戦姫絶唱シンフォギアAB   作:株式会社の平社員

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あと二話でようやく終わります。
あと一話とエピローグだけだ…


145GVOLT

バビロニアの宝物庫の扉が閉じる前、鎖によって腕を貫かれ、引き摺り込まれた。

 

そのせいで完全に切り離された世界に閉じ込められた。

 

「クソッ!」

 

悪態をついても仕方ない。

 

これも全て自分の驕りによって生まれた事だ。

 

ボクは鎖を腕から引き抜いて空中に身を踊らす。

 

装者もいなくなり、完全にアンイクスプロードヴォルトの恩恵もない。

 

故にボクはそのまま流される様に宙を漂う。

 

だが、運のいい事に依然として存在していた巨石の足場を見つけ、それに足をつける。

 

アンイクスプロードヴォルトもない為に空中制御がままならない。

 

だが、足場のおかげでなんとかなった。

 

しかし、そんな事よりもボクはこの鎖が出現した事に己の未熟さを悔いる。

 

あの時と同様だ。確実に手応えのある死を感じた。しかし、それでも死ななかった。そんな事を忘れたばかりに、こんな事が起きた。

 

断ち切ったと思っても、今度こそと思っても、憎悪と執念でそれを破ってきたのだ。

 

だからボクは消えゆく鎖の大元に向けて叫ぶ。

 

「まだ生きているか!アシモフ!」

 

そう。確実にこの手で葬ったと思ったアシモフの名を叫んだ。

 

「勝手…に…殺した…だと思わない事だな…紛い者…」

 

やはりその元にいるのはアシモフ。ボクと同じ様に浮遊する足場に立つアシモフ。ボロボロの姿だが、貫いた筈の胸の穴は完全に塞がっている。いや、何かが溢れ出た様にアシモフの胸を覆っていた。

 

「ネフィリムの細胞…それが貴方を生かしたのか」

 

「…ああ…今度ばかりは死んだと思った…だが、まだ私にはツキがあった…ネフィリムの細胞…それが私を生かした…だが…」

 

絶え絶えになりながらもアシモフは叫ぶ。

 

「貴様の…貴様のせいで…私の理想も…目的も…終わり(エンド)だ…あの一撃…私の中にあり…ネフィリムが使役していた…能力因子が…全て焼け死んだ…亜空孔(ワームホール)爆炎(エクスプロージョン)残光(ライトスピード)生命輪廻(アンリミテッドアムニス)翅蟲(ザ・フライ)…そして残っていたネフィリムの意志さえも…真なる雷霆も…貴様のせいで…失った…果たさねばならぬ目的も…作り上げなければならない…世界も…私の手でもう叶える事すら出来ない…!」

 

憎悪をボクに向けて並べて言うアシモフ。

 

「ならそのまま果たせないまま終わってればいいだろう!もう何も出来ないのに!」

 

ボクはそうアシモフに向けて言った。もうアシモフに力が残っていないのならもうどうしようも出来ないのならなぜ足掻くと。

 

だが、ボクはアシモフのそこまで突き動かす動機を知っている。ボク自身も持っていたから分かっている。

 

だが、それでも問わなければならないと感じた故に叫んだ。

 

「分かっているだろう…全て頓挫しているとは言ってない…私が…こうまでなっても…理想を失く(エンド)してなお…突き動かす物…それは…貴様と言う存在だ…!計画(プラン)を狂わせた存在…!そして私の怠慢で…生まれた貴様…!私が果たそうとした目的を無くしてもなお!…このまま死ぬことすら…執念が!…憎悪が許さない!何も出来ぬまま…死ぬ事を否定する!」

 

そう。アシモフが死なない理由。それはボクも持っていた執念。ボクがアシモフを殺す為に執念を燃やしてなんとか生きながらえた様に、計画が頓挫してなお、アシモフもボクを殺さんが為にその執念を燃やし、死に体でも生き続けている。

 

「…あの世界には…まだ可能性はある…だから…私の手で叶えられないだろうと…託した存在が居る…だが…このまま私は死ぬとしても…貴様だけは…貴様と言う存在だけは…私の手で終焉(デッドエンド)に落とさねばならない!」

 

死ぬと分かっていても、当初の目的を果たせぬとしても、それだけはやらねばと言う執念がアシモフを死に体でも突き動かしていた。

 

その原動力を理解している故に、ボクも腕を回復させながらもアシモフに向けて叫ぶ。

 

