戦姫絶唱シンフォギアAB   作:株式会社の平社員

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個人的な理由で週1ペースの投稿に変えます。
理由はしょうもないですが活動報告にしてあります。



23VOLT

響が二課の戦闘に参加するようになって一ヶ月ほど経った。しかし、ボクや翼のように幼少の頃より鍛錬を積んでいない響には申し訳ないが今は戦力になっていない。

 

基本的には発生時には招集を行うがボクか翼に付き添う形で戦場に赴く。ボクは彼女に実戦経験を積ませるために響と出撃する際は彼女にノルマを課して、それを達成するように調整はしているのだが、翼と出撃する際は翼が響の経験を積ませずに一人でノイズを処理してしまうため、弦十郎もボクも困っている。

 

あの件以来、響の事を無視したりという事はないが、未だ吹っ切る事の出来ていない翼はまともに響と会話などがないためそちらも心配の種になっている。

 

そして今、ボクは響と一緒にノイズの出現ポイントに赴き、ノイズの掃討を行っている。

 

「響!そっちにノイズが向かった!」

 

ボクの展開する雷撃鱗や避雷針(ダート)の届かない範囲にいるノイズ達は今ボク以外の標的となる響に向けて襲い掛かろうとする。響の戦闘訓練にはちょうどいいが未だ不安をぬぐいきれない。響に襲い掛かるノイズに念のため避雷針(ダート)を撃ち込んでおく。

 

「わ、わ!?」

 

響はそれを横っ飛びで避けて地面にうつ伏せになる。その隙にノイズ達は無防備となった響に弾丸のように一直線に向かっていく。ボクはそんな響を守るために腕に雷撃を迸らせるとマーキングされたノイズに向けて誘導され、全身に雷撃が迸り、炭へと変えた。

 

「ありがとうございます、ガンヴォルトさん」

 

ボクは響に近寄り、うつ伏せのまま倒れる響に手を差し伸べた。

 

「やっぱり、ノイズは怖い?」

 

手を取り立ち上がる響は顔を曇らせて答える。

 

「はい…このシンフォギアがある限り大丈夫って説明はされてますけど、人を簡単に炭に変えるって思っちゃうとどうしても足が竦んでしまって…」

 

確かにノイズはギアを纏えば炭化する事はないが、受けたダメージは身体を伝い、痛みを残す。翼や奏はこういう戦いを長い年月続けているからなんとかなるが、響の場合はまだ一ヶ月しか経っておらず、戦い方を未だに理解していない。

 

「ごめんなさい、戦いますって言っておいてなんの役にも立てず、翼さんやガンヴォルトさんの足ばっかり引っ張っちゃって…」

 

ボクが考えていると響が申し訳なさそうに謝ってくる。

 

「気にしないで、と言っても君の場合はどうしても気になるだろうからね。まだ一ヶ月しか経っていないんだ。頑張ってノイズとの戦い方を覚えればいいさ」

 

「…はい」

 

凹む響に何か声を掛けようにもそれが逆効果になるかもしれないと思い、何も言わないでおく。これは響自身の問題であり、ボクにはどうする事も出来ない。

 

「ガンヴォルトさんはノイズと戦っている時に恐怖とかは感じないんですか?」

 

響はボクに対して質問する。

 

「ノイズ自体は怖いとは思っているよ。ボクの場合、響や翼と違ってシンフォギアを纏っていない生身の身体だからね。触れられたら終わりだと思う。試した事はないし、試そうにも当たれば一回で炭になるから出来ないんだけどね」

 

「ガンヴォルトさんの場合はそうですけど生身のっていう部分はなんか腑に落ちませんよ。高いビルから飛び降りても無事なんですし…でも私の場合は、ある程度このギアが使える限りは大丈夫ですが、それでもやっぱり恐怖を拭いきれません」

 

最初の方はボクに対しての感想だろう。そこまで言わなくてもいい気はするが、それなら生身の身体でビルの高さまで飛んだりアスファルトを砕いたりする弦十郎や水の上を走ったり気配もなく現れる慎次なんかはどうなるのか。話が逸れたが、とにかく響は何度も人を炭化させているノイズを見ているためか、そこからくる恐怖心を拭いきれない模様。

 

「別に恐怖心を無くせなんて言わない。誰だって怖いものはあるんだから。だからこそ、その恐怖心にどう向き合うか。それが何とか出来ればいいんだけど、そう簡単じゃないからこそ難しいんだけどね」

 

ボクは肩を竦ませて響に言った。響も乾いた笑いを浮かべているが、多分わかっていないだろう。

 

ボクも響に対して何か教えたい気持ちがあるが、戦闘スタイル自体がダートリーダーを使用した中距離レンジでの雷撃の誘導、雷撃鱗を展開した雷のバリアでの体当たりやスキルを使った攻撃とどれも響のギアとどうしてもスタイルが違う。

 

「せめて響のアームドギアさえ分かればどうにかなるかもしれないけど」

 

ボクは響に聴こえないくらいの声で呟いた。

 

◇◇◇◇◇◇

 

