戦姫絶唱シンフォギアAB   作:株式会社の平社員

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39VOLT

二課に戻り、装備を整えてボクは弦十郎の指示に従って響が向かうポイントへ向かう。どうやら響も先程まで病院にいたおかげでリディアン音楽院からもそう遠く無い人気のない場所に移動しているようだ。

 

これなら、響と共にネフシュタンの鎧の少女を捕らえる事が出来るかも知れない。

 

だが、少女の実力も未知数。ネフシュタンの鎧自体の性能も分かっていない。

 

もし、少女自身がネフシュタンの鎧を完全に使いこなし、危険だと判断すれば響だけでも何とか逃さなければ。これ以上、被害が大きくなる事や仲間が傷付くのは避けなければ。

 

ボクは身体に雷を迸らせてさらに加速して響の元へ駆けて行く。

 

響と少女の戦闘が始まったのか、響のいると思われる地点で破壊音が発生している。

 

ボクはその音の発生地点へ駆ける。そして到着するとそこには地面が抉れ、道が粉砕されていた。周囲に響と少女の姿は無く、森の中で衝突音が聞こえてくる。直ぐに向かおうとしたが、ボクの目の前にリディアン音楽院の制服を着た一人の少女が倒れている為、直ぐにその子の回収に専念する。

 

戦いの巻き添えを喰らってしまったのだろうか。血は出ていないが、何かの衝撃で頭をぶつけたのだろう。意識が朦朧としている。ボクは直ぐに応急処置を施して、弦十郎にこの子の回収を要請する。その時、女の子が口を動かして何か言おうとしていたが、全てを声に出す事が出来ておらず、何を言っているか分からない。

 

「…あ…た…」

 

「大丈夫。直ぐに自衛隊が駆けつけて来てくれるから」

 

ボクはそう言って都合良くネフシュタン出現時点で出動していた一課の隊員が避難誘導などを行っていた為、隊員に来てもらいその子を預けるとボクは走って響の元へ向かった。

 

◇◇◇◇◇◇

 

「響!」

 

未来は帰路にて響を見かけた為呼び止めた。何故響は既にあの人の事を見つけていて何も言わなかったのか。

 

「響!なんであの人を知っていたのに黙ってたの!翼さんといつの間にか知り合いになってお見舞いしてたのは構わない!でも、なんであの人を知っていたのにどうして隠していたの!」

 

翼の事は見舞いに行く程の間柄になっていた事は良い。だけど、何故隠し事をしないと言っていたのにあの人の事を隠していたのか。何故親しい間柄なのに黙っていたのか。

 

響もその言葉に驚きどう答えれば良いか悩んでいる。

 

「答えてよ響!なんであの人は翼さんの病室に居て響とも親しいの!?隠し事はしないって約束したのに!」

 

約束をしたのにその事を破った事に腹を立ててしまう。本当はこんな形で聞きたくない。でも未来はあの人を何故隠していたのかで頭がいっぱいであり、響を責める様な言葉しか出てこない。

 

響もその事についてずっと考えている様に黙っている。そして未来は再び問いただそうとした瞬間、上空から声が聞こえてきた。

 

「見つけたぞ!」

 

その言葉に反応して視界を上空へ移すとどういう原理で飛んでいるのか、鎧の様な物を纏った人が、こちらに向けて鎖の様な物を振り下ろしていた。

 

鎖の様な物が地面に叩きつけられると同時にコンクリートが砕けて破片が散弾の様に未来に襲い掛かった。

 

咄嗟に目を瞑りはしたが大きな破片が身体全体を襲い掛かる。衝撃に対処しきれなかった未来は吹き飛ばされ、地面に頭をぶつけてしまう。

 

歪む視界、砂塵が舞い、倒れた未来に襲い掛かる。

 

意識も朦朧として声も出せない。そして砂塵が晴れて響は今の未来の姿を目にして響は絶望の表情を浮かべ、そして口を動かして何か紡ぐと、黒くそして恐ろしい鎧を纏って変身すると空に浮かぶ少女に向けて獣の如き疾走で迫っていった。

 

それからは首も動かす事も出来ず、未来はその後はどうなったか分からない。しかし、響がどうしてあんな姿になってしまったのか。そして、何故この様な事が起きているのか。朦朧とする思考ではどうする事も出来ず、未来は何もする事が出来ない。

 

響を追ったり、逃げようにも先程の衝撃で身体が動かない。そんな時、誰かが近付いてくるのを地面から伝わる振動で察知した。

 

そして、身体を浮かせられ意識があるか確認をして応急処置を施される。しかし、未来はそんな事すらどうでもいいと感じる。

 

何故ならその人物は響と翼の病室で見た人物であり、未来が探していた人物であったからだ。

 

「…あ…た…」

 

あなたはあの時の、と言いたかったが口が上手く動かず、声も出ない。

 

「大丈夫。直ぐに自衛隊が駆けつけて来てくれるから」

 

違う、そういう事じゃない。あなたは七年前に助けてくれた人なんですよね。そう言いたいがやはり声が出ない。

 

その人は耳元に手を当てて何か言うと未来を抱えて近くにいた自衛隊に未来を引き渡した。

 

「この子の事を頼むよ。血は出ていなかったけど脳震盪を起こしているから病院へ搬送をお願い」

 

待って、まだお礼も言ってない。声に出せずに行動も取れない。

 

