戦姫絶唱シンフォギアAB   作:株式会社の平社員

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ガンヴォルトは医務室へと連れて行かれた。そんな中、響も心配であったがあまりに大勢の人がガンヴォルトの元へ向かうのも迷惑だと思い、響は近くの休憩室へ来ていた。

 

ガンヴォルトの過去を知る事は出来た。だが、響にとってその事実はかなりのショッキングな内容であり、シアンを助ける為に他者を仕方なくも殺したという耐えがたい事実よりも信頼した者から裏切られると同時に殺されかけ、その者によって大切な人を奪われたという事実の方が頭に残ってしまった。

 

体験したからこそ響の気持ちが分かる。その意味はあまりにも残酷であり、酷い現実であった。そして、それでもなお大切な人が生きていると信じ続けるガンヴォルトの気丈さにはある種の尊敬を抱いた。

 

何故あそこまで振る舞えるのだろうか?響には分からない。

 

悩みに悩んでいると休憩室の扉が開き、誰かが入ってきた。

 

「立花、ガンヴォルトは無事だったわ」

 

翼であり、医務室へと連れて行かれたガンヴォルトが無事である事を知らせてくれる。

 

「立花はガンヴォルトのここまで来るまでの過程で人を殺めていた事に幻滅した?」

 

「幻滅はしてません!あの時皆がガンヴォルトさんに言ったようにあの言葉は私の本心です!」

 

それでも、

 

「…分かんないんです。今のガンヴォルトさんの話を聞いてもそこまでしなければならなきゃいけなかったのかっていうのは分かりません。現にガンヴォルトさん自身も命を懸けてた戦いで一人だけは殺さずになんとか出来ていた訳ですから…。でも、皇神(スメラギ)っていう企業もなんでそうしなきゃいけなかったのかっていうのも分かりません。なんでそこまでして…一人の女の子を犠牲にしてまで世界を平和にしなきゃならなかったのかを…別の方法があったんじゃないかって。それに、ガンヴォルトさん自身のここまで来る過程が辛過ぎます…信頼していた人から裏切られて…大切な人を目の前であんな事をされたのに…」

 

響はガンヴォルトの話を思い出し、涙を浮かべる。響からしたらあまりにも惨たらしい結末を、残酷である結末を。それを知ってしまった響は少し後悔もある。自身も気になっていた、そして親友との分かり合いの何かの手掛かりになると思い、聞いた話はあまりにも酷過ぎる。

 

今では後悔、そしてあんな簡単にガンヴォルトの事を支えると言ってしまった事が本当に正しかったのだろうかと。ガンヴォルトの事を本当に支えてあげられるのだろうかと。

 

「確かに、ガンヴォルトがあんな辛い経験をしていたなんて私も思いもしなかった…」

 

翼も初めて聞いたガンヴォルトの過去。あまりの経験を聞き、自分がその場に入れたならばと考えているのだろうか、辛そうにきつく手を握り締めていた。

 

「でも、ガンヴォルト自身が己の信念を曲げずにやってきた事よ。それを否定する事はガンヴォルトの生き様を、そしてガンヴォルト自身も否定する事になる…貴方の事を否定し続けていた私に対してガンヴォルトから言われた事だけどね」

 

いつの間にか響に対して悲しそうな表情ではあるが先程握っていた拳から力が抜けており、涙を流す響の涙を指で払う。

 

「私はどんな過去があろうがガンヴォルトを受け入れるわ。同じ意思を…人々を救う為に共に手を取り合った仲間なんだから。それに、そんな過去を背負っているからこそ私はガンヴォルトを支えたい。だって私の知っているガンヴォルトは誰にだって優しく、そして気高い意志を持った人なんだから」

 

人を殺してもガンヴォルトは別に悔いていない訳じゃない事を翼は伝えた。響もその事は了子から聞き知っている。それにガンヴォルトも言っていた。殺していた訳じゃない事を。解決出来るなら話し合いで解決したかった事を。だけど、響は未だに迷っている。慎次との約束をしたのにどうしても踏み込めない。

 

そして響は思う。どんな過去があろうとガンヴォルトの事を何処までも信頼する翼の事を。ガンヴォルト自身も翼の事をとても思っている。その関係を羨ましく思う。

 

「羨ましいです…翼さんの様に直ぐにはっきりと答えを明確に出せる事が…」

 

響は翼の様にガンヴォルトの話していたあの時も直ぐにはっきりと答えを出す事が出来なかった。

 

「今ははっきりと出さなくていいの。時間はいっぱいあるんだから、ゆっくりと答えを出せばいいの…これもガンヴォルトからの受け入りだけどね」

 

翼は肩を竦めながら言った。その顔には何処にも悲愴などは感じない優しい笑みを浮かべていた。こんなにも信頼してくれる人がいる。今の響には翼が眩しく感じる。

 

