戦姫絶唱シンフォギアAB   作:株式会社の平社員

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響と翼は一課と二課のエージェントに連れられ病院に搬送される中、ボクは慎次と共にあの場に撃ち込まれた物を確認していた。

 

「狙撃銃の弾ですね。ガンヴォルト君の言う通り、そのフィーネと名乗る女性の協力者が放った物でしょう」

 

「タイミングとしては間違いない。弾痕の地面への侵入角度からこの辺りからの狙撃だとは思う」

 

そう言って広げられた地図に印を付ける。

 

「ボクもそう思って印を付けた一帯を一課、二課合同で捜索してもらっています。一応、狙撃銃の有効射程距離分をくまなくしていますが、雑居ビルの立ち並ぶ場所ですから時間はかかるでしょう。それと逃げたフィーネと呼ばれる女性の捜索も当たっていますがそれらしき人物を見たという報告はありません」

 

「雪音クリスの情報は?」

 

ボクの問いに慎次が答える。

 

「雪音クリスさんの捜索も並行して行っていますが、今の所発見に至っていません。彼女の身に付けているシンフォギア、イチイバルのアウフヴァッフェン波形が途切れた場所を特定して捜索をしていますが、こちらも今の所報告がなく、発見は出来てないと思います」

 

「分かった」

 

ボクは拳を強く握る。

 

「ガンヴォルト君のせいではありません。あの時、君が彼女を保護出来なかった事を悔やんでいる事は知っていますから」

 

慎次はボクの胸中を察してそう言った。慎次の言う通り、ボクはあの時に空港のエントランスで待機せず、滑走路に入ればクリスを保護して、こんな事はなかったかもしれない。でも、既にこうなってしまっている以上、悔やんでも仕方がない。

 

「ありがとう、慎次」

 

ボクは慎次に礼を言う。それと同時に地図の付近に置いてあった無線機に通信が入る。

 

『狙撃ポイントを発見しました!ですが…』

 

通信先の隊員が少し言葉を詰まらせる。

 

「何処ですか?我々もそちらに向かい、調査を行いたいんです」

 

慎次が隊員に向けて告げる。だが、隊員の言った一言に慎次は息を呑んだ。

 

『狙撃ポイントは指定されたポイントのさらに先、約四〇〇〇mも離れた場所にありました』

 

「そんなまさか!あり得ない!優秀な観測手がいたとしてもその距離を正確に狙うなんてほぼ不可能なはず!」

 

『それだけじゃありません!この狙撃は複数などではなく単独で行われたものです!』

 

隊員の言葉を信じられないと言い続ける慎次。普段あまり慌てない慎次に驚きつつも今度はボクが慎次に落ち着くよう促し、隊員に話しかける。

 

「慎次、落ち着いて。そのポイントをこちらに送ってもらえる?直ぐに調査に向かうから」

 

ボクの言葉に隊員は了承して通信を切ると近くにあった画面に発見された狙撃ポイントを確認すると慎次と共に車に乗り込み向かう。

 

「まさか、テロリスト側に装者だけじゃなく出鱈目な狙撃手もいるなんて」

 

「四〇〇〇m…確かに出鱈目な距離だ。それも優秀な観測手無しでその距離を正確に撃つ事の出来る人材がいるなんて…」

 

慎次の言葉に賛同しながらも見えぬ敵に新たに追加された狙撃手の事を考える。

 

正確に撃ち抜いた記録となると約三五〇〇mが最高だったはず。動かない物体に対してならまだしも動いていたボクに向けてだ。到達時間も十秒もかかる為どれだけ難しいのかは分かる。それを二発共誤差はあったかもしれないがほぼ正確にボクや翼と響に向けて撃ち込んでいた。そんな狙撃手はこの世界では知らない。

 

「それに雷撃鱗を僅かながら貫通してきた…」

 

確かにそれが可能な弾丸はある。だが、それは完全に貫通をしてダメージを与える。過去に戦った事のある能力者を憎んでいる少年が使っていた弾丸だ。もっと恐ろしい弾もあったがあれとはまた違う。

 

だけど、それはこの場の話などではなく、元いた場所での事だ。ここにはそんな都合よく同様の弾が存在している?狙撃手に雷撃鱗を貫通する勢い。その正体について慎次と考察をしながら車を進めていき、数十分後にその狙撃ポイントとなっていたビルに到着する。そこは廃ビルであり、少し前まで企業が入っていたが、老朽化により解体予定となっている場所であった。

 

ボクと慎次は既に現場に居た隊員達に調査の事を告げて廃ビルの屋上へと向かう。調査している隊員を指揮している者に話しかける。

 

「二課から調査で来ました。現状分かっている事だけでいいので教えてもらえますか?」

 

慎次の言葉に隊員は答える。

 

「現在分かっている事は狙撃ポイントがここという事と狙撃手一人である事です。狙撃手が一人だけと断定した理由は我々の調査時に履いていた靴以外で最近出入りした靴跡が一種類しか見当たらなかった事です。それとこんなものが」

 

隊員はそう言って慎次に何か紙を渡した。慎次はそれを見て直ぐにボクへと紙を渡してくる。

 

ボクはその紙を見て驚愕する。

 

そこに書かれているのは前回、慎次が見つけたテロリストのアジトに残されていたメモと同一のものであった。だが、あの時と違い、追加されるように別の言葉も書き綴られていた。

 

《その蒼き雷霆(アームドブルー)は本物か?》

 

どういう意味か分からない。だが、確実にボクの事を、そして第七波動(セブンス)の事を知っている。

 

ありえないと頭に浮かぶ。内通者は既に居る事は把握しているが、それでもこんな事を問いかけてくるのはおかしい。それに本物の蒼き雷霆(アームドブルー)とは…このメモを残した人物は何を知っていて、何故このような問いを残していくのか意味が分からなかった。

