戦姫絶唱シンフォギアAB   作:株式会社の平社員

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資料を見て過ごした次の日、ボクは弦十郎から呼び出しがかかり、慎次に連れられて了子の研究室に通される。

 

「よく来てくれたわね、ガンヴォルト 。こんな美女の部屋に招かれる幸運な事、一生に一度あるか分からないわよー」

 

「ボク以外にも既に弦十郎も慎次もいるじゃないか、それにここは研究室だろ?」

 

そうツッコむガンヴォルトに最近の子供は連れないわねー、としょんぼりしながら言う。

 

ここに集まっているのは、ボクと弦十郎、慎次、昨日の尾行少女であった。

 

「そういえばガンヴォルトに紹介してなかったな、この子は風鳴翼。苗字が同じだからなんとなく察しているかもしれないが俺の姪っ子だ」

 

少女は風鳴翼と言うらしい。しかし、苗字が同じだからって親族なのは分かるが姪っ子とまでは流石に分からないだろう。

 

「よろしく」

 

翼に挨拶すると、彼女は直ぐに弦十郎の後ろに隠れてしまう。

 

嫌われているのか?

 

「気にするな、ただの人見知りなだけだ」

 

弦十郎は翼の頭を撫でながら答える。昨日のあの行動からなんとなく察していたがそういう事だったのだろう。

 

しかし、姪っ子の翼が何故この場にいるのか、多分、今回の説明に関係あるのだろう。

 

「さてと、みんな集まったから始めさせてもらうわね。昨日取らせてもらったガンヴォルトの第七波動(セブンス)と言う力。何故ノイズに対抗出来るのかからだけど、これを見てもらえる?」

 

部屋を暗くしてプロジェクターから映像が壁に投影される。映し出されたのは二つの波形。二つの波形は形が複雑で初めて見るボクには見当もつかない。だが、もう一つの波形を見てボクは固まった。了子は気付いていながらも話を続ける。

 

「まずはこの波形。昨日取らせてもらったガンヴォルトの第七波動(セブンス)の波形。まぁ、波形だけ見てもちっとも分からないだろうから、もう一つの波形、天羽々斬のアウフヴァッヘン波を用意させてもらったわ。あっ、ガンヴォルトはアウフヴァッヘン波を知らないと思うから説明させてもらうわね」

 

そう言ってボクに説明をしてくれたがボクはほとんど聞いてはいなかった。

 

「とりあえず、アウフヴァッヘン波の説明はこのぐらいにして、本題の第七波動(セブンス)蒼き雷霆(アームドブルー)についてなんだけど、この波形を見て貰えば分かるように、聖遺物同様の波形を出している事が分かるわね?」

 

了子はボク以外の全員の顔を見ながら聞いた。なんとなく理解出来ている反応だったので彼女は話を続ける。

 

「でも、ガンヴォルトの波形は二つの波形を合成された物だと分かったわ」

 

そう言って、彼女はスクリーンに映し出された蒼き雷霆(アームドブルー)の波形を大きく出し、そしてそれを二つに分割させる。

 

「一つがこの雷の様な意匠の波形。これが本来の蒼き雷霆(アームドブルー)のアウフヴァッヘン波と思っているわ。そしてもう一つのこの蝶の意匠の波形。これが、今回の件の重要な役割をしていると思うの」

 

「どういう事だ?」

 

弦十郎が分からないと声に出す。

 

「まず、蒼き雷霆(アームドブルー)のアウフヴァッヘン波形なんだけど、これだけだとノイズの位相差障壁を越すための調律に必要な出力には届くか届かないかの曖昧な所と結果が出ているわ。でも、このもう一つの蝶の羽の様な意匠の波形が蒼き雷霆(アームドブルー)と合わさる事によってその出力は大幅に増幅して、ノイズとの戦闘を可能にしているの」

 

そう言って、彼女は一点を見つめ続けるボクに問い掛けた。

 

「さっきからずっと自分の波形…いえ、この蝶の波形を見ているけど、何か心当たりがあるのかしら?」

 

「…一緒に過ごした女の子の第七波動(セブンス)の力、この波形がその意匠にそっくりなんだ」

 

かつて、共に過ごしたシアン、そしてボクがこの場所に来る前に彼の凶弾により倒れてしまった少女、第七波動の力(モルフォ)の羽にとても酷似している。

 

「そうなのね、彼女の力はどんなものなの?」

 

了子がそう聞いてきた。

 

「彼女の能力は…」

 

ボクは口を開き、

 

「彼女の能力は、電子の謡精(サイバー・ディーヴァ)。僕と同様の雷撃を操る第七波動(セブンス)。違うのは操るのがボクのような人か、彼女の様な人格を持った第七波動(セブンス)を顕現させる事くらいだ」

 

ボクは嘘を付いた。まだ二課の人間を完全に信用した訳でもない、ましてや今現在目の前にいる女性は全く信用出来ない。能力名のみ本当の事を話し、あとはデタラメな事を言う。

 

「そうなのね、ありがとう。でも、なんでその女の子の力をあなたが持っているのかってところだけど」

 

「彼女の第七波動(セブンス)はボクの第七波動(セブンス)と同系統のものと言われていて、僕は彼女の力に何度も救われた。彼女の第七波動(セブンス)に何度も助けてもらったからその影響なのかもしれない」

 

「そういう事ね」

 

彼女はそう言ってさらに説明を続ける。

 

「話を続けましょう。さっき、ガンヴォルトの言っていた電子の謡精(サイバー・ディーヴァ)の波形、そして蒼き雷霆(アームドブルー)の波形が重なり合う事でノイズの位相差障壁を調律するまでの出力を底上げしていると思っているわ」

