!セレナも!君が居なくなればみんな悲しむだろう!生きるのを諦めるな!」

 

だからマリアへとボクはアシモフと対峙しながら叫ぶ。

 

「安心するといい。どうせ貴様達全員私が殺す。悲しむ者など存在などいない様ら等しい死をくれてやる。故にそんな感情など持つ必要はない」

 

そんな中ボクとマリアのやり取りにアシモフが口を挟む。

 

そして火球がマリアの眼前まで迫り、マリアの姿が見えなくなる。

 

「マリアァ!」

 

そしてボクの叫びも虚しく、火球が陸地と衝突して大きな爆発を起こした。巻き上がる瓦礫と黒煙。

 

そこから導き出される答えは最悪なもの。

 

そして未だ止まらないアシモフの攻撃を喰らいながらも耐えるボクにその答えを合わせるかの様に黒煙が晴れ、景観が露わになる。

 

そこにあった光景はは導き出した答えそのもの。

 

破壊された陸地。殆どが消失しており、火球の威力の凄さを物語っている。

 

そしてその場にいたと思われる守ると誓ったマリアの存在までもその火球の熱量により消え去っていた。

 

「あ…あぁ…」

 

その光景を見たボクは戦いの最中にもかかわらず放心してしまう。

 

そしてその隙をアシモフが見落とすはずもなく、今までの鬱憤を晴らすかの様に確実に息を止める力でボクへと連撃を叩き込んだ。

 

「さっきも言っただろう。悲しみなどせずとも貴様もすぐに殺してやるのだからな」

 

そしてアシモフは残った陸地へとボクを殴り飛ばした。

 

「ガァ!」

 

そして地面へと叩きつけられたボク。

 

マリアを救えなかった。マリアを殺されてしまった。守ると誓ったのに。マリアを必ずあの世界に帰すと誓ったのに。

 

どうして…どうしてボクは救えない。

 

シアンを本当の意味で救えなかった…マリアを救えなかった。深い業と悲しみばかりを募らせ続ける。

 

全て、ボクが為し得なかったからこんな悲惨な結末を迎える結果となった。

 

本当にボクは何の為に戦っていたんだ…。

 

守る為だろう…救う為だろう…こんな悲惨な結末を変える為だろう。だが、それを達成する事はもう無かった。

 

全て自分が悪いのだ。

 

元凶であるアシモフをあの時殺せなかった事が。あの時に終わらせられなかった事が。そのお陰で好転したかもしれない状況。でもそれはもう何の意味もないりもう存在しない。マリアの死でそれがなくなってしまった。

 

もうどうにでもなれと自暴自棄へと陥りそうになる。

 

だが、それすらもボクは出来なかった。自分自身の根底にある信念が、マリアの言葉が、それをさせなかった。

 

誰かを救いたいと言う思いが、そしてマリアが残した言葉が、ボクを依然として戦わせようとする。

 

マリアが居なくなり、一つの絶望に見舞われた。だが、それが依然として続くのだ。次はあの世界へ。

 

そしてマリアの言葉が、ボクを突き動かそうとする。

 

生き残れと残したマリア。故に死ぬ事は許されないと。あの世界を何としてでも救えと。

 

ボクは涙を流しながら、立ち上がった。

 

マリアを殺したアシモフを殺す為に。いいや、殺したのはアシモフだとしてもマリアを殺したのはボクの様なものだ。ボクがアシモフを殺せなかったから、マリアを失った。責任転嫁でもしなければ気が狂いそうな程の狂気が襲いくる中で、ボクはただ戦いに身を置くしか無かった。

 

怒りに身を任せるのはボクの心情は駄目だと理解している。

 

だがそれでも、そうでもしなければ戦えないと。無理矢理自身の闘志を奮い立たせ、滞空するとアシモフへとボクは駆け出した。

 

「アシモフ!ボクは貴方を絶対に許さない!マリアを!あの子を待つ人達を悲しませた貴方をボクは絶対に殺す!」

 

