戦姫絶唱シンフォギアAB   作:株式会社の平社員

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36VOLT

リディアン学院の図書室にて未来は響の事を考えながら本を手に取る。

 

「…なんで響は私に何も相談してくれないの…」

 

最近の響が自分に隠して悩んだり、迷ったりするのを目にして響の方から相談してくれるのを待っていたが、響は何も話してくれない。

 

それどころか最近は誰かから連絡が来ては用事が入ったと言って何処かに行ってしまう。話しているのは寮の部屋の中ぐらいである。それでも、響は上の空であったり考え事をしてしっかりと話を聞いてくれた事は稀になっている。

 

「はぁ…」

 

溜め息を吐く未来。響に無理に話してとは言いたくないが思い詰める程の悩みであれば親友である自分に話して欲しい。例えそれが自分の我儘だったとしても。

 

ふと、外が一望出来るガラス張りの壁を見る。向かいに見えるのはリディアンの敷地に隣接している病院。眺めが良い窓は所々カーテンが閉められたり、空気の入れ替えをしているのか空いてたり、色々な病室がここから見える。

 

流石に病室をじろじろ見てるのも悪いかなと思った未来はまた本棚に目を移そうとする。しかし、とある病室が一瞬目に入り、動きを止めた。

 

目に入った病室にいるのは先程用事があると言って別れたはずの響であった。遠くからでも親友の姿を見間違えるはずもない。しかし、その隣にいるのは響の大好きなアーティストであり、リディアン音楽院の先輩でもある風鳴翼らしき人の姿が。

 

何故、翼と響が一緒に?用事というのは翼が治療服を着ている所からお見舞いだろうか。だが、リディアンの先輩後輩という関係だけであり、一度食堂で会っただけの先輩のお見舞いに?響の追っかけが度を過ぎたのかと思いはしたが、それなら何故普通に二人は話しているのだろうか。

 

訳が分からない未来は頭を悩ませる。そんな時、その病室に一人の男性らしき人物が入ってくる。その男性は翼と響に何か伝えると、直ぐに部屋を出て行った。

 

だが、その出て行く時に見せた後ろ姿に未来は衝撃を覚える。

 

「な、なんであの人が…」

 

息を呑み、口元を両手で押さえてしまう。正面からは分からなかったが、その後ろ姿を見てあの時の、七年前の後ろ姿と重なった。

 

身長も服も違う。しかし、あの時助けてくれた人の背中、そして長い髪を三つ編みで束ねている金髪。

 

紛れもなく、七年前の未来を救ったあの人の背中であった。

 

何故あの場に?数日前にパトカーに乗せられて連れられていた人とは別の人なのか。それとも本人で警察関係者なのか。

 

未来の頭はあまりの情報の多さに処理が追いつかない。

 

そして何より感じたのが。

 

「なんで響はあの人の事を知っていたのに私に何も話してくれなかったの…」

 

親友は多分彼の事を既に知っていたのになんで自分に話してくれなかったのだという憤りを覚える。親友なのに、隠し事をしないって言ったのに。

 

「なんでなの…響」

 

その小さな呟きを発した未来は悲しさと疎外感に苛まれる。直ぐに未来はその光景を見ないように図書室から足早に退出した。

 

◇◇◇◇◇◇

 

ボクは一度二課に戻ろうとする前に、同じ病院にいる奏の元にも赴いた。だが依然として奏は目を覚ましておらず、眠り続けている。

 

特にボクが見舞いに来ていない間も特に異常はなかった事を聞き、何かあったら二課に連絡してくれるよう、奏のかかりつけの看護師に話を通して、直ぐに二課に戻った。

 

二課に到着してエージェント達のデスクのある部屋の自分のパソコンを開き、先程慎次から連絡があったメールを開く。そこにはテロリストが潜伏していたアジト、そしてその中に残された物の写真がずらりと表示される。

 

そして、それらを一通り見終えてから本題である、ボクの特徴を捉えていると言われるメモの写真を開いて見た。

 

「…確かにボクの特徴、第七波動(セブンス)の詳細が書かれている…でもなんでこんなものを残して行ったのか…」

 

病院内でも慎次が言っていたこのメモを処分もせずに残して行った理由。思っていたよりも早く二課のエージェント達に場所がバレた為とも考えたが、爆弾を使って証拠隠滅しようとする連中だ。それは考えにくい。それか、テロリストの協力者が何かしらの意図があってそのメモを残した。しかし何故?他にも誰かボクの事を調べている人間か組織でもいるのか?

