戦姫絶唱シンフォギアAB   作:株式会社の平社員

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あと残すところルナアタック事変も半分くらいになりました。更新ペースは最近忙しくなってボチボチですがなんとか頑張ります。
それとお気に入り200人を越えることができました。お気に入りしてくれた皆様ありがとうございます。
そして評価をしていただいた方々もありがとうございます。


33VOLT

街外れにある豪邸の近くにある湖の辺り、そこにはネフシュタンの鎧を纏っていない少女、雪音クリスの姿があった。

 

「第七波動と言う力を持った二課に所属する男、ガンヴォルト。あいつがいないあの時にならチャンスがあると言っていたのに…結局、あいつもデュランダルも手中に収めるのにも失敗した…」

 

千載一遇のチャンスと呼べるあの時にクリスは何とか物にしようとしたものの響の急激な成長。響の歌により起動したデュランダル。そして、その力を暴走しながらも奮い、クリスを退けた。

 

「あいつのせいで…私はまた…私の目的が…争いのない世界が遠のいていく…」

 

クリスは唇を強く噛んで拳を力一杯握る。そして、あの暴走をしながらもデュランダルでノイズやネフシュタンの鎧すら退かせた響の事を思い浮かべて憎しみと怒りの入り混じった感情を吐露するように口にした。

 

「化け物が…」

 

その言葉に返答する者はいない。そしてある程度感情を制御出来るようになって一度息を吐くと手に握るソロモンの杖を見る。

 

「あんな化け物を確保するために私にこんな命令を…」

 

「化け物なんて思うのは無理もないはね。ソロモンの杖、ネフシュタンの鎧というアドバンテージがあるにも関わらずあの子とデュランダルの回収すら出来なかったんだものね」

 

不意に背後からそう言われ、振り返る。そこには黒で統一された服装をするフィーネが立っていた。

 

「フィーネ…なんであいつに固執する!私がいればあんな奴いなくても私達の目的は…争いのない世界を作り上げる事は可能だろ!確かにデュランダルの力が有ればもっと大きな力を持って争いを生む奴らをぶっ飛ばす事は出来る!だけど、あいつに固執する意味を教えてくれ!確かにあいつはデュランダルの覚醒をたった一度の歌で行ったけど、もうデュランダルが覚醒したのならあいつはもう必要ない!私がいればあんたのやろうとしている事は事足りるだろ!」

 

フィーネに向かい叫ぶクリス。だがフィーネは首を振る。

 

「今のあなたに教える義務もその言葉を口にする権利はないわ」

 

その言葉にクリスは唇を噛む。

 

「貴方には失望させられっぱなしだわ。言った通りの事もまともに出来ないなんて…。まぁ、今は機嫌が良いの。デュランダルの覚醒、それに…」

 

その言葉と共にフィーネは不気味な笑みを浮かべた。その笑みにクリスは恐怖を感じて後退りする。そんなクリスを見て笑みを一旦隠すフィーネ。

 

「そんなに怯えなくてもいいわ。まだ貴方にはチャンスをあげる。デュランダルは覚醒して二課のアビスに戻されて奪還は不可能。一旦デュランダルの回収は置いて次の機会を狙うとしましょう」

 

「…あいつの回収か?」

 

クリスの言葉にフィーネは頷く。

 

「そう。まだガンヴォルトも行動不能であり、最後のチャンスとなるわ。でも、もし次に失敗でもしたら私、貴方の事を嫌いになっちゃうかも」

 

その言葉にクリスは慌てる。

 

「何でだよ!何であいつにそんなに!」

 

「貴方が私の言い付け通り回収を行っていれば嫌いにならなかったのに」

 

クリスはその言葉を聞き、唇を噛み締める。そして、クリスは握っていたソロモンの杖をフィーネに投げつけて言った。

 

「分かったよ!でも、今度は私の好きにさせてもらう!こんなもの使ってまどろっこしい事しなくても私がどれだけこの計画の要になるか再認識させてやる!」

 

「そう、頑張ってね。貴方には期待しているわ」

 

