戦姫絶唱シンフォギアAB   作:株式会社の平社員

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暗い闇が広がる空間。そしてそれよりも黒い霧。響は自分が今どうなっているのか分からなかった。未来が少女によって傷付けられ、憎しみや怒りが胸に宿るガングニールに反応したかのようにドス黒い感情に支配されてそこからはあまり覚えていない。

 

自分が今何をしているのか分からない。ただ意識が朦朧としてふわふわと漂っているだけ。そしてその周りにある霧は響を覆うように纏わり付く。この感覚は気持ちが悪い。

 

なんとかしてみようとしたがそんな気力も出ない。どうする事も出来ない響はただその空間に漂うのに身を任せる。

 

そんな時、響の耳に雑音混じりの誰かの声が聞こえてくる。

 

「…!…ャ…!」

 

雑音が酷く上手く聞き取れない。一体誰が。

 

しかし、今の響にはそれすら考える思考はありはしなかった。

 

「もう、このまま委ねちゃえばいいのかな…」

 

響はそう思い目を閉じようとする。

 

「ごめん響。ボクにはこうする事でしか君を止められない」

 

突如クリアに聞こえたガンヴォルトの声。そしてその言葉と共に響は目を見開く。お腹の辺りに衝撃が走る。それと同時に自分の中で電撃が走るように体全体に纏わり付く霧を雷撃が吹き飛ばす。

 

そして真っ白な空間になった。その瞬間から聞こえだす歌。その歌はかつて響に生きる気力を与え、救ってくれた歌。

 

その歌声の聞こえる方に目を向けるとそこには一人の少女の後ろ姿があった。

 

色素の薄い金色の髪。そして蝶を彷彿とさせる衣装。

 

「あの!」

 

響は少女に声を掛ける。しかし、少女は気付いていないのか、響の方を向かず歌い続ける。響は少女に近付こうとするが何故だか近付く事が出来ない。そして、少女の歌がどんどん小さくなっていき、少女と響の間にどんどん濃い霧のようなものがかかる。

 

「待って!貴方は私を救ってくれた人なんですよね!?」

 

響は精一杯声を張って少女に問いかけるがなんの反応もない。そして、響と少女の前の霧はやがて少女を完全に見えなくさせる。

 

少女のいた場所に向けて走り出す響。霧の中は何も見えず本当に少女のいた所に駆けているのか分からない。それでもただひたすら響は走る。

 

そして霧がどんどん薄くなっていき、光が見える。響はその光に向けて走る。そして光が眩くなっていくと響はあまりの眩しさに目を瞑る。

 

そして次に目を開けた時にはオレンジ色に染まる空が見えた。

 

「あれ、あの子は…?」

 

響はどうなってるのか分からなかった。とりあえず身体を起こす。

 

そして響の目に次に映ったのはガンヴォルトが雷撃鱗を張って少女の猛攻を防いでいる所であった。

 

「ガンヴォルトさん!?」

 

いつの間にこの場にいたのだろうか?いや、それよりもなんで私はこんな所で倒れていたのだろう。

 

考えるが全く記憶がない。だが、今ガンヴォルトは少女と戦っている。響は直ぐに立ち上がり、ガンヴォルトを支援する為に走り出す。

 

走り出したと同時にガンヴォルトの纏っていた雷撃鱗が消滅して無防備となっていた。

 

まずいと思った響は全力で駆けて少女とガンヴォルトの間に入り振るわれる鎖のようなものを受け止めた。

 

「大丈夫ですか!ガンヴォルトさん!」

 

「響!?」

 

ガンヴォルトは驚いていた。それに少女も響を見て身体を強張らせながら鎖を操り手元に戻すと距離を取る。

 

「響、大丈夫なのか?」

 

「えっと、大丈夫ですが…どうしてそんなにガンヴォルトさんもあの子も私を警戒してるんですか?」

 

「覚えていないのか?君はさっき黒く染まったシンフォギアを纏ってボクやあの子に襲い掛かった事を」

 

響はそれを聞いて驚き、覚えていない事だが、罪悪感に苛まれる。しかし、ガンヴォルトはそんな響の隣に立ち、今は後悔してる場合じゃないと響に言う。

 

「今は後悔や自分を責める時じゃない。ボクもその事は後でしっかり説明するから今はあの子を捕らえる事を優先しよう」

 

ガンヴォルトはそう言うと少女へと銃を構えて少女に向けて言った。

 

「形勢はこっちの方が有利になった。抵抗せずにこのまま投降して欲しい」

 

少女は苦虫を噛み潰したように表情を歪める。そしてガンヴォルトの言い方が気に障ったのか突然にキレ始めた。しかし、その言葉は響には恐怖をかき消したいが為の悲痛の叫びに聞こえた。

 

