戦姫絶唱シンフォギアAB   作:株式会社の平社員

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数日が経つ。

 

二度ノイズが出現したため、出動して戦闘を行った。避雷針(ダート)はボクの第七波動(セブンス)の雷撃を纏って打ち出されるため、ノイズにもロックオン可能だという事が分かった。

 

その結果、複数のノイズとの戦闘はかなり楽になっていた。ただ、問題があるとすれば今は良いがかなりの数のノイズが現れた場合、避雷針(ダート)の数が足りなくなるという事くらいだ。

 

それなりの数を用意してもらっているが、それでも一回の戦闘で減る避雷針(ダート)の数は多い。ボクの髪の毛から出来ている物であるため、髪を切って渡しているが、伸びるのにもそれなりに時間が掛かる。

 

スキルを無限に使用出来ればそんな事ないのだが、そんな上手い話がある訳でもなく、スキルも使いどころを考えなければならない。それに、現在はライト二ングスフィアのみしか知られていないため、他のスキルを使用する事も出来ない。ただ、他の二つのスキルに比べて燃費が良いのがまだ救いなのかもしれない。

 

後、生活環境も変わった。現在は二課より支給された部屋から離れ、職員の独身寮の一角を借りさせてもらっている。

 

それと弦十郎の計らいにより戸籍を作って貰い、学校にも通わせてもらっている。

 

年齢的にも中学生だし、二課にずっといるよりもある程度は自由になったのは良い事だとは思う。ボクの元いた世界でも、学校に通っていたし別に苦という訳でもない。

 

ただ、ボクだけがこんな形で過ごしている中、シアンの事だけが心残りである。

 

「無事でいてくれ…」

 

◇◇◇◇◇◇

 

「ガンヴォルトの様子はどうだ?」

 

「独身寮の一室を与えてから、学校にも普通に通っていてます。学友も出来、中学生らしい生活を送っていると思います。ですが、ガンヴォルト君自身、大人びたところがありますし、少し他の方々と距離を置いているところが少し不安にはなりますが…」

 

弦十郎の質問に慎次が答える。

 

確かに、ガンヴォルトはあの年代にしては大人びたところがある。それは、ガンヴォルトの元の世界での生活環境が起因しているのかもしれない。

 

だが、この数日ガンヴォルトを見ている限り、弦十郎等が危惧していた可能性は誤りではないかと思いたくなる。

 

「俺達の思っていた事は起きない。そう願いたいものだ。だが、ガンヴォルトには悪いが、1%以下の可能性でも捨てきれない限り、監視を続けさせてもらうしかないか」

 

弦十郎は、プライベートすらも監視するなんて事は余りしたくはないが、危険性が完全になくなった訳ではない。それを考慮すると監視せざるを得ない状況である。

 

「全く、こんな事を行わなければならない事に嫌気が差してくる。青春真っ只中の少年の監視を未だ続けなければならない状況に」

 

「ごもっともです」

 

二人して大きな溜め息を吐く。

 

しかし、事の転換期は唐突に起きるものだ。

 

鳴り響くアラーム。そのアラームはノイズの出現を意味していた。

 

弦十郎の通信端末に連絡が入る。

 

『大変です、司令!ノイズの出現パターンが大量に出現!場所はこの上付近のリディアン音楽院!』

 

「ノイズ、だと!?」

 

弦十郎は声を荒げ、通信端末に向かって現状の様子を確認する。

 

『現在、ノイズの反応が初等部のある校舎に集中しています!天羽々斬装者である翼さんが交戦している模様!しかし、数が多く、対処しきれていません。現在一課に要請して避難誘導を行っていますが、間に合うかどうか…』

 

「くそったれ!」

 

弦十郎は端末を強く握りしめる。その直後、慎次の端末に誰かから連絡がきたのか、バイブレーションで震える。

 

『こちらガンヴォルト。ノイズの出現で、学校からシェルターへ避難勧告が出された。出現場所は?』

 

「ガンヴォルト君!現在、ノイズはリディアン音楽院初等部、二課の本部の地上付近に発生しています!」

 

『了解。ボクも直ぐに向かって、ノイズの掃討に当たる。何か指示があればその都度出して』

 

ガンヴォルトはそう言って通信端末を切った。

 

「まさか、こんな早くに翼さんと共闘する羽目になるなんて…」

 

「仕方あるまい。慎次!俺たちも司令室に急ぐぞ!」

 