クリスはフィーネの横を通り過ぎ、屋敷の方へ向かった。次こそ、あの女を立花響を捕らえる為に。そして、クリスの目的を達成させる為に。

 

◇◇◇◇◇◇

 

翼は目が覚めて以降、何度も精密検査を受けてようやく集中治療室(ICU)から出る事が出来たが、未だに自分の精神世界で言っていたシアンの一言が気になり、とにかく自分なりに足早にガンヴォルトに詳細を確認しようと、病院内を歩き、二課の本部に向かおうとしていた。

 

だが、未だに疲労やうまく動かない体で歩き回る事が出来ず、看護師に見つかってしまう。

 

「風鳴さん、集中治療室(ICU)から出たばかりなんですから安静にしていないと!」

 

「すみません…どうしても確認したい事があるので…」

 

「何の事だか分かりませんがいけません!貴方はまだ休んでないと治るものも治らなくなるんですよ!」

 

どうしても今すぐ確認したいと看護師の説得にも応じない翼。そんな中誰かがこちらに駆け寄って来るのが視界の端に見える。少し慌てたように近付いて来たのは慎次であった。

 

どうやら病室にいない事を知り、探していたのであろう。

 

「翼さん!まだ体調も良くないのに歩き回るなんて何をしてるんですか!」

 

「緒川さん…私はどうしてもガンヴォルトに確認しなきゃいけないんです…ガンヴォルトを呼んでくれませんか?」

 

「何を確認したいのかは分かりませんが、今彼を呼び出す事は無理です。ここで話す事は出来ないので、とにかく一旦病室に戻りましょう」

 

何故ガンヴォルトを呼び出す事が出来ないのか分からないが、とにかく慎次がいるならば翼が意識が戻るまでどうなったか確認しようと思い、慎次に連れられて自分の病室へと戻った。

 

看護師に車椅子を用意してもらい、慎次が病室まで連れてくると翼は慎次に支えてもらいながら、ベッドに腰を下ろすと慎次に問う。

 

「緒川さん、私が集中治療室に入っていた間について聞かせて下さい」

 

「…まずはその事ですが、翼さんの回復するまでの間に起こった重要な出来事だけを伝えます。まず一つ目は少女のこと、彼女は翼の絶唱を受けてからも逃げられています。これについては我々の至らぬばかりに申し訳ありません。そして二つ目、デュランダルを狙っている可能性もあり、二課よりも安全な記憶の遺跡へと輸送。しかし、ノイズと例の少女の妨害により失敗。デュランダルは響さんが何とか死守する事は出来ましたが、デュランダルは響さんの歌により覚醒しました。今は誰にでも使えるものになりより危険な状態になっています」

 

「デュランダルが!?立花は無事なの!?」

 

響の心配をする翼に驚きつつも慎次は響の無事を伝えた。

 

「何でデュランダルが立花の歌で覚醒したのかは謎の部分が多い…。専門家でもないから櫻井女史にそちらは任せるとして、何でガンヴォルトがいながらそうなったの?」

 

その言葉に慎次は首を振る。

 

「ガンヴォルト君は今回の作戦には参加していません。いや参加する事が出来なかったんです」

 

「何でガンヴォルトがそんな重要な任務に参加していないの?」

 

「ガンヴォルト君は今広木防衛大臣殺害の容疑を掛けられて留置所にいます」

 

それを聞いた翼は怒りを露にする。

 

「あの人が…ガンヴォルトがそんな事をするはずない!あの人は!」

 

「落ち着いて下さい、翼さん!」

 

立ち上がろうとする翼を何とか抑えるが未だにそんな事信じられないと否定し続ける。

 

「ガンヴォルト君は犯人じゃない事ぐらい、全員分かってます。でも、その場にたまたま居合わせてしまったのでこうなってしまったんです」

 

「だからって何でそんな重要な任務をガンヴォルト無しで行ったんですか!」

 

「政府直々の指定なんです。我々も上層部に逆らう事は出来ません」

 

その言葉に翼は唇を噛んだ。政府も警察も何故重要であり、守りの要となるガンヴォルトを特例で出したりせずにこんな事を行ったのか。考えただけでも怒りが込み上げる。

 