「うるせぇ!どいつもこいつも、群れればなんでも自分が思い描いたように物事が進むと思いやがって!形勢が有利になった?何処がだ!そこの化け物が元に戻ったからって調子に乗ってんじゃねぇ!」

 

「訂正するんだ!響は化け物なんかじゃない!」

 

ガンヴォルトは少女の言葉に反応して叫んだ。響も少女に対して言い返そうとする前だった為、ガンヴォルトの発言に耳を傾ける。

 

「響は普通の女の子だ!あの時にボクがもっと早く到着出来なかったから聖遺物を胸に宿して装者になってしまったかもしれない…。でも…響は正義感の強い優しい女の子なんだ!もう化け物なんて呼ばれるのは、ボクだけでいい…」

 

「ガンヴォルトさん…」

 

ガンヴォルトの発言に少し照れくさくなる。だが、最後の言葉だけが響には違和感しか感じなかった。しかし、その言葉を聞いて少女はガンヴォルトに対して反論する。

 

「そんな事どうでもいいんだよ!私はお前の様な自分の理想を他人に押し付ける様な奴は大っ嫌いだ!それに化け物を化け物って言って何が悪い!お前だって同じだ!そんな訳の分からない力を使って私の理想を…争いのない世界の邪魔でしかないんだよ!理想の為に手に入れたんだ!お前達のように力を持つ奴がいるせいで私はこれでそいつらを力尽くで排除するしかないんだよ!」

 

少女はガンヴォルトにそう叫んだ。だが、少女はしまったという風に表情を歪ませた。そしてガンヴォルトは少女の目的を知り、何処となく悲しそうな表情をした。

 

「争いのない世界…。確かにそんな世界があれば良かった…。でも、そんな力任せなやり方じゃ何も変わらない。変えられないんだ…」

 

ガンヴォルトは悲しそうな表情をして言った。その表情は何処か既にその結末を知っているかの様であった。

 

「知ったような事を言うな!」

 

少女は叫び、ガンヴォルトと響に向けて鎖を振り回す。ガンヴォルトは雷撃鱗を展開出来なくなっていたようなので危険だと判断して響はガンヴォルトの前に立ち、鎖を受け止めようとした。

 

「チャージングアップ!」

 

ガンヴォルトは響が動き出す前にそう唱えるとガンヴォルトの周りに再び雷が迸り、雷撃鱗を展開させ、鎖を防いだ。

 

「知っているんだよ…力だけじゃ争いがなくならないなんて事は…」

 

ガンヴォルトの悲しそうに、そして何処か達観した表情で少女を見据えて呟いた。ガンヴォルトの過去に一体何があったのか。何故そんな表情をするのか。響は自分にはそれが何故か分からず、ガンヴォルトを支えると誓っているのにこの様な表情をさせてしまい、不甲斐なく感じてしまう。だが、ガンヴォルトは直ぐに表情を切り替え響に指示を飛ばした。

 

「響、あの子を捕らえてこの件を収束させるよ」

 

「はっ、はい!」

 

考え事をしていた響はその感情を一旦払って少女に対して拳を構え、ガンヴォルトが雷撃鱗を消すと共に少女に向けて駆け出した。

 

◇◇◇◇◇◇

 

ボクは少女の目的を知るが、力だけじゃ世界が平和にならない事を知っている。力だけじゃ何も変わらず、新たな火種を生むだけだと。でも、今あの子に説明した所で聞き入れてはもらえないだろう。それに、今ボクがするべき事は少女を捕らえて、今発生している件を解決する事だ。

 

ボクは雷撃鱗を消して響に指示を飛ばすと響は少女に向けて吶喊する。

 

「はぁ!」

 

響は少女に向けて拳を振るう。それに合わせて少女は躱して響へと鎖を振るう。ボクは避雷針(ダート)で鎖を弾き響を援護する。

 

「甘っちょろいお前等に私の何が分かるんだよ!苦しみも辛さも知らないお前等に!」

 

少女は激昂して響に向けて再び光の玉を作り上げると、一つを響、もう一つをボクに向けて投げる。

 

「響!アームドギアを使うんだ!覚えていないかもしれないけど、君のアームドギアはその拳なんだ!」

 

「何の事だか全く分かりませんがやってみます!」

 

ボクの言葉を聞き入れ、響は拳を握り締める。すると響の拳が杭打ち機のように起き上がると、その拳で光の玉を殴りつけた。

 

響の拳が光の玉を捉えると同時に起き上がっていたものが打ち出され、エネルギーへと変換されると光の玉を殴り飛ばし空中で爆発させた。

 

ボクも雷撃鱗を展開して光の玉の軌道を逸らして上空へと上げると避雷針(ダート)を撃ち込んで、雷撃を誘導させて爆発させる。

 

「まだだ!」

 

少女は再び光の玉を作り上げようとしている。だが、ボクは少女に向けて避雷針(ダート)を撃ち出しそれを阻止する。

 

「お前等二人めんどくせぇんだよ!」

 

