戦姫絶唱シンフォギアAB   作:株式会社の平社員

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迸らないシンフォギアABG
11mVOLT


〜お見舞い〜

 

ガンヴォルトが帰還し、まだ安静の為に入院を継続している中、ガンヴォルトの病室は静けさなど微塵も感じない程騒がしかった。

 

「ちょっと!貴方!GVに抱きつきすぎなのよ!この前は私も流石に許したけど流石に我慢の限界よ!」

 

「シアンさん、私は長い間ネフィリムの中に居たせいでとても人肌恋しいのです。大好きなマリア姉さんには会えないですし、マムも病で集中治療室に入ってしばらくは安静で面会出来ない。そんな寂しい今の状況は仕方ないじゃないのでしょうか?」

 

シアンにそう言いながらベッドの上で身体を起こすガンヴォルトのお腹に抱き付くセレナ。そんな状況であるが為に、シアンの怒りのバロメーターは常に振り切りっぱなしであった。

 

「そうだとしても!GVに抱きつく事ないでしょう!」

 

「シアンも落ち着いて。あんな状態だったし、誰かの温もりを感じたいと思うのは仕方ないんじゃないかな?」

 

セレナに抱きつかれながら苦笑いを浮かべるガンヴォルトはシアンにそう言った。

 

「仕方なくない!GVに温もりを求めるのは違うでしょ!」

 

シアンはガンヴォルトの言葉にぎゃあぎゃあと喚く。なんでそこまで怒る必要があるのか分からないと苦笑いするガンヴォルト。

 

そんな中、セレナが抱きつきながら視線を上げてガンヴォルトに問う。

 

「それで…お兄さんは…GVって呼ばれていますが、それがお名前なんですか?」

 

「名前はない。だからみんなにはコードネームで呼ばれているよ。聞いたとは思うけど、ガンヴォルト。それがボクの名前」

 

「じゃあ、シアンさんがいうGVってGUN VOLTの頭文字をとっていたものなんですね」

 

名前を聞いて納得したようにセレナが言う。

 

「なんて呼べば良いのか分からなかったので…じゃあ私もシアンさんと同じくGVって呼んでも良いですか?」

 

「別に構わないよ。ガンヴォルトでもGVでもどっちでも呼んで良いから。どっちもボクにとって大事なコードネームだし」

 

「わかりました!GV!これから宜しくお願いします!」

 

そう笑顔で言うセレナ。

 

「宜しく。もう遅いかもしれないけど、ボクもセレナって呼ばせてもらってるけど大丈夫かい?」

 

「全然構わないです!むしろ、これから沢山呼んで下さい!」

 

そう言って更に抱きつく力を強めるセレナ。

 

「何が沢山呼んで下さいよ!下心見え見えなのよ!と言うか!いつから!貴方はいつからそんなにGVに懐くような要因があったの!?」

 

「懐くなんてとんでもないです。懐くなんてそんなものじゃありません。私にとってGVは絶望の淵に立たされていたのに、救ってくれた人なんですよ?それに、あんなにボロボロになってでも助け出そうとする姿を見てしまったら、そう思わないのもおかしくないんじゃないんですか?」

 

「グッ!?」

 

セレナの言葉に対してシアンもその様な状況であった為に何も言い返せない。

 

「何を言いたいのかさっぱりだけど、そろそろ離れて欲しいんだけど…そろそろボクも検診が…」

 

「嫌です!まだこの温もりから離れたくありません!」

 

「だから!いい加減にしなさーい!」

 

シアンの叫びが木霊する。と言ってもガンヴォルトやセレナにしか聞こえない為に、誰も注意する事もない。

 

ガンヴォルトもガンヴォルトで拒みもしない為に、更に厄介な事である。

 

だが、それもしばらくしてガンヴォルトの検診が始まった為に、泣く泣くセレナもガンヴォルトから離れるのであった。

 

「貴方はGVに接近禁止!分かった!」

 

「それはシアンさんが決めるのではなくてGVが決める事だと思います。それに、私にはセレナと言う名前があります。私はシアンさんともこれから一緒ですし、仲良くしたいです。だから、これからは名前で呼んでくれると嬉しいんですが」

