ボクは街にいるノイズを掃討しながらクリスの行方を追う。響も現場にて合流したが響も行方の分からなくなっている親友を探す為、別の場所に行ってもらった。
ノイズを相当な数を倒しているのにも関わらず一向に減る気配を見せない。何処かにフィーネがおり、減っている側からそれ以上の数を出現させているのか。もしくは巨大な芋虫の様なノイズが見えない所を考えると葡萄ノイズが相当な数がいて、出現させ続けているのか。
減る気配のないノイズ。
囲まれながらも雷撃鱗を展開して襲いくるノイズを近距離で炭へと変え、離れた所から攻撃しようとするノイズには
キリがない。クリスを追う為にボク自身の使える広範囲で高威力のヴォルティックチェーンを使った事がこんなとこで仇になるとは。
スキルも使おうと思えばスパークカリバーは使えるだろう。だが、この大量のノイズを殲滅するには足りない。
どうする。考えた所でノイズは歩みを止めるはずもなく、絶え間なく攻撃を続ける。
だが、そんな中、空に大量の剣が出現すると共に落下して周囲のノイズを全て掃討した。
「大丈夫!?ガンヴォルト!?」
「翼、助かったよ」
最後の剣と同時に降り立つ翼。翼はボクに駆け寄ると見慣れた弾倉を幾つか手渡してくれる。
「遅れてごめんなさい。司令に念の為にこれを渡してくれって頼まれて」
「弦十郎も把握してくれて助かった。翼もありがとう」
「現状はこっちの被害は建物のみの倒壊、避難している住民は今の所確認出来ていない。翼の方は?」
「私の方も司令から貴方の場所を聞いてノイズを倒しながら来たけど周辺にはノイズだった炭だけで建物以外の被害はなかったわ」
「そうなると翼のいた所に雪音クリスがいた可能性があったって事か」
クリスの名前が出た事に翼が驚きの声を上げる。
「あの子がここに!?立花は!?」
「心配ないよ。今の雪音クリスならね。響の事なんて考えず、ボク達と同じように皆を救う為に奮闘している」
「でも!」
翼がそれでもと言いかけるが口を閉じた。
「貴方がそこまで言うなら私もあの子を信じるわ」
そう話している間に大量の玉が降り注ぐ事を感知して雷撃鱗を展開して、翼を守る。そして雷撃鱗に触れた玉は爆発し、それ以外の地面にぶつかった玉はノイズへと姿を変えた。
「どうやら向こうからこの大量のノイズを出現させる元凶が姿を見せてくれたみたいだ」
ボクはそう言うと攻撃の元へと目を向ける。そこにはかつてボクが倒した事のある葡萄のように大量の実のようなものを携えたノイズが何体もいた。
「ガンヴォルト、ここは私がなんとかするから立花の元へ行って」
ノイズに向けて剣を構えた翼がそう言った。ボクも周囲を警戒しながら何故と問う。
「言ったでしょう?立花のガングニールには未だ
「…ノイズの数が数だ。流石に翼一人で戦わせる訳にはいかないよ」
そう言うと翼は愚問と言い、蒼ノ一閃をノイズに向けて放つ。
「もう奏とガンヴォルトの背中を追い続けた弱い私じゃないの。一人の防人として貴方の側に立つ為に私は強くなって行きたいの。だから行ってガンヴォルト。私は大丈夫だから」
その姿にボクは肩を竦め、翼がいつまでも守られる存在ではなく、守る存在である事を理解し、この場を任せようと思った。
「分かった。ボクは響の捜索をするよ。でも翼、無茶だけはしないでね。危なくなったら直ぐに逃げるんだ。それと、雪音クリスを見たら伝えてくれ」
ボクはそう言うと道を切り開く為に言葉を紡ぐ。
「煌くは雷纏し聖剣、蒼雷の暴虐よ敵を貫け!」
言葉に呼応し蒼い雷が、巨大の剣を象り、姿を現す。
「迸れ!
