特務災害対策機動部二課に協力する事を了承して数日、生活に支障が出ないようにと眼鏡を貰った。もちろん、自分の視力に合うように作られた物なので今は快適に過ごせている。そして現在、ボクはその施設の中の訓練場に来ていた。あの時にボクに興味を持っていた女性、櫻井了子がボクの
最初はボクは
でも、彼女も引き下がらなかったため、少し言い合いになったが弦十郎と慎次の立ち会いのもと、能力を見せ、そのエネルギーの反応だけ解析するという事で話は付いた。
了子は、「もっと詳しく見たかったわ、力の奥の底まで」と、残念そうに言っていたが、彼女の言動にはもっと別の意図がありそうでこの人は信用してはならないと警戒する人物と認識した。
「ではガンヴォルト 、君の力をその空間で使ってみてくれ。その力をこちらで計測してみる」
弦十郎が別部屋からの指示が来たため、ボクは雷撃鱗を展開する。
「こんな感じでもいいかい?」
雷撃鱗を展開させるだけだが、装備もないため出力を抑えている。前回の戦闘同様意識を失ったら元も子もないからだ。
「驚いたな、こんな事も出来るのか」
「雷撃鱗と言って体表面に電撃のバリアフィールドを発生させるものだよ。もちろん、このバリアフィールドに触れば感電させる事も出来る、攻守一体の技」
あとは、ダートリーダーという銃があればさらにこの雷撃鱗からの雷撃を相手に誘導させる事も出来るが、現在はその銃はなく、二課の技術班が似たような物を作成中である。
「了子君、解析の方は?」
「はいはい。エネルギー反応の解析中よ。その雷撃鱗はいつまで展開出来るの?」
「ボクのEPエネルギーが切れるまで、EPエネルギーはボク自身がどのくらい残っているかは把握しているから、切れそうになったら解除するよ」
「なるほど。じゃあそのEPエネルギーが切れたらどうするの?また貯まるまで時間がかかりそう?」
了子が、そう聞いてきた。
「いや、エネルギー自体はボクの能力を使い過ぎてオーバーヒートしなければ勝手に回復していくよ。オーバーヒートしても時間をかければまた使えるようになるけど」
「便利な能力だな。しかし、そのEPエネルギーとはなんだ?」
「エレクトリックサイコエネルギー、ボクの能力に付随するもので、簡単に言えば力を使う燃料と思ってくれればいいよ」
ボクはEPが尽きそうになったため雷撃鱗を一度解除してEPをチャージする。EPのチャージが完了すると再び雷撃鱗を展開する。
「あの僅かな時間で回復したの?確かに戦闘で長い時間をかけて充電されるのを待ってたら大変だものね」
「確かにな。してガンヴォルト 、他にもどんな事が出来るんだ?聞いた話だと他にも球体のようなものを出せると報告にあったが」
弦十郎が質問する。球体、ライトニングスフィアの事だろう。
「他には生体電流を活性化させて身体能力を高めたり、細胞を活性化させて傷の治癒、他にも電子デバイスなんかのハッキングも可能だよ。で、その攻撃をここでやらなきゃダメなのかな?」
「ああ、思う存分やってくれ!」
弦十郎の声が室内に響く。そう言うのなら、多分大丈夫なのだろう。
ボクは再び雷撃鱗を解除して
「天体の如く揺蕩え雷!是に到る全てを打ち払わん!迸れ!
三つの雷撃の球体がボクの周りに出現して、身体を守るように公転を開始する。
「エネルギー大幅に上昇中よ!こんなエネルギー上昇見た事ない!」
スピーカー越しから了子の嬉々とした声が響く。ボクは公転する球体が役目を果たして消えそうになるのを感じ、球体を消した後に確認した。
「こんな感じだけど、解析は出来た?」
「ええ!良いデータを取らせてもらったわ!解析するのには時間がかかりそうだけど、なんとかなりそうよ!」
嬉しそうにそう言う了子。どこか不安だが、解析をお願いする。その後は生体電流の活性化による身体能力の調査を行った。普通の体力測定なものもあったが、戦闘訓練もあった。
この時、慎次が担当してくれたが、ボクの能力を使った時の身体能力に付いて行けるのとまだまだ底を見せない実力を見て、この人も何かの能力者じゃないのかと疑ったが、話を聞くととある忍者の子孫であり、自分も忍者だそうだ。
ボクの知っている忍者とは少し違う気がする。しかも、司令、弦十郎はさらに強いとの事。本当にこの人達は能力を持たない人間なのか?と少し疑った。
まあ、それはともかく一通りデータが取れたため、解析結果が出るまで自由にしていても良いという事になった。と言っても、ボクは外に出られる訳でもないため、施設内の部屋で過ごすか、トレーニングルームに行くかの二択になってしまう。
トレーニング、と言っても先程の調査で身体をかなり動かしているため、あまり行く気が起きない。となると、与えられた自室に戻り、弦十郎から貰った資料を読み耽るしかない。
「あっ…」
声がした方を見ると青い髪の女の子が立っていた。確か彼女はボクが気を失う前に会った女の子だった気がする。あの時は変な格好をしてたけど、今日は私服のようだ。女の子はボクを見るとすぐに進路を変えて逃げていく。と思ったのだが、逃げた先の角に身を隠すと、顔を半分出してこちらを覗いている。あれで隠れているつもりなのだろうか?