 

「だったら!貴方も少しは自重しなさいよ!」

 

検診中でも木霊するシアンの叫び。だが、検診中の医師には聞こえない為、ただガンヴォルトは苦笑いを浮かべるばかり。

 

何をそんなに自重しなければならないんだろうか?と相変わらずの鈍感さを発揮するのであった。

 

◇◇◇◇◇◇

 

〜再会〜

 

二課の施設の中で依然として拘留されるマリア、切歌、調の三人。

 

だが、以前と比べ、明るい雰囲気であった。

 

何故なら、自分達を縛っていたアシモフの存在が完全にいなくなった事。そしてアシモフを終わらせたと知らせてくれ、出口無き異界、バビロニアの宝物庫から帰還したガンヴォルトの存在が三人を暗雲から抜け出させてくれたのだ。

 

そしてそんな雰囲気の三人に来客が訪れる。

 

その姿を見て真っ先に走り出したのはマリア。

 

そして来訪者に抱きつくと本当に無事な事を喜ぶ様に強く抱きしめた。

 

「良かった…本当に良かった」

 

「帰って早々に寝込んでごめんね。ちゃんと約束通り、終わらせたし、弦十郎の言伝を聞いたから無事を知らせに来たよ」

 

「無事で良かったデス!」

 

「本当に良かった!」

 

そんなマリアに続いて切歌と調もガンヴォルトに近付いて本当に無事な事を自分の事の様に喜んで抱きついた。

 

そしてガンヴォルトの無事を確認した三人。だが、時間が経っても中々離れない三人にガンヴォルトは苦笑いを浮かべる。

 

最近はみんなどうしてこうなんだろうかと思うガンヴォルト。

 

そんな時間が結構経ってからも離れない三人にガンヴォルトは言った。

 

「そろそろ離れてもらっても大丈夫かな?カメラでこんな状態をずっと見られているのも恥ずかしいし」

 

ガンヴォルトが言葉を発するとマリアがハッとなり、今の自分の状態を思い起こし、顔を赤らめてさっと離れた。

 

「ごめんなさい…嬉しくてつい…」

 

「大丈夫だよ。でもそれだけ心配をかけたみたいで本当にごめんね」

 

そして未だ抱きついた状態の切歌と調の頭を撫でて二人にも離れる様に促す。

 

二人もガンヴォルトから名残惜しそうに離れる。

 

「一応、無事の報告は済んだと思うから今後の事を話させて貰うけど、現状は君達三人はまだこのままの状態がしばらく続く。だけど悲観しないで欲しい。君達の完全な自由とは行かないけど、ある程度自由を保障する為に尽力するから」

 

ガンヴォルトは三人の状況がこのまままだしばらく事を伝え、それでもある程度の自由を手に入れるに尽力してくれる事を伝える。

 

「ありがとう、ガンヴォルト。こんな私達の為に動いてくれて」

 

「こんな、なんて言わない。ボクの仕事でもあるし…それに、こればかりはボクが今度こそやらなきゃならない事だから」

 

何処か含みのある言い方をしたガンヴォルト。何を含んでいるかは三人には分からない。だが、それでも三人にとっては嬉しい限りであった。

 

「ありがとうデース!ガンヴォルトさん!」

 

「ありがとう、ガンヴォルトさん」

 

そう言われて大した事じゃないと返す。だが、それよりも。

 

「さん付けしなくても別に良いのに」

 

今までガンヴォルトと呼び捨てだったのに急にさん付けされてガンヴォルトも戸惑ってそう返した。

 

「いやいや!敵として対峙してた時はそうデスが、私達を救ってくれて、こんなに…こんなに?」

 

「尽力じゃ無いかな?切ちゃん」

 

「そうでした!尽力している人を流石に呼び捨てするのは気が引けるデス!」

 

切歌がそう言って言葉が出て来ず言い淀むと調がフォローしてそう言った。

 

