ノイズを殲滅しながらなんとか響の元に辿り着く事が出来たが、響ともう一人、多分先程言っていた捜索していた少女と思わしき二人がいた。
だが、響と少女が互いの無事を喜んでいる最中、それに水を刺すように現れたノイズ。響はシンフォギアを纏っていなかった為、ボクは全力で駆ける。
ノイズも既に攻撃の態勢に入っており、二人に向けて飛び出そうとしていた。
だが、以前のように間に合わない距離ではない。ボクはノイズと二人の間に割って入り、雷撃鱗を展開する。
雷撃鱗の展開により、ノイズ達は触れると同時に炭の塊となって崩れ去る。周囲にノイズがもういない事を確認して、二人に声を掛けた。
「二人とも無事かい?」
「ガンヴォルトさん!」
響は少女が無事な事と、助かった事に対して、ボクの名を呼び安堵する。そしてもう一人の少女はボクの言葉と姿を見て涙する。
恐怖と助かった事による安堵によるものだろうか。
とりあえず、今の少女の姿はボクにとって少し目に毒だろう。周囲に再びノイズの反応がない事を確認してガントレットを外し、コートを脱いで少女に掛ける。
「大きくて少し重いかもしれないけどこれを着ておいて」
少女に掛けて直ぐに弦十郎に向けて救助要請を送る。弦十郎から指定されたポイントが送られた事を確認して端末を響に渡して言った。
「響、君はこの子を安全な場所までお願い。ボクはまだ街の中にいる生存者の捜索と他の装者の手助けに行く。場所はさっき渡した端末に表示してあるからその場所に向かって」
そう言って外したガントレットを付け直して、ボクは再び街の中へと駆け出した。
◇◇◇◇◇◇
響は再びシンフォギアを纏い、未来をガンヴォルトに指定された地点へと未来を抱えて向かっていた。
「ごめんね、未来。さっき会った人の事ずっと隠していて」
響はガンヴォルトを隠していた事を未来に謝罪する。
「大丈夫だよ。私もあの人の事、しっかり話してなかったから」
そして未来は何故ガンヴォルトの事を探していたかを響に話した。
七年前に未来もノイズにより命の危険に晒されていた事。そしてそれを助けたのが七年前のガンヴォルトだという事。そして、その事を政府の人により話せる状況じゃなかった事を。
「そうだったんだ…」
響の知らなかった未来がガンヴォルトを探す理由。それは響と同様、過去にガンヴォルトが救ってくれた事に対するお礼がしたかった。
「大丈夫だよ、未来。私も隠していた事を何も言えなかった。だからこれでおあいこ」
その言葉に未来も笑顔を浮かべる。
ノイズと出会う事なく指定ポイントに着くとそこでは一課が忙しなく動き回り続けていた。その中で慎次の姿を見つけたので響は未来を連れて向かう。
「緒川さん!」
「響さん!無事だったんですね!」
響の声に気付いた慎次も響と未来の元へ駆け寄る。そして、未来が着ているガンヴォルトの蒼いコートを見て少し慌てていた。
「響さん!ガンヴォルト君は!?」
「ガンヴォルトさんは未来にコートを渡した後に街の方にまた行ってしまいました」
「そうですか」
慎次は安心したように息を吐く。そして未来の姿を見た事と、ガンヴォルトがコートを渡した事になんらかの意図を察したのか近くの隊員に毛布を一枚用意してもらうように頼んだ。そして未来と響は慎次についてくるように慎次の後を追う。
着いた先は避難者達が集まる場所であり、付近にあった大型の車両の中に入れてもらう。
「とりあえずこの中に入っていて下さい。それとこれを」
そう言って未来に毛布を渡して後でコートを渡すよう言うと、慎次は車両から出て行った。未来もコートを脱いで毛布をポンチョの様に羽織る。そして、未来は脱いだコートを大事そうに抱えて響に聞いた。
「あの人…無事に帰ってくるよね?」
その言葉に響は大丈夫だよ、といつもの様に笑う。
「ガンヴォルトさんは絶対に帰ってくるよ!だってガンヴォルトさんがやられる事なんて考えられないもん!」