未来はただ、先程いた場所に駆けていくその人の後ろ姿を眺める事しか出来なかった。

 

◇◇◇◇◇◇

 

現場に到達してボクの目に飛び込んできたのはボクの知っているガングニールとは違う黒く染まった響の姿。そして、その前にはネフシュタンの鎧の少女。響が圧倒している事は分かったが、響は少女に向けて拳を振るおうとしていた。

 

だが、その一撃にはボクには少女を殴り殺せそうな勢いと威力がありそうで危険だと直感した。それに、響の姿は異常であり、何よりボクの中で今の響は危ないと感じた。

 

ボクは直ぐに少女と響の間に入り、雷撃鱗を展開して、響の攻撃を受け止めた。

 

 

「響!何をやってるんだ!この子を殺すつもりなのか!」

 

ボクは響に向けてそう叫ぶ。だが、響にはその声が届いていないのか雷撃鱗に何度も拳が壊れるのを厭わないかの如く殴り続ける。

 

「何をしてるんだ響!ボクの事も分からないのか!?」

 

響が何故こんな状態になっているのかは分からない。だが今の響は正気じゃない事ぐらい分かる。普段の響であればこんな戦い方をするはずもなく、殺そうともしない。何故こんな状態になったのか。聖遺物のまだ不明な部分のせいなのか。それとも響の胸の中に宿るガングニール、翼や奏のようにペンダントを介さない装着の影響なのか。とにかく、響を正気に戻さなければならない。しかし、このまま響の攻撃を受け止め続けていればEPエネルギーが先に尽きてしまう。

 

ボクは少女を気にしつつ、一度雷撃鱗を解除して響に向けて駆け出す。

 

響は雷撃鱗が消えると同時に後ろにいる少女に向けて獣の如き動きで疾走する。

 

ボクは響を止める為、避雷針(ダート)を響に撃ち込んで出力の低い雷撃を響に放つ。

 

だがそれだけで響はよろめきも動きを止めたりもしない。このままでは響に殺人という重い足枷を背負わせてしまう。

 

ボクは響を掴み、勢いを利用してそのまま地面へと投げ飛ばす。だが、直ぐに響は体勢を立て直した。だが、そのおかげで今度は狙いを少女ではなくボクに移す事に成功した。

 

「響!止めるんだ!正気に戻るんだ!」

 

だが、ボクの言葉を全く聞かない響。響は手からオレンジ色の小さな光の球を出現させるとそれを拳に握った。すると響の腕についた機械の様な機構が動き始め、杭打ちの様に起き上がる。

 

「まさか、あれが響のアームドギア!?」

 

正気を失った状態でこんな事になるなんて…。流石に生身であるボクがあの一撃を喰らえば一溜りもないかもしれない。

 

「ガァァ!」

 

そして響はボクに向けて駆け出す。その速度は速く、瞬く間にボクへの距離を縮める。だが、突然響の腕が爆発する。何が起こったのか分からないが、その爆発によって響の動きが止まった。ボクはその隙を見逃さず、響に向けて避雷針(ダート)を撃ち込む。そして、響との距離を詰めるとボクは響に向けて雷撃を纏った拳を響へと叩き込む。

 

「ごめん響。ボクにはこうする事でしか君を止められない」

 

説得も出来ず、力でしか止める事が出来ない自分に後悔する。だが、こうでもしない限り、響は少女を殺してしまうかもしれない。

 

ボクの拳が響のお腹を捉えると避雷針(ダート)が反応して響に雷が迸った。

 

「ガァァ!!」

 

苦しみの叫びを上げる響。しかしその瞬間。

 

「こいつを喰らいな!」

 

今まで戦意を喪失していたと思われる少女が鎖から光の球を二つ出現させており、それをこちらに向けて投げ飛ばしていた。

 

ボクは直ぐに響をそのまま殴り飛ばして、離れた事を確認すると対抗する為に言葉を紡ぐ。

 

「天体の如く揺蕩え雷。是に到る総てを打ち払わん!迸れ!蒼き雷霆よ(アームドブルー)!ライトニングスフィア!」

 

ボクの周りに三つの公転する雷撃の球体が出現する。そして、その二つの球を飲み込みながら雷撃が光の球とぶつかり合うと互いに鬩ぎ合うとライトニングスフィアは混じり合う様に重なり、そして球は消滅した。

 

そしてライトニングスフィアが切れるとボクは少女に向けてダートリーダーを構える。

 

「君は何が目的でこんな事をしているんだ!何故響を狙う!」

 

「お前には関係ない!」

 

少女はボクに向けて、鎖の様なものを振るう。ボクはそれを雷撃鱗を展開して弾く。ボクは雷撃鱗を展開したまま少女に向けて避雷針(ダート)を撃つ。少女はダートを交わすと、ボクへ向けて鎖の様なものを振るう。ボクは雷撃鱗でそれを弾いていくが、先程EPエネルギーを充電してなかったせいで雷撃鱗が切れてしまい、オーバーヒートしてしまう。

 

「ッ!?」

 

「こいつで眠っとけ!」

 

無防備なボクに向けて鎖を振るう。だが、その鎖はボクに当たることはなく、ボク以外の人に阻まれた。

 

「大丈夫ですか!ガンヴォルトさん!」

 

そこには先程まで、黒く染まり暴走したかの様に正気を失っていた響が、いつものオレンジのギアを纏って立っていた。

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