弦十郎と慎次は共に司令室へ向かう。弦十郎は危惧している事が起きない事を願っていた。

 

◇◇◇◇◇◇

 

ボクは持ってきていた戦闘服を装備をして直ぐにリディアン音楽院初等部へと向かう。道には、人が避難のために溢れかえっていたため、建物の屋上へと駆け上がり、建物から建物へと移動している。

 

リディアンに近づくにつれ、人がいなくなったのを確認し、屋上から飛び降りて道路へ。第七波動(セブンス)による生体電流の活性による強化の限界速度で駆ける。

 

一課と思われる戦車などが見える。その先にはノイズに向け発砲する、一課の部隊。しかし、質量兵器である、銃火器はノイズの身体を通り越して全く役に立っていない。ノイズたちは体の形状を変化させ、その部隊へ向けて攻撃しようとしていた。

 

ボクは彼らの前に出ると雷撃鱗を展開する。ノイズ達は、雷撃鱗に触れた瞬間に炭化して崩れ落ちた。

 

「大丈夫!?」

 

「あ、ああ、君は?それにこれは…?」

 

彼らは現状が理解出来ず、ボクの方を見ながら、問いただす。

 

「ボクは二課協力者。この力については二課から聞いて。それより、状況は?」

 

「じょ、状況はリディアン付近に大量のノイズが発生。現在、リディアンにはノイズがいて全く近付けていない」

 

さすが軍人。すぐに落ち着きを取り戻し、報告してくれた。どうやら出動してここで足止めを食らっていたようだ。

 

「了解。ボクはこの先に向かう。あなた達は、付近にまだ避難者がいないか確認して欲しい。避難者がいない事を確認出来たらそのままボクが通るこの道を通ってリディアンに向かって」

 

ボクはそう言って再び駆け始める。リディアンに近付くに連れ、大量のノイズが出現する。

 

「退くんだ!」

 

沢山のノイズがボクに向けて形状を変え、襲い掛かろうとするが、展開している雷撃鱗に触れると炭化して消える。

 

ノイズを殲滅しながら先に進む。突如横から謎の液体のような物が飛んでくる。エネルギーも切れかかっていたため、雷撃鱗を解除して後ろに飛んで躱す。液体が道路に当たった所からノイズが出現する。液体の飛んできた方向を見ると芋虫に足が生えたような巨大なノイズが出現しており、再び口らしき所から吐き出そうとしていた。

 

直ぐにダートリーダーを構え、避雷針(ダート)を3発命中させる。避雷針(ダート)が着弾した所に紋様のようなものが出現する。

 

ボクは素早く、EPエネルギーのチャージを行い、再び雷撃鱗を展開する。雷撃鱗からその紋様に向かい、3つの雷撃がそのノイズに誘導され、触れたと同時にノイズの身体全体に蒼い雷撃が迸る。雷撃がノイズの身体を覆うと同時に、炭化して消える。

 

その瞬間にボクは再び、リディアンに向けて走り出す。遠くにいるノイズには避雷針(ダート)を撃ち込み、雷撃を誘導させ、襲い掛かるノイズは雷撃鱗により炭化していく。

 

ノイズを殲滅しながらどうにか、リディアンに到着する。リディアン初等部という門を潜る。そこには、ある一方向を向き、その中心に向けて襲い掛かるノイズの群れが確認出来た。

 

ボクはそのノイズの群れに雷撃鱗を展開しながら、走り出す。ノイズはボクに気付いた時には既に炭化しており、走り抜け中心に近付くに連れて状況を理解する。

 

中心には、肩で大きく息をしている翼がおり、ノイズと戦っていた。既に装着されている装備はボロボロで誰が見ても危ない状況と分かる。

 

ボクは自分の出せる限りのスピードで走り抜け、翼の元へ向かい、翼の背後から忍び寄るノイズに向けて避雷針(ダート)を撃ち込んで、雷撃を誘導させ炭化させた。炭化したノイズを見て慌てる翼。その隙を見逃さないとばかりにノイズが襲い掛かる。

 

だが、その前にボクが翼の元に辿り着き、一度雷撃鱗を解き、翼を抱えて、跳躍する。ボロボロになった翼を見て、顔を歪ませる。なんでもっと早く助けてやれなかったと。

 

「よく頑張った」

 

ボクは今の状況を理解出来ていない翼を抱えてそう言った。ノイズを雷撃鱗で撃破しながら、校舎の壁を蹴り、安全だと思われるリディアン初等部の屋上に着地して、翼を下ろす。