さらに数日、二課にて定例ミーティングが開かれるという事で主要メンバー、この後にアーティストとしての打ち合わせが入っているため慎次が司令室に集まっていた。響が少し遅れて司令室へと入って来た。

 

「さてと全員集まった事だ。定例ミーティングを始めるぞ」

 

弦十郎が言うと司令室にある大型スクリーンに今までにノイズが発生した地域のマップが表示された。それを響に見てもらい質問するといっぱいですねと答え司令室に弦十郎の笑い声が響いた。

 

弦十郎はこのマップについてノイズの発生した地域という事を説明する。

 

そして、この事からノイズの発生について二課はある可能性を考えていた。

 

「この事からなんらかの作為が働いていると思われてたんだけど、この前のハイウェイ付近の森で発見された双眼鏡、土の付着や劣化具合から見てまだ使って間もないって事が分かったの。だから、まだ不確定かもしれないけどこの事態には作為が働いている可能性が高いと見ているわ」

 

了子がそう言って画面を切り替えると映し出されたのはボクが戦闘後に回収した双眼鏡。付着していたと思われる誰かのDNA鑑定の結果もかかれているが今も該当者は発見されていないらしい。

 

「なんらかの作為が働いているなんて…じゃあ今までのノイズ出現には誰かがなんらかの形で関わっているという事ですか?」

 

響の質問に了子はおそらくと答える。たまたまそこに落ちていたという事も考えられるためどうとも言えない。

 

「了子、聖遺物の専門家に聞きたい事があるんだけど。今回の件で、ボクはその双眼鏡を回収した現場から緑色の光が照射されて、その光からノイズが出現したんだけど、完全聖遺物の中にノイズを発生させるような物があったりするの?二課に保管されている了子の資料を全部読ましてもらったけど何処にもそんな記述が載ってなかったから、了子なら何か知ってるんじゃないかと思って」

 

そう言うと了子は一度考えるが直ぐにごめんなさいと謝る。

 

「聖遺物に関して私以上に理解している者はいないと自負しているけど、二課に置いている資料にある事が私の知っている聖遺物についての事なの。私でもそれだけの情報じゃどういった物かは分からないわ」

 

「あの、完全聖遺物っていうのはなんですか?私や翼さんの持っている聖遺物とは何が違うんでしょう?」

 

ボクと了子の会話にて出てきた完全聖遺物について響が質問する。

 

「いい質問ね。じゃあ響ちゃんにも分かるように私が説明してあげる」

 

了子は響に対して完全聖遺物について説明を始める。たぶん彼女の分野である話のため長くなるだろう。テンションの高さに付いて行けていない響と了子以外のメンバーは苦笑いを浮かべた。

 

完全聖遺物とは奏や響の持つガングニール、翼の持つ天羽々斬などの欠片ではなく、出土した時に完璧な状態な物の事を指す。その完全聖遺物は歌の力によって起動すると永久的に使用する事が出来、誰にでも使用する事が出来るという物だ。今のところ発見されている完全聖遺物は二年前に起動実験を行い、紛失してしまったネフシュタンの鎧と二課の地下深くに保管されているデュランダルくらいらしいが、他にも発見されている可能性はあるが日本ではなく他国の場合が多く、情報は秘匿されているため分かっていない。

 

「その完全聖遺物って物の中にガンヴォルトさんはノイズを発生させる物があるんじゃないかって疑っている訳ですね」

 

「うん。現状ボクはそうと考えている。ハイウェイでボクのいた場所に的確にノイズを発生させていたからこそ、疑っているんだ。それでも、了子でも分からなければお手上げだけどね」

 

ボクは肩を竦めながら言った。

 

「他にはどんな完全聖遺物があるんですか?」

 

再びの質問にまたまた了子のテンションが上がるが、説明しようとした時に翼が先に答える。

 

「我々が保有している完全聖遺物はサクリストDと呼ばれるデュランダル。今はこの基地の下層、アビスと呼ばれる場所に保管されているわ。そして、今回の件もこのデュランダルを狙って起こっている可能性があるの」

 

説明を取られたことで項垂れる了子。

 

「デュランダルに関しては今も日本政府が研究を行なっていますが、一番重要な起動実験も安保を盾にした米国により、目処も立っていない。」

 

「二年前、沢山の人達がいたライブ会場で行われた起動実験の反動もあるわね。そのせいで米国なんかには私ら日本政府に任せられないと言ってデュランダルの引き渡しを要求されているし」

 

朔也の言葉にあおいが続く。ボクとしてはあの起動実験により沢山の命が失われているため、このまま起動させずにどういう物なのかだけを調べて封印してもらいたいところだが、国の事情が絡んでくるため、どうなるか分からない。制御しきれるか分からないと言うところは第七波動と同じだ。

 

「そんな事情があったなんて…」

 

響はその話を聞いて表情を暗くさせる。翼の方も平静を装っているがどことなく暗くなっている。あの惨劇の事を思い出したのだろう。弦十郎は二人の気を紛らわそうと別の話を始める。

 