「その可能性は絶対にない!あの世界にいるボクも!貴方の目的を賛同せず殺した様に!確実に貴方の望みは叶う事はない!そしてボクが貴方の思い通りに死ぬ事は絶対にない!」

 

アシモフの望む可能性は絶対にないと。ボクを終焉に落とすと言うアシモフ言葉を否定する。

 

終わるのはボクではないと。アシモフの方であると。

 

「いいや…そうなる…あの世界は腐っている…無能力者と分かりあうことなどありはしない…必ず…私が行おうとした事が正しいと…理解するだろう…だから…私が自身で行おうとした…計画(プラン)が崩されようと…あの世界は…いずれ私の思う方向へ進むと信じる…だから…私は…今の私に残された目的を…果たすまで!この命尽きる迄に!必ず貴様を殺す!」

 

だが、アシモフはどこからその自信が来るのかそう言い切った。

 

「ならその自分勝手な理想を!叶わない願いを望みながら死ね!アシモフ!」

 

そう叫んだボクは浮遊する足場を蹴ってアシモフのいる場所へと向けて駆け出した。

 

アシモフはボロボロの身体に鞭打って手を翳すと雷撃を放電した。

 

威力は弱い。だが、(スキル)を使っていた状態で受け切れたが、ボクもダメージを追うわけにはいかない。長引く戦いの勝敗を分ける可能性がある。しかし、再び電磁結界(カゲロウ)を手にしている。だが、電磁結界(カゲロウ)もあるといえど、危険な橋を渡るのは身を滅ぼす。

 

だからボクはアシモフの雷撃を自身も同様に雷撃を放電して打ち消す。

 

だが、どちらの雷撃と先程の戦闘に比べて脆弱そのもの。

 

しかし、そんなの関係ない。殺せるだけの力が残っているのであればいい。

 

そしてボク同様に足場を蹴り出して接近してくるアシモフ。

 

「紛い者ぉ!」

 

「アシモフ!」

 

そして互いが雷撃鱗を展開してぶつかり合う。

 

互いが今出せる最大限の雷撃鱗。その雷撃鱗のぶつかり合いは拮抗。

 

だが、その雷撃鱗のぶつかり合いはすぐに終わりを告げた。

 

互いの雷撃鱗が拮抗を続けた為に起きたEPエネルギーの枯渇。それ故のオーバーヒート。

 

それにより雷撃が使えなくなる。

 

そしてその状況に追いやられてから先手を取ったのはアシモフ。

 

「ガァ!」

 

オーバーヒートしてからボクの隙を見出し、腕を払って渾身の頭突きをアシモフがボクの鼻へと叩き込んだ。

 

鼻骨が折れて鼻血が噴き出る。

 

そして仰け反ったボクに対して追い討ちとばかりにアシモフが拳を叩き込む。

 

「既に経験しているんだよ…私は!」

 

何を言っていると思うが、アシモフの連撃をボクはなんとか芯をずらしてダメージを軽減する。

 

「だからなんだ!」

 

そして叩き込んでくる拳をなんとか受け止めてボクは叫ぶ。

 

「経験しても敗北したんだろう!なら結果は同じになる!あの世界と同様に!ボクが貴方を殺して終わりにする!」

 

そしてボクはアシモフの拳を受け止めた手と逆の手でアシモフへと避雷針(ダート)を撃ち出した。

 

しかし、それを銃口を蹴りでカチ上げて逸らす。

 

避雷針(ダート)があらぬ方向へと撃ち出された。

 

そしてアシモフはダートリーダーをカチ上げた蹴りをそのまま振り下ろしてボクの頭へと叩き込もうとする。

 

ボクはそれをアシモフと更に接近してダメージの大きな踵を躱す。

 

そして逆にダートリーダーをボクも振り下ろしてアシモフの脳天へと叩き込もうとする。

 

アシモフは脳天は躱すが肩へとダメージを負う。

 

だが最小限に抑えて反撃に移る。

 

蹴りが無効化された為の拳による反撃。ダメージをより多く与える為に掴まれた腕ではない方の拳を乱打する。

 

ボクは何発か受け切れずに拳を打ち込まれていくが、ダメージを最小限に抑えていく。

 

だが、ただ受けているだけなんて事もない。

 

アシモフの拳をダートリーダーを握る腕で防ぎ、蹴りを叩き込む。

 