そして再び腕を交差して互いの雷撃がぶつかり合う。

 

「ナンセンスな言葉だな!怒りのままに無意味に駆け出すとは貴様如きに許されないと言われようがどうでもいい!そしてもうここで終わりにしようか!紛い者!頂点(ゼニス)の力と真なる雷霆の真の力で貴様を!私が貴様に見せる最後の餞別(サプライズ)だ!」

 

そう叫んだアシモフが、更なる雷撃を放出する。ボクはその雷撃に押されて再びアシモフと距離を離される。そしてネフィリムもそれに呼応する様に、光初め、取り込まれているセレナが、その近くに浮遊するシアンが苦しそうにし始める。

 

そして聞こえてくるシアン、そしてセレナが歌う歌。かつてボクがシアンを皇神(スメラギ)から一度救い出した際に聞いた自由を奪われた悲しさを思われる歌。

 

そしてそれと同時にネフィリムの周りから七つの光が立ち上る。そしてその光が収まると共にそこに七つの人影。

 

「ッ!?」

 

それが何なのかは姿を見て分かる。そしてどうして現れたかも。

 

生命輪廻(アンリミテッドアムニス)で取り込んだ七宝剣達を蘇らせたのか…」

 

そう。そこに現れた七つの人影。それは変身(アームドフェノメノン)をした七宝剣。

 

怠惰なる亜空孔(スロースホーラー)メラク。

 

傲慢なる残光(シルエットプライド)イオタ。

 

怒れる爆炎(バーントラース)デイトナ。

 

貪り尽くす翅蟲(グラトニーフライ)ストラトス。

 

妬ましき生命輪廻(アンリミテッドエンヴィー)エリーゼ1、エリーゼ2、エリーゼ3。

 

かつてあの世界でボクと能力者の殲滅を願う無能力者の少年、アキュラに屠られた筈の者達であった。

 

「ああ、復活させた七宝剣。最も、貴様を確実に殺せる力を持つ磁界拳(マグネティックアーツ)の能力者、そして統括し、この世界にも何故現れたかは知らないが、蒼き雷霆(アームドブルー)とは異なるが強力な第七波動(セブンス)念動力(サイコキネシス)を持つ能力者、紫電。そして能力は不明ではあるが、蒼き雷霆(アームドブルー)念動力(サイコキネシス)同様に強力な力を持つ第七波動(セブンス)夢幻鏡(ミラー)をも作り出す事が出来れば良かったのだが、どうやら生命輪廻(アンリミテッドアムニス)の効力は元となるものがなければこの様に蘇生は出来ないらしい。こんな事ならば、あの弾丸も一つは残しておくべきであった。だが無いものに強請っても仕方ない。だが、それがなくとも貴様など殺すなど容易い。不死の兵隊(イモータルソルジャー)。幾ら最強の蒼き雷霆(アームドブルー)を持とうとも、更なる力を手にしようとも貴様がいくら抵抗しても屠れぬ最強の傀儡。意識は電子の謡精(サイバーディーヴァ)、そして蒼き雷霆(アームドブルー)によって意のままとなったこの者達と、私とネフィリムで!貴様に本当の終焉(デッドエンド)を齎そう!」

 

そしてその号令と共に動き始めた七つの影。

 

「絶対にそんな事になってなるものか!貴方が何度も蘇生をさせるのならばボクもまた七宝剣達を何度でも元いた場所へと戻し!ネフィリムを倒し!アシモフ!貴方を殺してシアンとセレナを取り戻す!」

 

「貴様の妄言は聞くに耐えんな!出来ない事を宣うなよ!紛い者!」

 

そして襲い来る七宝剣達。

 

だが、その力はかつての比にならない。ネフィリムが扱っていた力を完全にモノにした意志なき傀儡。

 

ボクはその全てを叩き伏せる為に七宝剣達の使う第七波動(セブンス)蒼き雷霆(アームドブルー)をぶつけ合った。

 

