アシモフの死亡が各国政府へと通達されて月日が経つ。
テロリストであるアシモフの死亡。そしてテロの共謀者、ウェルの捕縛。そしてそれに加担したF.I.S.の今後の対応などもやらなければならないが、まだ世界に知れ渡る脅威が残っている。
月の落下による世界の滅亡。それは既に政府などだけでなく全国民にまで知れ渡っており、今後どうなるかの対応に追われている。
だが、それも今日まで。
その対応策をナスターシャ博士が導き出し、それを今日決行する。
『結局…お前達に頼りっぱなしになるとはな…だけどこればかりは仕方がない。月の欠片の破壊。それを成し遂げている例がある以上、お前達にしか出来ない。やってもらわなければならない。でなきゃ世界は破滅する』
『かなりの大仕事…ですが貴方達にしかこの作戦は出来ません…お願いいたします』
とある場所に集められた装者達とボクに向けて通信機越しに弦十郎とナスターシャがそう言った。
「師匠…縁起でもないこと言わないでくださいよ…私…今ものすごいプレッシャーがのしかかっています…」
弦十郎の言葉に緊張した面持ちで響がそう言った。
「心配するなよ、響。必ずやれるさ」
そんな響を奏が軽く背中を叩いて励ましている。
「奏の言う通りだ、立花。以前、私達はそれを成している。必ず成し遂げられる」
そして奏に続いて響へとそう翼が言った。
「全く…ここまで来て弱音を吐くなよな…」
そんな響きの様子を見てクリスはため息を吐いた。
「マム!大丈夫デス!絶対やりきってやるデス!」
そんな響のとは裏腹に、ナスターシャの言葉にやる気を満ち溢れた切歌がそう言った。
「うん。絶対に出来るよ、マム」
そして切歌の言葉に賛同する様に調がそう言った。
「そうね。私達なら必ず成し遂げられる」
そしてマリアも。
「そうです!私とシアンさん!皆さんの力、そしてそれを束ねて渡した力があればGVが必ず成功させてくれます!」
そしてマリアの隣にいるセレナ。セレナも今回の作戦は必ず成功すると断言した。
「当たり前よ!GVに不可能なんてないわ!」
セレナの言葉に、シアンがうんうんと頷きながら答えた。
「異常なまでにボクに対するハードルを上げてきてないかい?」
ボクはその異常なまでの期待の言葉に苦笑いを浮かべる。
それもそのはず。この作戦において一番重要な役目を果たさなければならないのはボクなのだから。
作戦の立案をしたのはナスターシャ博士。
内容は地球上から
そんなことすれば月は破壊されるのではないかとボクは懸念したが、ナスターシャはそれをただ月へぶつけるのではないと話した。
照射されるのは月面に存在すると言われる遺跡。その遺跡が何故あるのか?誰が造ったのかなどは不明の物。
そしてフィーネが月に固執していた根源であると聞いた。
バラルの呪詛を振り撒いていると言われるそれに
そうする事により、遺跡へと介入して月の軌道修正を修正するという飛んでない作戦。
そんな事可能なのか?そんな事が実現出来るのか?そう思うが、ボクが各国の対応をする最中、ナスターシャがフロンティアの残骸より回収されたフロンティアに存在したコンピュータの様なプログラムを解析して可能である事、プログラムである事、そしてその動力源もまた電気ではないにしろフォニックゲイン。つまり、電気でもあり、フォニックゲインを内包する
それを聞いてどこか納得するのだが、まだ問題はある。
ボクだけの力で雷撃を地球外に、成層圏に届く前に雷撃は消失してしまうだろう。
今のボクにはそこまで到達させる力はない。
だから装者、そして
そうする事により、ボクは
だが、それまで行って本当に月まで干渉が可能なのかと言う疑問もあったが、かつて地球外で戦った紫電。宝剣と
そして、ボク自身もかつてダートリーダーを介して破壊したカ・ディンギル。
それ程の力を出せるのならば可能であると判断されたのだ。