巨大な剣がノイズを貫き、その剣から放たれる雷撃により目の前にいるノイズが一瞬の内に炭へと変化した。
そしてスパークカリバーが消えると同時にボクは走り出す。そこに目掛けてノイズ達も逃さないとばかりに襲い掛かろうとするが雷撃鱗を展開しての移動、そしてそうはさせないと翼が周囲のノイズを斬り飛ばしてボクは囲まれたノイズの輪の中から逃れた。
「頼んだよ、翼」
ボクはそう呟くとノイズの群がる場所から離れて行く。
「お願いね、ガンヴォルト」
最後にボクに向けて告げた翼の一言。ボクは翼の言葉を信じ、その場から遠ざかって行った。
◇◇◇◇◇◇
響は未来との距離が離れている事を実感しつつもフラワーのおばちゃんを安全な場所に連れて行く為に走る。
幸い、シンフォギアを纏っていなくても既にノイズは誰かしらに倒されており、難なく運ぶ事が出来ている事に安堵しながらも走り続ける。
その途中なのかタイミングよく大通りに一台の車が響の前に停止した。
「響さん!何故シンフォギアを纏っていないんですか!?」
「緒川さん!その説明は帰ってからします!とにかくおばちゃんを安全な場所に!」
そう言うと近付いてくる慎次におばちゃんを任せると響は走って未来を探しに行こうとする。
「待って下さい!その状態での捜索は危険です!」
響は、ノイズに追われる未来が心配でそれどころではなかったのだが、慎次の言う通り、今の状態で未来の元に行っても自分という被害者を増やすだけと思い、あの時何故シンフォギアが解けたか未だ謎であり、不安でもあったが、聖詠を歌う。
「Balwisyall Nescell gungnir tron」
あの時とは違い、倦怠感もなくシンフォギアを纏う事に成功した。
あの時、何故シンフォギアが解けたのか、響には分からない。だが、今はこの力があれば未来を救う事が出来ると思い、そのまま駆けて行った。
行く先々にいるノイズが響の邪魔をするかのように襲い掛かろうとするが、響は纏うシンフォギアで、そしてようやく理解した自身のアームドギアを使い、ノイズを撃破していく。
しかし、響はこうしている間にも未来が危ない目に遭っている事を感じ、焦り、急ぐ。
未来の居場所は分からないが、響の逃げた方向とは逆に逃げたはず。それに逃げるにしてもいくら未来が過去に陸上をしていたとしても体力の限界がいずれ来る。
だから早く未来を見つけなくては。
響は地面を蹴り上がり、ビルの屋上へと到達するとさらに高くから見下ろして探す為に全力で飛び上がった。
空中で未来の姿を探す。今動いているとすればそれはノイズであり、それが向かう先には標的、つまりは人がいる。
遠くでは爆撃による破壊音と蒼いエネルギーの斬撃が空中へと放たれ、そこから少し離れた所では見慣れた蒼い雷撃が見える。
翼とガンヴォルトであろう。そしてさらに二人の奥では空に浮いている飛行型ノイズ達がおり、次々と炭の塊となっている。
遠距離であのような事はガンヴォルト、翼でも可能であるが、スピードが桁違いであり、あの場所では多分クリスが戦っているのだろう。
響はその地点へと向かうノイズ以外を探す。そしてその地点へと向かうノイズは発見出来なかったが、川の付近の小高い丘の道路に背後から先程見たノイズに追われる未来の姿を小さくだが捉えた。
「未来!」
響は腰に付いたブースターを使い、空中を駆けるようにして未来の元へと向かった。
◇◇◇◇◇◇
未来は走り続けた。ノイズから逃れる為に。
響にフラワーのおばちゃんを任せ、とにかく二人から追い掛けてくるタコのようなノイズの気を引きながら、人気のない道をただ走る。
体力の限り、出来るだけ遠くに。陸上で鍛えていた足で何とかノイズとの距離を保ちつつ、未来は逃げ回る。
響とおばちゃんとの距離はかなり稼げたはず。このまま足を止めればノイズの餌食となってしまう。
しかし、既に走り続けた足は前に出すだけでもきつく、重い。だが走り続けなければノイズに襲われて炭へと変えられてしまう。
死ぬ訳にはいかない。
未来は走り続ける。だが、長く走り続けた足は上手く上げる事が出来ず、躓き、転んでしまう。
その瞬間をタコのようなノイズは好機と捉えたのか巨体を打ち上げるように飛んで、未来の頭上へと落下する軌道で襲い掛かる。
未来はその瞬間に自分の最後を悟った。
「もう…ここまでかな…」