◇◇◇◇◇◇

 

ガンヴォルトとマリア。二人の救出をする為に案を探し続けるが何も出てこない。

 

隔絶された異界へと向かう方法など今の科学の力ではどうにもならないからだ。

 

ガンヴォルトとマリアがどうなっているかなども分からない。助け出す方法も、救いに行く方法も。

 

だが、それでも諦めるなどあり得ない。

 

ガンヴォルトの予想であれば今もまだガンヴォルトは戦っている。バビロニアの宝物庫という場所で、今も生きているアシモフと。

 

ガンヴォルトならば勝つ。そう信じてはいるが、異界となると何が起こるかなど分からない。だからこそ、何としてでもガンヴォルトとマリア。二人をどうにかする方法を模索し続ける。

 

そんな時間が長く続いた気がする。実際はそんな時間は経ってはいないが、それ程の心労が今の二課の内部に満ちている為に長く感じるのだ。

 

その時、

 

「ッ!?」

 

鳴り響いたアラート。

 

それはノイズが発生する際に響くアラート。しかもこの近くの林の中。そして地面をも揺らぐ爆発。

 

「こんな忙しい時に!」

 

弦十郎は出現したノイズと思われる反応に苛立ちを募らせる。

 

「ッ!?おかしいです!ノイズの反応パターンが検知されません!」

 

あおいがそう叫んだ。そして続くように朔也が叫ぶ。

 

「ッ!?このパターンは!?ネフィリムから発せられた第七波動(セブンス)爆炎(エクスプロージョン)です!」

 

「ッ!?」

 

最悪のパターンが想定されるその言葉。

 

その瞬間に本部が凍り付くのが分かる。

 

それが知らせる一つの可能性。

 

ガンヴォルトが敗北し、マリアも敗北、そして再びアシモフがこの世界へと踏み入れたと。

 

訪れる絶望。

 

ガンヴォルトの死、そしてマリアの死に誰もが絶望する。だが、それでも今悲しむ暇などありはしない。

 

アシモフと言う災厄を倒さねば世界が終わる。ガンヴォルトが守ろうとする世界が終焉を意味する。

 

だがら悲しむ事よりも目の前の災厄を倒さねばならない。そうなれば悲しむ事すら出来ないのだから。

 

「アシモフ!奴をこの場で我々で屠る!」

 

弦十郎はそう叫ぶ。

 

だがそんな中、一つ気掛かりがあるのか朔也が叫んだ。

 

「待ってください、司令!これをアシモフと断定するのは早急過ぎます!」

 

「どういう事だ!?」

 

朔也が気掛かりである事を話し始めた。

 

「アシモフには亜空孔(ワームホール)、その力があります。次元すら超え、ガンヴォルトとマリアさんを連れて行った亜空孔(ワームホール)。なのに観測されたのはノイズの出現させる為に発生する形成パターンのみ。そして爆炎(エクスプロージョン)の反応。何故亜空孔(ワームホール)があるのに態々ノイズが出現する方法で出て来たのか?何故出て来た瞬間に現れたのは爆炎(エクスプロージョン)なのか?放つのであれば正直想像したくはないですが、アシモフならば、この世界を破壊しようとするアシモフなら犠牲が多い場所にすると思われます。なのに近くの林の中。これはアシモフの意図とは別のものではないと考えられます。そしてあれ以降の反応はない」

 

朔也の気掛かり、それは何故亜空孔(ワームホール)ではなく、ノイズが出現する方法、つまり、ソロモンの杖で出て来たのか?そしてそれから出て来たのが何故爆炎(エクスプロージョン)なのか?

 

朔也が気掛かりに思ったのがそれであった。

 

アシモフの事だ。何か意図があるに違いないと思うが、とも考える。だが、それならば最も反応があってもいい筈。

 

だが、それ以降何の反応もない。

 

ならば何なのか?