そしてボクもそこまで言われて出来ない事はないと考え、今に至っている。
そして何の因果か、その作戦を決行するのもまたカ・ディンギル。
何故、ここで行われるのかにもいくつか理由がある。
ボクの雷撃を照射するに当たって各国はそれぞれの国民へとレールガンにて月の軌道を修正させると言う報道を行なっていたから。
そして報道などによるボクや装者達の正体を隠す為。
こんな地の底で人が放ったなどと分からない様な状況だ。
これほど都合のいい建造物も他にないと言う事でここになった。
そしてボク達その時が近付いてきた為にそれぞれの配置に付くよう装者達へと促した。
「ボクだけじゃ足りない。だから力を貸してくれ」
「あんたが望めば私はどんな事があろうと力を貸すんだから」
そう頼んだボクに奏がそう言った。
「奏の言う通りだ。私もガンヴォルトが言うのなら力を貸す。それにこんな時に力を貸さない…そんなことをする人がここに居るとでも?」
翼が苦笑いしてそう言った。
「全くだ。あんたの頼みだし、世界の命運を握ってるんだ。誰も断らねえよ」
翼に続いてクリスもそう言った。
「そうですよ!みんなガンヴォルトさんが力を貸して欲しいって言うんなら拒否なんてしません!だから絶対に成し遂げましょう!」
さっきまで緊張してたのが嘘の様に、響も真っ直ぐにそう言った。
「貴方には返しきれない恩がある。それを返す為には今の状況を何とかしなきゃならない。だから、貴方が望むなら私達はそれを実行するだけ」
マリアがそう言った。
「そうデス!ガンヴォルトさんが言うなら私達は力を貸すデス!みんなの為に!これからの人生の為に!」
そして切歌もマリアに続く様にそう言った。
「うん。それがあの人との…フィーネの約束に繋がる。だから私達は何があってもガンヴォルトに力を貸す。だから、ガンヴォルトさん…成し遂げよう」
調もそう言った。
「GVのそう言うなら、私は絶対反対しない。私はGVの力になれるなら喜んで貸してあげる!」
シアンも。翼が言う様に反対する事なく、そう言ってくれた。
「シアンさんの言う通りです。GVが力を貸して欲しいのなら、私も力をお貸しします」
そしてセレナがそう言った。
だが、セレナが力を貸すと言ったが、どうやって?と思うかもしれないだろうが、今のセレナにはシアンが宿っている。
この世界で新しく生まれた
そしてシアンとセレナ。ボクと違い、聖遺物の完全適合者であり、
シアンの歌。そしてシアンと共に歌うセレナ。その二人の歌声と装者達と共に歌を歌う事によってかつての戦闘で使用したアンイクスプロードヴォルトよりも強力な雷撃を引き出せる事が分かっているからだ。
故にセレナもこの作戦に参加していた。
そして全員の意志を確認を終えたボクはみんなにありがとうと伝える。
そして月がカ・ディンギルの真上にもう直ぐ到達しようとする時間、装者とそしてシアンとセレナが歌を歌う。
歌う歌はかの戦いを勝利に導いたシアンの歌う輪廻を進化させた
そうして装者達がシンフォギアを見に纏う。
だが、装者達の決戦兵装、エクスドライブには至らない。それもそのはず。
装者達が生み出す莫大なフォニックゲインは装者達の力になる訳ではなく、シアンとセレナが一点へと集め、それを流し込んでいたからだ。
勿論、流し込む先にいるのはボク。
莫大なフォニックゲインをボクの力へと付与する為にシアンとセレナがボクへと流し込み、その力がボクの中にある能力因子に力を滾らせ、未踏へ踏み込む道を作り出す。
だからボクは言葉を紡ぐ。
滅亡の危機を終わらせる為に。フィーネと約束した誓いを果たす為に。そして、みんながボクを居ていいと言ってくれた世界を守る為に。
「響き渡るは歌姫達の歌声!この身に齎すは希望の
それはもう怨敵がいない故に変わった言葉。そしてその言葉と共に、ボクの中に宿る能力因子が熱を持ち、溢れんばかりの雷撃が迸る。
未踏へと踏み込み、解放するその力。
「迸れ!
