戦姫絶唱シンフォギアAB   作:株式会社の平社員

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31VOLT

ボクは留置所にて弦十郎の同僚と名乗る男にこの件に付いては無実という事を伝え、弦十郎の方に連絡を取ってもらった。

 

弦十郎に伝えたらボクは無実だと信じてくれている様だが、あの現場に銃を持っていたためそう易々とは信じてもらえそうではなかった。

 

一応弦十郎が到着するまでと検死の結果が出るまでは留置所に入れられる事となった。

 

「一応、機密組織である特異災害対策機動二課と言う所に所属しているのは風鳴に確認が取れて銃の携帯は仕方ないにしても、お前をまだ出す事が出来ない。銃自体は打つ事も出来ないテザーガンだったから広木防衛大臣とその秘書、ボディーガードを殺したとは考えられないし、お前の持っていたもう一つのバッテリーを積んでないと撃つ事の出来ない電磁加速を利用すると思われるもう一つの特殊な銃。あれが何なのか分からない限りお前を易々と出す事は出来ないし、それだけ分かったとしても広木防衛大臣の殺害容疑から外れる事はないだろう」

 

ボクと弦十郎の同僚以外いない留置所でそう言われる。バッテリーなどはボクの蒼き雷霆(アームドブルー)による電気供給のため必要がない為、傍から見ればモデルガンの様にしか見えないだろう。しかしダートリーダーに関しては別だ。二課の保有する最先端の技術を使って作られているものであり、その事を教える事など出来ない。

 

「その事に関しては機密があるから喋る事は出来ない。二課の事を喋る事も出来ないけど貴方だけは弦十郎の現在の職務を知っているからこの事を話したけどボクの口からはそれ以上の事を話す事は出来ない」

 

「全く、難儀な組織だな。特異災害対策機動二課ってやつは」

 

溜息を吐く様に言う弦十郎の同僚。

 

「まあ、風鳴があんなに否定するんだからお前が犯人じゃないとは俺も思う。広木防衛大臣の撃ち込まれた弾とお前の持っていたヘンテコな銃の弾の口径が合わない。それに聞いた話じゃ幾つもの犯行声明、それに特異災害対策機動一課の方からも広木防衛大臣の死亡している場所に行く前にそこに居合わせていた記録もあると連絡もあった」

 

「それならボクを早く出して欲しい所だけど、検死の結果、それに状況をもっと詳しく言わないといけない訳だから出す事も厳しいって感じだろうね」

 

「よくお分かりで」

 

ボクもこの件に関しては少し状況判断を誤ってしまった。あの現場に着いた時点で弦十郎達に連絡を入れていればこんな事にならなかっただろうと後悔する。

 

「ガンヴォルト!?何があったんだ!?」

 

暫く、弦十郎の同僚と話していると弦十郎が何人かの警察官に付き添われ留置所に入って来た。

 

「風鳴、忙しい中すまんな」

 

「いいや、こっちもお前が俺に連絡を取ってくれて助かった。それよりガンヴォルトを出す事は可能か?」

 

弦十郎は同僚と話してボクを出せるかどうか問いかける。

 

「済まんな、こっちも俺の様な下っ端が何言ったってこいつを出す事は出来そうにない」

 

「そうか、なら少しガンヴォルトと二人で話をさせてもらってもいいか?無理な事を頼んでいる事は承知の上だ」

 

「誰もお前を疑う奴はいないだろうがそれは出来ない。悪いが、一人は監視をつけさせてくれ」

 

「分かった。ならお前がついてもらえると助かる」

 

弦十郎がそう言うと警察官達に弦十郎の同僚が下がる様に命令をすると留置所から出して、そのまま部屋を移動する。そして取り調べ室に入ると弦十郎とボク、そして弦十郎の同僚の三人だけとなった。

 

「一応記録は必要なんでな。まあ適当にでっちあげるから安心しろ。それとこの部屋のマジックミラーとカメラはブラフだから聞かれる心配はない」

 

「助かる」

 

弦十郎はそう言ってボクに問いかける。しかし警察署内にこんな施設を作って何の意味があるのだろう?だが、今はその施設に感謝する。

 

「ガンヴォルト、今回の広木防衛大臣の殺害にお前は加担してないか?」

 