「私はお前なんて名前じゃない!私には立花響って言う名前があるんだから!」

 

「戦場で何寝ぼけた事言ってやがる!」

 

響は少女に吶喊しながら少女に向けてそう叫ぶ。それに対しては同意するが、少女の気が響に逸れた。そのうちに空となったダートリーダーのマガジンを交換する。

 

響は少女に向けて拳を振るう。少女もそれを躱し、受け流す。

 

「覚えてないけど、あなたに急に襲い掛かった事は謝る!ごめんなさい!でも、私だって親友を傷付けられて少し怒ってるんだ!」

 

「私だってお前とそこにいるあいつ以外傷付けたくはなかったんだよ!関係ない奴までこんな事に巻き込みたくねぇんだ!だから、さっさと気を失っとけ!」

 

「嫌だ!」

 

響は一旦距離を取って少女に向けて言う。

 

「私から手を出しているみたいだから、先に手を引く!だから一回話し合おうよ!なんで貴方はそんな事をしないといけないの!?ちゃんと話せば私が、私達が力になれるかもしれない!」

 

響は拳を下ろして少女に向け対話を試みる。少女は全く聞く耳持たずで響に向けて鎖を振るう。

 

「だから甘っちょろい事言ってんじゃねぇって何回言わせる気だ!お前等のような奴等と話をしたって無駄なんだよ!」

 

「無駄なんかじゃない!なんでも力尽くで物事を解決するなんて間違っていると思う!話し合えば何か変わるかもしれないのに、なんで話し合いをしないの!」

 

「話し合いが解決するんじゃねぇ!話し合いをするだけ新たな火種が生まれるんだよ!争いで他者との理解が一致する事なんてねぇ!そんな事も分からないのか!」

 

確かに意見が一致するなんてそうそうないだろう。響の言う通り話し合えば何かが変わるのかもしれない。

 

「私にはその方が分からないよ!争いをする事が!他の人を傷付けてまでそれが正しいと思えるその事が!話し合えばどうにかなるかもしれないのになんでその可能性も放棄してやらなきゃいけないの!?」

 

「だから無駄だからって言ってるだろ!私には分かるんだよ!お前等に指示してる大人なんてクソ野郎共だ!自分達が何も出来ないからこうやってお前等のような戦える奴らを無理矢理戦わせて自分等は高みの見物して傷付いている様を楽しそうに見ているだけって事をな!」

 

「師匠や皆は違う!」

 

響は少女の言葉を否定する。少女は響の言葉をさらに否定する。話し合いなど初めから無意味だとばかりに少女は響に向けて攻撃を再開する。

 

その様子を窺いながらボクは少女の隙を探す。だが、ボクは少女の言う関係のない奴らまで巻き込みたくない。それなら何故このような事を。そんな事を思ってしまう。だけど今は考えている場合じゃない。

 

響が少女に向けて拳を突き出しそれを回避する為に大きく後退した。瞬間、ボクは少女に向けて避雷針(ダート)を撃ち出した。少女も反応して避けようとするが、避け切る事が出来ず、蒼い紋様が着弾した場所に浮かび上がった。

 

「ッ!?」

 

少女は紋様が浮かび上がると同時にさらに距離を取ろうとするが、そんな事をさせるはずもなく、ボクは雷撃鱗を展開した。雷撃鱗から迸る雷撃はロックオンされた少女に向けて誘導され、少女の身体に当たると全身に雷撃が迸る。

 

「ガァァ!」

 

少女は雷撃による痛みによって叫び声を上げた。そして、少女から雷撃が止むと少女は事切れたように倒れる。

 

「ガンヴォルトさん!あの子を連れて行きましょう!」

 

響が少女が倒れるのを見計らうと捕まえる為に少女の元に向かう。

 

「待つんだ響!その子はまだ気を失っていない!」

 

ボクの言葉に足を止める響。だが、少女は舌打ちすると、鎧が急に光り始めた。

 

危険だと判断してボクは直ぐに響の元に向かう。響の前に立つと同時に少女の纏う鎧が散弾のように弾け飛ぶ。ボクは雷撃鱗を展開してボク達を襲う破片をガードした。

 

弾け飛ぶ破片は雷撃鱗をも突破する勢いであり、雷撃鱗の中に潜り込んでも直ぐには消滅せずに迫ろうとしていたが目の前でようやく霧散していった。

 

全ての破片が飛んだのか辺りには数々の破壊痕が残ったがなんとか響に怪我はなかった。

 

ボクと響は少女のいた場所を見る。だが、ボクはネフシュタンの鎧を纏っていた者を見て絶句する。

 

「なんで…」

 

そこに立っていたのは二年前ボクが救う事の出来なかった人。そして今も行方不明である少女。

 

「なんで君がテロリスト側に居るんだ!雪音クリス!」

 

ボクは少女に向けて叫んだ。

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