そして、溢れんばかりの雷撃と虹色のオーラがボクの周りに出現する。
「必ず終わらせる!」
そうしてボクは手を真上に翳す。
カ・ディンギルの砲口から望める月。
それに目掛けて雷撃を放出する為に、その雷撃を腕へと集約させる。
そして、
『今です!』
ナスターシャの号令と共にボクは集約させた雷撃を一気に月へと向けて放つ。
莫大なエネルギーを持つ雷撃。放たれた雷撃はカ・ディンギルの砲口を目指し、そして勢いよく飛び出すと、威力を減衰させる事なく、次へと向けて飛んでいく。
地球上から月への距離は約三十八万キロ。だが、放たれた雷撃の速度はその距離を僅か一分に満たない時間で到達する。
今の雷撃の速度はそれ程の速度を持っている。
故に、しばらくしてその雷撃が何かにぶつかったのか、抵抗を感じさせた。
そう、月に到達したのだ。そしてその雷撃が何かに吸収されていく様な感覚が、ボクの雷撃を放出させた腕から伝うのを感じる。
ここからが本番。
ボクはその莫大なフォニックゲインの雷撃をぶつけた雷撃をぶつかった月の遺跡。その雷撃を通して干渉する。
電子を操る
そしてボクの脳内に浮かび上がる、0と1に似た数字の様なものの空間。
これが月の遺跡の中にあるプログラム。
ボクはそのプログラムをナスターシャより教えられた方法で解析し、今ある言語へと置き換えていく。
そうして数秒にも満たない時間でボクはある解析を終えると、漸く、今回の作戦に必要な
ボクはそれに干渉して素早く月の軌道を元に戻す。
その瞬間に手から放出する雷撃から何かが流れ込んでくる。
「ッ!?」
頭が割れそうしなる感覚。そして何か思い出したかのように細胞が震える。
時が止まった様に、目に見える景色は色褪せ、そしてボクの脳内にある光景が入ってきた。
「何だ…これは…」
そこにあったのは天地が割れた様な悍ましい景色の光景。
その中にいる三つの存在。
一つは伝承に記された蒼と金の模様を持つ龍のような怪物。そしてそれと対峙するようにいる二つの存在。だが、その存在は黒く塗りつぶされた人型と怪鳥と思える大きな何か。
「一体…何が…」
その光景を見させられて何なのかと思い声が出る。
そして、
『いずれ分かる…その時が来れば…』
男の声が脳内に響く。
「ッ!?誰だ!?一体何なんだこれは!?」
ボクは脳内に響く言葉へとそう投げかける。だが、その問いには何も返ってこない。
そしてその光景がなくなると共に、止まった時が動き出すかのように、色を帯び始める。
そして月が軌道が変わった為に雷撃の放出をやめ、気が抜けたのかボクは膝をついた。
「ハァ…ハァ…」
それと共に今まで発動させていたアンイクスプロードヴォルトが切れたのか身体に纏う雷撃が、オーラが消えていくのを感じる。
「ガンヴォルト!」
「ガンヴォルトさん!」
「GV!」
そんなボクを心配して、装者達、そしてシアンとセレナが駆け寄ってくる。
「大丈夫…ちょっと久々にあんな力を使ったから疲れただけだよ」
心配するみんなを安心させる為にボクはそう言った。
それを見て安心する全員。そんな全員の通信機に弦十郎から通信が入る。
『ガンヴォルト!どうなった!?』
「成功した…と思う…月の軌道は?』
『…成功です!うまくいきました!』
ナスターシャがそう叫んだのを機に、通信機越しに大きな歓声が、そしてそれを聞いた装者、シアンとセレナも喜び出す。
ボクとしても喜びたい状況。
だが、先程脳内に流れた光景。そして、先ほど聞こえた声に、喜びたい気持ちよりも、不安が過っていた。
「…いずれ分かる…か…誰だかは知らない…必ずあの光景を見せた意味を教えてもらうよ…」
ボクはみんなが喜ぶ中、そう呟いた。
何を目的にあんな光景を見せたのか?あの光景が何を啓示しているのかは分からない。
だけど、何を啓示しようとボクはただ、ボクの望む世界を、ボクが居ていい世界を守るだけ。
この先、どんな戦いが待っていようと、ボクはただフィーネから託された願いを実現させるだけだ。
だから、ボクはただ不安を押し留め、束の間の平和を噛み締めるようにボクは立ち上がり、みんなと共にカ・ディンギルの底から戻るように歩き始めた。
◇◇◇◇◇◇
「…アッシュボルト…いや、本当の名はアシモフか…奴は死んだ…」
豪華な装飾の中央にある玉座のようなものに座る少女がそう呟いた。