ノイズに対抗出来る人間。そしてノイズを倒す力を持つ響。響がこう断言するのだから間違いなくガンヴォルトは帰ってくる。そう思えるが、そんな事をはっきりと言え、そこまで信頼出来る人である事を知っていた事を少し羨ましく思った。
そんなガンヴォルトについて響に聞いていると車両の入り口がノックされる。
「着替えが終わったのであれば出てきて貰えますか?司令が到着しましたので、響さんの報告を聞きたいそうです」
そう言われたので響と未来は車両から外に出る。未来は初めて会う弦十郎に少し緊張したが、弦十郎の優しい人柄に触れ、いつの間にか緊張も解けていた。
響が弦十郎に報告を終えると同時に、付近にいた一課の人々がある一点に集まっている事に気付き、その事を未来が聞く。
「あの、今皆さんがあそこに集まっているんですが、何かあったんですか?」
「ああ、君の持つコートの持ち主が帰ってきた様で現場の報告や状況を伝えているんだろう。そのコートも我々が彼に返しておくよ」
その言葉と共に未来へと手を差し出して、コートを渡す様促す。
しかし、未来は首を振って言った。
「これは私が返したいんです、お願いします」
その事を聞いて弦十郎は機密やらなんやら話を切り出す。だが、響がシンフォギアを見られた事、そしてガンヴォルト自身の持つ能力、
「全く、君にもあいつにもあれだけ力を見られるなって言っていたのにな」
その言葉に響は絶対怒られるという覚悟をしたが、響と未来の頭に手を乗せて言う。
「まあ、それもこれも人命救助の不可抗力だ。響君にもあいつにも力を見せずに人を救えなんて無茶は言わないさ。それに人命救助の立役者に大人が叱るという無粋な真似はしないさ」
その言葉に響も未来も安堵する。
「だが、ことも事だ。響君には後でその事の始末書と報告書でも作ってもらおうかな」
「そ、そんなー」
弦十郎の言葉に項垂れる響。その様子を見て弦十郎は高笑いしながら冗談だと笑う。だが、君の友達の処遇だけはどうにかしないといけないからと伝えられた。響はそんな響に悪いようにはしないと笑顔で言う。
「楽しそうだね、弦十郎」
そしてその高笑いを上げる弦十郎に向けて、男性が声を掛けてきた。
先程集まっていた一課の人々が散会して各々の持ち場に向かい始めた中、ようやく解放されたのであろう、ガンヴォルトがこちらに来ていた。
「ガンヴォルト、報告ありがとう」
「気にしないで。ノイズの報告については出撃する度にしているから」
そう言いながら、弦十郎に先程の報告と被害状況を手短に伝える。それが終わり、機を待っていたとばかりに未来がガンヴォルトに話し始める。
「あ、あの!」
「君は」
「小日向未来です!先程はありがとうございました!」
頭を下げる未来。無事で良かったよとガンヴォルトも言う。
「それでもお礼だけは伝えたかったんです!七年前も含めて!」
「七年前…響の言っていた事か」
ガンヴォルトはそう言うと過去の事を思い出そうとしているのか、少し考える様に顎に手を当て考え始めた。
七年という月日。それにガンヴォルトがこの様な救出を幾度となく行っている事を先程車両内で響から聞いていた。覚えてないよね、と一抹の不安が未来の頭を過ぎる。
「もしかして、ボクが治療を受ける時に身に着ける様な服を着ていなかった?」
その言葉に未来は顔を上げて、嬉しさのあまりに声が上ずりながらも答えた。
「そうか…君があの時の…良かったよ。あの時同様にまた君を助ける事が出来て…」
その言葉と優しい笑みを浮かべるガンヴォルトにドキッとした。だが、直ぐにガンヴォルトは響と未来に向けて頭を下げた。
「ごめん、ボクのせいで二人の仲を傷付ける様な事をしてしまって」
ガンヴォルトに対して響と仲直りした事を急いで告げて未来も響も頭を上げる様に言った。
その行動に弦十郎もガンヴォルトの行動に何か思ったのかガンヴォルトに頭を上げる様に言い、今度は弦十郎と慎次が頭を下げる。
