戦姫絶唱シンフォギアAB   作:株式会社の平社員

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休日後これまで通りの業務に戻り、クリスとテロリストの捜索をしていたが、進展がなかった為、本部に戻ってここ最近の監視カメラの映像などを見て捜索していたのだがここでも見つける事は出来なかった。

 

流石に張り詰め過ぎて休憩室で座ってボクはコーヒーを飲んで休憩していると翼が入ってくる。どうやらボクを探していたようで安堵で胸を撫で下ろし、近くに座る。

 

「ガンヴォルト、今度ライブがあるのだけど来れそう?」

 

「何もなければ行けると思うよ」

 

翼が完全に快復した事により、慎次が色々と駆け回ったり、テレビなどの報道によって翼のライブが決まったらしい。

 

だが、当の本人は何処か浮かない顔をしている。その理由は少し前に慎次から聞いている。海外の進出を今まで断っていたのだが、響も覚悟を胸に戦うようになった事に感化されたのか分からないが、自身も新たな道を歩んでみようと考えているようだ。

 

だが、今の現状、それに奏を置いて自分だけ海外で活動しても良いのかと葛藤しているようだ。ボク自身、本人の口から何も言わないように慎次に口止めされている為、翼の口から出るまでは何も言わない事にしているが、今の翼に

 

「何でそんな浮かない顔をするの?」

 

それとなくボクがそう聞くと翼は以前から海外のオファーが来ており、受けるかどうか悩んでいる事を話してくれた。防人として、そして奏を、親友を残して自分だけ海外で歌うべきなのかどうか悩んでいる。

 

ボクの予想通り、現状、そして奏の事で上手く答えが出ないようだ。

 

元は奏と共に誰かを救う為に歌い始めた。それでも奏と共に誓った歌で誰かを救う為の活動を一人になっても続けていたが、翼だけ世界という大きな舞台に旅立ち、歌うべきなのか?奏と建てた誓いなのに自分だけが。その悩みが翼の答えを曇らせる。

 

「私はどうすれば良いと思う?」

 

悩んだ結果、未だ答えが出ない。確かに、翼の行動は奏と共に歌で人々を救う事。だから自分一人で先に進むべきなのかそうじゃないのか決めあぐねているのは分かる。

 

「…ボクは大きな舞台に立つ人間でもないからどう答えれば良いか分からないよ。でもボク自身が思うに翼の意思で行動したら良いと思うんだ」

 

「でも…でも、私一人だけ世界に出るなんて…私一人じゃまだまだ何も出来ないのに…」

 

翼は悩み続ける。

 

「一人じゃ何も出来ていないなんて、ボクを含めた二課の皆がそう思っているよ」

 

「違うわ。私はただガンヴォルトや奏が作ってくれた、気付かせてくれた道を、誰かの築いた道の上をレールに乗った電車のように進み続ける事しか出来ない。今だって奏と決めたのかもしれない。けど私自身が決めた道ではなく賛同して歩いているのに過ぎないの。自分で決めた事なんてない」

 

少しネガティブな思考を吐露する。

 

ボクもこんな感じで弦十郎に言っていたのかと思いながら、言葉を選びながら翼に言う。

 

「翼はそう言うかもしれないけど、最初はそれでいいんじゃないかな?」

 

「…どうして?」

 

「誰だって自分の道を見つけるのなんて誰かの築いた道を歩いて見つけていくしかないと思うよ。ボクだってそうだし、奏だってそうだと思う。誰だって自分の道は誰かの築いた道を進んでその中で自分なりの答えを見つけてから歩んで行くものだと思うよ。最初から決められたレールに乗せられている訳じゃない。誰もが誰かの築いた道をずっと歩んで行く事はないんだから翼は、翼自身が見つけていく自分の道を歩いて行けばいい。今はまだ奏の作り上げて来た道を歩いているのかもしれない。今の現状を気にしているのは分かるよ。だけどその為にボクや響がいるんだから、翼が本当にどうしたいのか考えて決めていいんだよ」

 

「でも私は…」

 

それ以上また何か言おうとしたので被せるようにボクは言う。

 

「いつまでも悩むな、折角のチャンスを、それに世界にも同じような悲しみを持つ人がいるんだから、胸を張って歌えばいい。奏ならそう言うと思うよ。ボク自身も折角のチャンスを無駄にはして欲しくない。この国が心配な事も分かるけど、その為にボクや奏、響に二課の皆が居るんだから」

 

「…」

 

そう言うと翼は何も言わなかった。

 

「本当に私が世界に出てもいいの?」

 

「もちろんだよ。この国だけじゃなく、世界にも風鳴翼の名前を轟かせておいで」

 

そう言うと翼は少し考えてから頷いた。

 

「分かったわ、ガンヴォルト。私は自分の道を見つけるのと、悲しんでいる人達の助けになる為に世界に行くわ」

 

「うん、まだ先かもしれないけど、行っておいで」

 

そう言うと始めは悩んでどうすればいいか分からなかった表情も、良くなっていた。

 

「でも、そうなると寂しくなるな」

 

「えっ?」

 