「当たり前だよ。ボクはあの場に来た時には既に広木防衛大臣は殺されていた。スーツに付いているこの血も広木防衛大臣を車から出す時に着いたものでボクは殺害に全く加担していない。それは検死の結果が出れば直ぐ分かる」

 

「そうか。でもお前は何故あの場所に?」

 

「一課の報告の後、奏達の病院に向かう最中にあの場所の近くを通ったんだ。そこであの場所に行って現場を調べていたら車が爆発。そしてタイミングよく警察が到着してこんな事になった。ボクも最初に二課に連絡を入れていればこんな事にならなかったのに…ごめん」

 

「全くだ。だが、お前の無事とお前が加担していない事が分かれば十分だ」

 

弦十郎は溜息を吐きながらも安堵した表情になる。そして真面目な表情をしてボクに問う。

 

「それで、調べている中で何か分かった事はあるか?」

 

「証拠や捜査の役に立ちそうなものは何一つ残っていなかった。あったとしても車が爆発してるから何か残っている可能性は低いと思う。だけど、手口から考えれば二年前のテロリストの可能性が考えられる。用済みな物を爆発させて証拠を消す。雪音クリス誘拐と同様にね」

 

「おいおい、今回の件は二年前のあの事件も絡んでいるのかよ」

 

同僚もそれを聞いて驚きを隠せていない。

 

「可能性としては同一組織だとボクは思う。二課にも何か情報は?」

 

「犯行声明の調査を行なっているが今のところ犯人は分からない。だが広木防衛大臣を狙っていたとなると機密データが狙いだったものと考えている」

 

「機密データの安否は?」

 

「機密データは無事だ。了子君が既に手にしていたからな。了子君も無事だ」

 

それを聞いて安心するが、妙な感じがする。

 

「何で了子との取引の後にこんな事が?テロリストは既に広木防衛大臣の移動ルートを把握していたはず。それなら重要なデータも狙うはずだ。それなのに広木防衛大臣の殺害のみ実行して逃走している。広木防衛大臣を狙っていただけとも考えられるけど少し引っ掛かりを感じる。事前に了子と取引を行っているのも既に知っていると思っているけど、了子を狙わないのは少し妙だ」

 

ボクの言葉に弦十郎も考え始める。確かに国にとって防衛大臣という役割はテロリストが狙うには十分な標的となっている。だが、それだけのためにこんな大それた事をするだろうか?元々テロリストでもあったボクにとってそこは引っ掛かる。

 

「お前の考え過ぎ、と言いたい所だがお前の考えについては経歴があるからそうとも言えない可能性もある」

 

弦十郎もボクが元々傭兵であり、テロリストであった事を伏せながら話した。

 

「とにかく俺達の方で調べてみる。お前の釈放と合わせてなるべく早く事を済ます」

 

そう言って弦十郎は立ち上がる。

 

「済まないが、ここで話した事は内密に処理してくれると助かる」

 

「お、おう。こっちで何とかしてみる。一公務員が聞いていい話じゃないからここで聞いてて後悔しそうだ」

 

「済まないな。ガンヴォルトとにかく、お前は今はもう少し我慢してくれ」

 

「分かった。頼んだよ、弦十郎」

 

そう言ってボクも立ち上がると三人で部屋を出る。弦十郎は入り口で待機していた警察官に連れられ、そのまま出口と思われる方に向かっていった。

 

「風鳴の奴も大変だな。お前もその若さでこんな事に巻き込まれて動じないのも凄いと思うけど」

 

「厄介事に巻き込まれるのは慣れてるさ。とにかく今は弦十郎を信じて待つよ」

 

そう言ってボクは弦十郎の同僚に連れられ再び留置所へと戻った。

 

◇◇◇◇◇◇

 

弦十郎が二課に戻るとミーティングルームにて機密データに入っていた任務への説明を了子がしていた。

 

弦十郎がミーティングルームに入ると了子はいったん説明を止めて、弦十郎にガンヴォルトの件を問いただす。

 

「弦十郎君!ガンヴォルトは!?」

 

「あいつ自身今回の件は何も関わってないらしい。だが、それでも広木防衛大臣の検死結果が出ない限り何とも言えない」

 

