戦姫絶唱シンフォギアAB   作:株式会社の平社員

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お久しぶりです。


15mVOLT

〜患者達の一幕〜

 

ICUから出てからナスターシャの病室にはセレナが度々お見舞いに来ていた。

 

「マム、身体の方は良くなっているの?」

 

不安そうにセレナがナスターシャの心配をする。ICUから出て、マリア達にも会いに行けるほど回復したのだが、それでもセレナは心配していた。

 

そんな不安そうなセレナに対してナスターシャは大丈夫と言う。

 

「確かに身体は未だ万全ではありませんが、快復に向かっています。以前に比べて充実した医療設備のおかげでなんとかなっております。それより、セレナの方こそ大丈夫ですか?後天的に第七波動(セブンス)能力者になって、何か異変など感じていませんか」

 

「大丈夫です!シアンさんと一緒になって異変なんて全然なくて問題ないですし、シアンさんと仲良くやってます!ねっ、シアンさん!」

 

セレナがナスターシャの問いに答え、虚空へと呼びかけた。ナスターシャには見えないが、セレナの向いた方向に電子の謡精(サイバーディーヴァ)の少女がいるのだろう。

 

現状セレナにしか見えないシアンの姿。どんな姿なのか分からないナスターシャはセレナに問いかける。

 

「セレナ、電子の謡精(サイバーディーヴァ)はどんな姿をしているのですか?」

 

第七波動(セブンス)名は電子の謡精(サイバーディーヴァ)ですけど…シアンさんをそうは呼んでほしくないです。それにシアンさんも不機嫌そうです」

 

セレナが不満そうにナスターシャに告げる。その言葉にナスターシャもセレナに対して謝罪する。その言葉にセレナがシアンに対して何か言ってどうやら許してもらえたらしい。

 

その事にホッとするナスターシャ。

 

だが、研究者として疑問になったことを、セレナにぶつけた。

 

電子の謡精(サイバーディーヴァ)…シアンが見える原理とはどう言ったものなのでしょうか?ガンヴォルトや装者達には見えるのに対して、他の人は見えない。聖遺物がやはり作用しているのでしょうか?」

 

ナスターシャの言葉にセレナも確かにとその事に対して疑問を持つ。そしてセレナはシアンに対してどうしてか分かるか問う。

 

しかし、セレナの表情を見るに、シアンもそれについては分からないと読み取れる。

 

「マム、シアンさんも分からないんだって。でもGVから聞きましたが電子機器にシアンさんがそれに移ってくれれば誰でも見る事はできますよ!」

 

セレナがそう言った。

 

「そうですか…なら、この中に入る事は可能か聞いてみてもらえますか?」

 

ナスターシャが備え付けのテレビをつけるとセレナにそう言った。

 

セレナはシアンに対していいかどうか確認すると大丈夫だと言った。

 

そしてテレビの中に、シアンが映る。

 

蝶を模した服装、そして可愛らしい容姿の少女。ナスターシャがシアンを見てそう感じた。

 

「初めまして、になりますね。私はナスターシャと言います」

 

『…ど、どうも』

 

普段から歳の近い人とは喋り慣れているが、年上の人との対面になり、テレビに移ったのはいいが、何を話していいか分からないような雰囲気を醸し出しているシアン。

 

「初めまして、シアン」

 

ナスターシャはそんなシアンへと声をかけた。

 

「先程は申し訳ありません。貴方の力であり、ちゃんとした名前があるのに名前を呼ばないなど貴方にとってとても失礼な事をしてしまいました」

 

まず先程の事を頭を下げて謝罪からするナスターシャ。

 

「も、もう気にしていないから!あ、頭を上げて!」

 

シアンはそんな様子のナスターシャに対して申し訳ないと思いそう言う。

 

「ありがとうございます。ですが、こればかりは謝罪せねばなりません。大切な名前がある以上、その名で呼ばないのはとてもいいものではないので」

 

ナスターシャがそう言った。聖遺物を研究していて、フィーネという新たな宿主を見つけ出す為の実験に携わっていたからこそ、人の名という大切なものを理解しているからそう言った。

 

「…大丈夫だよ…もう怒ってない」

 

ナスターシャの心情を表情から、かつての自分に優しくしてくれた研究者と同じような表情をしていたナスターシャにシアンは本当に怒っていないとそう告げる。

 