 

そしてその答えが通信機越しに出された。ガンヴォルトの通信機。

 

『…聞こ…る!誰…!誰か…答…て!』

 

その声はガンヴォルトと共に消えたマリアであった。だが、通信機に不調があるのだろう。マリアの声は途切れ途切れであった。

 

「マリア!」

 

切歌と調が先程まで泣いていたのにその声を聞いて悲しさから安堵の涙へと変わる。

 

そしてその声にいち早くナスターシャが答えた。

 

「マリア!?本当にマリアなのですか!?」

 

『マ…!?み…ないる…!?お願い!ガ…ヴォル…を!…ン…ルトを助ける為に協力して!』

 

「何があったか詳しく教えてくれ!」

 

「マリア!ガンヴォルトは無事なのか!?」

 

「あいつは!あいつは大丈夫なのかよ!?」

 

「マリアさん!ガンヴォルトさんを助ける為にってどういう事ですか!?」

 

「ガンヴォルトさんはどうなっているんですか!?」

 

奏、翼、クリス、響、未来も矢継ぎ早にマリアへとそう聞く。だが、通信が不安定なせいでうまく聞き取れない。

 

だが、戦闘している訳でもなく、ガンヴォルトの通信機が動いていない。つまりはマリア一人という事だろう。

 

ならば、現状把握をする為にも弦十郎は慎次へとマリアを連れてくる様に指示をする。

 

慎次は頷き、すぐ様にマリアの救出へと向かう。

 

そして暫くして慎次が、少し煤けてしまってはいるが、無事なマリアとボロボロになったソロモンの杖を携え、連れて帰って来た。

 

「マリア!」

 

その姿を見て一番に反応したのが、切歌と調であった。

 

マリアが無事な事に安堵の涙を流し、マリアへと抱きついた。

 

「切歌、調」

 

マリアも二人に無事であった事を伝えて、頭を撫でる。だが、状況が状況故にマリアはすぐさまナスターシャ、そして弦十郎の方に振り返り言った。

 

「今は時間がない!ガンヴォルトを!あの人を助ける為に協力して!」

 

「それをこっちも聞きたかったところだ。ガンヴォルトはどうなっている?アシモフは?」

 

「…アシモフは生きている…最悪の力と最低な事をしでかして」

 

そしてマリアが語った現状。

 

アシモフの生存。そしてより強力な存在、蒼き雷霆(アームドブルー)を超えた力、真なる雷霆、アシモフが生み出した能力者としての頂点(ゼニス)という力、再び顕現したネフィリム。そしてそれに取り込まれる形で融合したセレナとシアン。

 

圧倒的な力の前にガンヴォルトは苦戦を強いられている事。

 

「私は助けたかった…協力したかった…でも…それすらも私には出来なかった…今もこうしてセレナに…セレナの声に導かれて、これで…ソロモンの杖でなんとかこの世界に戻ってきた…だけど…ガンヴォルトは今も戦っている…ボロボロになってまで…この世界を…セレナを…電子の謡精(サイバーディーヴァ)を救う為に…でも…今のアシモフは強すぎる!今までよりも強力な力を!第七波動(セブンス)をアシモフは使える様になっている!あんな化け物を一人でどうにか出来るものじゃない…出来たとしても…ガンヴォルトは無事じゃ済まない…そんなの嫌だ…ガンヴォルトは…こんな私を…マムを…切歌を…調を救ってくれた…そんな人がもうこれ以上ボロボロになる姿を見たくない!そんな事させたくない!」

 

マリアは一呼吸置いて言った。

 

「だから彼を!ガンヴォルトを助けて!セレナを救って!」

 

マリアはそう言った。涙を流しはっきりと。

 

勿論それを聞いた者達の答えなど決まっていたり

 

「…そんな事言われなくてもやってやるよ…私達はあいつに救われている…誰だって同じ気持ちだ…あいつの助けになれるなら…シアンを救えるのならそれにあんたの大切な人をあんな悲劇な救いじゃなくて本当の意味で救えるのなら協力するに決まってるだろ!」