響にしっかりと謝る事が出来なかった事を後悔しながらも、響を危ない事から遠ざけられた事に安堵しながら未来は、自分はこれで終わるんだと、目を瞑る。
短い人生だった。響と色々な事があった。走馬灯のように脳裏に過ぎる響との記憶。そして、会う事のなかったあの人の後ろ姿。
フラッシュバックしていく記憶、大切な思い出を感じながら、未来はただ自分の終わりに近付く人生を待った。
だが、フラッシュバックしていく記憶の中に最近響と約束した流れ星の件が見える。
響の本当に楽しそうに、待ち遠しそうにしている顔。そして次こそ絶対見ようという言葉。未来は目を開けて気力を振り絞り、立ち上がろうとする。
まだ、響と流れ星を見ていない。仲直りもしっかりとしていない。そして、ちゃんと話してもいない。こんな所で死んでしまったら、響は悲しみ、あの頃のように一人になってしまうかもしれない。自分が響を傷付けた事は分かっている。だけど、それでも響はそんな未来と分かり合おうとしてくれた。
だからこそ、しっかりと話し合わなければならない。未来は立ち上がり、襲い掛かるタコのようなノイズの影から、ふらつく足を精一杯動かしてその場から離れた。
その直後にタコのようなノイズの攻撃を避ける事には成功した。
だが、タコのようなノイズの重さによる盛り上がったコンクリートにより、未来は打ち上げられてしまう。
運悪く、ここは小高い丘であった為、打ち上げられ、丘の急な斜面へと飛ばされた未来はそのまま高所から落下していく。
「きゃぁぁ!」
ノイズに殺される事はなかったが、こんな高所から落ちれば助からない。結局、響に謝る事も出来ず、悲しい目に遭わせてしまった響の事を思い、涙する。
そして、そんな落下する未来へとタコのようなノイズは崩れたコンクリートから飛び出して落下していく未来を襲いに触手を伸ばしてくる。
「ごめんなさい、響」
響に本当は謝りたかった。だが、今の未来にはノイズにより殺されるか、落下して死ぬかの二択しかない。
「未来!」
突如聞こえて来た響の声に目を見開き、落ちていきながらもその声の方向に目を向ける。
そこにはかつて未来の見た黒い鎧などではなく、響の陽だまりを体現したかのようなオレンジに近い黄色の鎧を纏った響がノイズに向けて飛び込んでいた。
「響!?」
突然の事で未来は響へと逃げるように促そうとするが、既に響に気付いたノイズはこちらに触手を伸ばしながらも響にも残った触手を伸ばして炭に変えようとしていた。
「逃げて、響!」
空中では受け身どころが方向転換出来ない事は分かっている。だが、未来にはそれしか出来なかった。響は一度未来の方へと目を向けて言った。
「心配しないで、未来!直ぐに、今度こそ助けるから!」
そう言うと響の鎧の腕が変形すると共にタコのようなノイズの触手を空中で器用に避けるとノイズに向けて拳を振るった。
ノイズは響の拳を受けて、吹き飛ばされるとそのまま炭の塊となって崩れていく。ありえない光景を目の当たりにして呆然とする未来。だが、響は腰に付いたブースターを器用に使い方向転換すると未来を抱きとめた。
「ごめんね、未来!こんな危ない目に遭わせて…本当に…本当に無事でよかった…」
響は未来を抱きとめたと共に涙を流す。未来も釣られて涙を流す。
「なんで響が謝るのよ…私の方が響に酷い事したのに…」
落下しながら、二人は互いの無事を確かめるように強く抱きしめる。だが、直ぐに響は落下中の事を思い出したかのように未来を抱えて、体勢を整える。
「待ってて、未来!絶対に助けるから!」
響は未来に涙を流しながらも笑いかけ、未来も響に釣られて笑みをこぼした。
「私は響を信じるよ!こんな私の事を助けてくれようとしてくれたし…私は響の親友だから!」
その言葉に響は特大の笑みを浮かべると地面へと両足で着地した。落下と共にかかっていた重力が響の足を襲うが、鎧を纏った響はそんな事を物ともせずに地面へと着地した。
だが、着地地点が急勾配の坂であった為、響はバランスを崩す。響は未来を守る為に強く抱きとめて、急勾配な坂を転がり落ちていく。
ようやく勾配を抜け、回転が止まると響は未来を抱きとめていた腕を解く。それと同時に、未来も反動で転がるように仰向けで大の字で草むらで寝そべった。それと同時に響の先程纏っていた鎧は消えて、リディアンの制服を纏っていた。