「貴様のせいでオレの計画を狂わされた。オレがこの手で貴様を殺したかった」
何処か憎しみを込められた言葉を吐き捨てる少女。
「だが、奴は殺された。しかも貴様も同じ目的を持っていたとはな…本当に憎たらしい。だが、貴様とオレは違う。貴様に為せなかったとしても…オレは必ず、この世界を壊してやる!」
そして少女はそう叫んだ。
◇◇◇◇◇◇
「君なら必ずやり遂げると知っていたよ、僕は」
モニターに映された映像を見ながらそう言う男。そこに写っていたのは何を介して映したのかわからないカ・ディンギルの地下の様子。
「何を見てるの?」
そんな男に少女の様な様相の何かが男にそう聞いた。
「ああ、懐かしい物をちょっとね」
その光景は最近のものであるが、その男は懐かしいと言った。
「?最近のものみたいに見えるけど?」
何かはそう言ってモニターを覗き込んだ。だが、直ぐに男はモニターを消した。
「ちょっとアタシも見たかったのに!」
その何かはそう言って男の方に抱きついた。
男は気にしなくていいよと言ってその何かを抱き抱えると歩き始める。
(やっぱり、君はあの方の生まれ変わりだ…アッシュボルト…ムカつくほどふざけた男だ…本気を出していないにしても、僕に手傷を負わせたあの男…あんな男にあの方の生まれ変わりがやられるわけがないんだよ…さて、どうにかして接触したいけど…まだ時じゃないからね…時が来たら必ず会い行くよ…)
そう思いながら、先程の映像に映る男のことを思いながら、その何かを抱きながら部屋を出るのであった。
◇◇◇◇◇◇
遠くに登る光の柱。それを人気のない山で見ながら男は呟く。
「いずれ分かるさ…君がこの世界に来た理由。流れ着いた理由を…」
「ここにいたのですか…」
そう言われて男が振り向くと、男性とも女性とも取れる人物、そしてその後ろに控える少女と女性がいた。
「全く、貴方はいつも忽然と消える。それで…あれを見に来たのですか?」
そう言った男性とも女性とも取れる人物が光の柱を見てそう言った。
「ああ、一つやることがあったからね」
「また私達にはその目的を教えないワケダ」
「本当よねー。少しは言葉にしないとわからないものよ?」
「いいや、私達が知らずともこの方は変な方向には状況を傾けないわ」
少女と女性がそう言うが、男性とも女性とも取れる人物がそう言った。
「みんなには悪いとは思っているよ。でも、これは私の問題なんだ。私の過去、果たせなかった友との約束の為」
男はそんな三人にそう言った。
「さてと、悪いけど君達は先に戻っていてくれ。あと少しあれを見終えたら帰るから」
男はそう言うと男性とも女性とも取れる人物が二人を先導して暗い夜闇に消えていく。
それを見送る男。そして男は別の方向へと視線を向ける。
「調査の方はどうだい?何かわかったかい?」
「…奴の脈動が着実に強くなっています…七年前、いやもう八年も前から」
そしてその闇夜から一人の怪物が現れた。
「あれからもうそれだけ経っている…アシモフと言う歪みがもう既に出ていたからわかっていた。もう時間は残されてないと言う事」
その怪物に向けてそう言った。
「そろそろあれもあの方に近い姿になりました。そろそろあれを託してもいい頃かと」
「あれと言わないでくれ…流石の私でも怒るよ」
怪物の言葉に対して怒りの感情を持つ男。
「申し訳ありません」
「気を付けてくれ。だけど、そうだね。どんな手を使っても…あの子にはなってもらう。こんな運命を背負わせてしまってすまないと思っている…だけど…友が守ろうとした世界。それを奴に壊されない為にそうするしかない」
男はそう言った。
「それに気になることも…」
怪物が男に向けてそう告げる。
「何だい?」
「奴の力…今までこの世界に感じなかった力を感じます…もしかすれば奴の封印が弱まって、アシモフと言う男を呼び出しただけじゃなく…奴だけがそこから解放され、動き出したのかも…」
何処か不安な事を呟く怪物。
「…やはり時間はない…か…もう少し成長した形でしたかったけど…早めるしかないか…」
そう言うと怪物に命令を下す。
「感じる奴の力。奴ではないにしろ、存在するのなら消さなければならない。そんな厄災を放っておくことは出来ないからね…悪いがそれを探し出してくれ。私はあの方の託された物を回収しに行く」