ガンヴォルトは別に気にもしないが、響や未来がそう呼んでいるのでそれで良しとする。

 

「二人がそうで良いのなら構わないよ。まあ、今日は仕事の話はここまでにしようか」

 

そう言ってガンヴォルトは話を切り上げると一度部屋から出て何かを持ってくる。

 

「この匂いは!」

 

「食べ物!」

 

切歌と調がガンヴォルトの持ってきた何か、バスケットからほんの少しだけ漂う匂いに気付いて嬉しそうに寄ってくる。

 

「ボクが心配をかけてたからあんまり食事が喉を通らなかったって聞いていたからね、そのお詫び。日本食の方が胃に優しいものがあったけど、三人の口に会うか分からなかったから胃に優しい物を挟んだサンドイッチだけどね」

 

そう言ってガンヴォルトはバスケットからラップに包まれたサンドイッチを取り出す。

 

「い、良いんデスか!?」

 

「本当に貰って大丈夫?」

 

「君達の為に作ったんだから構わないよ」

 

ガンヴォルトがそう言うと切歌と調はパァと嬉しそうな表情を浮かべてサンドイッチを受け取った。

 

「ご馳走です!」

 

「最近心配でまともに喉を通らなかったからお腹いっぱい食べれる」

 

「ここの食事も栄養とかしっかり考えられているし、美味しい筈だと思うけど…それに、あくまで小腹を満たすだけの量だからガッツリはないよ」

 

「それだけ貴方が心配だったのよ。助けてもらったのに、それなのに消えちゃったんだから」

 

「その節は本当に申し訳ない」

 

マリアの言葉に再度謝るガンヴォルト。そしてマリアにもサンドイッチを渡してサンドイッチを美味しそうに頬張る三人を見ながらガンヴォルトは魔法瓶からスープを紙コップに移してそれを三人に渡す。

 

「こんな美味しいもの久し振りデス!」

 

「携帯食料やインスタントよりも美味しい」

 

「本当にそうね。こら!切歌、小さいからって頬張りすぎよ!」

 

美味しそうに食べる三人。そんな切歌が美味しいと言いながら一気に飲み込んだ為に喉に詰まらせる。

 

「だから言ったのに」

 

「まだあるからゆっくり食べなよ」

 

そう言って切歌に水を差し出して背中をさするガンヴォルト。

 

「でも、本当にこんなに美味しい物久々だったものデスから」

 

「それは良かった…ん?久々?それに携帯食料にインスタント…」

 

久々という言葉に何か引っ掛かりを覚えたガンヴォルトはまさかと思い、新しいサンドイッチを切歌と調に渡して、嫌な予感がした為にマリアにも渡すついでに聞いた。

 

「まさかとは思うけど…敵対してた頃ってまともな食事も買ってなかったの?というかあの人の事だからほぼそうだった?」

 

「ええ、貴方達と敵対していた頃はまともに買い出ししても買うものも指定されていたから…アシモフは食事は携帯食とサプリメント、Dr.ウェルに至ってはお菓子ばっかり、私達に回せるお金で買えたのはインスタントくらいよ」

 

そう言うとガンヴォルトは何処か全くと呆れた表情を浮かべた。

 

内容はインスタントに携帯食料、足りない栄養はサプリメント。まだ成長期の子達がいる中でそんなものばかり。

 

かつての世界の事が蘇る。

 

アシモフが差し出す食事、栄養が取れるが美味しくない携帯食料。あの味に慣れればどうって事ないが、それでも成長期の子達がいるのにそれは無いだろうと溜息を吐いた。

 

何かを察したマリアも、乾いた笑みを浮かべる。

 

「貴方も苦労してたのね」

 

「…君達もね」

 

互いに乾いた笑みを浮かべる。

 

「これからはいっぱい美味しいものを食べさせてあげたいよ」

 

その苦労を知る一人としてガンヴォルトはそう呟いた。

 

「本当デスか!?」

 

「他にも食べられるの!?」

 

その言葉に反応する切歌と調。

 

「ああ、自由になったら美味しいものを沢山作ってあげたり、食べさせに行ってあげるよ。というかそうさせてくれると助かる」

 

