戦姫絶唱シンフォギアAB   作:株式会社の平社員

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37VOLT

ボクは再び病院を訪れたが、翼の病室には誰もいなかった為、出直そうかと考えたが、先程あまり奏のお見舞いも出来ていなかったのでそちらに向かう事にする。

 

翼の様に広い病室とは違い、生命維持装置や心電図などの医療機械が所狭しと置かれ、その中心にあるベッドの上には奏の姿があった。

 

二年前のあの時から変わらない奏の表情。今にも目が覚めるのではないかと思う事がある。

 

でも、一度も目を覚さない。だが、ボクは必ず奏は目を覚ますと信じている。

 

そんな時に、奏の病室の扉が開く。

 

入ってきたのは了子であった。

 

「あら、ガンヴォルト。貴方も奏ちゃんのお見舞いに来ていたの?」

 

「うん。さっき少しだけ顔を出したんだけど、やっぱり奏の様子が気になってね。了子もお見舞い?」

 

「私はちょっと奏ちゃんのこの昏睡状態が聖遺物によるものなのかの検査よ。異端技術はある程度は翼ちゃんや奏ちゃんのお陰で安全面は確認出来ているけど、こんな状態になってしまったんだから、私の知識がまだ足りなかったのかもしれないと思ってね。でも、二年前から検査してるけどこれと言って進展はないわ」

 

悲しそうに言う了子。その態度からは本心でそう思っていると感じる。だが、何故かボクにはその言葉を信じる事が出来なかった。

 

過去にあった彼女のボクの持つ第七波動(セブンス)への興味、それに数日前に起きた広木防衛大臣の事件。何故彼女は狙われなかったのか、もちろん了子は対象として見られてなかった可能性もある。でも、そんな都合の良い事があるだろうか。

 

「どうしたの?そんな難しそうに考え込んで」

 

了子の言葉に一旦先程までの思考をやめて何でもないと言う。

 

「そう。それよりもガンヴォルト、貴方本当に休んでる?今日出所して疲れを癒す為に弦十郎君が気を利かせて休みをくれたのに。お見舞いに来るのは良いと思うけど自分の体調管理もしっかりとしなきゃダメよ?」

 

「分かってるよ。それに奏の様子も安定してるからもう少ししたら帰るよ」

 

「なに、ガンヴォルト?貴方も男ね。今から奏ちゃんの検査って言ったのにまだ残るの?確かに奏ちゃんのグラマラスなボディーは男の人にとって目を引くものがあるけどそこでがっついたりしたら女の子は」

 

「了子は要らない話が多いよ。そうだね。女の子にとって男に身体見られるのは恥ずかしいと思うし帰るよ」

 

ボクは了子に窘めるように言うとそう言って奏の病室から出ようとする。

 

「あっ、待ってガンヴォルト」

 

了子に呼び止められ、足を止める。

 

「そう言えば最近、テロリストの動きが分かってきているけど進展はあった?」

 

急な話の切り替わり方に呆気にとられたが、先程慎次から来たメールの内容を伝える。どうせ後で知らせるより今知らせた方が良いだろう。

 

ボクは了子に先程の内容を説明し終える。勿論、メモの事も話した。

 

「貴方の事を調べている組織…確かに災害派遣で貴方の力、第七波動(セブンス)の力を実際に目にした人は沢山いるでしょう。でも、貴方の事は一課や二課が当然秘匿している訳だし、バレている可能性もそこまである訳じゃないはず。貴方が助けた人の誰かが広げていたらさらに問題で貴方が活動してきた地域の災害救助者の全員に状況確認が入るわ」

 

確かに、正体を探られているならその線もあるだろう。だけどメールにも書かれていたボクの能力、第七波動(セブンス)蒼き雷霆(アームドブルー)まで知る事は出来ない。だからボクはその線はないと伝える。

 

「そうなると出処は弦十郎君や貴方も疑っている内通者という訳ね」

 

「そうなるね。だから、どんな情報でも見逃せない事になるんだけど、そんな簡単に内通者が見つかるなら誰も苦労しないんだろうけど」

 

ボクは溜息を吐いて、了子に奏の検査を遅れさせてごめんと謝ると奏の病室を後にした。

 

◇◇◇◇◇◇

 

病室に残された奏と了子。しかし、了子は奏の検査をする訳でもなく、近くにあった丸椅子に腰を下ろして考え込んでいた。

 

「…どういうつもりだ、あの男。自分から情報を頼んだのに、なぜ証拠を残す馬鹿な事をしでかした…」

 

広木防衛大臣暗殺に携わっているテロリスト。そして、テロリストに対して莫大な資金を投資して操り、聖遺物、そして先程出て行ったガンヴォルトの情報を依頼した男の事を考える。

 

こっちも最近になって二課などが内部調査などをしており警戒が強まっている中、態々なぜそんなミスを犯したのか気が気でならない。

 

