戦姫絶唱シンフォギアAB   作:株式会社の平社員

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昨日、PS4版蒼き雷霆ガンヴォルト ストライカーパック発売になりました。
おめでとうございます。
予約特典のボックスとAmazon限定クリアファイル最高です。



54VOLT

街から離れた別荘の地下。そこに一人の女性、了子がポットに浮かぶ三つの剣を眺めながら考え事をしていた。

 

「ガンヴォルトの言っていた宝剣。これが念動力(サイコキネシス)第七波動(セブンス)という事は分かった。だが、本人以外使う事が出来ないというのは計算外だったわ。全く、ガンヴォルトももう少し早く教えてくれたら無駄な事をせずに済んだものを」

 

恨めしそうに呟きながら了子は奥歯を噛み締める。

 

「まあいい、第七波動(セブンス)の事はあまり解りはしなかったけど、響ちゃんがデュランダルの覚醒と同時期に宝剣自身も使用者がいないのにも関わらず起動している。デュランダルと同等のエネルギーを持っているからもしもの時の代用品と考えて計画を進めていきましょう」

 

息を吐いて心臓が脈を打つ様に点滅する光を見た了子は研究室から出て行くのであった。

 

しかし、取り残されたポットの中心に入る宝剣、天叢雲が鼓動の反応とは別に僅かに震えた。

 

「ガンヴォルト…なぜ君の名前がここで…」

 

宝剣から発せられた言葉。だが、発せられたこの言葉に気付く者は誰もいなかった。

 

◇◇◇◇◇◇

 

テロリストからの襲撃により、対応に追われていた二課であったが、二年前のテロリスト同様の手口により、なんの情報も得られなかった。

 

クリスの捜索も難航し、テロリストの他のアジトの捜索を行うが目立った手掛かりも見つかっていない。

 

「根を詰めすぎよ、ガンヴォルト」

 

「そうだぞ。全く休んで無いんだろ」

 

休憩室で資料を読みながら座っていたボクにあおいと朔也が言う。あおいはこれでも飲んでとコーヒーを渡してくれる。

 

「ありがとう。でも、今回も警戒を怠ってしまったボクが原因なんだから尻拭いぐらいやらないと」

 

そう言うとあおいも朔也も溜め息を吐く。

 

「全く、責任感が強いのはいいけど、貴方が過労で倒れたりしたら皆心配するし、その補填をするのも私達や他のエージェントなんだから」

 

「ガンヴォルトは俺達を信用してるんだかしてないんだか分からないよ。とにかく、お前は休めよ」

 

そう言いながら、朔也がボクの持つ資料を取り上げた。ボクは二人の本当に心配する姿を見て、折れて休む事を伝える。

 

「それでも、やっぱり雪音クリスの行方やテロリストの動向は気になるから資料だけでも目を通しておきたいんだけど」

 

全く分かっていないという風に二人は溜め息を吐いた。そんな中、翼と未来と響が休憩室に入ってくる。

 

「ガンヴォルトさん!お久しぶりです!」

 

「響、どうしたの?」

 

響がボクを見るなり声を掛けて挨拶する。そしてこの前から探していたんですけど全然見つからなかったんで、と数日はクリスの捜索やテロリストの動向の調査で響達にも会っていなかったなと考える。

 

「ガンヴォルトさんにしっかりと未来を紹介出来ていなかったんでそれでずっと探していたんですよ」

 

そう言えばあれ以降、未来とも会っていなかった事。未来も正式な二課の協力者となった事は聞いていたがボクも自分の事を伝えていなかった事を思い出す。

 

「ごめん。改めて自己紹介するよ。ボクはガンヴォルト。二課に所属しているエージェントだ。よろしく」

 

そう言って未来に手を出す。未来もそれに両手で手を握り挨拶に答える。

 

「前にも紹介させて頂きましたが小日向未来です!小日向でも未来でも好きな方で呼んで下さい!」

 

「OK。それなら未来って呼ばせてもらってもいいかな?これから二課の協力者としてよろしくね」

 

改めて軽く挨拶を終え、ボクは三人に飲み物を買って渡し、ありきたりな話をしているとあおいと朔也が何か閃いた様に二人でコソコソと話し始めていた。

 