そんな翼を慎次が落ち着かせようとする。翼も身体の節々が痛み始めたのか抵抗は直ぐにやめ、大人しくなった。しかし翼はなお怒りを抑えられないが、今翼が何をしても事実は変わらないと言い聞かせる。

 

「我々もガンヴォルト君の重要性は承知しています。でも、政府に逆らう事で我々特異災害対策機動部全体の印象を下げる事は得策ではなかったのです。その事も司令達も分かっているはずです」

 

「くっ…」

 

「それに今はガンヴォルト君に対してか内部でも少なからず戸惑いの声も上がっています…」

 

その言葉を聞いて、翼は慎次にその事を問うとかつて翼を救った時に言った事をガンヴォルトの過去に行った殺害の件であった。

 

「…今いる二課の皆さんにも伝わったのですか…」

 

それを聞いた翼は拳を握る。

 

「はい。ただ古参のメンバーや何名かの職員はそれでもガンヴォルト君を信じてくれています。それに響さんも…」

 

「立花も…。それはまだありがたい事だ…今ガンヴォルトを信じてくれて背中を合わせる事が出来るのはあの子しかいないもの…」

 

翼は何処か安堵し、胸を撫で下ろした。

 

「あの子には辛い事ばかり押し付けてしまったけど、しっかりとやれているのね」

 

「はい。響さん、翼さんに認められる為にすごく頑張っていますから」

 

「そう」

 

それを聞いて翼はようやく落ち着いた表情に戻ってくれた。それを見て慎次もようやく落ち着いた翼に戻ってくれたので言った。

 

「ところでガンヴォルト君に会うと言うのは難しいですが、僕自身もこの後ガンヴォルト君に会うので何かあるのでしたらお伝えしますが?」

 

そう言うと少し翼は考えてから言った。

 

「これは二人だけで話したい事だから、出れたらこの病室に来るよう頼んでくれれば大丈夫です」

 

「…そうですか。分かりました。そのように伝えておきます」

 

そう言うと慎次は立ち上がって病室を後にする。そして扉を開けて出て行こうとした時に、慎次は余計な事を口にした。

 

「くれぐれも部屋を綺麗にした状態でいて下さいね。お見舞いに気になる人が来るんですから」

 

何処か含みのある笑みを浮かべる慎次の言葉に顔を赤くした翼はベッドの枕を投げようとするが直ぐに逃げられた事でその矛先を向ける先がなくなる。

 

「私とガンヴォルトはそういうのじゃ…」

 

顔を赤くした翼は握った枕を抱いて顔を埋めて顔の熱が治るまで待つ事しか出来なかった。

 

◇◇◇◇◇◇

 

ガンヴォルトのこと、そして自分の未熟によりデュランダルの輸送を失敗した響は親友の未来と休みの日の朝に走り込みをしていた。

 

あの時自分が未熟だったからデュランダルの力に飲み込まれてあんな大きな力を奮ってしまったと後悔し、自分の未熟を克服するためにももっと強くならないとと思い走り続ける。

 

そして、ガンヴォルトの事もだ。あんなにも尽くしてくれた人を簡単に見限ろうとした自分が恥ずかしく、慎次との約束も守ろうとしなかった事に後悔しそうになり、とにかくガンヴォルトの事を知り、本当の事を聞きたい。その思いが強くなる。

 

そればかり考えているといつの間にか目の前に未来がおり、そのまま抱き付いて響を止める。

 

「やっと止まってくれた…考え事してたと思ったけど私が止めようとしたのにもう一周したからびっくりしちゃったよ」

 

「えっ?」

 

そう言われて自分の決めていた走り込みの外周よりも一周多く走っていた事に未来に言われて気付き、そんなに深く考え込んでおり、走り続けていた事に驚く。

 

「ごめん未来。まさか、自分でもこんなに考えていたなんて思ってもなくて…」

 

「考え込むのはいいけど、無理したら体に悪いよ」

 

響の考えていた事を未来は詳しくは聞かずに言った。

 

「やっぱり響は変な子。それよりも汗もかいてびしょびしょになっちゃったし、部屋に帰って流そ?このまま身体が冷えちゃったら元も子もないし」

 

