さて、本小説も気づけば後約三ヶ月もしないうちに一年ほど経とうとしています。当初の予定だと一年くらいで一期を終わらせる予定でしたがそろそろ本腰入れて書いていかないと終わりそうもなくなってきた状況です。なのでこの三ヶ月で一期を終わらせられる様に頑張って行きます。作品の質を落とさず、投稿頻度を上げていければいいかなと考えております。終わらなかったら気長に一期完結をお待ち下さい。
とか言ってもPS4版蒼き雷霆ガンヴォルトストライカーパックが発売されるので結局終わらなそうな気もしますが…
「…」
昨日からクリスは街を彷徨う。
今まで信じていたフィーネに切り捨てられ、居場所を失ってしまった。ただ、当てもなくただ歩き続ける。
「…何でだよ…フィーネ…」
同じ志を持ち、腐り切った現状を変えると、変えていけると思っていた。だがフィーネはクリスを見限り、こうしてまた一人となってしまった。
「…どうすればいいんだよ…パパ、ママ…」
寂しさがクリスを蝕み、やがて人目などを気にせず涙を流す。
すれ違う人は急に泣き出したクリスに驚きはするものの、避ける様に、そして見なかった様に通り過ぎて行く。
冷たい人、それに心配して声すら掛けない人。本当に腐っていると感じてしまう。クリスは腕で涙を拭いながら、その場から足早に、そして逃げる様にその場を後にする。
気が付けば、クリスは人気の無い公園のベンチに腰を下ろしていた。ただ人目につきたくなかった、誰もいない場所に行きたかった。ただそれだけを考えてここまで来ていた。
静寂に包まれた公園でクリスは再び涙を流す。もうクリスの帰る場所は無い。もう誰もクリス自身を見つけてはくれない。大好きだった父親も母親も、そして居心地が良いとは言えなかったが、帰る場所をくれたフィーネももうクリスには興味がない。
「どうすればいいんだよ…」
クリスはベンチで手を強く握り、弱い自分を押さえつける。
誓ったんだろ、この世界を変えると。争いの無い世界に変える為に。その意思だけを原動力にクリスは堪える。
それでも、居場所を失ったという喪失感は拭きれず、ポロポロと涙を零す。
しばらく涙を流し、呆然としているクリスに向けてハンカチが差し出される。
誰が、と思いそのハンカチを差し伸べる人物を見る。そこには小さな女の子と男の子がいた。クリスは泣いている姿を先程の道で見られていた時には感じなかった恥ずかしさで顔を赤くする。
「なっ、なんだよ!お前等!私を笑いに来たのか!?」
男の子と女の子に向けて怒鳴る。女の子はその声に驚き涙を流しそうになるが、堪えて更にハンカチを近付ける。
「笑いに来たんじゃない…お姉ちゃんが泣いていたから…私と同じ迷子になったと思ったから…」
女の子はクリスに涙を溜めた目で真っ直ぐと見る。
「私は迷子なんかじゃねぇ!」
再び怒鳴るクリス。しかし、女の子を守る様に男の子がクリスと女の子の間に入る。
「妹の優しさを無駄にするなよ!俺も妹も父ちゃんが居なくなって、迷子になって泣きそうなのに、お姉ちゃんが泣いてるから見過ごせないって言ったのに!」
その言葉に自分に対して優しくしようとしていた女の子にどれだけ酷い事を言ったかを自覚する。
「ッ!?…悪かったよ…。ちょっと虫の居所が悪かったんだ…心配してくれて…その…あんがとな」
女の子に謝る。女の子は気にしないでと言ってクリスの目から流れる涙をハンカチで拭った。
「じ、自分で出来るからそんな事すんなよ!」
恥ずかしがりながら女の子からハンカチを取り上げると流していた涙を自分で拭う。クリスはようやく涙が乾き切ると二人に向けて言った。
「なんでお前等はこんなとこを歩いてるんだよ。人を探すならあっちの街の方が分かりやすいだろ?」
「妹がもう歩けないって言うからこっちに来たんだよ。しばらくはおぶっていたんだけど俺も疲れたから少し休憩しようとここに寄ったんだよ。そしたらお姉ちゃんが泣いてるから妹が心配して」
事の経緯を知ってクリスは呆れながらも言う。