「我々だって馬鹿じゃない。あのような惨劇を起こさないためにも慎重にしているさ。それよりも最近になって我々のコンピュータにハッキングの形跡が何万と見つかっているがそれはどうなっている?」

 

「私達オペレーター全員でハッキングの痕跡を辿っているのですが、未だそれが誰なのか分かってはいません」

 

「今回の件については、ガンヴォルトに痕跡の経由していたコンピューターを実際に調べに行ってもらってたりしましたが、情報は得られてません」

 

朔也とあおいはその件に関してはまだ情報を引き出せていない。現場に出てボクと慎次も調べるには調べたが痕跡は更に経由されていたため、ボクの能力で探る事も出来なかった。

 

「何の情報を掴めない分、更に慎重に動いて回らなきゃいけないのも辛いね。だけど、二年前のテロリスト襲撃に関する情報があった。断定は出来ないけど、誰かがテロ組織に依頼した痕跡があった。要求額から大企業、もしくは国が依頼した可能性はある」

 

「ああ、あの件に関しても調査を継続している。お前の言う通り依頼額が莫大な金額だ。個人や名のある組織ですら支払えるか分からないような額だ」

 

「だからと言ってその件を今日本政府にプレッシャーを掛けている米国と断定は出来ない。他にも聖遺物に関してはEUなんかも負債を肩代わりしたけど、今となっては負債もなくなり、デュランダルを取り戻そうと動いている可能性もある」

 

「ほえー、そんな大きな思惑が私の知らない所で起きていてここを狙ってるなんてあんまり考えたくないですね」

 

響の言葉に全員が頷く。

 

「すみません、話し合っている最中悪いんですけどそろそろ打ち合わせの時間に」

 

慎次が時計を確認して弦十郎に言った。そういえば、そろそろ翼のアルバムの収録があったなと思い出す。

 

初めて響と会う慎次は響に名刺を渡すと翼と共に部屋を出て行った。

 

「さて、ならボクも明日は行かなきゃいけない所があるからそろそろお暇させてもらうかな」

 

「む?そろそろそんな時期か。いつもすまんな。俺も保護者として行かなきゃならないと思っているんだが、どうも最近は対応が多くてな」

 

「気にする事ないよ」

 

ボクが申し訳なさそうに謝る弦十郎に大丈夫とジェスチャーする。ボクは立ち上がると部屋から出て行く。

 

喉も渇いているので一度飲み物を買うために自販機に寄ろうかと考えているとボクの後から部屋から出てきた響が声を掛けてくる。

 

「すみません、ガンヴォルトさん。前々から聞きたかった事があるんですけど」

 

突然の質問に何だろうと考える。

 

「私の親友が七年前に長い金髪を三つ編みにしている人、多分ガンヴォルトさんだと思うんですけど、助けてもらったかもしれないっていう事があったんですが何か覚えてないですか」

 

その質問に関して考える。七年前、それはボクがこの世界で目を覚ました時期であり、活動はしていたもののほとんど現場では一課の人としか会ってない時だ。他に私生活も考えるが、これと言って助けるような事は何か起きた訳でもなかった。それに長い金髪で三つ編みだとほぼ確実にボクだろう。

 

「流石に七年前の出来事だけじゃピンとこないな。詳しく分かれば思い出すかもしれないけど。その子は他に何か言ってなかった?」

 

「えっと、何かとても話し辛そうにしてました。余り、話したくない事なのかもしれなかったので詳しくは聞かなかったんですけど」

 

言いづらい事、何か事件なのだろうか。だけど七年前だとボクが携わったものとなるとノイズの殲滅以外は考えられない。

 

「もしかしたら、ボクが助けていた可能性があるならノイズの可能性が高いんだ」

 

「未来もノイズに襲われて!?」

 

ボクの言った可能性に驚く響。

 

「ノイズの事となると前に弦十郎から聞いていると思うけど機密だから話してしまうとその子の身が危険に晒されてしまう。もし話せないとなると彼女もその時に口止めされている。だから君にも話せなかったんじゃないかな」

 

「でもそうなると私、未来にこの事をずっと黙ってないといけないんですか?」

 

「残念だけどそうなるね。彼女もその事を響に伝える事は出来ない。でも仕方ないんだ。君の親友をボクも危険な目には遭わせたくない」

 

その言葉に響は悲しそうに表情を曇らせる。ボクはそんな響に掛ける言葉が見つからない。確かに彼女にとっては話したいだろうけどそうなるとまだ見えぬ敵がその情報を何処からか仕入れ、矛先が響の友達に向いてしまう。

 

「ごめん」

 

「分かってます。私も親友を危険な事に巻き込みたくない。でも、親友が今も一緒に探している人が私の目の前にいるかもしれないのに何も伝える事が出来ないのが辛くて…」

 

「辛くても我慢しなきゃいけないよ」

 

そう言うと響は親友の身を案じ、引き下がった。

 

「ごめんね、力になれなくて」

 

響はいいんです、と言って少し悲しそうに司令室の方に戻って行った。

 

ボクはその背中を黙って見送る事しか出来なかった。

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