 

「ガン…ヴォルト?」

 

「後はボクに任せて」

 

「ちょ、ちょっと…」

 

ボクに何か言いたげに詰め寄ろうとするが、足がふらつきぺたんとその場に座り込んでしまう。その足は震えており、立つ事は少し難しいだろう。

 

校舎下に見えるノイズの大群。既にこちらに向けて今にも飛び掛かりそうな状況だ。この数を雷撃鱗と避雷針(ダート)だけでは確実に対処は出来ない。

 

「あの数を1人でなんて無理!私も戦う!」

 

そう言って持っていた刀を杖にして立ち上がろうとするがボクはそれを制して、言った。

 

「大丈夫、あとはボクがどうにかするから」

 

安心させるよう笑い掛け、ボクはノイズの方に視線を移す。

 

「翼、付近の住民避難って終わってるか分かる?」

 

「えっ…逃げ遅れがいないなら終わってると思う」

 

目の前まで来ていたノイズに雷撃鱗を展開して、炭化させる。このノイズの数、翼を守りながら戦うのであれば長引くと危険だ。それなら、ボクも出し惜しみしてる場合なんてない。

 

「閃く雷光は反逆の導、轟く雷光は血潮の証、貫く雷撃こそは万物の理」

 

その言葉を紡ぐごとにボクの展開する雷撃が形を変え、鎖に変わる。その鎖はボクの周りから出現すると同時に、視界に入るノイズたちへと向かい貫く。視界に映るノイズの数は多いが、ボクの周りに展開される鎖はそれ以上の数、長さで、ノイズ全てを絡め取る。

 

「迸れ!蒼き雷霆よ(アームドブルー)!ヴォルティックチェーン!」

 

その言葉と同時に鎖にとてつもないエネルギーを持った雷撃が迸る。貫いた鎖からノイズへと雷撃が流れ込み、炭化させる。それだけではなく、雷撃はさらに力を増幅して次々とノイズを殲滅して行く。

 

ものの数秒で全てのノイズが炭の塊となって崩れ落ちる。

 

ボクは、全てのノイズが片付いた事を確認するため、一度連絡を入れる。

 

「こちらガンヴォルト 。リディアンのノイズを殲滅。他に反応があるか確認して」

 

『ああ、ノイズの反応は確認されていない。しかし、何をしたガンヴォルト』

 

「それは後で説明するよ」

 

そう言って端末を切る。そして翼の方に歩み寄る。まだ、先程の光景が目に焼き付いているのか、惚けている。

 

しかし、ボクが目の前に来て翼の目線に合う高さにしゃがむ時にようやく意識をこちらに向けたのか少し身構える。そんな翼の頭に手を置いて

 

「よく一人で頑張ったね」

 

そしてその言葉を聞いた翼は目を見開いていた。そして、その言葉の意味を理解したのか瞳に涙を溜め、やがて決壊したように泣き出した。

 

「怖かった…怖かったよ…私、死ぬんじゃないかって…」

 

零れ落ちる涙を手で拭いながら呟くように言った。ボクはそんな彼女を抱きとめ、頭を撫でる。彼女はボクの胸に顔を押し付けると声を殺して泣き続けた。シアンよりも下の年齢の子だ。今まで一人で戦い、辛かったのであろう。

 

ボクは彼女が泣き止むまでは胸を貸した。

 

◇◇◇◇◇◇

 

翼はノイズがリディアンに出現した事を確認して、直ぐ様天羽々斬を纏いノイズの掃討へと向かう。

 

リディアンに出現したノイズは今まで戦った事のない数であり、恐怖に足が竦む。だが、ここで恐怖して戦えなくなれば、リディアンの生徒が教師が殺されてしまう。

 

覚悟を決め、刃を構える。

 

「防人の剣で全てを薙ぎ払って見せる!」

 

そして翼はノイズへと駆ける。剣を振るい、ノイズを次々と両断していく。もちろん、ノイズもただ斬られている訳でなく、翼に向け、攻撃を仕掛ける。

 

あるノイズは形状を変え、弾丸のように。あるノイズはその大きな口を開け飲み込むように。巨大なノイズはそれを支援するように強力な酸のような液体を飛ばす。

 

翼は弾丸のようなノイズを斬り裂き、襲い掛かる大口のノイズを蹴り飛ばし、酸を巨大な剣を召喚して盾のようにして防ぐ。

 