「そうかよ。しかし、お前等の父親は二人を置いて気付きもしないで行くなんて最低だな」
「お父さんのせいじゃないもん。私が何も言わずに離れちゃったから…お兄ちゃんは気付いてくれたから一人にはならなかったけど」
結局、女の子が起こした自業自得だという。クリスは呆れながらも男の子にどの辺りで父親と逸れたのか聞く。男の子はなぜという風に首を傾げた。
「さっきの礼だよ。それに…優しく接しようとしてくれたのに怒鳴っちまったしな」
クリスはベンチから立ち上がると二人に向けて言った。そして女の子と視線を合わせて歩けるかと尋ねる。女の子は首を振るう。
仕方なく、クリスは少女に背を向けてしゃがむ。
「おぶってやるよ。そうすれば少しは見つけやすくなるかもしれないしな」
そう言うと女の子はありがとうと笑顔を浮かべ、クリスの背中へと抱きつく。クリスは少し重くなった身体を持ち上げると男の子の手も握り、別れた地点へ歩き始める。
「ねぇ、お姉ちゃん。迷子じゃなかったらお姉ちゃんはなんで泣いてたの?」
「…ちょっとな…喧嘩したんだよ…」
「…なんか酷い事でも言われたの?」
女の子はクリスへと聞き返すが兄である男の子が失礼だろと言って怒るが少し強めな態度で女の子はクリスの背中でまた泣きそうになる。
「…酷い事か…そうだな、今まで一緒に同じ志を持っていた奴に言われたんだ…要らないって、不要だってな」
その言葉にかかる重みを感じたのか二人はしばらく何も言わなかった。だが、勇気を振り絞る様に男の子がクリスへと向けて言った。
「なんでお姉ちゃんみたいな優しくしてくれる人が不要なんて言われなきゃならないんだよ!確かに妹の優しさを受け取らなかったり、急に怒鳴ったりするし不器用な人だけどさ!」
「そうだよ!なんでお姉ちゃんがそんなに酷い事されなきゃいけなかったの!?」
女の子も兄である男の子に賛同する様に怒りを露わにする。見ず知らずであったクリスを思い、そこまで怒ってくれる二人に調子を狂わせる。
なんで見ず知らずの自分の為にそこまで接してくれるのかと。そして、それと同様にクリスが襲ったあの少女、立花響と共にいた男の事を思い出す。
その男はクリスに投降するよう促し続けた。倒そうと思えば倒せたはずなのに。圧倒的な実力を持っていながら、そうはしなかった。
それにフィーネに要らないと言われて絶望した時に最も怒りを露にしたのもあの男だ。なんで全く知らない、いや、向こうは二年前にあの空港にいたと言っていたから、情報だけは持っていたのだろう。だがなぜあれほどクリスの為に怒りを露にしたのだろうか。今のこの二人とあの男の心情が分からない。
「なんでお前等は会ったばかりの私の為にそこまで怒るんだよ」
「なんでってそんな酷い奴、誰だって許せないに決まってるからだろ!」
女の子も同意する。だがクリスはどうすればいいのか分からない。本当になぜここまで自分の為に怒るのか。
「そんな奴、絶対に《雷人》がぶっ飛ばしてくれるさ!」
「そうだよ!正義の味方の《雷人》がやっつけてくれるよ」
急に出てくる謎の単語、雷人にクリスは疑問符を浮かべる。
「な、なんだよ、その雷人っていうのは?」
その言葉に二人が驚き、クリスに本当に知らないのかと聞き返す。
「お姉ちゃん知らないのかよ!?雷人の事!?」
「知らねぇよ、そんな奴」
その後二人は雷人について熱く語る。
「雷人っていうのは都市伝説なんだけどさ!人知れずノイズと戦って皆を救おうとしてくれる人なんだぜ!正体不明の男で雷を使う事の出来る奴でカッコイイんだ!」
「そう!それでいて沢山の人を救おうとしてくれるヒーローなんだよ!」
目を輝かせながらクリスに熱弁する二人。そんな中、クリスはその男について考え始めた。
多分、いや確実にあの男の事であろう。だが、この二人が熱弁する程あの男は良い奴なのだろうか。
二課というクリスを実験台にしようとしている組織に所属している男だ。口ではああ言ってもクリスにとってはあの男が言っていた事は嘘であると思う。