「そう…」

 

了子は残念そうにそう言った。

 

「とりあえず、今は機密データの任務についての説明を続けてくれ。あいつの事はその後に話す」

 

「分かったわ」

 

了子は弦十郎の言葉に頷き、先程の続きを話し始める。任務とはサクリストD、デュランダルを記憶の遺跡への輸送。そしてそれが明日の明朝より実施という事。それに向けての移送ルートの指定。了子は懇切丁寧に説明を終えてから弦十郎の方に向く。

 

「これが今回の任務内容よ。それで弦十郎君、ガンヴォルトにも参加してもらうつもりだったんだけどどうなの?」

 

「今回の任務までに釈放しようとも考えていたが、明日の明朝ともなるとそれは厳しいだろう。検死にも時間が掛かるし、現場にあった証拠になりそうなものを回収して鑑識に回してるそうだがいつまで掛かるかどうか…」

 

その言葉に誰もが絶句する。ガンヴォルトという大きな戦力を失って輸送任務を遂行しなければならないからだ。響も今となってはまともな戦力になったもののそれでもガンヴォルトの様に立ち回れるか不安が残る。

 

「とにかく、今いない者の事を考えて行動をするな。辛いだろうが俺から言えるのはそれだけだ。響君も辛いかもしれないが、明日の任務は君の手に掛かっている」

 

「…」

 

しかし、響から返事はない。響を見ると何か考え事をしている様だ。

 

「響君!」

 

弦十郎の叫びで思考の海から引き摺り出し、もう一度同じ事を言った。今度は力強く返事をしたが、再び考え事に戻ってしまった。

 

「はぁ…響君。後で俺の所に来てくれ」

 

弦十郎は溜め息を吐いて言う。二課のメンバーにもそれぞれ任務を全うするよう指示を出した弦十郎は響を連れてミーティングルームを後にし、応接室のような部屋に入った。響を部屋の椅子に座らせて弦十郎は響に言った。

 

「響君、ガンヴォルトの事で了子君から聞いたのか?」

 

弦十郎は響の悩みの原因と思われる名を言った。

 

「はい…了子さんからガンヴォルトさんの過去の事を聞きました。昔傭兵をしていて守る為に人を殺めた事を」

 

「…そうか。君はガンヴォルトの事をどう思っているんだ?人を殺した殺人鬼として軽蔑するか?」

 

「その話、俺達にも詳しく教えて下さい!」

 

ミーティングルームから追って来たのであろう。朔也とあおい、そして了子が部屋に入ってくる。

 

「藤尭、それに友里も…確かに、二課に所属してから古参以外だとお前達が一番あいつと付き合いが長いからな…お前達にも聞いた方がいいだろう。お前達はガンヴォルトの過去を知って軽蔑したか?」

 

「正直、あの話を聞いて頭の中はぐちゃぐちゃですよ。あいつが…気の利いた奴が人を何人も殺めているなんて聞いたら」

 

「…ガンヴォルトの事をサポートしてたつもりだけど、あの子…何も自分の過去を言わないからこれからどう接していいか正直分かりません」

 

朔也も友里も話を聞いてどう接すればいいか分からないようだ。

 

「そうか…了子君。君は皆にどんな感じで説明したんだ?」

 

弦十郎は了子に問うと七年前にガンヴォルトが言っていたような事を事細かに説明していた。

 

「了子君の説明した事が俺らの知っているガンヴォルトの過去だな」

 

「…何で…何でガンヴォルトさんは話し合いという選択を選ばなかったんでしょう?相手も人間なら話し合いが出来ていたかもしれないのに…」

 

響は少女と話し合いをしたいという思いもあり、なぜガンヴォルトがその選択を出来なかったかを弦十郎に問う。

 

「俺にもあいつの過去については分からない。そこはあいつから聞かないとさっぱりだからな。だけど俺はあいつの事を皆には信じて欲しいと思っている。了子君が話した通りだが、殺したくて人を殺めていた訳じゃないんだ」

 

「…だからって簡単に…はい、分かりましたなんて俺は答えられませんよ…」

 

弱々しい口調で朔也が言った。

 