「グゥ!」

 

普段のアシモフなら躱せただろう。だが、今のアシモフは死に体を無理に動かしているだけ。故に、その蹴りは決まり、大きなダメージを受ける。

 

しかし、アシモフはボクの握る腕を振り解いて反撃に出る。

 

死に体故の火事場の力。死を直観している故の生命が尽きるまで自分の身体の事など考えない攻撃。

 

ボクはそれを全て捌く事は出来ず、幾つか喰らってしまう。だが、喰らいながらもボクも反撃に出る。

 

そしてアシモフとボクは至近距離の肉弾戦を繰り広げる。

 

互いの拳を、蹴りを躱し、逸らし、喰らい。互いに雷撃が使えない状況で可能な限りのダメージを与える為に攻防を繰り返す。

 

アシモフのチャタンヤラクーシャンクーをベースとした武術。そしてアシモフから伝授されたボクのチャタンヤラクーシャンクー武術。

 

磨き上げてきた武術をぶつけ合う。

 

だが、そのぶつけ合いもすぐに傾く。

 

ボクはアシモフを押し始めた。

 

理由は簡単。ボロボロのアシモフにその全てを躱し切る術がない為だ。そしてボクの使うチャタンヤラクーシャンクーはアシモフから教わった物に加え、一度は披露しているが、それでも全てを引き出していたわけではない、弦十郎より学び、習得した中国武術も混じっている。

 

弦十郎と戦闘して中国武術を理解していても、混じった武術をいきなりは対応出来ず、拳を、蹴りを喰らう。

 

だが、それでもアシモフは倒れない。

 

そして何度目かも分からぬ、アシモフとの自信の存在へと投げかける言葉。

 

「紛い者ぉ!」

 

「アシモフぅ!」

 

アシモフの拳、そしてボクの拳が交差する。

 

だが、アシモフの方が早く拳を振るった為、ボクの顔面へと拳を叩き込もうとする。

 

ボクはその拳を掠りながらも躱す。

 

そして躱して伸び切った腕を首を支点に抑え、伸び切った腕の背後から拳を振り抜いた。

 

骨の折れる音が響く。それと同時にボクの拳がアシモフへと叩き込まれた。

 

腕を極め、内肘でアシモフの腕を無理矢理へし折って拳を叩き込んだのだ。

 

「ッ!だからどうしたぁ!」

 

そう叫ぶアシモフが、今度は逆の腕で殴りかかる。だが、その瞬間にボクのEPエネルギーは回復した。アシモフよりも僅かながらに早い回復。

 

雷撃を纏い、アシモフが再び雷撃を纏う前に、ボクはその拳をダートリーダーを持つ腕の肘を叩きつけ、拳を破壊した。

 

「グッ!」

 

そしてアシモフはその瞬間に逆転の一手とばかりに(スキル)名を叫ぼうとする。

 

「天体が如く蹌踉めく雷!」

 

漸く(スキル)を打てる様になり、ボクを殺さんが為に(スキル)詠唱を開始する。

 

だが、そんな事はさせない。

 

ボクはすぐ様拳でアシモフの顎へとアッパーを叩き込む。

 

本来であれば避ける事は出来ただろう一撃。

 

だが、もうアシモフも限界であった。

 

元よりかなりのダメージを負い、死に体で無理矢理行動していた。

 

故に、先程の戦闘でもうアシモフはそんな力を残していなかったのだ。

 

そして最後とばかりに避雷針(ダート)をアシモフへと撃ち込む。

 

死に体故にもうそれを躱す事は出来ず、アシモフの身体に赤い紋様が浮かび上がった。

 

「これで終わりだ!アシモフ!」

 

そしてボクはアシモフの胸に手を当てて今出せる全力の雷撃をアシモフへと流し込んだ。

 

「ガァァァァ!」

 

雷撃を流し込まれたアシモフが絶叫を上げる。そして肉体が限界を迎え、その雷撃に耐えられずアシモフの体の至る所から血が吹き出した。

 

そして再度のEPエネルギーの枯渇。ボクは強制的に雷撃を止められ、再び雷撃の使用が不可能になった。

 

だが、それでもなんら問題もない。

 

ボクの手を当てられたアシモフは空中でぐったりとし、もう動いてはいなかったからだ。

 

「…ここまで…なのか…私は…」

 

しかし、アシモフはそれでも生きていた。だが、もう動く力はなく、言葉を発することしか出来ない。

 

