戦姫絶唱シンフォギアAB   作:株式会社の平社員

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お久しぶりです。
ようやく忙しい時期が終わり書こうと思った矢先にインフルエンザや里帰りなどが重なり時間がかかりました。



35VOLT

響と翼にとにかく男性が片付けていると誤解を招きそうな下着類や見られたらまずいものを響に任せて片付いた事を響が教えてくれたので病室に入り、片付けを手伝う。

 

さっき慎次へと連絡した際に溜息を吐いてやっぱりこうなりましたか…呟いていたがどうやら慎次もこうなるかもしれないと注意していたようだが結果的にこのような状況になった事を少し嘆いていた。

 

慎次もその連絡の後は直ぐに仕事が入っていたのでこの件について翼を交えて話し合いをした方がいいだろう。

 

ボクはゴミの分別や衣料品を畳みながら部屋を手際よく綺麗にしていく。

 

「まさか集中治療室(ICU)を出て数日でこんなになるなんて…」

 

ボクは翼の病室の惨状をもう一度確認して溜め息を吐く。確かに翼の部屋にはボクも入った事はないけど病室がこれだと普段使用している部屋はもっと酷い可能性が高い。

 

「…ガンヴォルトさん…いくら部屋がこの有様でも本人の目の前で言うのはそれはそれで酷な気が…」

 

ボクの言葉に反応して響が申し訳なさそうに言う。この部屋の主はボクの言葉に反応して枕に顔を押し付けて身悶えている。

 

「翼さん!大丈夫ですよ!人間、誰しも得意不得意な事はありますし!ねっ、ガンヴォルトさん!」

 

そんな状態の翼を見兼ねて響がボクに強く同意を求める。響の目にはこれ以上何も言わないで下さい!という風に見ている。

 

ボクは少し配慮が足りなかった事を自覚して翼に言った。

 

「ごめん翼。君がこんな状態なのに無神経な事を言って」

 

「そうですよ、ガンヴォルトさん!あの超人気の歌手が掃除が出来ないというおっちょこちょいがあったってそれもそれで個性ですし!」

 

「そうかもしれないけど、それを本人の前で言う響もボクに何か言えるような立場でもなくなるからね」

 

響の言葉がトドメになったのか悶えていた翼が撃沈したかのようにうつ伏せになって動かなくなった。流石に翼の精神も二人の心ない言葉に耐え切れなかったようで何処か悲しそうな感情が感じ取れる。

 

響も自分の失言にボクの言葉によって気付いたのだが時すでに遅しでとにかく話題を切り替える為にボクに話し掛けた。

 

「ガ、ガンヴォルトさんってかなり手際が良いですね。二課の男の人って皆こんなに家事が出来る感じなんですか?」

 

響は話題を逸らそうとしていたのだが全く逸れていない事に気付かずに言う。そしてしまったという表情をしてしまったが、とりあえず響の質問に答える。

 

「どうなのかな?ボクは元々一人暮らしが長いし、自分の事は自分でやらないといけない環境にいたからね。弦十郎は分からないけど朔也や慎次もこの位は出来るからあんまり気にした事ないな」

 

それを聞いて響はなるほどと頷いた。しかし、その事を聞いた翼はさらにベッドの上でどんよりとした雰囲気になる。とにかくこのままにしておく訳にもいかない為、翼に謝罪する。

 

「ごめん翼。ボクも君への配慮が足りなかったよ。確かに、響の言うように誰にだって得意不得意もある。それに今の状況で片付けをしろなんて酷いよね」

 

失言に対してフォローを入れたつもりだが、翼は未だにうつ伏せのままであった。フォローになってなかったかと思い、今は翼の病室を綺麗にしようと手早く部屋を片付けていく。

 

響もボクの様子を見て反応のない翼を心配しながらも部屋の片付けを再開した。

 

片付け中にタオルなどに埋もれている下着を何枚か見つけたり、スポーツ紙にある少しアダルトな広告を響が見て慌てふためいたりという事もあったが、何とか部屋の掃除を終わらせる事が出来た。

 

響と自分の分の丸椅子を用意して、お見舞いで持ってきていたリンゴの皮を剥いていく。そんなボクの様子を興味深そうに見る響。そして片付けてしばらく経っても先程の状態から動く気配のない翼。

 

「なんかこう、翼さんの新たな一面を見て少し驚いていますけど、ガンヴォルトさんがスーツ姿でリンゴの皮を剥いているのもとても新鮮ですね」

 

「そうかな?あぁ、でも響の前でこういう風な形で過ごした事もなかったし、新鮮と言えば新鮮かもしれないね」

 

響の言葉にそう答える。確かに響とは訓練やノイズの騒動などでは一緒にいる事がほとんどだったのでボクみたいに男性がこうしているのが不思議なのだろう。とりあえずリンゴを剥き終えて食べやすい大きさにカットしたら元々備え付けられていた紙皿とプラスチックのフォークを二つ取り出して一つを響に渡し、もう一つはボクが持つ。