何かあるのだろうかと考えるが二人の会話は耳に入ってこない為に何を話しているのか見当もつかない。

 

「ねぇ、三人とも。今度の休みに遊びに行くって話していなかった?」

 

あおいの言葉に三人は頷き、それがどうしたのかと疑問符を頭に浮かべる。

 

「ちょうどガンヴォルトもその日休みみたいだからさ、一緒にどうかなと思って」

 

朔也の言葉に何を勝手に決めているんだと反論しようとしたが、その前に響が声を上げる。

 

「本当ですか!?私は全然大丈夫ですよ!翼さんも未来も大丈夫ですよね!?」

 

「ああ、私は全然大丈夫だ。ガンヴォルトなら歓迎するわ」

 

「私も全然大丈夫です!むしろガンヴォルトさんの事をもっと知りたかったので賛成です!」

 

ちょっと待ってよ女子高生三人組。と心の中でツッコミながら何故簡単にもOKを出してしまったのかと思った。それよりも何故二人がこの様な提案をいきなりしてきたのか分からなかった為、反論しようと二人に向けて言おうとしたがタイミングよく休憩室に弦十郎が入ってくる。

 

「む?一人を除いて皆何やら楽しそうにしているな」

 

弦十郎は途中から入ってきた為内容を理解していなかったがあおいと朔也が弦十郎にボクに聞こえない様に説明すると納得した表情を浮かべていた。

 

「なるほどな。ちょうどいいんじゃないか?俺もガンヴォルトが少し働きすぎだと思っていたから休むように言いに来た訳だしな」

 

弦十郎までボクを休ませようとしているなんて。確かにここ最近働き詰めなのは認めるが、なぜ休日の予定まで決めなければならないんだろうか。

 

弦十郎達に何か言おうとするが、既にボクを頭数に入れて話を進める三人に向けて無理と言う事が出来ず、諦める事にする。

 

「だけど、女子高生の中に大人の男一人と遊んでいて何か怪しまれたりはしない?」

 

「お前くらいの年齢なら彼氏彼女の関係か兄、くらいの関係という形ならなんの違和感もないだろう。それにそんな事を気にする人がいるかも怪しいがな」

 

「いや、彼氏彼女の関係なら傍から見たら女の子三人を侍らせた男にしか見えないと思うけど」

 

「そういうものか?」

 

「大丈夫ですよ、司令。ガンヴォルトは見た目はチャラ男なんかと違って誠実を現す様に物腰柔らかでそういった風に見られる男じゃありませんよ」

 

「だな。こうなんていうか誰であろうと物腰柔らかに、さりげない気遣いを自然と出来る男として人気があるからな。あれ、なんか自分で言ってガンヴォルトの事がムカついてきたな」

 

朔也の私怨混じりの言葉を無視して弦十郎は笑いながらそうかと答えた。とりあえずボクの休日の予定は勝手ながらも三人の大人により決められたのであった。

 

◇◇◇◇◇◇

 

待ち合わせ時間よりも早く着いてしまった為、カフェで時間を潰す事を考えていた時、ボクの名を呼ぶ声に考え事をやめ、声のあった方に目を向ける。

 

「ガンヴォルト、早かったのね」

 

小走りで来たのか翼が息を切らしながらボクの側にいた。

 

仮にも翼は有名人であり、軽い変装で帽子を深く被っている。

 

「今来た所だよ。そんなに急がなくてもまだ集合時間まで時間があるから、ゆっくりしていてもよかったのに」

 

「そういうガンヴォルトこそ、時間よりも早く着いていたじゃない」

 

「ボクは良いんだよ。三人の遊びにお邪魔させてもらうし、遅れて行くのも悪いしね」

 

翼はボクの言葉に納得していなかったが、男はそういうものだよと説得した。

 

「そういうものなの?」

 

「多分そういうものだよ。ボクもそこまで知らないけど高校時代とかにそんな話を聞いた事があるし」

 

そう言うと何処か翼の視線が冷たくなる様に感じた。

 

「それは男性かしら、それとも女性?」

 

最後の部分が妙に強調されているがボクは男だと言うとその冷たくなった目線は落ち着いた。なぜそこまでボクの交友関係で翼がおかしくなるのか今でもよく分からない。

 

「それならいいわ」

 