 

奏がそう言った。

 

「当たり前だ!ガンヴォルトを助けられるのなら!幾度となく救って貰った!助けられた!ならば今度は私達がガンヴォルトの力になる!」

 

翼がそう言った。

 

「あいつには借りがある。恩がある。だからそんな状況になっているのを知らされて何もしないなんて事はあるかよ!」

 

クリスもそう言った。

 

「協力を申し出されなくても、ガンヴォルトさんに、マリアさんの大切なセレナちゃん、シアンちゃん…奏さんのいう通り、本当の意味で救えるのなら断る訳ありません!」

 

響もそう言った。

 

「マリアにそう言われたら私達の答えは決まってるデス!私達だってセレナを救いたい…それにガンヴォルトに助けられているデス!なら今度は私達がそれに協力するのは当然デス!」

 

切歌が涙を拭いながら言った。

 

「うん!マリア!今度こそ、本当の意味でセレナを救おう!ガンヴォルトを今度は私達が助けよう!」

 

調も涙を拭いそう言った。

 

装者達は既にガンヴォルトを救う覚悟を持っていた。

 

そうして全員がガンヴォルトを、そしてセレナを、シアンを救う為に宣誓する。

 

その言葉にありがとうというとマリアがソロモンの杖で再びバビロニアの宝物庫を開こうとする。

 

だが、その行動にナスターシャが待ったをかけた。

 

「早く行きたいのは分かりますがまだ待ちなさい!ガンヴォルトを救うのなら早い方が助かる可能性は高くなります。でもネフィリムと融合したセレナを、電子の謡精(サイバーディーヴァ)をどうやって切り離すか手段はあるのですか?完全聖遺物と融合。それがどんなものか私達には事例が少なく分からない。切り離されたとして、セレナに何かある可能性がある。もしかしたら無いのかもしれない。でもあるという可能性が捨てきれなければ、それが何を引き起こすかも分からない」

 

ナスターシャがそう言った。

 

聖遺物との融合。

 

融合症例として前の響の状態と同様。だが、マリアの話からするとセレナはそれ以上の危険を孕んだ状態になっているとなる。

 

欠片で人では無い何かに侵食する程の力を持った聖遺物。それが完全聖遺物であれば何を引き起こすかも分からない。

 

「でも!それじゃあどうすればいいの!それも大切だけど、その方法を探す間にもガンヴォルトはれセレナはどうなるか分からない!」

 

ナスターシャにマリアはそう叫んだ。

 

一刻も争っているのだ。だからこそ早く行かねばならない。だが、仮にナスターシャの言う様に装者達がガンヴォルトの救援に行き、セレナを無事に救い出したとしても、セレナに残った完全聖遺物、ネフィリムが何かを引き起こす可能性がある。それはどんなものかわからないが、セレナを危険に晒してしまうのは想像出来る。

 

どうすればいいか分からない現状。

 

だが、迷っていても時間は進み続ける。ガンヴォルトとアシモフはバビロニアの宝物庫で互いを殺す為に戦い続ける。そしてその時間が長くなればなるほど危険な状態な事に変わりはない。

 

どうすればいいか考える中、弦十郎はある言葉を思い出す。

 

敵であり、目下殺さねば世界を壊しかねない災厄、アシモフ。

 

それはアシモフと弦十郎が二度目の戦闘の際に聞いた言葉。

 

『鏡とは古来から術式や呪いを退け(パージ)させる

力があると伝えられている。そしてその力が奴から電子の謡精(サイバーディーヴァ)を引き剥がすのに一役買ったと言うところだ』

 

弦十郎が持っているものはガンヴォルトが消える前に渡された神獣鏡(シェンショウジン)のギアペンダント。

 

その力は未来が響を救う事に貢献している。

 

だが、適合者のいない神獣鏡(シェンショウジン)をどう使う。いや、適合者はいる。LiNKERという薬物を投与すれば、その力を使うことを可能な者が。

 

未来。力がないながらも奮闘した少女。

 

だが、弦十郎は躊躇った。未来に危険な目に合わせてしまっていいのかと。

 

だが、それがセレナとシアン。二人を確実に救える方法。しかし、そうなれば未来はどうなるか分からない。

 

同じくLiNKERを投与を前提した装者、奏、マリア、切歌、調。それに耐えうる訓練をしてようやく物にした者達。

 

それを未だ一度しか投与しておらず、多大な負荷を経験している未来にとってどれだけ危険か理解している。

 

それを推すのはいかがなものか?