 

そんな事を考えながらメモの写真に他に何かないか確認していると、通信端末に連絡が来た。

 

『ガンヴォルト君、今お時間大丈夫でしょうか?』

 

「大丈夫だよ。丁度二課のパソコンでさっき送って貰ったメールを確認してる。何かあったの?」

 

『いえ。あのメモ以外に特に目ぼしい手掛かりは無さそうです。今見てるならあのメモを見て率直な意見をガンヴォルト君にも聞きたくて』

 

ボクはメモを見た感想を述べる。

 

「さっきも言ったようにこのメモを処分せずに逃げるのもおかしいと思う。内通者がいても多分同じはず。ボクの事を調べているなら何故そのままにしたんだと感じたよ。リスクがあるのも関わらず…。考えられるのは内通者以外にもボクの事を嗅ぎ回っている人物、組織がある可能性、そして第七波動(セブンス)を利用しようとしているのかもしれない、がボクがメモを見て思った事。でも、第七波動(セブンス)に関しては能力者であるボクですら分からない事があるし正直、何かしようにも出来ない事が救いかな」

 

『ですがなんらかの方法で君を捕らえて奇跡的に能力を使わせる事だって考えられます。油断は出来ません。それにまだ分からない事だらけの能力をどうやって使用するか。他の組織…内通者に加え、テロリストに加担して他の組織まで動いているとなると相当厄介になりそうです』

 

「ボクの第七波動(セブンス)が既に見えない敵に存在がバレているようだし、気をつけるよ」

 

『お願いします。それと、直ぐに報告もね』

 

慎次は最後にそう言うと通信を切った。

 

現状確認出来る事はした。今はやる事はなくなったのでこのまま帰ろうとも考えたが、写真でしか見てないメモを実際に見る事でまだ得てない情報を捉える事も出来るかもしれないも思い、残ろうとも考えた。

 

「そう言えば翼がボクに何か話したいと言ってたな」

 

先程、病室を後にする時に言っていた翼の一言。また何かの小言かと思っていたが、どことなく、そんな雰囲気ではなかった。

 

「…もう一度、翼に会うしかないか…」

 

ボクはそう呟くと起動していたパソコンをシャットダウンする。慎次もいつ帰るか未だ分からないし、ただここで待っていても進展する事はないだろう。

 

ボクは立ち上がり、二課を後にした。

 

◇◇◇◇◇◇

 

ガンヴォルトが部屋を後にして、残った二人は風を当たりに屋上に来ていた。

 

「ガンヴォルトさん、行っちゃいましたね…」

 

「ええ、ガンヴォルトもやる事があるから仕方ないわ」

 

「でも、ガンヴォルトさんも大変ですね。無実の罪で捕まってようやく出れたと思ったら、直ぐにまたお仕事なんて」

 

「仕方ないわ。これもガンヴォルトという戦士の務めだもの。でも本音を言うとあまり頑張り過ぎないようにして貰いたいわね…」

 

心配そうにそう言う翼。

 

「翼さんはガンヴォルトさんが大好きなんですね」

 

響は翼の言葉にそう返す。どれだけガンヴォルトの事を思い、大切に思っているか分かる。だけど、翼のガンヴォルトを思う感情はそれだけではない事も。

 

「なっ!?あ、貴方は何を言っているの!仲間として当然の心配事でしょ!」

 

「そうかもしれませんが、翼さんの言い方は多分、あまりに鈍感な人じゃない限りバレバレだと思いますよ?」

 

その言葉に翼は顔を赤くしながらも響は笑いながら答えた。

 

「貴方も緒川さんも一体何で私に対してそんな事を言うのかしら…」

 

そう呟いて、顔は赤くなったままだが、表情を直して響に伝える。

 

「私が戦えない今、ガンヴォルトと共に戦い、ノイズの脅威を退ける剣は貴方しかいないの。私からもお願いするわ。ガンヴォルトを支え、力になってあげて」

 

その言葉を聞いた響も笑みを浮かべて答える。

 

「もちろんです。翼さん以外にも緒川さんや師匠にもガンヴォルトさんの助けになれるように頼まれていますし、私の守りたい人にもガンヴォルトさんも含まれてますから。あっ、もちろん頼まれたからとかそういうのじゃありませんよ!?」

 

響は誰かに頼まれたからそうしているという事だけは違うと否定する。

 

「私は二年前のあの日、翼さん、奏さん、ガンヴォルトさんに助けられたからこうして今の私があるんです。奏さんもガンヴォルトさんも翼さんだって他人だからとか関係なく、守りたいから戦った。だから私もどんな小さな事でも誰かの助けになりたいって思ったんです。それに、私の胸にはガングニールがあって、皆を助けられる力を与えてくれます。それを使わずにただ傍観するのなんて性に合いません。だから、この胸にあるギアを使って戦って守りたいものを全部守りたいんです」

 

「それが貴方の覚悟なのね。でも、貴方がそこまで背負ってしまう必要はないと思うの。私達ならまだしも、貴方はあの場ではまだ何も力もない人だったんだから。そこまでしなくてもいいのよ」

 

「いいえ、これは私が決めた事なんです」

 

響の目には強い意志が宿るのを見て翼はそこまで決めているなら何も言う必要もないと感じ、それならいいわと答えた。

 

「だから、しばらくガンヴォルトさんの背中は任せて下さい!」

 

「分かった。ガンヴォルトの事をお願いね」

 

「はい!」

 

響は翼に向けて力強く頷いて見せた。

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