 

「という事は、ガンヴォルトの力は二つの第七波動(セブンス)が混じり合って出来たものであり、その電子の謡精(サイバー・ディーヴァ)がシンフォギア装者でいう歌の力、フォニックゲインという訳か」

 

「学者としてそんな簡単にされるのは癪だけど概ねそんな感じよ」

 

「シンフォギア装者…って?」

 

ボクは聞き覚えのない単語に反応する。

 

「よく聞いてくれました!シンフォギア装者と言うのは…」

 

彼女は得意げに説明してくれるが、弦十郎、慎次は呆れた様に聞いていなかった。

 

話が長く、要約するとシンフォギア装者と言うのはノイズに対抗する聖遺物と言う物を特殊な鎧に変換させて戦う者の事を指すらしい。と言っても、このシンフォギアという物は誰でも扱えるって訳ではないらしく、適合した者の歌でないと使えない。

 

「それでね…」

 

まだ話も終わりそうもなく、全員そろそろ限界な様で、ボク達は辟易し、翼に関しては眠そうに瞼を擦っていた。

 

「了子君、もうガンヴォルトもシンフォギアの概要は分かったんだし、いいんじゃないか?」

 

ボクはその言葉に賛同して頷く。

 

「ちょっとー、これから面白くなってくるのにー」

 

これ以上は学者の方々にして欲しいものだ。

 

「まあいいわ。これだけは覚えておいてね。今二課の所有している物もあってそれが彼女、風鳴翼ちゃんが持っている天羽々斬。そしてそれこそが唯一ノイズに対抗できる希望よ。まあ、あなたが加わった今は唯一じゃなくなったけどね」

 

シンフォギア装者、だから彼女はあの現場にいたのだと合点が行く。

 

「私の方の話は以上。あとは弦十郎君の方から」

 

「ああ、ようやくか」

 

そう言って弦十郎は大きなジュラルミン製のケースを二つ取り出した。

 

「ガンヴォルトから要請されていた物の試作品ができたから持ってきたぞ」

 

一つを開くとボクが受注していたダートリーダーの模造品と弾倉が数個、そして髪留め型のプラグが入っていた。

 

ダートリーダーとはボクが愛用していた銃の名称で、避雷針(ダート)と呼ばれる特殊な弾丸を打ち出す事の出来る銃である。しかも、口径が合えば他の弾も打つ事が出来る優れものである。

 

そして避雷針(ダート)は、ボクの髪の毛を電気伝導率の高い特殊な金属でコーティングして弾にした物だ。この弾は敵に当たるとロックオンする事が出来、雷撃鱗を発動させると強力な雷撃がロックオンされた対象に向かって誘導させ必中させる。

 

もう一つ、髪留め型のプラグはテールプラグと言う物で、ボクの後ろで束ねた三つ編みの先端を銃の後部コネクタに接続する事によって、強力な第七波動(セブンス)の一撃を放出するといったものだ。

 

もう一つのジュラルミン製のケースの中には頼んでいた戦闘服が入っていた。ボクが注文した通りの服装である。フェザーに所属していた頃の戦闘服をそのまま再現してもらった。違うといえば、アンダーウェアが特殊な物らしく、人工筋肉繊維というものを使用していてかなりボクの身体的補助をしてくれるらしい。それとへそ出しじゃなくなっている。

 

「ガンヴォルトの注文通り作らせてもらった。流石に試作品だから、あとで性能テストをしてもらう。後、これだ」

 

そう言ってなんだか分からないが機械を渡される。大きさはスマートフォンくらいか。

 

「お前用の通信端末だ。今まで俺か慎次が食べ物を買っていたからな。不便だから作っておいた。使い過ぎには気を付けろよ」

 

「気を付けるよ。ありがとう」

 

「早速だが技術班より性能テストの件があるから直ぐに向かってくれ」

 

ボクは頷くとジュラルミン製のケースを貰い、テスト場所を弦十郎に確認して部屋を後にした。

 

◇◇◇◇◇◇

 

結果から言うと、装備自体の性能は問題なかったが、ダートリーダーの後部コネクタとテールプラグのセッティングだけはまだ調整に時間がかかるようだ。

 

欲を言えば、第七波動(セブンス)を強化出来るレンズ、指輪、ペンダントがあれば完璧なんだけど、流石にそこまでは望まない。そういえばあれも特殊な鉱石、霊石と言う物を使っていたそうだが、もしかしたらあれも聖遺物に近しい物だったのかもしれない。

 

あとは避雷針(ダート)がノイズに効くかどうかを確認するくらいだ。

 

そんな事を自室に戻る道中に考えていた。ちょうど自販機があったので、支給された端末を自販機に当て、ミネラルウォーターを買う。

 

一口含み口の中を潤して、飲み込んだ。

 

先程の了子の説明を思い出す。ボクの第七波動(セブンス)には彼女、シアンの第七波動(セブンス)も混じっているという事。彼女には確かにたくさん力を貸して貰った。だが、それだけで彼女の第七波動(セブンス)がボクと融合するのだろうか。学者ではないボクは原因の究明など出来るはずなどなく謎のままだ。

 

シアンの捜索も未だ手掛かりがない状況である。もしかしたらボクだけこちらに来てしまったのだろうか。そうなるとシアンは…。

 

「いや、考えを悪い方向に持っていくのはダメだ。とにかく、捜索は二課に任せて、僕は出来る事をしないと…」

 

手に持っていた水を一気に飲み干して、空となったペットボトルをゴミ箱に捨て、部屋へと向かった。

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