「全く、何処か掴み所のない人間だと思っていれば、とんだ思い違いだったか」

 

憎しげに吐き捨てるように呟くと了子は奏の腕に繋げられた点滴に触れると何かを念じるように目を瞑る。

 

「これでまだしばらく目を覚まさないだろう…」

 

そう呟くと、再び丸椅子に腰を下ろして今度は先程と違いしっかりと検査しているように近くの機材を弄り始めた。

 

「貴方にはもしもの時に役に立ってもらわないといけないから、今はまだ眠っていて頂戴ね」

 

了子の口調が先程と変わりいつもの感じに戻る。そして何事もなかったかのようにそのまま検査を続けた。

 

だが、

 

「貴方も私の悲願を邪魔するのなら容赦しないわよ…アッシュボルト」

 

ここにいない、情報を依頼した挙句ミスを犯した男に対して再び憎しげにそう呟くのであった。

 

◇◇◇◇◇◇

 

ボクは奏の病室を後にして翼の病室へと向かう。病室のドアのインターホンを鳴らして翼がいるか確認すると直ぐに扉が開く。

 

「翼、また来たよ」

 

「ガ、ガンヴォルト!?」

 

少し眠そうにしていた翼が恥ずかしげに顔を赤らめた。眠る前に来て迷惑だったかなと思う。

 

「眠る前だったんでしょ?明日にまた来るから休むかい?」

 

「だ、大丈夫よ、それよりも一日に二回も来るなんてガンヴォルトこそ珍しいじゃない」

 

「途中で帰っちゃったからね。もう少し翼の様子が見たかったのと、さっき別れ際に言われた言葉が気になっちゃってね」

 

ボクはそう言うと翼は少し考える。そして少し間を置いて翼がボクにとって思いもよらない言葉が飛び出した。

 

「宝剣って何か分かる?」

 

ボクはその言葉に一瞬動揺しかけるがなんとか抑え込んで平然な態度を装う。

 

「…神話や伝承で出てくるような架空の剣?新しい(スキル)のアドバイスか何か?」

 

だが翼はボクの心情を理解しているのか首を振る。

 

「隠さなくていいわ。宝剣…聖遺物のような何かっていう事は聞いたの…それにシアンの第七波動(セブンス)電子の謡精(サイバーディーヴァ)の本当の能力は精神感応の事も」

 

ボクはその言葉を聞いた瞬間に息を飲む。何故誰にも話していないその事を翼が知っているのか。そして電子の謡精(サイバーディーヴァ)の本当の能力の事を。

 

「…なんで…なんで翼がその事を…一体誰に…まさか、翼が内通者なのか?」

 

ボクの中で今まで一緒に戦ってきた翼が内通者なのかと疑ってしまう。その言葉に翼は首を振る。

 

「この事を聞いたのはつい最近の事だから今この事を知っているのは私しかいない。なんで貴方はこの事を隠していたの?」

 

誰だか分からない。だが、翼に何故そのような事を言ったのか。この世界で今の所ボク以外知り得ない事を知っているのか。そして、最近と答えた理由。翼はここ数日は会える状態ではなかったはず。

 

「…隠していたのは謝るよ。でも、宝剣に関しては翼が退院してから皆に説明する予定だった。けど、電子の謡精(サイバーディーヴァ)の事はシアンの力の事は話すつもりなんてなかった。なのに翼はなんでその事を知って…」

 

「誰かから聞いた事は口止めされてるの。でも、内通者でもない貴方の味方よ」

 

その言葉を聞いてボクは現場で知り得ない事を何故翼が知っている。内通者がもし翼とするならボクに堂々と聞くだろうか?ボクは悩み続ける。

 

「どんな理由があれ、嘘を吐かないでと前に言ったでしょ。私は絶対に貴方を裏切らない。前に貴方に誓ったんだから。貴方が苦しんだり悲しんだりする原因は私の剣で払うと。だから、教えてシアンの力の事…電子の謡精(サイバーディーヴァ)の事を」

 

ボクはその言葉を、翼が言ったボクへの誓いを思い出す。ボクはあの時の翼の覚悟を無碍にした事を後悔した。こんなにもボクの事を信じていてくれるのになんで翼を疑ってしまったのか。でもボクはまだあの人の事を思い出すと人を信頼する事は出来ても完全に信用する事が出来ない。もしまた信じた者達に裏切られたなら…。

 

「ボクは…翼の事を信用はしている…でもボクには信頼をする事がまだ出来ない…また同じように…」

 

ボクはあの時のように…あのような形で裏切られたならボクはもう立ち上がる事なんて…。

 

「大丈夫。私は貴方を絶対に裏切らない」

 

翼がベットから降りてぎこちない動きで側に寄るとボクの手を握っていた。その暖かさにボクの心が揺れる。

 