「ッ!?」
なぜクリスは思うと考えてしまったのか。あの男、ガンヴォルトは敵であり、クリスの目標の最大の障害になる男。だが、なぜクリスは今まで否定的な事ばかり考えていたのに何処か信じた風に考えてしまったのか。そこで思い浮かぶのは標的であった響であった。
響が変な言葉でクリスを惑わして、この様な考えに至らせた事を思うと非常に居心地の悪い気持ちになる。そんなクリスの心情を知らない二人は変わらずに雷人の話を夢中でしている。
気付けば街中に既に着いており、二人も付近を見ながら黙って父親を探し始めていた。
父親は直ぐに見つかり、二人は直ぐに父親の元へ駆け寄る。父親が見つかった事を非常に喜び涙まで浮かべている。その光景を見るクリスは何処か羨ましく感じる。
「ありがとうございます。二人と一緒に私の事を探してくれて」
「気にすんなよ。私もそいつに助けてもらったからその借りを返しただけだ」
ぶっきらぼうに、そして何処か恥ずかしそうに二人の父親に向けて言う。父親はそれでも助かりましたと頭を下げる。
「今度は離れるんじゃないぞ」
クリスはそう言って立ち去ろうとする。父親は慌てて何かお礼をと言うがクリスは断った。
「いらねぇよ。言っただろ、借りは返したって」
「本当にありがとうございます。お前達も」
「ありがとう、お姉ちゃん!」
二人は父親と同様に頭を下げてお礼を言う。その言葉に何処かむず痒く感じる。今度こそ立ち去ろうとした時、二人が言った。
「お姉ちゃんに酷い事言った奴は絶対に雷人がやっけてくれるよ!だから心配しないで!」
「そうだよ!それでまた仲良くなれる様にしてくれるよ!」
ガンヴォルトの事などどうでもいい。だがクリスはフィーネがまた頼りにしてくれる可能性があるという事を考えた。
だが、クリスを殺そうとした時の目を思い出し、拳を握る。あの時のフィーネの目はなんの感情もなく、クリスなど映ってはいなかった。あの目はかつてクリスを拉致したテロリストが用のなくなった捕虜を殺していた時と同じ目であった。もう二度と同じ関係には戻れない。
「…もう、戻れないんだよ」
クリスは三人を背に街の中に消えてゆく。しばらくしてまた公園まで辿り着き、腰を下ろす。
再び一人となったクリスは今後どうするかを考える。目標を達成する為に。
だが、先程から言われ続けて頭の隅に残る男、ガンヴォルトの言葉を不意に思い出す。力ある者を更なる力で押さえつける事により争いを無くす考えを否定してきたその言葉を。そして、その時のガンヴォルトの顔を。
「…あんたは何を知っているんだよ…」
クリスの問いに答える者はいない。ただその呟きは夜空へと吸収されていく様に響き渡る事もなく消えていった。
この話し出ててきた雷人という単語の読みはらいじんです。
後々登場する、うたずきんと同様の存在と考えてください。
ついでに雷人の設定は各所にノイズが出現するとどこからともなく現れて迸る雷でノイズを倒していく人が確認された事、情報操作によりガンヴォルトの存在は隠されているがテレビなどのメディアに映り込んでしまった雷とその地点でノイズが消えていくことからどんどん噂が膨らんでいき、ネット上でささやかれる様になったのが発端。なぜ装者より先に出回った理由ですが、奏、翼の過去の行動範囲が起因していて、二人は都市近郊、ガンヴォルトは全国各地で活動を行っていたことがある為、知名度が二人よりも高い。ついでに男だっていう詳細が出回った理由は、ガンヴォルトのスキル発動時に紡ぐ台詞を口に出しているせい。ガンヴォルト自身はこのことを知ってはいるがバレたことは仕方ないけど命に比べればボクの正体は別にいいという認識。二課はこの事を都市伝説のままの方が都合がいいと思い、正体に関する情報などが有れば改竄や痕跡を辿って隠蔽に勤めている。
本小説もこの単語は本編では関わったりしないのでそこまで覚える必要もありません。
ついでに雷帝とかにしようとしましたが、なんか被りそうだしこの辺にしておこうくらいの考えです。