「ごめん、未来。私がこんな事を隠していたせいで、危険な事に巻き込んで」
響は体を起こして未来に土下座する勢いで座り込む。そんな様子を見て未来は体を起こして、それを制した。
「響がなんで謝るの!私の方があんなに酷い事を言って、響を傷付けたのに…」
二人は互いに自分の悪かった部分を言い合うが、どちらも一歩も引かない。
そして互いに言い合う事が尽きたのか息を切らした二人。そして、響は未来を見て笑みを浮かべた。
「よかった…未来は私を本当に嫌いになったんじゃなくて…」
響の言葉が未来の胸にあった一抹の不安を溶かしていく。
未来は自分のせいで響が傷付き、塞ぎ込んでしまうんじゃないかと心配していた。だが、実際は、あんな事を言ったのにも関わらず、響は変わらず、まだ自分の事を親友だと信じて、こうやって危険な事を顧みず、助けてくれた。
あんなにも拒絶したにも関わらず。その事に未来は涙を流す。だが、響はそんな未来を抱きしめて言った。
「どんな事があっても、私は未来を助けるよ。だって未来は私にとって大切な居場所で陽だまりなんだから」
その言葉に決壊したダムのように涙がポロポロと溢れ出す。
「響…」
あんな事をしたにも関わらず親友として、接してくれた響。その事が今の未来にとってどれだけ嬉しかったかは未来しか分からない。とめどなく溢れる涙が流れ落ちるまで、響は未来を抱きしめ続けた。
そして、未来の涙がようやく枯れきった所で、未来は響から離れる。そして、先程転がってしまい、何処か怪我をしたんじゃないかと心配するように身体を見始める。
「ど、どうしたの?未来?」
「どうしたって、さっき転がった時に響が何処か怪我したんじゃないかって」
「大丈夫だよ!それよりも未来は今の自分の方を心配した方がいいよ」
少し笑いを堪えるように言う響に対して、未来は自分の姿を見る。制服が所々破けており、女性からしたら恥ずかしいし、下着の一部が破けた部分から露出していた。未来は顔を赤らめるが周囲に響しかいない事を確認して、安堵し、仕返しとばかりに、響の今の状態を言った。
「今は私と響しかいないから心配ないけど、それを言うなら響の方も、女の子からしたら恥ずかしいくらいに、顔に泥とか草とか付いたり、髪とか凄いボサボサになってるよ」
「嘘!?」
そう言って響は髪を整えるように、手で泥や草を取り払おうとするが、見当違いの場所ばかりにやる為、逆に酷い有様になっていく。
「そこじゃないよ、響」
響は未来から言われた場所を拭ったりするが、結局、その行為が悪く、酷くなる一方だ。
その行為に笑っていたが、響がそれならどっちが酷いか写真を撮ろうよ、と言う。
未来はそれを快く承諾すると二人の様子を写すように、スマホのインカメを使い、今の二人の姿を撮影した。
二人のあまりの酷い姿にお互い笑い合う。どちらも今の状態はとても他人に見せられる程整った姿をしておらず、どっちもどっちであったからだ。
「あはは!結局、二人ともあんまり見せたくないような姿だったんだね」
「笑い事じゃないよ、響。この後助けに来てもらっても結局恥ずかしい目に遭うじゃない」
その事を笑う響に呆れながらも未来にも笑みが溢れる。
だが、それを遮るように、響の後ろに数体のノイズが出現する。
そして、そんな二人に向けて、躊躇いもなく銃弾のような勢いで攻撃を開始するノイズ。
響はその事に未だ気付いていない。このままでは、二人とも危ない事を悟った未来は響だけでも助ける為に、立ち上がるとノイズの前に立ちはだかる。
その行動にようやくノイズの出現に気付いた響は未来に迫り来るノイズ達に気付き、危険になった未来の名を呼ぶ。
「未来!」
だが、ノイズはそんな響の声を無視するように未来へと襲い掛かる。
未来は今度こそ絶体絶命のピンチに目を瞑り、ノイズに身体を貫かれる事を覚悟した。
ごめん、響。せっかく仲直りしたのに。
響に向けて懺悔して迫り来る脅威が自分の身体を貫くのを待つ。
しかし、いつまで経ってもノイズが未来の身体を襲ってこない事を感じ、恐る恐る目を開ける。
そこにはかつて自分を救ってくれた男性のように雷の膜を張り、ノイズを退ける後ろ姿があった。
「二人とも無事かい?」
その背中、そして声に未来は涙を流す。
その男は七年前に未来をノイズの脅威から救い出してくれた、紛れもなくあの人の後ろ姿であった。