本当に信じて良いのだろうか?翼は絶対に裏切らないのか?ボクの心が揺らぐ。そしてボクが悩んでいる事を見透かされたのか翼はさらに握る手に力を込めた。

 

「大丈夫。私はずっとガンヴォルトの味方だから。何度も言ってるでしょ?あの日の誓いを反故するような事は絶対にしない」

 

ボクはその言葉でかつてボクを慕い信じてくれたシアンと重なった。いつまでたってもこのままじゃいけない。ボクも先に進まなきゃいけない。決意を胸に秘め、翼を信じてボクは自分の知る限りのシアンの力を打ち明けた。

 

「…ボクも詳しくは知らないけど、シアンの第七波動(セブンス)電子の謡精(サイバーディーヴァ)は翼の言う通り精神感応能力。シアンの歌を聴いた能力者に干渉して能力を引き出したりする事。翼や奏、響同様に歌が能力のトリガーになっている。ボクもシアンの歌う歌で何度も救われた」

 

「シンフォギアと同じ歌の力…」

 

「そう。そして、シアンの力はボクの持つ蒼き雷霆(アームドブルー)に近しい能力だからこそ、シアンの歌によってボクの力が強化されるんだ。ボクの中に宿るシアンの第七波動(セブンス)はその名残だと考えてる」

 

ボクは翼にシアンの能力を説明してから翼は理解したようで話を次に移した。

 

「シアンの能力は分かったわ。それで宝剣っていうのは?」

 

「宝剣はボク達能力者の中で皇神(スメラギ)グループに所属する七宝剣と呼ばれる組織の幹部に渡される能力制御デバイス。そのデバイスには持っている幹部達の能力因子が埋め込まれていて宝剣を使えば能力を強化出来て、シンフォギアの様な鎧に変化する物。宝剣はその特殊さ故に強力な呪術的アーティファクトを組み込まないといけない。こっちで例えるとさっきも翼が言ったように聖遺物になる」

 

「シンフォギアに近いものなの!?」

 

「うん。歌を歌いながらという事以外はシンフォギアに近いかも知れない。そう考えると宝剣は完全聖遺物に近いかな。でも宝剣は埋め込まれた能力因子を持つ者でしか起動出来ない」

 

ボクの言葉に対して翼は驚き、そして悩んでいた。

 

「宝剣に関しては専門家じゃないからここまでしか分からない。それで翼、その話は誰に聞いて、なんでボクに話したの?」

 

翼はボクの言葉を受けて少し考え込む。そして、意を決して話し始めた。

 

「シアンの事、宝剣の事。この二つを教えてくれた人についてはあの子に口止めされているから言えないわ。でも、内通者でも敵でもない。貴方を信頼している味方だから」

 

そう言われてボクはまた考えてしまうが翼の言葉を信じ、話を聞き続ける。

 

「それで私が聞いた理由は、何処かに電子の謡精(サイバーディーヴァ)の力を持つ何かが存在して何か悪い予感がするからその何かを探して欲しいと頼まれたの」

 

電子の謡精(サイバーディーヴァ)がボクに宿っている力とシアン以外に存在してる!?」

 

翼から出たその言葉に驚きを隠せない。

 

「何かは私にも分からないわ。でも、嫌な予感がするって」

 

一体誰が翼にその事を伝えたのか?そして、何故その存在を知れたのか?ボクはその人物の味方であり、翼に伝えたのか。

 

「今はこの世界でボク以外知らない情報を持っている人はとても気になる。だけど今は翼の言葉を信じてその何かを探してみる」

 

「頼むわね。私も復帰したら探すから」

 

翼はそう言って立っていたのが辛かったのだろう少しよろけながら手を離すとベッドへと戻った。

 

「分かった。ボクも個人的に探してみる。弦十郎達にはこの事は伝えた方が良い?」

 

「いいえ、あまり広げられるような情報でもない事は貴方も分かっていると思う。だから、私とガンヴォルト。二人でなんとかするしかないの」

 

ボクはその言葉に頷く。そうと決まれば翼が動けない間はボクの方でも色々調べる事にしよう。

 

そんな時、ボクの通信機に連絡が入ってきた。

 

『ガンヴォルト!休み中悪いが今何処にいる!?』

 

「翼の病室に今いる。何があったの?」

 

『ネフシュタンの鎧の少女が現れた!現在響君に対応してもらっている!済まないが現場に急行してくれ!』

 

「分かった。戦闘服を準備しておいて」

 

ボクは通信機を切って翼に言う。

 

「ネフシュタンの鎧の少女が現れた。響が戦っているから救援に行ってくる」

 

「分かったわ。無事に帰ってきて、ガンヴォルト」

 

翼の言葉を聞いてボクは頷くと病室から出た。今度こそ、ネフシュタンの鎧の少女を捕らえ、裏に誰がいるのかはっきりとさせる為に。

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