「えっと…」
言った方が良いのだろうか。だが、あちらはこちらを確認して逃げたのなら、人見知りなのか、関わりのない人がいたから隠れたのどちらかだろう。隠れきれていないが。無理に話すのも逆効果だと思い、気付かないふりをして、自室へと向かう事にする。
だが、彼女はボクがそのまま行こうとするとそのまま後から尾行してくる。幼いながらもかなり尾行が上手い。ボクは、角を曲がると同時に生体電流を活性化させ、そのまま長い廊下を駆け抜けて、次の角を曲がり、遠回りながらも自室へと向かった。
彼女には悪いが、弦十郎からは今は余り、課のメンバーとは関わらないよう言われてる。了子の解析結果が出るまでは大人しく部屋で資料でも読み漁る事にした。
◇◇◇◇◇◇
風鳴翼は叔父の風鳴弦十郎の手解きをしてもらうため、二課のトレーニングルームへと向かっていた。いつ起こるノイズとの戦闘を考えて、訓練を怠らない。なぜなら、翼は人類を守る防人なのだから。
「あっ…」
私は、トレーニングルームへと向かう最中、ある男の背中を見た。彼は、この前のノイズが出現したポイントにいて、シンフォギア装者ではないのにノイズを倒した男だった。
謎の多い彼がなんでここにいるのだろう?と思ったが、先程の声を聞いてこちらに顔を向ける。翼はすぐに道を引き返し、曲がり角から顔を出して様子を伺う。
彼は気付いているのだが、敢えてこちらを無視して歩いて行ってしまった。翼はそのまま、彼の後を尾けていく。彼が曲がったのを確認して、翼もすぐに後を追ったが、曲がった先を確認すると、すでに彼の姿はない。いくら足が速くとも、次の角に当たるまでの距離はそこそこ離れている。翼がここに着くまでに曲がる事は不可能なはず。
「一体何者なの?あの人は?」
これ以上追う事が出来ないと悟り、翼は諦めてトレーニングルームへと向かった。
◇◇◇◇◇◇
弦十郎との訓練を終えた翼は、先程の男の件を聞いてみた。
「叔父様。ここに来る前にあのノイズが出現した現場にいた人に会ったんですが、あの人は何者なんですか?保護してから、叔父様も緒川さんも何も言わないから気になっています」
「ああ、ガンヴォルトの事か」
彼はガンヴォルトと言うらしい。本名ではないという事ぐらいは分かるが、その事を聞くと彼は傭兵で本名を呼ばれる事がなくなって忘れたらしいだとか。
「彼、ガンヴォルトは一体何者なんですか?あのノイズを倒す事の出来る聖遺物以外の力、あの雷は一体…」
ガンヴォルトの事について説明を要求すると弦十郎は少し困った顔をしながらどう説明しようか悩み、そして口を開く。
「ガンヴォルトの出自は不明だ。だが、俺たちと異なる知識、力から別世界の人間と考えている」
確か、別世界に繋げる事の出来る聖遺物があるとは聞いた事があるが、それによってこの世界に流れ着いてしまったのだろうか。
「まだ、憶測の域でどうか分からんがな。能力に関しては
弦十郎はそう言った後、少し顔を強張らせて私の方に近付く。
「彼には協力を要請をしていて、ノイズとの戦闘にいずれ出るようになるだろう。その時、ガンヴォルトには気を付けろ」
「な、なんで?」
あまりにも突然だったので、素の言葉が出てしまう。
「ガンヴォルトは別世界にいた頃、傭兵に似たような事をしていたそうだ。傭兵という事は、雇われれば殺しもやる可能性もある仕事だ。もちろん、全ての傭兵がそんな奴ばかりではない。だが、金以外でも私利私欲のため動く連中もいる。人となり、彼の事が分かるまで、お前と組ませる事はないが、非常時の場合、お前とガンヴォルト、二人で対処してもらう可能性もある」
弦十郎は一拍おいて...
「そしてガンヴォルトが敵対するのであれば、戦わず逃げろ。分かったな」
翼は弦十郎の言葉の重みを感じ頷く。しかし、ある疑問も浮かぶ。彼が傭兵で敵対をする可能性もあると言っていたが、それなら何故、見ず知らずの私を助けるように、力を使ったのだろうか。分からない。
「分かりました。彼が我々に敵対する時は、命を優先して守ります」
「それでいい」
弦十郎は頷く。
「さて、今日はこれで終わりだ。明日も学校があるだろうから家に帰ってゆっくり休め」
「はい!では叔父様ありがとうございました!」
そして翼はトレーニングルームを後にした。
◇◇◇◇◇◇
一方…
「なるほど、彼の
了子は解析している
「この現存している物と全く意匠の異なる聖遺物と同じ、アウフヴァッヘン波は二つの波形が合成して作られている事が確認された事」
そこに映し出された画像にはそれぞれに名称が記載されていた。
「天叢雲」「八咫烏」「黒豹」
その三点の新たな聖遺物は、私が彼を回収した時、現場と少し離れていた場所に落ちていた物だ。私が触るまでアウフヴァッヘン波すら放たないこれらは最初はただのゴミかと思ったが、私は触った瞬間に、これがなんなのか理解した。
これは、彼と同じような
「これはなんなのか、なんてどうでもいいわ。この力を使えれば…」
了子はそう呟く。
「いや、まだ使えるかどうかも分からない代物。使い方が分かっても、うまく扱えなければ、計画の綻びにしかならない。だが…」
彼女はすぐに、その画面を閉じて再び
「この特殊なパターンさえ解析出来れば…私の悲願を…世界を一つに束ねる事が出来る…」
そこに映し出された蝶の羽の様な波形はまるで彼の力の波と共に歌うように重なり合っていた。