「ありがとうございます」

 

その言葉にナスターシャもようやく顔を上げてくれる。

 

「そして、これからもセレナと仲良くしていただけますか?」

 

子を思う母親の様な表情のナスターシャがシアンにそう問いかける。その暖かな雰囲気にシアンも絆され、もちろんと承諾する。

 

「ありがとうございます、シアン」

 

そして優しい笑みをこぼすナスターシャ。

 

「お礼言ってばっかり。そんなの当たり前よ。セレナとはほとんど一緒なんだから」

 

ナスターシャ同様に優しく、だが、何処となく困った様な表情を浮かべる。

 

「良かったです。貴方の様な優しい方がセレナといてくれて。これからもよろしくお願いします」

 

ナスターシャは再度シアンに向けてそう言った。シアンも照れくさそうにしているが、

 

「任せなさい。セレナの事はしっかりと見ているから」

 

シアンもナスターシャに向けて、そう言った。

 

だが、その言葉に不服そうに頬を膨らませるセレナ。

 

「まるで私が悪い子みたいな言い方は酷いです」

 

膨れっ面のセレナを見て二人は微笑ましく笑い、ナスターシャもシアンもそれについてセレナに謝罪する。

 

親子のような関係の二人。

 

親が居ないシアンにとってその光景は羨ましく見える。

 

「いいな…親子の絆みたいなのって」

 

思った事を思わず小さく口にしたシアン。その言葉を二人に聞かれて、思わず口を隠して少し恥ずかしそうにする。

 

そんなシアンの言葉を聞いたセレナはシアンの映るテレビに顔を近づける。

 

「確かに、私とマムには血の繋がりはありません。ですが、血の繋がり関係なく、親の愛を教えてくれたマムを慕わないなんてありません!私だけじゃありません!マリア姉さんも!暁さんも月読さんも!」

 

ドヤッという擬音が付きそうな顔でいうセレナ。

 

「セレナの言う通り、関わりとは血以外にも繋がりを愛を持ち、接していれば」

 

ナスターシャもそう言った。

 

「…そうだね。本当の家族じゃなくても、そうやって繋がる事が出来るのは私も二人を見てとてもそう思える」

 

「シアンさんとだって繋がれますよ」

 

シアンへと向けてセレナがそう言った。

 

「だって今は私と一緒なんですから。知らなくても、私を通してその温もりを一緒に感じることも出来ます。シアンさんも一緒に分かち合える。だから、シアンさんも私達と家族になれます」

 

セレナの言葉に何処かむず痒くなるシアン。

 

「…そうね。一緒に分かち合えるなら…それもいいかも知れない…」

 

自身に存在しない家族。親の愛情を知らないシアンにとって全く分からないもの。それをセレナは、ナスターシャは分かち合えると言ってくれた。

 

求めていたわけではない。だがしかし、決して望んでいなかったわけではない。

 

知りたい。どんな暖かさなのかも自分も知ってみたい。例え、血が繋がってなくても、家族とはどんなものなのか知ってみたいと思ったシアンはだからこそ言う。

 

「なら、こっちからもお願いするわ…これからよろしく」

 

少し恥ずかしそうに言うシアン。それを暖かく迎えるセレナとナスターシャ。

 

「こちらこそよろしくお願いします」

 

「これからもよろしくお願いします、シアンさん」

 

その答えにシアンは何処か心が満たされた様な気がする。

 

そしてそこからセレナがナスターシャの事をマムという様にシアンにも提案するのだが、流石にまだ難しいと一悶着あるのだが、それでも、病室の中はとても暖かな温もりに包まれるのであった。

 

◇◇◇◇◇◇

 

〜とある手紙と手記〜

 

未だ事件の処理に追われる機動二課本部。

 

そんな本部にまるで二徹でもしたかの様な表情の慎次が訪れる。

 

「司令、事後処理をしている際にこんなものを見つけました…」

 

そう言って慎次が出したのは散り散りとなった紙をつなぎ合わせた手紙と海水に浸かったせいか、ヨレヨレになった手記。

 

「…これは…その…まぁ、あの子のだろうな」

 

「はい…ちょっと読むのは流石にと思ったのですが…」

 

弦十郎はまずつなぎ合わせた紙の方から目を通して、なんとも言えぬ様な表情をして慎次を見る。

 

それは切歌が残したと思われるマリア達に向けたものかと思われる手紙。

 