そう言って翼は落ち着いたので共に響と未来を待つ事にする。そう言えば制服姿や治療服ではない翼を見るのは久しぶりだなと思い返す。以前だとどれくらい前だろうか、ここ数年見てなかった気がする。制服とまた違った雰囲気を醸し出している。

 

「翼の綺麗な青い髪に合わせたジャケット、それに合わせて考えたコーデ、いつもの制服の翼も綺麗だけどその格好もとっても似合っているよ」

 

「きゅ、急にどうしたの!?」

 

「いや、久々に翼の私服を見て、似合ってたから率直な感想を言っただけだけど」

 

そう言うとさらに帽子を深く被って表情を見えなくさせる。何か悪い事でも言ったかと思ったが、特にこれと言って間違った事は言ってないとは思うが、翼が何処か嬉しそうにしている事から別に恥ずかしがっているだけだと察した。

 

「恥ずかしがらなくてもいいじゃないか。こういう事、言われ慣れてるでしょ」

 

「他の人に言われるのには慣れてても不意打ち気味にガンヴォルトに言われると恥ずかしいじゃない…」

 

「そういうものなの?」

 

「貴方だと別よ…でも、ありがとう」

 

小さくだが翼のお礼の言葉が聞こえた。喜んでいるのであれば何よりだ。

 

しばらく黙り込む翼が落ち着くまで辺りを見ながら待つ。気が付けば集合時間に差し掛かろうとしているが響と未来の姿は一向に見えない。

 

「遅いわね…一体何をしているのかしら…」

 

さらに数分が経ち、集合時間を過ぎても現れない二人に痺れを切らした様に言葉を漏らす。確かに遅いとは思うが、響の事だから人助けとかしてるんじゃないかと、翼を宥める。

 

さらに数分後、響と未来が足早に到着した。

 

「すみません、翼さん、ガンヴォルトさん」

 

「遅いわよ。何をしていたの?」

 

「えっと、響が男の人と出掛けるのなんて久しぶりなもので、色々と手間取ってしまって…」

 

「未来、嘘はいけないよ。ガンヴォルトさんと出掛けるって事で未来も手間取ってたじゃない」

 

「そ、そうだけど…結局は響が原因で遅れたのには変わりはないでしょう?」

 

二人が責任をなすりつけ合うので溜め息を吐いて呆れる翼。ボクはとりあえず、遊びに行こうと言って二人の会話を切り上げる事と、手間取ってまで精一杯お洒落してきた様なので二人の事を褒めつつ、ショッピングモールに行こうと三人を誘導した。

 

そんな中、ボクは翼達と話しながら、尾けているある人に合図を送るのであった。

 

◇◇◇◇◇◇

 

「ガンヴォルト君にはバレてましたか…」

 

ガンヴォルト達の事をこっそり尾行していた慎次はガンヴォルトの合図の意図を察して、ある男をつけると人通りの無い路地に連れ込んだ。

 

「い、一体なんのつもりだ!?」

 

「すみません。既に分かっているので何も言わずにカメラの中のデータだけ消してもらえると

助かるのですが」

 

慎次は男が何処かの記者だと把握しており、先程隠れて撮っていた写真を消す様お願いする。

 

「あんたも同じ記者なのか?言われたって消すもんかよ。あの大人気アーティスト、風鳴翼が男と密会なんてこんなスクープ見逃せるかよ」

 

男はそう言って写真を消去する事を拒んだ。

 

「手荒な真似はしたくないので素直に消してくれると助かるんですが」

 

そう言って慎次が合図を出すと共に何処からともなくエージェントが現れる。いきなり現れる屈強な男達を前に記者は怯える。

 

「一応、確認しますが消してくれますか?」

 

「嫌だと言ったら?」

 

「分かりました」

 

そう言うと慎次が合図を送り、エージェントは記者へと近付くと、警察手帳の様なものを見せて、記者を連行していった。

 

別に尋問などではないので問題はないが、きつくお灸を据えてこの事を話さない様にしてもらう。

 

「戦う女の子達とガンヴォルト君の休日くらい、守ってあげるのも大人の務めですからね」

 

そう言って慎次は後の事を他のエージェント達に任せてガンヴォルト達を遠くから見守るのであった。

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