苦労を理解している為にそう言った。

 

「やったデス!ガンヴォルトさん!約束デスよ!?」

 

「約束」

 

「うん、約束だ」

 

期待の眼差しを向ける二人へとそう言ったガンヴォルト。そしてマリアにも。

 

「ありがとう、ガンヴォルト」

 

そう言って微笑むマリア。

 

「苦労したんだからこれくらいさせてもらうよ」

 

そう言ったガンヴォルトは食べながら嬉しそうにする切歌と調を見てそう言った。

 

「それに、今後はマリアとも話さなきゃならない事が沢山あるからね」

 

「そうね、ある程度自由を取る為にも協力させてもらうわ」

 

「ありがとう、それ以外にも色々話さなきゃならない事もあるし」

 

「?他に何かあるの?」

 

「一緒に住むことになるし、説明をした方がいいからさ」

 

「なっ!?」

 

その言葉にマリアが素っ頓狂な声を上げる、顔を赤らめた。

 

ガンヴォルトはなんで言ったのだ?一緒に住む?どういう事?というか自由を手に入れるとガンヴォルトと一緒に住む事になるのか?それはどういう事なのか理解出来ないマリア。

 

というか、なんでそんな話になるのだ。いや、確かにマリアからしたらガンヴォルトという男は気になる人物であったりする。

 

絶望から何度も救ってくれた恩人であるし、それに、今まで出会った男性の中で最も信頼出来るし、それに正直、気にはなっている。そんな男性にそう言われて狼狽えない訳がない。

 

「まっ、待って!そう言うのは気が早いというか何というか…もうちょっとお互いを知ってからというか…」

 

そう言い淀むマリア。

 

「?確かに少し不安があるのは分かるけど、それでも説明しなきゃならないんだよ」

 

「だからってそんないきなりは…」

 

「いきなりで悪いとは思っているよ。でもセレナとシアンが一緒になって、今までと違ってセレナからシアンがあんまり離れられない以上仕方ないんだ」

 

「…はっ?」

 

その言葉に再び素っ頓狂な声を上げるマリア。

 

自分の早とちり、その事に恥ずかしくなる一方、目の前のガンヴォルトに対して少しだけ怒りをぶつけたくなった。

 

「そういう事はちゃんと主語をつけて話してよ!勘違いしたじゃない!」

 

「何を勘違いさせたかは知らないけど、主語をつけなくてごめん」

 

急に怒鳴られてたじろくガンヴォルト。そして自分にも非がある事をすぐに謝る。

 

「ガンヴォルトさんってなんか抜けている所あるデスね」

 

「確かに、一瞬なんかガンヴォルトさんと同居する流れに思った」

 

「そういう事か…それでもボクはいいけど、流石に部屋はもう満杯だからそれは出来ないかな?奏とクリスと住んでいるし」

 

「待って!さらっと爆弾発言してない!?あの子達高校生でしょ!?というかそれってあの子達からしたら同棲と変わらないじゃない!?」

 

「同棲って彼女や婚姻関係の人と住む場合でしょ?あくまで同居であってそんなんじゃないよ」

 

「それでもあの子達にしたらそんな感じじゃないでしょう!」

 

マリアはガンヴォルトの現状に驚き、声を荒げた。と言うかそんな状況で普通に過ごすガンヴォルトの鈍さにどこまでと感じる。

 

「ガンヴォルトさんって結構な鈍ちん?」

 

「何が鈍いんデスか?調?」

 

「いずれ分かるよ、切ちゃん」

 

マリアがガンヴォルトに何やら色々と言う中、それを見る調はその状況を把握してただ、そう吐露のであった。切歌は切歌で何でマリアは怒っているのだろうと疑問符を浮かべる。

 

そして一方、検査入院が未だ続くセレナ達。

 

「また何か嫌な予感がする」

 

「シアンさん、私も何か感じます」

 

何かを察した二人がそう呟いた。

 

「主にGVの件で!」

 

そして同時にそう声を上げるのであった。

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