 

「こっちが響の分。まだ果物はいっぱいあるから何か好きなものがあったら言って貰えれば切るから」

 

「ありがとうございます」

 

響はリンゴをムシャムシャと食べ始める。

 

「ほら翼、リンゴが剥けたから食べて」

 

ボクはうつ伏せになる翼に小さく切ったリンゴをフォークに刺して翼に差し出す。翼は枕から顔を上げ何処か不貞腐れた表情でボクの方を見るとそのままフォークに刺してあるリンゴだけ食べてまた枕に顔を埋めるのであった。

 

「拗ねないでよ、翼」

 

ボクは翼のそんな様子を見ながら再びリンゴを刺して翼に差し出す。それを音で感じたのか翼はリンゴだけを食べてまた枕に顔を埋めるのであった。

 

やれやれとボクは息を吐いて翼にリンゴを与え続けた。

 

そして響はというとそんなどことなく見せつけられているような感じの空間にいて甲斐がいなく世話をしてくれる彼氏がいたなら、という事とこんな甘い雰囲気の中自分は場違いなんではないだろうかと少しお見舞いのタイミングを間違えたかなとリンゴを食べながら思うのであった。

 

だが、個人的に翼の可愛らしい一面を見つけて少しほっこりとした。

 

◇◇◇◇◇◇

 

翼の機嫌を良くなり、響と翼も前のように蟠りもなく話し合いをしている最中、ボクの持つ携帯端末に連絡が入った。少し席を外すと二人に伝えて病室から出て話が出来る場所に直ぐに向かい携帯端末から折り返し連絡を入れる。

 

「どうしたの、慎次?休みを貰っているのに掛けてくるっていう事は何か重要な事?」

 

慎次から休むよう言われているのに掛かってくるという事は何か重要な事だろう。向こう側からは他のエージェント達が何やら騒がしく動いているのが何となく分かる。

 

『重要な、と言えばそうでもありますが、ただ君にも先に知ってて貰いたい事がありまして連絡を致しました。まずは広木防衛大臣殺害のテログループと思われるアジトを見つけました。もぬけの殻でしたが取り残された武装の中に広木防衛大臣に撃ち込まれた弾と同じ物とその弾が撃てる銃が幾つもあったのでほぼ確定だと思われます』

 

「そう。これでボクに掛かっている容疑は完全に無くなったと思ってもいいんだね?」

 

『ええ、こちらを提出すれば何とかなるでしょう』

 

ボクはそれを聞いて安堵する。容疑を掛けられたままだと動きにくい事はないが少し不安でもあった。

 

『それと次が重要な事なのですが、ガンヴォルト君。君の事をどうやらテロリストが嗅ぎ回っていると思われます』

 

「なんだって?」

 

『そのテロリスト達が残していった資料の中に君の特徴を完全に捉えたメモが残っていました。君の力、第七波動(セブンス)蒼き雷霆(アームドブルー)の事について』

 

ボクの存在は一応一課と二課が完全に秘匿しているはず。やはり内通者なのか。いや、一般人の誰かが漏らした可能性も。だけど、第七波動(セブンス)の事まで完璧となるとその線は消える。

 

『ただ、おかしいんですよ。こんな重要なメモをテロリスト達が処分もせずに置いていくなんて』

 

確かに慎次の言う通り妙だ。なぜテロリスト達はボクの能力などが書かれたメモを処分もせずにいなくなったのか。そしてその情報は今後の役に立つはずなのに持って出なかったのか。

 

『とりあえず、このメモについては通信端末に写真を送っておくので時間がある時確認して下さい。司令には伝えておきますので』

 

「分かった。お見舞いが終わった後一度本部に顔を出して確認してみる」

 

『すみません、折角の休みを』

 

慎次が謝るので気にしないでと言ってボクは端末を切る。テロリスト達が何故ボクの事も、そして何故二課にとって機密の情報を持って出なかったのか。

 

内通者かは確証はまだ裏が取れないとどうとも言えない。だがテロリストとの繋がりを考えるとネフシュタンの鎧を纏う少女の可能性も…。だが、こんな初歩的なミスをするだろうか。

 

ボクはとにかく、今までに聞いてきた情報を頭の中で整理する。しかし、いくら考えても完璧な解答は出てこない。

 

「とにかく一旦本部に戻って確認するしかないか」

 

ボクはそう思い響と翼へ帰る事を告げに部屋に戻ることにした。

 

◇◇◇◇◇◇

 

世間話をする響と翼。しばらく談笑していた所でガンヴォルトが誰かから連絡が来た為、病室から出て行くのを見送ると響は少し不安そうな表情で翼に問い掛ける。

 

「翼さんは…ガンヴォルトさんの過去を知っていますか?」

 

その言葉に翼は少し驚いたが、翼は特にそれ以外の表情を出さずに響に話した。

 

「ええ、知っているわ」

 