 

「どうやらテロリストのアジトに居たと思われる人物と同一人物で間違いなさそうですね」

 

その言葉にそうだと答えようにもボクは今それよりもこの言葉が何を指しているのか考え込んでいた。

 

本物の蒼き雷霆(アームドブルー)、それは何なのか?この力はまさしく雷撃を操る第七波動(セブンス)であり、本物かと問う意味が分からない。何が本物でないのか?全く分からない。

 

「ガンヴォルト君!」

 

慎次が隣でボクが答えない事を心配して揺さぶって思考の海から引きずり上げる。

 

「…ッ!?」

 

「メモを見たまま固まっていたので何事かと思いましたよ。何か分かったんですか?」

 

「ごめん。考え込んでた。今のこれだけだと正直何も分からない。この下の言葉が何を指しているのかは。本物…この言葉がどういう意味で書かれているかなんて」

 

慎次に謝り、今の現状は何も分からない事を伝える。しかし、また何故こんなものをテロリストは残していったのか。

 

慎次とボクは調査班が廃ビルの屋上を調査し終えるのを待ち、指揮する隊員に怪しい箇所を全て調べてもらったが何も見つからなかった。

 

◇◇◇◇◇◇

 

ボクは結局それ以上の情報を得られる事が出来ず、今入った情報共有の為に二課の司令室へと戻った。慎次は入院していたのに抜け出した翼の心配をして先に病院へ寄ってから向かうと言った。その為、ボクは先に司令室へと入り、弦十郎へと調査の件を報告する。

 

「なるほど。前回慎次が調査を行ったテロリストのアジトと同じメモがあり、さらに意味深な事が書かれていたと」

 

「うん。それに敵に相当手練れの狙撃手が一人いる。観測手無しに約四〇〇〇mを僅かの誤差でだ。ただでさえ向こうにはノイズを操る事の出来る完全聖遺物、ネフシュタンの鎧、それに…」

 

「雪音クリス…我々が保護出来なかったシンフォギアを纏う事の出来る少女。だが、あちらの首謀者と思しき女性、フィーネは雪音クリスを見限り、お前共々襲い掛かった」

 

ボクは弦十郎の言葉に頷く。

 

「雪音クリスはテロリストからも見限られて一人になっている可能性は高い。テロリストからしたらなんらかの情報を持っている彼女は目的の障害にしかならない。一刻も早く保護をしないと」

 

「分かっている。だが、未だ彼女の行方は分かっていない」

 

弦十郎も悔しそうに拳を握る。こうしている間にも雪音クリスの身が危ない。

 

「とにかく、こちらも一課にも協力してもらいながら彼女の行方を追う。ガンヴォルトは今は休め。こちらで調べられる限りは調べておく」

 

その言葉に反論しようとしたが肝心な時に身体を壊して何も出来なくなる方がもっと意見になると思い、弦十郎の言葉に甘える。

 

休みを取る為に帰ろうとする途中慎次がちょうど病院から戻ったようで翼と響の状態を聞く。響は軽傷、翼は特に異常はなく、現在は安静にしているそうだ。

 

後はクリス、彼女が無事な事を祈る事しか出来ない。

 

◇◇◇◇◇◇

 

ガンヴォルト達が報告をしている最中、フィーネは街の外れにある一角の屋敷のバルコニーに佇んでいた。

 

「どういう事か説明しろよ、フィーネ!」

 

フィーネの背後には先程から追い掛けてきたクリスの姿があり、今にも飛びかかりそうな勢いでフィーネの次の言葉を待っていた。

 

「全く、何処まで貴方はしつこいのかしら。さっきも言ったように貴方は既に用済みなのよ、クリス。今の貴方にはなんの感情も湧かないわ」

 

「ふざけるな!私は…私の理想と同じ目的を持つお前とその為にどんな非道な事もやってきたんだぞ!それなのに…それなのになんで!」

 

クリスはまだフィーネが必要としてくれるはずと心の何処かで思っていた。しかし、振り返り、こちらを見るフィーネの目にはゴミでも見るかのようになんの感情も持たぬ瞳でクリスを見る。

 

「何度言わせれば分かるの?貴方は不要よ。役に立たない駒を何故手元に置いておかなければならない?」

 

クリスを突き放すその言葉。クリスは本当にフィーネから必要とされなくなった事に絶望する。身体から気力が、生気が何もかも抜けていくように身体から力が抜け膝を突く。

 

「もう貴方に用はないわ。今ここで消えなさい」

 

フィーネがそう言うと何処からともなくソロモンの杖を取り出すとクリスへと近付き、尖った先をクリスに向けて振り下ろす。

 

クリスは何もかも諦めて、このまま死ぬ事も考えた。もうここで終わってしまえば、何もしなくて済む。苦しむ人達ももがく人達も見なくて済む。だが、そんな絶望の中、彼女の脳裏に浮かんだのは両親の姿であった。

 

こんな悲劇が続いてもいいのか?苦しむ人達をこのままにしてていいのか?クリスはそれを否定する。クリスはなんとか気力を持ち直し、振り下ろされる杖を間一髪の所で避けて屋敷から逃げる為に駆ける。

 

だが、その目には涙が浮かんでいる。今までフィーネの為に頑張ってきたのに裏切られた事に対して、何も出来なかった自分自身の不甲斐なさに対して。

 

クリスはとにかく逃げ続けた。生きて自分の理想を、争いの無い世界を実現する為に。

 

そんなクリスの後をフィーネは追う事はしなかった。フィーネの目には既にクリスの事など映ってなどいなかったのだから。

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