不意に漏らしたボクの言葉に翼が反応する。

 

「今生の別れじゃないにしろ、今まで一緒に過ごして来た翼が、世界に行くんだからね」

 

「ガ、ガンヴォルト、それって…」

 

翼は戸惑いの混じった、何処か期待する様な声音で聞き返す。

 

「寂しくなるよ。妹みたいに接して来た翼が遠くに行っちゃうんだからね」

 

その言葉を聞いた翼の声音は今までになく残念そうで、とても冷たかった。

 

「い、妹…私は妹なのか…ふふふ」

 

何処となく怖い笑いを浮かべると、立ち上がりボクの脛を蹴ろうとして来たが、ヒョイっと躱した。翼は悔しそうにして、何処か怒りと呆れを纏った雰囲気を持って休憩室から足早に出て行った。

 

「何か怒らせる事でも言ったのかな?」

 

翼が出て行った方を見ながらボクは自分の発言を思い返していると、いつの間にか休憩室の外に居たあおいと朔也が溜息を吐きながら入ってくる。

 

「本当にガンヴォルトは戦闘に関しては鋭いけど、それ以外はからっきしね」

 

「本当に翼さんの事をもう少し考えてから発言して欲しいよ。最初は良い雰囲気だったのに最後でぶち壊して行きやがって。最初は羨ましいし妬ましかったけど、最後はもう翼さんに同情しか浮かばなかったよ」

 

「二人とも、ボクに酷い事を言っているけど他人の話を盗み聞きしている事を棚に上げて欲しくないんだけど」

 

ボクを一方的に責めようとする二人に向けて可能な限り反論しているが二人はそんな事意に介さずにボクの方をジトーっと見るのであった。

 

◇◇◇◇◇◇

 

当日のライブ前にノイズが発生したという連絡を受けた為、そちらの対応をしなければならなくなった。

 

翼にもこの事は伝わっているはずだが、ライブ会場から遠くでの出現。そしてライブをドタキャン出来る訳もない為、ボクと響が何とかしなければならない。

 

それに折角の復帰のライブ。そして翼が世界に羽ばたく事を決めた初のライブをノイズに邪魔させる訳にいかない。

 

ノイズの掃討を行うべくボクは現場に急ぎ向かった。

 

来る途中にノイズとは別の反応も検知されており、何者かがノイズと交戦していると連絡が入る。

 

響も現在急行中、翼はライブでこちらには来る事が出来ない。今現場にいるのはクリスで間違い無いだろう。

 

連絡して来た弦十郎も解析されたアウフヴァッフェン波形もクリスの持つイチイバルと断定した事でクリスで間違いない事を教えてくれた。

 

今まで何処にいたか分からなかったが、クリスがそこにいるのならノイズの脅威を早急に抑えて保護しなければならない。

 

現場に近付くに連れて爆発や銃声が大きくなり、破壊された建物などが目につく様になる。

 

そして、大きな建物を抜けた場所に出ると大量のノイズと戦闘を行うクリスの姿が目に入る。

 

いかんせんノイズの数が多いせいか、クリスは苦戦を強いられている。

 

ボクはクリスに襲い掛かろうとするノイズに|避雷針ダートを撃ち込み、雷撃鱗から誘導される雷撃で炭へと変える。

 

クリスもボクの存在に気付いたのだが、未だ増え続けるノイズを無視する事は出来ず、ボクに気を留めず、周りのノイズ達を倒す事を専念している。

 

このままではクリスの体力がなくなる方が早い。ボクは雷撃鱗を解いて、言葉を紡ぐ。

 

「閃く雷光は反逆の導、轟く雷光は血潮の証、貫く雷撃こそは万物の理」

 

言葉と共にボクの周りに迸る雷撃が鎖へと形を変えて、幾つも現れると鎖を操り周囲にいたノイズ達を貫き、絡め取る。クリスを巻き込まない様に鎖の操作に集中して、見える範囲のノイズ全てを絡め取る。

 

「迸れ!蒼き雷霆よ(アームドブルー)!ヴォルティックチェーン!」

 

鎖に流れる雷撃が、ノイズへと迸り、見える範囲のノイズを全て殲滅させる。

 

周囲にノイズが残っていないか確認しながら、見通しも良くなり、息を切らせたクリスの姿が見えた。

 

「今のはなんだよ!?いきなり派手なもんぶっ放しやがって!当たったらどうするんだよ!?」

 

「当たらない様にちゃんと操作したよ。それより、無事かい?」

 

大量にいたノイズが急に消滅した事、そしてヴォルティックチェーンを初めて見たクリスは文句を言っている。そしてボクの言葉にお前があんな事をしといて驚かせなければだけどな!と答える。

 

軽口を叩けるのなら大丈夫だろう。そして急にボクに向けて銃を構えるクリス。躊躇いもなく発砲してくるが、その銃口から放たれた弾丸はボクに当たる事はなく、背後から現れたノイズに当たり、炭へと変わる。

 

「油断してるんじゃねぇよ」

 