「大体何で司令はあいつの事をそこまで信頼出来るんですか?俺や友里もあいつが人を殺しているなんて聞く前は信頼していました。でも、そんな聞いた後に信頼する事なんて出来そうにない…」

 

「藤尭の言う通りです。ガンヴォルトの事は信頼してましたけどその事を知った後信じられない…」

 

「そうか…」

 

弦十郎は何処か悔しそうな表情をする。了子もそんな弦十郎を見てられないのか言った。

 

「確かに彼は人を殺していると言っていたわ。でも、それだけで彼の今までの行動を全て否定して欲しくない。思い出して、彼が今までに沢山の命を救う為に行って来た行動を。奏ちゃんのお父さんとの約束を守れなかった時、一番苦しんでいた彼の事を。あれが私利私欲のために人を殺したような人の演技だと思う?」

 

朔也やあおい、そして響に了子が問いかける。

 

「私も彼の本心までは分からない。でも、彼の行動は人の命を一人でも多く救いたいという信念を持って行動しているわ。だから、簡単に彼を見捨てないで。そうなると彼が壊れてどうかなってしまうから」

 

了子の言葉を聞き入る。しばらくの沈黙が続く。沈黙を破る為に口を開いたのは響であった。

 

「分かりました。了子さんの言う通り私はガンヴォルトさんの事を信じます。私はまだガンヴォルトさんに会って間もないですけどガンヴォルトさんと一緒に戦っていて、私はガンヴォルトさんがそんな理由もなくその能力者さん達を殺したとは思いません。確かに人を殺すというのは間違いです。でも、ガンヴォルトさんだって殺したくて殺したんじゃないというのは了子さんの言葉で分かりました。それに私は緒川さんとも約束しているんです。ガンヴォルトさんを孤独にしないでくれって。ここで私がガンヴォルトさんを信じる事が出来ないと了子さんの言う通りガンヴォルトさんが壊れてしまうかもしれませんから。でも、ガンヴォルトさんにも黙っていた事を全部聞きたいんです。どうしてそうするしか出来なかったのかを」

 

「響君…」

 

響の言葉に弦十郎は少し安堵した表情を見せる。その言葉に続いてあおいが言った。

 

「年下の女の子にここまで言わせといて私達が今までの行動を否定して信じられないなんて言えるはずないじゃない。私も彼を信じます。だけど響ちゃんの言う通り、過去の事を洗いざらい吐いてもらって大きな一発入れないと私も気が済まないわ。今までそんな重要な事を黙っていた彼が悪いんだから」

 

「私達って…まぁ、俺も簡単にあいつの事を信頼していたくせに過去に人を殺した事で信じられないなんて都合が良すぎるよな…俺もあいつに何でそんな事をしなきゃならなかったのか全部ぶちまけてもらって一発デカいのを入れてやるよ。何で俺達の事を信頼してるくせにそんな事を黙ってたんだってな」

 

朔也も何処か吹っ切れて響やあおい同様に信じる事に賛同する。

 

「お前達…」

 

弦十郎はそんな皆を見て顔を綻ばせた。

 

「うん。それでいいと思うわ。彼には全部ぶちまけてもらった後に全員一発デカいのをお見舞いしてあげましょう」

 

了子がいつもの調子でそう言うと手を叩いて言った。

 

「とりあえずガンヴォルトの事は彼が出た後に翼ちゃんも交えて聞きましょう。ちょうどあの子も目を覚ましたそうだしね」

 

「それ本当ですか!?」

 

響は翼の目を覚ました報告を聞き、了子に聞き返した。

 

「ええ、さっきミーティング中だったから電話連絡じゃなくてメールで入っていたわ。とりあえず峠は越えたみたいだからこれから精密検査なんかをやって問題がなければ復帰出来るそうよ」

 

響はその事を聞くと胸を撫で下ろす。

 

「良い報告かも知れないけど、私達の最優先にやるべき事は明日の明朝より行われるサクリストD、デュランダルの記憶の遺跡への輸送よ。今回の作戦の要になるのは響ちゃんだから頑張ってね」

 

「はい!」

 

響は返事を返した。ガンヴォルトの過去の事は重要な事ではあるが今は置いておき、とにかく眼前にある大きな作戦に専念した。

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