響にも今は喧嘩中でろくにコミュニケーションすら取れない親友の事が浮かんだ。話したい。だけど話す事は出来ない。未来の探し人であるガンヴォルトの事も。

 

辛いが話せない。仕方のない事と自分に言い聞かせる。危険に晒したくないこそ、そうするしかないのだから。

 

響はいつの間にか深刻そうな表情で考え事をしだした為、翼は心配そうに響の名を呼ぶ。

 

「立花?」

 

「えっ?」

 

「急に深刻そうな表情をしたから心配したわ。まさか、私の忠告を無視して今すぐにでも答えを出そうとでもしたの?」

 

少し呆れ気味に聞く翼。

 

「い、いえ!ちょっと別の事を考えていたんです。今のガンヴォルトさんと翼さんの関係が羨ましくて…。何があっても信じてくれる人がいて…」

 

翼もその言葉にどうしてそこまで深刻そうに考えるのか問いただす。響は今親友とシンフォギアと二課の事、そしてガンヴォルトの事、そして今は喧嘩をしていてその仲直りの為の糸口を探している事を。

 

翼は響の悩みに真摯に向き合い、共に考えてくれた。

 

「…秘密を守りながら誤解を解く…難しいわね」

 

「はい…危険な目に遭わせたくない…だからってそれ以上の嘘で傷付けて、これ以上深い溝を作りたくないんです」

 

翼もどうにか考えているが答えは出ないようだ。翼にしてもその様な経験がない為、どう答えたらいいのかも分からない。

 

「…奏なら良い答えを出せたのかもしれないわね」

 

翼が不意に漏らした言葉。何故奏ならば分かるのだろうと響は疑問に思う。その事を翼に聞くと翼は少し考えてから話してくれた。

 

過去に奏は父親をノイズに目の前で殺されて、近くにいたガンヴォルトが助けられなかった事を責め、恨んでいた事を。

 

奏の事をあまり知らない響にとってはそれは驚きであった。ガンヴォルト自身が奏の事をあんなに気に掛けているのに奏はガンヴォルトを恨んでいたなんて思いもしなかった。

 

出会うたびに奏はガンヴォルトに向かって罵詈雑言の嵐。ガンヴォルトはそれでも奏に歩み寄ろうとしたが全て拒絶されていたらしい。

 

「奏が変わったのは家族のお墓参りに行った後からね…私も何があったか分からないけど、今まで歩み寄ろうとしなかったガンヴォルトに対して心を開き始めたの」

 

ガンヴォルトと奏の関係。それはどんな些細なきっかけだったのかもしれないが歩みをやめなければ変われるのかもしれないと。翼はそう言った。翼にも何があったか分からない。でも、翼にはガンヴォルトがあんな奏に対してもずっと歩み寄ろうとしたからこそ、奏が心を開いたんだと言った。

 

「他人事の様で悪い気もするけど諦めるな、立花。諦めた所でその溝は深くなるかもしれないから」

 

かつて奏に言われた言葉と似たニュアンス。その言葉に響は勇気を、活力を与えてくれた。

 

諦めるな。それは今は眠る奏が唯一、響に教えてくれた事。その言葉に響がどれだけ勇気を貰ったかを。

 

響は拳を握る。

 

まだ、何もしていない。出来ていない。

 

ガンヴォルトの事を信じ、支える事も。未来との仲直りも。ガンヴォルトの過去の行いが悪い事だったとしても、響の知るガンヴォルトは人々を守る為に戦ってきた善良な人物。命の恩人である。それに未来の恩人でもある。

 

だからこそ、響は今までの不安を拭い去る様に頭を振り、翼に向けて礼を述べる。

 

「ありがとうございます、翼さん。私、もう大丈夫です。ガンヴォルトさんの事、未来の事。諦める事はしません。約束とかそういうのじゃなくて私がそう思うからしないんです。だって、どんな過去をしていようと私の知っているガンヴォルトさんは皆の為に戦って、守ろうとしてくれるかっこいい人だから。恩人だから。ガンヴォルトさんの事を疑心暗鬼していてもこのまま胸のつっかえを持ったまま接し続けるのも私らしくありません!何があっても私はガンヴォルトさんの事を信じ続けます!」

 

その言葉に笑みを浮かべる翼。

 

「早急に考えないでって言ったけどもう答えが出たのね…でも、ありがとう」

 

ガンヴォルトの事を信じてくれた事に感謝する翼。そして響の様な真っ直ぐな人であれば必ず親友と元の関係を築けると励ましてくれる。

 

未来との関係。響にとっての陽だまり。絶対に一緒に見ようと約束した流れ星。

 

絶対に戻ると誓い、響はその想いを胸に自身を鼓舞するのであった。

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