そう言うクリスの背後にもノイズが現れている為、お返しとばかりにクリスの背後に現れたノイズに向けて避雷針(ダート)を撃ち込むと同時に腕に雷撃を流し、避雷針(ダート)の撃ち込まれたノイズへとクリスを避けて当たり、炭の塊に変えた。

 

「そう言う君も油断してるんじゃないか?」

 

そう言って、再び建物の影から大量に出てくるノイズがボクとクリスを追い込もうと近付いてくる。

 

囲まれてクリスとの距離が近付く。そして後ろの視界を互いに任せる様に背をつける。

 

「おい!さっきの奴をまた使えよ!そしたらこいつらを生み出す大元を私が潰してやる!」

 

「無茶言わないでくれ!さっきのスキルは広範囲の敵を殲滅が出来る分、そう何回も連発出来る様なものじゃない!」

 

襲いくるノイズに向けて避雷針(ダート)を撃ち込んでは腕に流した雷撃で倒しながら叫ぶ。

 

「はぁ!?考えもなしに使ったのかよ!」

 

「君が危なかったからね!素早く助ける為にはそうした方が早かった!」

 

「私はお前に助けてなんて一言も頼んでない!」

 

クリスはそう言いながら手に持つ銃をホルスターに戻す様な動作をするといつの間にかガトリングが握られており、周囲のノイズに向けて乱射し始める。

 

だが、一向にノイズの数は減ってこない。ヴォルティックチェーンの使い所を間違えたのかもしれない。いや、それでもクリスをあのままにする訳にもいかなかった為、あれでよかった。

 

だが、こうもノイズが多いとシンフォギアを纏っていないボクは避雷針(ダート)を減らされてジリ貧となってしまう。

 

そんな時、目の前の建物の裏から爆発と共に建物が破壊されて、何かが飛び出して来た。

 

「ガンヴォルトさん!お待たせしました!到着した場所にノイズを増やすノイズがいたので急いで倒しました!」

 

響は地面に足をつけて叫んでいる。

 

「よくやった、響!」

 

それを聞き、ボクは駆け出して雷撃鱗を展解させながら避雷針(ダート)を撃ち込んでいき処理していく。背中を合わせているクリスもガトリングでノイズを一掃していく。

 

響も参戦した事により、ノイズの掃討も早急に終わらせる事が出来た。

 

「クリスちゃん、ありがとう!クリスちゃんがいち早く駆けつけていたおかげで負傷した人とかいなかったって!」

 

二課からの通信を聞いて響がクリスに伝える。

 

クリスも負傷した人がいない事には安堵していたが、響からの礼に戸惑いを見せた。

 

「ボクからも礼を言うよ。君のおかげで人的被害もなく掃討する事が出来た、ありがとう」

 

「意味が分からねー」

 

そう言うとクリスはこの場を去ろうとしたのでボクは呼び止める。

 

「ちょっと待ってくれ!君は今テロリストに狙われているんだ!一人で行動していたら危険な目に遭うんだ!」

 

「あんな奴等、私一人でどうにか出来る!」

 

足を止めたクリスは振り向いてボク達に向けて叫んだ。

 

「お前等の方こそ私に構うな!私に絡んだばっかりにお前はあの時にあいつ等に狙われたんだろ!」

 

「さっきも言ったように狙われている可能性があるからこそ、放って置けないんだよ」

 

「そうだよ、クリスちゃん!そんな危険な目に遭いそうなのに放って置く事なんて出来ないよ!」

 

「お節介なんだよ!お前達は!それにお前等が構わなければ狙われる事もなくなるだろ!私一人が狙われ続ければ他に被害が出る事もない!」

 

「テロリストはそんな甘いものじゃない。ボク等二課にもハッキング、この国の大臣でもあった広木防衛大臣も殺害されている。これ以上被害を、犠牲を出さない為にも君に協力して欲しいんだ」

 

「…ッ」

 

過去にテロリストによって殺害された広木防衛大臣。そしてその警備を行なっていたSP達。フィーネもテロリストもこのまま放って置く事は出来ない。

 

「だからボク等の手を取って欲しい。もちろん君の安全はボクが保証する。騙したりなんかしない」

 

響もボクの言葉に頷いてクリスの回答を待った。

 

「無理だ…私はあんた等とつるむ事はしない」

 

そう言ってクリスはこちらに付く事を拒み飛び去ろうとする。

 

「待ってくれ!」

 

クリスはボクの言葉に反応せず、飛び去ろうとする。

 

「テロリストの頭はアッシュボルトって奴だ。私も名前しか知らない。じゃあな」

 

その言葉を言い残し、クリスは飛び去って行った。

 

ボクと響はクリスを追おうとするが、少数ではあるがノイズが別の場所にも出現したと連絡を受け、そちらに対応を追われ、クリスを再び見失ってしまった。

 

だが、クリスの言い残したテロリストの頭目であるアッシュボルトという名の人物。

 

一体その人物は何故フィーネと協力しているのか。そして何故ボクの第七波動(セブンス)の事を知り得たのか。

 

クリスの安全の為にも早く首謀者である二人の行方と捕縛をする為、ボクと響はノイズを直ぐに片付ける為に別の現場へと向かった。

 

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