そう言われて響は未来からタオルを貰って汗を拭い、自室へと向かった。

 

自室に帰ると運動着をカゴに入れると二人は身体から汗を流して浴槽に浸かる。

 

「やっぱり走ると気持ち良いね」

 

身体を伸ばしながら言う未来に休みの朝から付き合わせてしまい申し訳なかったと謝る。

 

「ごめんね、未来。せっかくの休みなのに付き合って貰っちゃって」

 

「気にしないで。私も昔みたいに走って気持ち良かったし」

 

「流石元陸上部」

 

浴槽でたわいもない話をしながら身体を温めていると、少し未来が表情を曇らせて言った。

 

「あのね、響。この前なんだけど私達の探していた人…私似た人を見たかもしれないの…」

 

急にそんな話をされて少し驚くが、それよりも未来が言った探し人、ガンヴォルトを見た事に少し緊張が走る。ガンヴォルトは現在留置所にいる事を知っているがもしかして、その現場で…いや、それ以前にとも考えられるがここまで隠しているとなるともっと前にも未来が見ていた可能性も。

 

とにかく響は未来の次の言葉を待った。

 

「この前響が来なかった学校帰り、一人で探していた時なんだけど、CDショップのある大通りでね沢山のパトカーが通って来たの。その時何か事件があったのかなくらいに見てたんだけどそのパトカーの一台に金髪の男の人が乗っていたのがその人だった可能性が…」

 

未来の言葉に響は何も返す事は出来ない。その事は知っていたがまさか未来にも目撃されていたなんて思っても見なかったからだ。少し驚いた表情をする響に未来は話を続ける。

 

「ごめんね。この事黙ってて…あの人がするはずがないなんて私が言える事じゃないけど響には知ってて貰いたくて…まさか犯罪者だったなんて…もちろん違う可能性もあるよ…」

 

少し涙を浮かべる未来。確かに連行されていれば何か犯罪を犯してしまったと考えるのは妥当だろう。だが、響は未来に言いたくても言えない。未来が見た人が私の探し人であり、未来の探し人である可能性がある人で、今は無実の罪で入っているなどと。

 

「伝えてくれてありがとう、未来。でも、多分その人じゃないかもしれないよ。私の知る人はとっても優しい人で犯罪なんか犯す人じゃないもん…」

 

響の言葉の最後には力がなくなる。確かに、ガンヴォルトはそういう人じゃないと響は思っている。それにその事件の真相も。だが、それ以外にちらつくガンヴォルトの過去。ガンヴォルトの本質が分からないせいで言葉が小さくなってしまう。もちろん、響は信じたい気持ちもあるが、踏み込みたいが踏み切れない気持ちであった。

 

どうやら未来はそんな響を見て響が悲しそうに見えたのか自分の涙を拭って言った。

 

「そうだよね。響の言う通りあの人じゃないよね。もしそうであっても何か事件に巻き込まれただけって事もあるし、私としてもその人、響みたいに自分から厄介事に手を貸しそうだもん」

 

「ちょっと、私のやっているのは厄介事じゃなくて人助けだよ!?まあ、確かにあの時もそうだったし、そうかもしれないね」

 

未来の言葉に賛同する。未来にもあの人はそんな人じゃないと知って欲しい。しかし、機密によって話せないのがもどかしく、嘘を吐き続けなければいけない事が胸にチクリと痛みを与える。

 

「ごめんね、急に暗くなるような話ししちゃって…」

 

「いいよ、私も探している人らしき人の情報が入ってきたしさ」

 

チクリと痛む胸の痛みを抑えて未来に答えた。

 

「うん。響にこんな隠し事をいつまでもしたくなかったし、自分にも嘘を吐きたくなかったの。せっかく見つけたかもしれないのに嘘まで吐くなんて響に出来ないよ。だから響、私にも嘘は吐かないでね」

 

未来の表情を見て響は頷く。だが、今の自分は嘘ばかり並べている。既に未来を裏切っているのだ。この頷きも嘘であり、その事が響の胸に大きなしこりを残す事となった。

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