「分かりました。それを取りに行き終えたら知らせてください。直ぐに回収を行います」
「頼んだよ」
そう男が言うと怪物はまた闇夜に消えていく。
「我が友よ…この世界…奴の手で終わらせないから…」
そう言うと男は光の柱が消えると共に闇夜へと消えていった。
◇◇◇◇◇◇
それからまた月日が経ち、ボクは束の間の平穏を満喫していた。
月を元の軌道を戻し、世界のパニックは収まり、元の情勢に戻りつつある。
そしてボクはみんなと共に拘留されているマリア達の元へとみんなで向かい、その様子をマリアと共に離れて見ていた。
楽しそうに談笑するみんな。ボクは少しマリアが大事な話があるとの事で少し離れている。
「貴方のお陰でまたセレナと無事に過ごせる様になった。改めて言わせて…ありがとう」
「前にも言ったけどボクだけの力じゃない。みんなが頑張ったからこの結果になったんだ」
ボクはマリアへとそう伝える。
この結果を齎したのは自分だけの力ではないと。みんながいたからこそ、この結果を生み出せたと。
「それでも言いたかったの。貴方に救われて…貴方に助けられて…貴方のお陰で間違えずに済んだ…」
「そう言ってもらえてよかったよ」
ボクはマリアへとそう言った。
「でも、まだ完全じゃない。君達がみんな、自由になったら本当の意味でボクは君達が救われたと思っているよ」
「…やっぱり貴方は優しいのね」
「そんな事ないよ…君だからそう思うんだ」
「えっ!?」
そう言われてマリアが顔を赤らめる。
「ボクと一緒だから。同じくあの人に騙され、あの人に人生を滅茶苦茶されそうになったから自由になってほしいと思うんだ」
ボクはマリアへとそう伝える。それを聞いたマリアは顔を赤くしたまま、何処かジトーとした目でボクを見る。
「貴方…よくあの子達を勘違いさせる言葉を今みたいに吐いてる?」
「勘違いさせる?ボクはなるべく言葉を選んでるつもりなんだけど…勘違いさせる要因があった?」
何故かそんな事を聞かれ、ボクは疑問符を浮かべながらそう答える。
そう答えるとマリアは、これはある意味重症だわ…と呟いた。
「でも…それならまだチャンスはあるのかしら?」
「チャンス?」
「こっちの話だから気にしないで」
顔を赤くしたままマリアはそう言った。
そんな時、
「マリアさーん、ガンヴォルトさーん!話が終わったらこっちにそろそろ来てくださーい!」
響がそうボクとマリアを呼んだ。
何かな?と思い、そちらを向くと、何故か焦りながらも早く戻るようにジェスチャーする響。その背後に、何処か怒りのオーラを纏う奏、翼、クリス、シアン。そして可愛らしく頬を膨らませる未来とセレナ。そして何でこんな雰囲気になっているか分からず、疑問符を浮かべる切歌と、何となくその雰囲気に乗って頬を膨らませている調。
何があるんだ?と思いつつもマリアにそろそろ戻っても大丈夫か聞く。
「ええ、もう大丈夫よ。さぁ、行きましょうか」
そう言ってマリアがボクの手を引いてみんなの元へ向かう。
そしてみんなの元に向かうと奏、翼、クリス、シアンが物凄い剣幕で詰め寄り、その後にセレナと未来も詰め寄ってくる。
ボクは何故そんなに言われなきゃ言われないのかと思うが、それを言うとまた変に状況を悪化させると思い、とにかく謝ることに徹する。
そして何とか場を納める事に成功して会話が始まる。
戦いとは乖離した日常的な話。
そんなたわいもない話がボクの心を暖かくさせる。
こんな日常が続けばいい。そして必ず実現させる様にボクはより強くフィーネとの誓いを果たそうと一層思えた。
長く旅の様に果てしなく続いた道。だが旅の目的地は虚像であり、存在しなかった。
だが、それでも。
その旅の中であった出来事が、ボクに新たな目的を作り出していた。だからゴールが虚像であり、存在しなかったが、意味がなかったわけじゃない。
だからボクはその旅の果てしなく長かった旅を終わらせて、新たな目的となった道を歩み始めよう。
今度こそ虚像でなく、存在などしないまやかしではない本当の旅を。
「フィーネ。少しずつだけど…ボクが望み、貴方が見たかった世界…着実に進んでいるから…だから調を通して見守っていてくれ…」
ボクはその日常を噛み締めながらそう呟いた。
長らくお付き合い頂きありがとうございました。