響はその言葉に肯く。

 

「貴方はそれを聞いてどう思った?彼が昔、人を殺した事があると聞いて、恐れを抱いた?」

 

「いえ…最初はあんなに優しい人が何でそんな事をしていたのか…何でそんな事を隠していたのか…それ以外にも色々な感情が目まぐるしく現れて混乱しました」

 

翼は響の解答を聞き、普通はそう思うかもしれないわねと言った。

 

「翼さんは知っていたようですが、最初聞いた時にどう思ったんですか?」

 

「私の場合…そうね。私がガンヴォルトのその時の感情を知っているからこそ、恐怖なんか感じなかったわ。それに、私の事を顧みず助けてくれたガンヴォルトを信用しないなんてあの時の私はそう思わなかったの。もちろんその答えは今でも絶対に変わらないわ」

 

そして、翼は響に自分が何故ガンヴォルトをそこまで信頼しているのかを話し始めた。

 

もちろん初めは翼も、弦十郎ですらも信用していなかった。それは彼が別の場所で傭兵をしており、その中で人を殺している可能性がある事を弦十郎に聞かされていたからだ。だが、そんな時に起こったのが七年前のリディアン初等部のノイズ襲撃。その中で未熟だった翼はノイズに囲まれてやられそうになった時にガンヴォルトが駆け付けて助けてくれた。その時の翼の状態などを考えたガンヴォルトは疑われているのにも関わらず隠していた大技まで使い、翼を助けてくれた。

 

そして、二課に戻ったガンヴォルトはその技について問われ、自分の危険性を肯定して、ガンヴォルトは自分のしてきた行いを、感情を曝け出して叫んだ。そして、その時の話を直で聞いていた翼は彼を支えなければ、彼を一人にしちゃいけないとガンヴォルトの過去を受け止めて翼はガンヴォルトを信頼していると言った。

 

「あの場にいた人達はガンヴォルトの苦しそうで辛そうな彼の叫びを聞いていたから彼が壊れないように支えなきゃと考えたと思う。多分、その時のガンヴォルトの詳しい感情は櫻井女史も説明してなかったんじゃないかしら」

 

響は彼の探すシアンと呼ばれる少女の事。それ以外だとあまり、激しい感情を出した所を見た事がない。

 

「確かに、どんな理由があれど人を殺めるという行為は悪いと捉えられるわ。でも、言い分を聞かずに悪と決めつけたり、軽蔑する事は何処か違う気がするの」

 

「私は軽蔑なんてしません!だって、ガンヴォルトさんは私の命の恩人でもあるんです!何も聞かないで悪い人と決めつけてガンヴォルトさんをこれ以上傷付けたくありません!」

 

その言葉を聞いた翼は微笑み、響に礼を述べた。

 

「ありがとう。貴方もガンヴォルトの味方になってくれて」

 

「私だけじゃありませんよ、師匠だって、緒川さんだって、了子さんだって、二課の皆さんはガンヴォルトさんの優しさを知っています。今はまだ整理がついていない人はいっぱいかもしれませんけど絶対にガンヴォルトさんを裏切るような人は居ません」

 

響は翼に向けてそう言うと、翼も嬉しそうにしている。響を釣られて嬉しそうに笑った。そんな時に病室の扉が開いてガンヴォルトが入ってきた。

 

「ごめん、翼、響。ちょっと急用が入ったから先に失礼するよ」

 

少し急ぎ気味な対応から、ガンヴォルトが呼ばれた事を理解する。

 

「あっ、それと翼。退院時期が分かったらボクにも連絡してくれないかな?話したい事があるんだ」

 

その言葉に響は黄色い歓声を上げ、翼は顔を真っ赤にさせた。女子高生にとってこの流れでその話の振り方は完全に告白する流れだと思う。

 

「もちろん響にもだ」

 

「えっ?」

 

翼の顔が今度は青くなる。ついでに響は顔が引きつっている。こんな堂々と二股宣言なのかと。しかし、場をこのようにした当の本人はその空気のまま話を続ける。

 

「ボクの過去を二人にも聞いてもらいたい。今、ボクが二課内でも言われてね。ボクも皆に話さなきゃと思ってね」

 

その言葉に翼も響も先程の考えを改めてガンヴォルトを見る。

 

「ガンヴォルトさんの過去…」

 

「うん。ボクがここまでに行なった経緯、そして何故そこまでやらなきゃいけなかったのかを翼が退院してから話そうと思う。だから、分かったらそれだけ知りたかったんだ」

 

「分かったわ。検査の結果で分かり次第貴方にも連絡をする。それに私も貴方に聞きたい事があるから時間がある時に私の病室まで来てくれると助かるわ」

 

「分かった。それじゃ、響。翼が無理をしないように頼んだよ」

 

そう言ってガンヴォルトは病室を後にして出て行った。病室の窓の先、リディアンの図書室にて誰かにその光景を見られていた事にも気付かずに。

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