悲壮漂う内容ではなく、別れを少しでも寂しくなさそうにしようとする為か明るく綴られている文字。

 

だがしかし、

 

無理にテンションを上げていたのか、誤字脱字も多く、何が伝えたいかよく分からないものとなっている。

 

「結局…フィーネはあの子じゃなかった事ですし…誰も犠牲にならなかったので良かったんですけど…これを必死に書いていたと考えると…」

 

「ああ…資料として見てしまったのはとても申し訳ないな…」

 

二人の間になんとも言えぬ雰囲気が漂う。決死の覚悟を持ったが、結局事なきを得て終わった事は喜ばしい事であろう。

 

だが、切歌にとってはそんな覚悟を持って書いて手紙はこうして残ってしまい、こうやって見られることを考えるとなんとも言えない気持ちになってしまう。

 

「これを見た者は?」

 

「僕が見つけたものですので、現状は司令と僕だけになります」

 

「…ならこれ以上傷口に塩を塗ってしまうのも忍びないな…これは保管ということはせず、あの子にひっそりと返しておこう」

 

「そうします」

 

苦笑いで切歌の残したと遺書を他の誰にもバレない様に返そうと決めた二人。

 

だが、結局この手紙は調に見られる事になり切歌はとても恥ずかしい思いをするのはまた別の話。

 

「となるとこちらはなんだ?」

 

「見れば分かります」

 

切歌の残した手紙を慎次に渡すともう片方の手記に手を伸ばす。

 

そしてそれを見たと思われる慎次はとても疲れた様な表情をしてそれをわかってもらいたいのか、弦十郎に読む事を薦める。

 

そしてその手記を見る弦十郎の目が、見開かれると同時に、すぐに眉間をマッサージするかに指で押し始める。

 

「…一つ聞く…これは…その…ウェル博士の日記なのか?」

 

「…そうでしょうね…まさか、アシモフに心酔していることは知っていましたが…」

 

「…心酔というよりは…」

 

そう言って頭を抱えた弦十郎は息を吐いて落ち着いてからもう一度日記に目を通す。

 

そこに書かれていたのはまるで乙女の日記とでもいうのだろう。アシモフとの日常を美化した様な事柄が記されていた。

 

アシモフとの訓練でアシモフと接近した時、ドキドキしたやら、アシモフと共に訓練後のシャワーを浴びたやら、アシモフに頼られて高揚したやら、ウェル博士がアシモフに対して心酔以外にもどの様な感情を抱いていたのか何となく察せる様な内容が書かれていた。

 

「…例え犯罪者てあろうとそこら辺の自由だろう。ウェル博士がそっちのけがあるとしても俺達には関係はないが…」

 

「はい、それに関しては自分達がどうこう言う立場でも無いです。しかし、これを見てしまうと…」

 

「まぁ、俺達としては知りたくはなかったし、ウェル博士としても知られたくはなかったろうな…」

 

そう言って全て目を通す事なく一旦、手記を閉じた弦十郎。

 

「あっ、司令。重要書類になるので全て目を通しておいてくださいね」

 

「…俺も全て確認しなければならない事なのか?」

 

「勿論です。今回の事件首謀者の手記ですから。全てに目を通して下さい。というか、それを僕も一通り目を通したので司令も確認してください」

 

何処か巻き添えを喰らえとばかりの慎次の圧に弦十郎もげんなりしてしまう。

 

そしてそれを全て目を通したと言う事が慎次の二徹ばりの表情になった理由だろうと理解する。

 

「…分かった。少し時間がかかるかもしれんが全てに目を通しておこう」

 

弦十郎は溜息を吐いてそう言った。

 

「…ガンヴォルトには言っておいた方がいいか?」

 

「…この件については一応伝えておいた方がいいでしょうね。ガンヴォルト君としては知らなくてもいいとは思いますが、一応今回の件については頭に入れておかなければならないかもしれませんし…」

 

弦十郎の問いに対して慎次がそう答えた。なんとも言えない雰囲気を醸し出した二人。

 

そして後にガンヴォルトにも知らされるのだが、ガンヴォルトはそれを見てもそう言った事には全くと言っていい程気付かず、腐ってもフェザーの頭目であった事だし、カリスマがあるのだな、と見当外れな感想を抱くので、それを聞いた二人も更に頭を抱えるのであった。

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