「今回の事、いや、これまでの事についてはガンヴォルトにではなく我々の責任である。響君が君に話が出来なかった事、ガンヴォルトの事を知っていても話せなかった事。それに関しても我々が隠さなければいけない、ガンヴォルト自身が特異な存在である為に話せなかったんだ」
未来は頭を下げる二人に頭を上げるように言う。
「わ、分かったので頭を上げて下さい!響がどうして隠さなきゃならなかった事も、私を危険に巻き込みたくなかったという事は分かりましたから」
そう言うと弦十郎は助かると言って頭を上げる。
そして、未来も安堵してようやくガンヴォルトに対して持っていたコートを渡す事が出来た。
「あの…これお返しします」
ガンヴォルトもありがとうと言い、受け取る。響も借りていた端末の事を思い出して返すと端末を少し操作して苦い顔をする。
「あの、もしかして壊しちゃいました?」
響が申し訳なさそうに言うと違うと否定して端末に表示された画面を見せてもらう。
そこには翼からのメールが何通も来ており、ガンヴォルトの無事を心配する文章が綴られていた。未来はこの時に何故響が翼と知り合いであったのかをここで理解した。
「もしかしてだけど、弦十郎。翼への連絡は?」
「したんだが、お前と連絡が取れないとかで探すと言って俺の言葉も聞かず行ってしまった。耳につけた無線の周波数さえ合わせれば確認出来たものの」
弦十郎もガンヴォルトも溜息を吐く。ガンヴォルトは端末を操作して翼へと連絡を入れる。慌てた翼が端末から出ると付近にも聞こえる声音でガンヴォルトの無事を安堵していた。そして翼に無事な事と帰ってくる様に伝えると端末を切った。同時に一台の車が猛スピードで少し離れた所に停車して、了子が降りてくる。
「なんか私のセンサーが反応してたから急いできてみれば、またガンヴォルトが女の子を侍らせていたのね」
そう言いなから降りる了子にガンヴォルトはさらに重い溜息を吐いて言う。
「そんな事じゃないから。それより了子、現場には伝えてあるから調査の方頼んだよ」
「全く、急いで来たのに直ぐそれよ。もうちょっと私に優しくしてもいいんじゃない?」
「了子がその態度を改めてくれればボクは普通に接するよ」
不貞腐れながらも直ぐに調査の準備を始める為に一課の用意した簡易テントへと向かっていった。
「さてと、もう遅い時間だ。君達は戻ってもらって構わない。これからは我々大人の仕事だ。慎次、二人を送ってやってくれ」
そう言って響と未来は慎次に連れられ車へと移動する。だが、未来はまだ伝えていない事を思い出して弦十郎とガンヴォルトに言う。
「あの、友達と逸れたんですがその子も無事ですか?雪音クリスという名前の女の子です」
そう言うと二人は神妙な顔をする。そして顔を見合わせると弦十郎が未来に対して安心する様に言った。
未来にはなんとなく、この件にもクリスが関わっているのではないかと不安を覚える。だが、未来は聞くに聞けず、響と共に慎次が出してくれた車で寮へと帰った。
◇◇◇◇◇◇
了子はある一区画で眉を潜めていた。
周囲には一課が各々の作業で忙しなく動いている為、聞かれる事を恐れ、声に出す事はなかったが、今この場に漂う普通の人では感知出来ない違和感に考えさせられる。
(…この感じ…アッシュボルトがあれを使ったのか?)
かつて協力関係にあった男に渡したデータにあった、シンフォギア装者の適合率を下げる事の出来るAnti_LiNKER。
了子にとっては必要のない為、支援を受ける為に渡したデータ。それを使える様にしてこんな意味のない時に使う。アッシュボルトは何をしたかったのか分からない。
アッシュボルトの目的、そんな事は了子にとってはどうでも良かった。だが、このような無駄な事。そして理解の出来ない行動。
(お前は一体何がしたいんだ?)
了子はアッシュボルトの事を考えるが、あの男が何をしようとしているのか考えつかない。
アッシュボルトの目的を考えながらも今の自分のやるべき事である現場調査に務めるのであった。