「そうだ、アシモフ。貴方はここまでだ」

 

そんなアシモフから手を離し、ボクはそういった。

 

「…そうか…だが…貴様も…だ…理解…してい…るだろう…この手で…貴様を終焉(デッドエンド)を…迎え…させ…たかった…」

 

最後の言葉とばかりにアシモフはボクへと向けてそう言う。

 

「…本当に…忌々しい…私…はもう時期…死ぬ…だが…それでも…貴様と言う…紛い者を…この手で…殺せなかった…と…しても…貴様は…私と同じく…死ぬ…この場所で…バビロニアの宝物庫で…出口のない…この場で…貴様は死ぬ…んだ」

 

「ボクは死なない。もう一人のボクの世界に居場所は無くとも…こんなボクにも居場所をくれたあの世界に…大切な人達が待つ世界がある。だからボクは何がなんでもあの場所へと帰る。もういなくなった人との約束を守り、それを実現したい世界があるから」

 

「ナン…センスだ…紛い者である…貴様…に居場所…はない…初めから…ありはしない…それに…第七波動(セブンス)なき…世界に…貴様の様な者が…居ていい訳…ないだろう…」

 

それは、ボクが初めは思っていた事。第七波動(セブンス)と言う力。それが存在しない世界に第七波動(セブンス)はあってはならないと考えていた。

 

だが、この世界に送り込んでくれたシアンの真意。そしてこんなボクを居てほしいと思ってくれる人が居る。だから、もうその考えは捨てた。

 

だからこそ、アシモフに向けて言う。

 

「ボクも初めはそう思っていたさ…でも、今は違う。こんなボクにあの世界に居ていい場所があると言ってくれた子達がいる。そしてボクも…居ていいと思える…だから、帰るんだ」

 

もう力のないアシモフに向けてそう言った。だが、アシモフはそれを否定する。

 

「無理…だな…帰る事の出来ない…貴様…に…それを叶える…事は出来ない…それに…あの滅びゆく世界…にそんな…希望は…ありはしない…」

 

アシモフが死んだとしても残った問題の事をアシモフは言っているのだろう。

 

月の落下。ウェル博士によって更に近くなったカウントダウン。

 

「そんな事はさせない。ボクは必ず帰って…月の落下を…そんな滅びゆく問題を解決してみせる」

 

「…夢…物語…ばかり…だな…虫唾が…走る…だが…そう…ではない…私によって…滅ぼされて…いた方が…いいと…思える…だろう…あの世界は…」

 

だが、そうではないと意味深な言葉を吐くアシモフ。

 

「…貴様はここで…死に…あの世界も…すぐに消える…あの世界に…いる…ある者や…組織に…よってな…」

 

「言っただろう…ボクはあの世界に必ず帰るって。それに、もしあなたの言う人物、組織。どんな相手が来ようと、ボクの蒼き雷霆(アームドブルー)で、そして装者達と打ち払う。ボク達がやるのはそれだけだ。だからいい加減に終わらせよう」

 

そんなアシモフに向けてボクはそう言った。あの世界は終わらせない。どんな敵が来ようとボクの蒼き雷霆(アームドブルー)、そして装者達がそれを防ぐと。ボクは言い終えるとアシモフへと近付く。

 

「ああ…終わるだろう…だが…貴様も…だ…!」

 

それは最後の抵抗。アシモフは最後の力を振り絞り近寄ってきたボクの喉元へ噛みつこうとする。

 

執念でよくここまでやり切れたと思う。だが、そんな抵抗は無意味であった。ボクはそれを片腕で抑え、そしてアシモフの背後に回ると、掴んだ片腕と、そしてダートリーダーを持つ腕でアシモフの首をへし折った。

 

ボキッと耳障りな音が響く。

 

そして今度こそ完全に事切れたアシモフ。胸の傷を覆うネフィリムの細胞も脈動が消え、崩れ去り、今度こそアシモフは完全に死んだ。

 

本当の意味で漸く終わった長い戦い。アシモフを殺して最良の結果を手に入れた。

 

だが、まだ問題は残っている。

 

出口のないこのバビロニアの宝物庫。そこからの脱出であった。

 

「…絶対に帰るから…ボクに居場所をくれたみんなの為に…ボクは絶対に帰るよ…」

 

そう呟くとボクはアシモフの死体が漂う場所から離れるのであった。

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