 

弦十郎は答えを出せずにいた。

 

だが、ほんの少しだけ弦十郎の視線に気付き、何か弦十郎が策を思いついたがそれを言い出せない事に未来が気付き、弦十郎に言う。

 

「何か方法が見つかったんですか?」

 

弦十郎は未来にそう聞かれ、全員の視線が弦十郎に向けられる。

 

「…賭けになる…セレナ君とシアン君…二人を無事に救えるかもしれない…だが、かなりの危険を伴う…未来君」

 

弦十郎は見つけ出した答えを全員に、そしてそれを決行するとなれば未来が鍵を握ると未来を見てそう言った。

 

「ガンヴォルトがアシモフからシアン君を封じていない奪った神獣鏡(シェンショウジン)。それを使う」

 

「ッ!?神獣鏡(シェンショウジン)…確かにその力を使えば…」

 

「ええ、使えばセレナ君、そしてシアン君を解放させる事が出来、私達が理想とする勝利に近い物を作れます…ですが…」

 

弦十郎は一度言葉を切ると危険な部分を話す。

 

「ですが…それは未来君に途轍もない重役を、そして危険を背負わせてしまう事になる…神獣鏡(シェンショウジン)を本来の力を使い、セレナ君とシアン君をネフィリムから引き離す。だが、その力は未来君がシンフォギアを纏わなければならず、下手をすれば最悪の結果が付き纏う」

 

弦十郎はそう言った。

 

それは未来のこの先。LiNKERは劇物。耐えられる可能性も秘めているが、もし耐えられなければ廃人という結果をもたらす魔剤。だから弦十郎は最悪の事態を想定してあまり推せないと言った。

 

だが、それでも話してしまった故に、覚悟を持って弦十郎は未来に問うた。

 

「これはとても危険で君の身がどうなるかもわからない。だが、それが現時点で出せる救う方法。君には拒否権はある。無理じいはさせない」

 

弦十郎は未来に向けてそう言ったが、未来は既に覚悟を持っていたのか弦十郎に言う。

 

「やります!やらせてください!」

 

「…本当に良いのか?君にどんな危険が付き纏うかもしれない力と薬だ」

 

弦十郎は本当にそれで良いかと未来に問う。

 

しかし、そう言われても未来の答えは変わらない。

 

「どうなるか分からないという可能性があるなら、無事でいられる可能性もある。なら私は…ガンヴォルトさんの様に…響の様に…みんなの様に…その僅かな可能性を掴み取ります!だから!私にガンヴォルトの助けになる力を!シアンちゃんを!セレナちゃんを取り戻す力を下さい!」

 

未来は弦十郎にそう言って頭を下げた。

 

「師匠!私からもお願いします!未来にも!未来にもこの戦いを終わらせる為に力を貸してください!」

 

響も頭を下げ、それに奏、翼、クリス、マリア、切歌、調が頭を下げた。

 

そこまでされて弦十郎もそれ以上追求するなど野暮な事はしない。

 

「そこまでいうなら必ず、君も無事に戻ってくるんだ。これは約束などではない、命令だ。この国を守るものとして、世界の命運を握ってしまったものとして、こればかりは必ず遂行すると胸に持つんだ」

 

そう言って、弦十郎は未来に神獣鏡(シェンショウジン)のギアペンダントを渡した。

 

それがこの戦いにおいて最高の結末を迎えると信じて。

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