しかし、あまりの数の多さに苦戦を強いられ、纏うシンフォギアはボロボロになっていく。

 

ノイズの攻勢は止む事がなく、こちらの体力、武装を削っていく。巨大なノイズが小型のノイズを湯水のように召喚し続け、遂には膝を付いてしまう。

 

「はぁ…はぁ…ここまでなの…」

 

足は震え、立つ事が苦しい状態だ。限界に近いが、それでも立ち上がろうとする。その時、翼の背後に何かがバチっという音が聞こえる。

 

振り返ると、背後にいたと思われるノイズが雷に包まれ、炭化していた。そして雷の発生源の方を向くと蒼い雷の膜がノイズを炭化させながら近付いてくるのが見えた。

 

「あの蒼い雷は…」

 

その蒼き雷はかつて戦場にて見た、彼の、ガンヴォルトの雷であった。そして翼の前まで来るとガンヴォルトは翼を抱え、そのまま飛び上がった。

 

ガンヴォルトはボロボロになった翼の状態を見て顔を歪ませるが、直ぐに安心させるように表情を変えた。

 

「よく頑張った」

 

彼はそう言った。ガンヴォルトは翼を抱えながらノイズを炭化させ、壁を蹴り、リディアンの校舎の屋上で翼を下ろす。

 

「ガン…ヴォルト?」

 

翼はガンヴォルトの名前を口にする。ガンヴォルトは翼の方を見ながら言った。

 

「あとはボクに任せて」

 

そう言ってノイズの方に体を向ける。流石にあの数を一人では無理だと感じ、翼はガンヴォルトに近付こうとする。

 

「ちょ、ちょっと…」

 

しかし、足を上手く動かす事が出来ず、そのまま座り込んでしまう。

 

「あの数を1人でなんて無理!私も戦う!」

 

いくらガンヴォルトでもあの数を一人で戦うなんて無理がある。翼は剣を杖代わりにして立ち上がろうとする。が、ガンヴォルトはそれを制し、翼を不安にさせないためか、笑い掛けてくる。

 

「大丈夫、あとはボクがどうにかするから」

 

そう言ってノイズの方を向きながらガンヴォルトは翼に質問する。

 

「翼、付近の住民避難って終わってるか分かる?」

 

避難はリディアン付近にシェルターが幾つもあり、ここにノイズが集中しているのならば、避難は完了していると思われる。

 

「えっ…逃げ遅れがいないなら終わってると思う」

 

ガンヴォルトは襲い掛かるノイズを身体から出現した雷の膜で炭化させながら、そうと言うと、雷の膜を消した。

 

「閃く雷光は反逆の導、轟く雷光は血潮の証、貫く雷撃こそは万物の理」

 

ガンヴォルトは言葉を紡ぐ。その言葉に呼応するようにガンヴォルトの身体から湧き立つ雷が姿を変える。

 

鎖。彼の雷は無数の鎖となって現れ、その鎖は意思を持つが如く、校庭にいるノイズの大群へと向かい貫き、又は絡め取るように巻き上げていく。

 

そして、

 

「迸れ!蒼き雷霆よ(アームドブルー)!ヴォルティックチェーン!」

 

ガンヴォルトが叫ぶと同時に鎖に雷撃が迸った。その雷撃はノイズ達を雷撃が包み、より強力になりながら、ノイズ達を殲滅せんと校庭に迸った。

 

瞬く間にノイズは炭化していき、校庭からは全てのノイズが消え失せた。

 

余りの光景に放心する。これがガンヴォルトの力、蒼き雷霆(アームドブルー)。気付くとガンヴォルトは翼の目線に合わせてしゃがんでいた。そして、ガンヴォルトは翼の頭に手を置いて、

 

「よく一人で頑張った」

 

そう言った。翼はその意味を最初は理解出来なかった。しかし、どことなく暖かく、心に響くその言葉を聞き、涙腺が崩壊したように涙がとめどなく溢れ出す。

 

「怖かった…怖かったよ…私、死ぬんじゃないかって…」

 

今までの恐怖を思い出し、翼は泣きじゃくる。一人で戦い続け、疲弊していた心が隠していた感情をさらけ出すように泣く。

 

ガンヴォルトはそんな翼を抱きしめ、頭を撫でてくれる。その暖かさに翼はガンヴォルトの胸を借り声を押し殺しながら泣き続けた。

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